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風竜の俺と竜騎士な君 作者:空色蜻蛉

Act.16 風竜の俺と竜騎士な君

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05 そろそろお昼寝したいなあ

 金属の鳥達は結界の上に落ちて、火花を上げて燃え尽きていった。
 討ち漏らしがないかカケル達は慎重に確認する。
 空に黒い影が無くなった後、各街に非常事態の解除が通達された。
 王都レグルスを覆う結界が解かれる。

「……私達は学校の寮に戻って休んでいいそうよ。報告さえ終えれば皆、家に帰っていいみたい」
『じゃあ俺達は学校に降りようか』
「そうね、お願い」

 空を舞う竜達は、おのおの所属する部隊や街へ帰っていく。
 カケル達は長旅から帰ってきたことも考慮されて、自分達の家に帰って休んで良いという許可が降りた。イヴは寮に寄って着替えてからレグルスの北にある両親が待つ家に帰るらしい。カケルも寮で着替えてから、ソウマの元に帰ろうと思った。
 正式に空軍に所属しているステラやロンドは、軍の飛行場に降りて報告があるらしい。セファン達ともレグルス上空で別れる。
 蒼い竜はゆっくり街の中心より南付近にある、学校の屋上の竜の発着場に降りた。
 屋上には、教師や空戦科の生徒達が出迎えのために集まっていた。

「よく帰ってきたな!」

 学校の関係者はカケル達の事情を詳しく知らないものの、カケル達が他国で任務についていて、帰ってきたと思ったらレグルスを襲う危機と戦ったことは知っていた。
 竜から人の姿に戻ったカケルにも、口々にねぎらいの言葉が掛かる。
 こんなふうに歓迎されると思っていなかったカケルは目を白黒させた。

「……サーフェス」
「ヘンドリック先輩」

 空戦科5年生の竜騎士候補ヘンドリックが近づいてくる。大柄な体格の男子生徒で、彼のかたわらには濃い赤毛の女性が付き従っていた。

「お前のおかげでマリアが戻ってきた。ありがとう、本当に言葉にできないくらい、感謝している」

 赤毛の女性はマリアだった。
 ソルダートにさらわれていたのを、カケルがスルト達と一緒に逃がしたのだ。
 彼女は小さな声で「ありがとう」と言う。
 カケルはどう返したものか分からず焦った。

「あ、ええと! 感謝は俺じゃなくてスルト先輩にどうぞ! じゃあ俺はここで」

 人込みをかき分けてカケルは逃走を試みる。
 その前に白衣を着た男子生徒が立ちふさがった。
 研究科5年生のウイルヘルム、現在の夏寮の寮長でもある、通称ウィル先輩だ。

「カケル君」
「はい」
「君が出て行ってから、寮のあちこちで縫いぐるみや枕が発見されてね……片付け、手伝ってくれるよね?」

 昼寝推進活動中のカケルは、作った道具や枕が部屋に入りきらないので、寮の片隅の人目に付かない場所にこっそり格納していた。それが見つかってしまったらしい。
 カケルは肩を落とした。

「はい……」

 どうやらまだお昼寝はできないらしい。




 寮の自室に入って空軍の軍服を脱いで、私服に着替える。
 数か月ぶりの自室は案外に片付いていた。
 几帳面なルームメイトが秩序を保っていたらしい。
 そのルームメイトのオルタナ・ソレルと言えば、どうやら陸軍で別の仕事に従事しているらしく、基地で作戦行動を始めてから姿を見ていなかった。

「……リリーナは高天原インバウンドだっけ。大丈夫かなあ」

 エファランの王族で、親しいクラスメイトでもあったリリーナ・アルフェは、高天原で各国の王族と交渉して、ソルダートの攻撃を止めてもらうように要請している。
 彼女の苦労を思いながら、カケルは先輩に押し付けられた縫いぐるみや枕を適当にオルタナの部屋に放り込んで、寮を出た。
 寮の玄関にはストロベリーブロンドの少女が待ち受けている。

「遅い!」
「ごめんよ」

 なんで謝っているのだろうと思いつつ反射的に謝る。
 そうか。彼女をレグルスの北の実家まで送らないといけないな。
 カケルは彼女が待っていた理由を理解すると、寮を出て少しいったところの広い空間で竜に姿を変えた。
 イヴは蒼い竜の背に飛び乗る。
 竜はゆるやかに空に舞い上がり、街の中を飛ぶ竜の制限速度の上限を守って、レグルスの北へ飛行を始めた。

「ねえ、うちに泊まっていかない?」
『うーん。ソウマおじさんを安心させてあげたいし、パスで』

 カケルは一瞬どきりとする。
 彼女と一緒に寝ると聞くと、妄想の方向に思考が行きかけるが、考えてみれば彼女の両親がいる家でおいたはできなかった。

「そう。契約したんだし、うちに来ればいいのに」
『え?』
「ほら、セファン先輩だってそうでしょ。マクセランの家に入ってるから苗字もマクセラン……」

 契約した竜は、竜騎士と結婚したり、相手の家に入ったりする。
 その論理でいくとカケルはイヴの家に入らないといけない訳だ。
 想像してみる。
 お昼寝に行きたいカケル、イヴに阻止される。イヴの家族に監視される。肩身が狭い。
 ……無理無理、絶対無理っ。

『……』
「なんか変なこと考えてない?」
『き、気のせいだよ!』

 蒼い竜は首をびゅんびゅん振って翼をばたばたさせる。
 イヴは怪訝に思ったが、今はそれよりも実家に帰ってきた喜びと安心感が大きかった。彼女は忘れていた。カケルがお昼寝大好きで、すぐに逃げだす世にも情けない竜だということを。


 
次が最後の話になると思います。
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