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風竜の俺と竜騎士な君 作者:空色蜻蛉

Act.15 そして、俺は君と巡り合う

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10 帰ろう、エファランへ

 蒼い竜は軽やかに空を翔る。
 竜の上昇に従って翼の端から白い線が生まれては消えていく。

「カケル!」
『遅くなったけど……反撃開始だよ!』

 どうやら不調は乗り切ったらしい。
 竜の声は明るく弾んでいる。
 イヴは笑った。

「私達、最強の竜と竜騎士を目指すわよ! 手始めに、あんな奴らはサクっとやっつけないと」
『うんうん、俺、最強のお昼寝竜を目指すよ』
「それは目指さなくていいから」

 意気込んだイヴに惚けた返事が返る。
 相変わらずの外しっぷりだ。
 だが心細さは感じない。

「カケル……あなたの風であんな奴らは軽く吹き飛ばしちゃって!」 
『了解ー』

 ふざけた返事だが、心は通じている。
 気ままな風のリズムに乗ってイヴの心も踊る。
 二人の気持ちが重なる。


 攻撃用の特殊同調技、乱気流風域タービュランス


 蒼い竜の周囲で渦を巻いた風が拡散し、大気を変質させる。
 気流が真下の海を荒立て、暴風が吹き荒れた。
 敵の竜の動きが鈍くなる。風に押されて思うように動けなくなっているのだ。のみならず、風は竜に搭乗している男達をも吹き飛ばす勢いである。敵の呪術師は防御の呪術を張って、竜の背にしがみつくのがやっとの状態だ。
 蒼い竜は悠々と敵の竜の上空に陣取る。
 イヴは真下の敵の竜を見下ろした。

紅光弾ルビーショット!」

 赤い光で構成された弓に、光の矢をつがえる。
 全力を込めた呪術の矢の一撃は真っ直ぐ下へと落下し、敵の防御を貫いた。敵の背で光が爆発する。
 遠目に状況は分からないが、背中の男達が重傷を負ったからか、敵の竜は戦意を失ってバタバタと慌てふためいているようだ。

 これ以上の戦いは無意味だ。
 イヴは蒼い竜の首筋を叩いて合図する。
 蒼い竜は旋回しながら敵の竜を残して北上する。

『エファランに帰ろう、イヴ』
「あら、もういいの?」
『うん。面倒くさくなってきた。エファランに帰って昼寝がしたい』

 一応、決意を持ってエファランを離れたカケルだったが、大切な少女を放ってこれ以上我が儘を貫くつもりはもう無かった。

『ただいま、イヴ』
「……帰ってくるのが遅すぎなのよ、馬鹿……おかえり」

 竜の鱗は固く鎧を着たような鈍い感覚で、表面を人間に撫でられた程度だと、指先の手触りまで感じはしない。
 けれど今、カケルは首筋に抱きついた彼女の髪が鱗を撫でるのを感じる。温もりが首もとから伝わってくる。ゆるゆると暖かさが身体に満ちていく。心を満たす温度に眠気にも似た快感をおぼえた。
 そういえば別れ際に喧嘩をしたっけ。
 きわどい恰好で誘ってきたイヴに切れて思わず襲いそうになったんだった。
 あれ、もう時効だよね。
 今更だけど帰ったら続きをお願いしてもいいのかな。




 高天原インバウンドは半透明のドーム状の巨大な結界に包まれている。
 雲が透明な壁に阻まれて内と外で違う動きを見せているから、境界線は遠くから眺めれば明らかだ。結界は通常、空気や水分以外は出入りできないようになっている。外に徘徊するモンスターを阻むための結界なので、通常は人や竜の出入りができないようになっていた。
 結界には限定した場所に穴が空けてあって、そこには門番がいる。門番がいる以上、無条件でほいほい通行許可をくれたりしない。
 つまり、高天原とエファランを勝手に出入りはできないのだ。
 どうやってエファランに帰ろうかな。
 考えながらも、ひとまず葦原国アウトバウンドへのゲートがある場所まで飛んでいく。
 するとゲートの前の空に黒い翼を広げた竜が滞空しているのが見えた。

『ステラ先生……?』

 黒竜はエファランの学校で空戦科の教師をしているステラだった。
 ステラの背にはロンドとオルタナが乗っている。彼等はエファランに引き返す手前でとどまって、イヴがカケルを連れて戻ってくる可能性にかけたのだ。
 黒竜ステラの涼やかな声が空を飛び越えてカケルとイヴに届く。

『待った甲斐があったようね』
「大丈夫か、アラクサラ君……カケル」

 通信の呪術でロンドがイヴに話しかけてくる。
 竜は念話で、人間は通信の呪術を使って。
 空間が離れた場所でも同じテーブルについて話をするように会話が成立していた。

『ロンド兄……心配かけてごめん』
「まったくだ。もう駄目かと思ったぞ」

 ロンドの声はわずかに震えて湿っていた。
 一方のオルタナはさばさばしたものだ。

「おいカケル、用は済んだのか」
『いや……でも、もういいんだ』
「はあ。とことん面倒くさい奴だよな、お前は」

 ルームメイトでもある彼とは、エファランを出る前に色々話しているからか互いに悲壮感が無かった。
 呆れたように頭をかくオルタナとはもう完全にいつも通りの雰囲気に戻ってしまっている。

「一緒に帰ろう、エファランへ」

 ロンドがそう言い、黒竜が先導するように葦原国アウトバウンドへのゲートに向かう。
 元々リリーナと一緒に来たロンド達には、出入りの許可が予め降りている。彼等と一緒なら、カケルも適当に誤魔化してゲートを潜れるだろう。ゲート手前でロンド達が待っていてくれなければ、すんなり帰れなかったかもしれない。

 蒼い竜は黒竜の後についてゲートを通り抜ける。
 半透明な結界に覆われた高天原が徐々に遠くなっていく。
 カケルは振り返らずに、ただ前を向いて羽ばたき続けた。







 Act.15 そして、俺は君と巡り合う  完

 Act.16 風竜の俺と竜騎士な君  へ続く



次の章が区切りがいいので、最終章になりそうです。
カケルとイヴの物語は続きも思い浮かんではいるのですが、どこかで区切りを入れないと息継ぎできなくて読者の方もしんどいと思うので、一旦、次の章でしめようと思います。
続きは何かの形で書き続けるつもりです。

それでは次回、Act.16 風竜の俺と竜騎士な君
最後の飛翔にお付き合いください!!
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