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風竜の俺と竜騎士な君 作者:空色蜻蛉

Act.16 風竜の俺と竜騎士な君

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01 色々と降参です

 君を好きになったのは、いつだったかなあ。
 気が付くと俺はすっかり君に捕まってしまっていたよ。
 最初はあんなに敬遠していたのに。
 おかしいなあ。
 散々逃げ回って、あげくの果てに敵の国まで行ったのに君ときたら追いかけてきちゃうんだから。
 もう、降参するしかないじゃないか。




 高天原インバウンド大結界ダイアルフィールドから出て、山脈を飛び越えて飛翔する二体の竜がいた。
 一体は空を切り取ったような真っ青な竜。大きな翼に長い尾、しなやかな竜体は風竜の特徴を示している。竜の背には、光を集めたようなストロベリーブロンドの少女が乗っていた。
 もう一体は漆黒の竜。上品な金色の爪と角を持ち、涼やかな紫水晶の瞳を持つ、細身の竜だ。背に乗っているのは眼鏡を掛けたダークブラウンの髪の青年と、金髪に浅黒い肌をした野性味の強い若者である。
 蒼い竜はカケルの変身した姿であり、背中の少女はパートナーのイヴ・アラクサラ。黒竜は空戦科の女性教師ステラで、騎乗しているのはパートナーのロンド・イーニークと獣人のオルタナ・ソレルだ。
 二体の竜の向かう先には不自然な黒雲が漂っていた。

「なんだ? あれは……」

 ロンドが眼鏡の奥の目を細める。
 彼は補助・防御タイプの呪術師だ。前方に広がる黒雲について、探査の呪術を展開して分析する。
 呪術師にしか見えない視界では水色のマンボウがゆらゆら漂っている。マンボウはロンドの呪術の補助をする妖精ナビゲータだ。

『解析結果……鉄、金属が8割を占める長さ40センチ程度の十字状の物体。確認できる範囲でもおよそ1000体は集まっているのだ』
「それは機械、ということか……?!」

 黒雲は飛行する機械の集合らしい。
 金属の鳥の群れはエファランの人里の上空を飛んでいる。
 しかし、緊急事態用の結界が街を覆っているので、金属の鳥達は街を襲えずに結界にぶつかっては弾かれてを繰り返していた。
 その一部はカケル達に気付いて近寄ってくる。
 すぐさま黒竜ステラが得意の雷撃を放って金属の鳥を撃ち落とした。

「あ、こらカケル、何食べてるのよ?!」
『ぱくり』

 蒼い竜は何を思ったか、金属の鳥を一羽、口にくわえて噛み砕く。ぎょっとしたイヴが竜の首筋を叩いて「吐き出しなさい」と叫んでいた。
 竜の口元から金属の破片がパラパラ落ちる。

『……遠隔操作する術式が入ってるね、これ。操作しやすくするために、広い範囲をカバーする中継機がいる。狙うならそいつだね』

 金属の破片をぺっぺっと吐き出しながら、カケルが言う。
 背中のイヴが驚いたように声を上げる。

「なんでそんなこと分かるのよ!?」
『んー。すっかり忘れられてるし俺も普段は忘れてるけど、俺は七司書家直系の魔眼を持ってるから、その能力の一部として呪術の解析ができるんだ』
「あれって確か、目で見た術式を解析するんじゃ」
『うん、そうだけど、この鳥さんは内部に術式があって見ただけだと分からなかったから。俺の能力はね、自分の体内でだけ呪術の解析と解除が可能だってこと。裏技みたいなものだけどねー』

 初めて聞いたわ、とイヴが眉根を寄せている。
 通信の呪術を繋ぎっぱなしにしているので、会話はロンドにも聞こえている。

「その中継機というのはどこにいる?」
『素早く移動してるし、他の奴と同じ姿だからどれって言われても』

 金属の鳥達は次々と押し寄せてくる。
 キリが無い。
 どうしようかと迷っているカケル達だったが、レグルスの方向から見覚えのあるオレンジの竜体が飛来した。明るい黄金の炎をまとい、黒い角を持つ火竜。空戦科の先輩でもあるセファンだ。

