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風竜の俺と竜騎士な君 作者:空色蜻蛉

Act.16 風竜の俺と竜騎士な君

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04 まるで花火のように

 蒼い竜が起こした風によって、味方の竜の動きが良くなる。
 空を覆っていた黒っぽい金属の鳥の群れが減少していく。
 積極的に掃討には手を貸さずに、イヴとカケルは戦場を飛び回って味方の援護をしつつコアを探すことに集中していた。

『なんか変な動きをしてるなー』
「カケル?」

 いくつかの群れに散って街を襲っていた鳥達が、レグルスの方向に向かって集結しつつある。

「コアはレグルス上空の北西を移動中だそうだ」

 風竜の斜め後ろに黒竜が追い付く。
 黒竜の背中に乗るロンドが通信の呪術で連絡してくる。
 今回の作戦で黒竜ステラとロンドは、カケルとイヴのバックアップの役目を担っている。雷の属性の竜であるステラは、風竜の次に敏捷性が高い竜だ。カケルのトップスピードにも実戦経験豊富な彼女なら付いてこれる。
 敵の位置、詳しい座標はイヴに転送されている。今のカケルは契約の効果で彼女と情報を共有できる。指示されるまでもなく、彼女がもらった情報をもとに目標の空域へと飛翔する。
 しかし、その移動に合わせるように金属の鳥達も前方に集まっていく。

「何あれ……?!」

 いつの間にか鳥の群れは一ヶ所に集まって、巨大な金属の竜の姿を取っていた。大きさは通常の竜の十倍程度もある。
 鳥同士が合体した鱗はゴツゴツと尖った鋼鉄の肌を形成している。コウモリ型の翼はレグルスの街に大きな影を落としていた。長大な鉄の尾がレグルスの結界を叩くと火花が散る。ここまで巨大で質量のある物体に落ちてこられれば、王都を守る結界といえど持ちこたえられないかもしれない。
 敵のコアはどこへ行ってしまったのだろうか。
 イヴはレグルスの上空に目を凝らした。

『コアはあいつの心臓になってるみたいだねー』
「ということは、あいつを壊さないとコアを攻撃できないってこと……?」
『大当たり』

 蒼い竜はレグルスの上空で暴れる鋼鉄の竜の周囲を軽やかに飛び回る。
 図体が大きくなって、のろくなった鋼鉄の竜の攻撃は避けやすいが、一方でイヴとカケルの攻撃力では敵にダメージを与えることは難しい。

『……壊すのは俺達に任せろ!』

 炎を撒き散らしながら火竜セファンが吠えた。
 その隣に並走するのは白銀の鱗の水竜だ。

『俺達の連続攻撃で、温度差による破壊を試みる。ステラ先生、俺の攻撃の後に必要なら突破口を作ってください。いくぞルルキス!』
『指図しないで!』

 プライドの高い氷の女王は言い返したが、作戦に反対という訳ではなさそうだ。水竜ルルキスは文句を言いつつ前に出る。
 ルルキスは白銀の翼を広げる。微細な氷の破片が空に散った。
 背に騎乗している竜騎士クリストルが彼女に向かって言う。

「……君に永遠の愛を捧げよう。さあ、君の力を見せてくれ!」

 同調のキーワード、それにするの?
 聞いてしまったカケルは鳥肌が立った。恥ずかしい台詞だ。自分は絶対イヴにそんなこと言えない。あー、聞きたくない、聞かなかったことにしよう。
 蒼い竜がちょっと葛藤している間にも、白銀の竜は大きく息を吸い込んでいる。その口元から、日の光で虹がかかった白いブレスが吹き出された。



 攻撃用の特殊同調技、白銀雪祝福ホワイトブレス



 魔力レベルAの竜であるルルキスのブレスの威力はすさまじく、巨大な鋼鉄の竜の動きが鈍くなり、凍りつく。
 長い吐息を吐き出したルルキスの前に、火竜セファンが飛び出す。
 炎の申し子のような彼の飛行に沿って火の粉が舞った。

『敵の動きが止まったな!』
「ええ……天を貫くマクセランの炎を見せてやりましょう」

 ギシギシと凍りきながらレグルスに落下する鋼鉄の竜に向かって、セファンは飛び込んでいく。その身体に黄金の炎が宿った。炎の翼で二倍の大きさにみえる火竜は、火の玉のようになって鋼鉄の竜に突進する。



 攻撃用の特殊同調技、黄金炎飛翔フレアドライブ



 火竜は全身で体当たりして、レグルスに被害が及ばないように鋼鉄の竜を街の上空から押し退ける。
 鋼鉄の竜の中心からヒビが入り、砕けて元の鳥の群れに戻ろうとしている。あともう一押しだ。火竜の後を追うように飛ぶ、蒼い竜と黒竜。
 黒竜ステラの背に乗るロンドは崩れかけた鋼鉄の竜をにらんだ。

「……ステラ先生。僕はまだ貴方の中で頼りない生徒なのでしょうか」

 教師と生徒というお互いの立場ゆえに、ステラとロンドは壁を乗り越えられずにいた。特にステラは過去に竜騎士を亡くした痛みから、契約を求めるロンドに答えられずにいたのだ。
 しかし、非常事態でやむを得ず組んで戦う中で、遠慮する理由は自然消滅しつつある。
 ステラは迷いながら答える。

『いいえ、ロンド……貴方にその実力が無い訳じゃない。私に貴方に見合う価値がないのよ』
「価値なんて言葉で僕を遠ざけないで下さい。僕と一緒に戦って欲しい」

 ロンドの決意を込めた言葉に黒竜が羽ばたいた。
 不都合が起きるとすれば、彼女の側ではなくロンドの側だ。それすら覚悟の上ならば、彼の言葉を拒否する理由は、もうどこにもない。

『貴方がそう望むなら……!』

 竜の羽ばたきと共に雷光が弾けた。



 攻撃用の特殊同調技、紫電光誓撃バイオレットライト



 激しい雷撃が金属の鳥達を散り散りにする。
 鳥の群れの中で、ひときわ小さい一羽が逃げ出そうとしているのを見つけて、蒼い竜は素早く追撃する。

『あれがコアだね!』

 コアは超高速で飛び回り、レグルスの上空から離脱しようとする。
 しかし、こちらは敏捷性が売りの風竜だ。

『しっかり掴まっててね、イヴ。飛ばすよ!』

 カケルは竜になってから初めての最大速度で空を飛ぶ。
 重力を感じさせない、まるで水中をいくイルカのように、蒼い竜は加速して旋回し、コアの真上に回り込んだ。

『お昼寝アタック!』

 何それ? と背中のイヴは思った。
 蒼い竜は尻尾をしならせてコアに一撃を落とす。お昼寝とは全く関係ない攻撃だったが、相手を眠気に誘う効果はあったらしい。尻尾の一撃を食らったコアは動きが鈍くなった。
 振り落とされないよう背中に張り付いていたイヴは身体を起こし、呪術の弓矢を発現させる。

紅光弾ルビーショット!」

 赤い光の矢は真っ直ぐにコアに命中する。
 中心を射抜かれたコアは金属の破片となって、爆散した。
 周囲で動き回っていた金属の鳥達の動きが止まり、次々と地上に落ちていく。敵の残骸は、街の結界に接触すると花火のように青や赤の光を撒き散らした。

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