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風竜の俺と竜騎士な君 作者:空色蜻蛉

Act.16 風竜の俺と竜騎士な君

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03 エファランの空へ

 太陽が昇るのと同時にカケル達は作戦行動を開始した。
 今回の作戦は空軍が主になり、陸軍の部隊は掩護に回る。陸軍所属のオルタナやスルトは基地で留守番の予定だった。
 小さな基地の敷地から次々と竜騎士を乗せた竜が空へ飛び立って行く。カケルとイヴの出番は一番最後だ。

「おお、壮観だなあ」

 エファランの空を竜が舞う。
 敵の飛行物体を一斉に掃討するため、他の基地や街からも応援の竜が同時に空に飛び立っている。属性の違う色とりどりの竜が夜明けの空を乱舞するさまは、カケルの言う通り壮大な眺めだった。

「全くのんきだこと。先に行くわよ」

 銀髪の美女がカケルの緊張感のない様子に苦笑する。彼女は水竜のルルキスだ。美しい白銀の鱗の竜に姿を変えた彼女は、竜騎士のクリストルを乗せて飛び立つ。

「……カケル、私達も」
「うん」

 離陸が最後でも、敏捷性の高い風竜ならすぐに皆に追い付ける。
 他の者が飛び立った後、人気が無くなった飛行場でカケルは悠々と姿を変える。
 真っ青な空そのもののような蒼い風竜へと。
 イヴは屈んだ竜に走り寄って素早く乗り込んだ。今日の彼女は空軍の竜騎士の軍服を着ている。正式な所属は星翼協会エクセラードの呪術師なのだが、今回は特別処遇で空軍所属になっていた。
 女性の身体のラインに合わせた、裾の長い青い軍服の上に彼女のストロベリーブロンドがよく映えている。

 上昇する竜の背に乗り込んだイヴは、いつもと視界が違うことに気付く。細かい光の文字が鳥の羽のように視界をくるくる舞っている。

「何……?」
『契約したら視界を共有できるようになるって聞いたけど……俺の見ているものがイヴにも見えるようになったんだね。これは魔眼の視界。術式を可視化した世界だよ』

 あの光の文字ひとつひとつが術式なのだと、カケルは言う。
 自分の術式しか見たことのなかったイヴはそれが術式だと言われて驚愕する。これがカケルの見ている世界。見慣れた世界に重なり、行き交いする光の文字の群れ。
 竜の背に乗った途端に見えるようになったことから考えると、どうやら普段は見えないものらしい。

『俺は呪術師じゃなかったから使いこなせなかったけど、イヴなら有効利用できるかもしれない』

 そう言われて光の文字に目をこらすものの、見覚えのない術式が多く、どう対応したものかすぐには分からない。知っている術式であれば相手が実行する前に分かるのだろうが。

『え? 分からない? ほら、あのパラパラ飛び回ってる白いやつはダイアルネットワークの術式だよ。人間の周りに出ている文字はその人の術式で……』
「口に出す前に私の考えを読まないで! なんで貴方はそんなこと分かるのよ!」
『そりゃ、俺は七司書家で術式について叩き込まれたから。そっか、普通の呪術師は術式の中身まで見ないんだっけ』

 カケルの言う通り、普通の呪術師は呪文を唱えれば発動する呪術について、その裏側にある術式や呪術文字について詳しくない。知らなくても使えるからだ。
 エファランの呪術師の名門に生まれたイヴだって、いちいち呪術の中身を見て使っている訳ではない。一般人よりは詳しいだろうが、おそらくカケルほどでは無いだろう。
 契約して改めて知る。
 彼は普通ではない。呪術師でないとは言っても、呪術についてここまで精通していれば、それだけで役に立つ力だ。

 イヴは気を取り直して周囲の状況を観察する。
 見渡す限りの空で、金属の鳥達を相手にエファランの竜が飛び回っていた。
 敵のコアの位置が分かれば連絡をもらえる予定だ。
 それまではカケル達は味方の援護をしていれば良い。
 どうしようかと思っていると、火竜セファンがパートナーの少女イリアを乗せて近づいてくる。

「貴方たちは同調技を使って味方全体を援護してください」
「同調技……」
『何回か使ったことがあるだろう』

 竜とパートナーの竜騎士が気持ちを重ね合わせて発動させる魔法、それが同調技だ。
 カケルとイヴは偶然、同調技を使えるようになったが、きちんと毎回意図して発動させられるか試したことは無かった。

「二人で合言葉を決めなさい。その言葉にあわせて技を発動できるように練習するんです」

 イリアがアドバイスをくれる。

「合言葉……」
『お昼寝とか』
「それはあんただけでしょ」

 口を開けば昼寝のことしか言わないカケルに、イヴはこれは自分が考えるしかないと思う。
 今、自分たちに求められているのは攻撃ではなく援護だ。
 だとすれば風を操って敵の動きを妨害するか、味方の動きを加速させるか。この混戦状態では、敵の数の方が多いので、後者の方が望ましいだろう。

「……カケル、貴方の自由の風を皆にも届けて。私達は絶対に勝つ!」
『りょーかいっ!』

 蒼い竜はイヴの意思を読み取って、力強く羽ばたく。
 強い風の魔力が目に見える蒼い光となって竜の周囲にあふれだした。
 澄んだ力ある風の波動が蒼い竜を中心に広がっていく。
 青い空がさらに深い蒼に染まった。



 支援用の特殊同調技、蒼風加速界ワールウィンド



 大空に風を吹かせながら、蒼い竜は味方の間を縫って旋回する。
 蒼い竜の通った跡から追い風が吹く。

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