『お前ら、こっちだ!』

 彼の誘導する先にカケル達も向かう。
 彼等はレグルスの南西にある小さな基地に着陸した。
 その基地も金属の鳥を避けるために結界が張られていたが、ロンド達の着陸のために一時的に結界を解除する。すぐさま金属の鳥が殺到してくるが、魔力レベルAの竜であるセファンの豪快な炎で鳥達は鉄くずになって落ちていった。
 全員が基地に入った後に結界が再び張りなおされる。
 地上に降りた竜は、騎乗している者が降りた後に人間の姿に戻った。

「久しぶりだな、カケル。というかボロボロだな……」
「あはは。ちょっと海に落ちまして」

 無人島に漂流していたイヴとカケルは砂まみれの服装だった。
 のんきに笑うカケル。
 周囲のイヴやロンドが呆れた顔をする。
 セファンも苦笑した。

「相変わらずだな、お前は。まずは風呂にするか」
「皆さんも着替えた後に話をしましょうか」

 セファンのパートナーのイリアが基地の中に案内してくれる。
 イリアは色の薄い髪を三編みにして眼鏡を掛けた背の低い女性だ。彼女の案内のもと、帰ってきたカケル達はまず身体を洗って着替えることにした。

 基地は小規模ながら浴場や食堂などの設備が整っているようだ。
 カケルはロンド、オルタナと共に男性用の浴場に行く。
 水を溜めた浴槽には水の温度を調節する術式が設置されていて、ちょうどよい温度のお湯がはってあった。
 たらいで水をかぶったカケルはため息を吐く。

「あー、気持ちいい。もうこのまま寝たい……」
「馬鹿が」
「カケル、帰ってきたばっかりで何をいってる。外もあんな状態なのに」

 口々にカケルをたしなめるオルタナとロンドだったが、内心ではカケルの言うことに同感していた。
 長旅をしてやっとエファランに帰ってきたのだ。
 お湯を浴びると張りつめていた神経が解れて、眠くなってくる。

「うー」
「ほら、もうちょっとの辛抱だカケル」

 思わずお兄さんモードに移行したロンドが、タオルでわしゃわしゃとカケルの頭をかき回す。「甘やかしすぎだぜ」と言いつつもオルタナもドアを開けたり荷物を片付けたりするのを手伝っているあたり、面倒見がいい。
 二人の手を借りつつ入浴を終えたカケルは、用意された衣服を見て目が覚めた。

「……これって空軍の軍服だよね。なんで? 俺、適当な服で良いんだけど」

 空色の軍服の上着を凝視するカケル。

「黙って着ろよ」
「スルト先輩」

 三人の新しい服を持ってきたのは、陸戦科の先輩でありチームメイトでもあるスルトだった。白銀の髪の少女と見間違う童顔の少年だが、口を開けば容赦ない毒舌だ。

「ロンドから聞いてないのか? カケル、お前は一時的に空軍の軍属扱いになってんだよ」
「なんでっ?!」
「そりゃ、俺様と一緒にアルダ基地でエファランの捕虜を解放するために作戦行動してたからじゃねえか。エイド・ソレルが作戦の責任者ってことになってるぞ」
「マジで」
「カケル、お前はあの時も僕を助けてくれたな」

 ロンドがスルトの言葉を補足するように言う。
 あの時……フウカとロンドの対決で、フウカの侵入攻撃ハッキングをカケルが中断キャンセルさせたことを言っているのだろう。

「ありがとう。お前のおかげだ」
「……」

 気恥ずかしくなってカケルは視線を逸らした。
 いまだにシャツとズボンを着ただけの格好に、オルタナが後ろ頭をどつく。彼はとっくに着替えて濃いグリーンの陸軍の服装になっていた。スルトも陸軍なので同じ格好だ。ロンドは空軍の竜騎士の服装になっている。

「さっさと着ろ。行くぞ」
「痛っ。オルトの突っ込みは痛いよ。加減してくれよー」

 他に着るものもなく、仕方なくカケルは用意された空軍の軍服を着ると、仲間と共に会議室に向かった。


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