挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
風竜の俺と竜騎士な君 作者:空色蜻蛉

Act.15 そして、俺は君と巡り合う

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

150/160

07 無人島でサバイバル?

 馬鹿ばっかりだ。
 親友と仲間の少女は暗い海の中へ消えていった。
 オルタナは一人、船の上空を旋回する黒竜ステラに合図して、引き返した。七司書家の当主だという男は、オルタナを追わなかった。海の上で追っても意味が無いと判断したのだろう。

「……アラクサラ君は?」

 黒竜に乗り込むと、ロンドが聞いてくる。

「海に落ちた。カケルも一緒だ」

 オルタナは答えながら苦い気持ちを噛み締めた。
 こんな報告をさせるな馬鹿野郎と、あのふわふわしたお昼寝大好きな竜の胸ぐらを掴んで振り回したい気分だ。

『ロンド。成功しても失敗しても、私達はエファランへ戻らなければ』

 冷静な黒竜の声に、ロンドは痛みを堪えるように奥歯を噛み締める。

「ああ……分かっている」

 夜はまだ明けない。
 漆黒の暗闇で前も見えない。
 それでも一縷の奇跡を信じて、竜は天空を飛翔した。





 カアカアと海鳥の鳴き声が聞こえる。
 口の中がしょっぱい。
 目を開けると天井は大空だった。

「ここ……どこ?」

 海水で濡れて生乾きになった服は肌に貼り付き、酷く喉が乾いている。青い空には海鳥が羽ばたいていた。しばらく空を見上げて呆然としていたイヴは、状況を把握して声をあげる。

「カケル?!」

 ガバッと上半身を起こして見回す。
 するとすぐ隣に意識を失ったカケルが倒れているのに気付く。
 念のため首もとに手をあてると体温があり、吐息が手の甲をくすぐった。生きているようだ。

「良かった……」

 イヴは安心した。
 彼女達は見知らぬ島の砂浜に流れ着いたようだ。
 人の姿が無く、異様に静かな様子に、イヴは不安を覚える。

「う……」

 うめき声を上げてカケルが目を覚ました。
 覗きこんだイヴを見上げて眩しいものを見るように目を細める。

「……イヴ。無事だったんだね」
「無事だったんだね……じゃ、ないわよ!」

 イヴはふわふわ笑うカケルの胸ぐらを掴み上げて、思い切り揺さぶった。揺さぶられたカケルは「脳みそが揺れるぅ」と情けない声で嘆く。

「全部あんたのせいよ! 何やってんのよ!」
「うう……申し開きの言葉もございません」

 反省しています、とカケルは平謝りだ。
 イヴは勢いに任せて指を突きつけて命じる。

「さっさと竜の姿になりなさい! エファランに帰るわよ!」

 命じられたカケルは目を丸くした後、なぜか沈黙した。

「イヴ、ごめん」
「何がよ」
「うん、予め謝っておく。ごめん」
「だから何が」

 謝罪される覚えは山ほどあるが、いったい何に対しての謝罪か。
 イヴは怪訝な顔になる。
 眉根を寄せる彼女に向かって、カケルはふわふわ笑って言った。

「……竜の姿に変身できないみたい。てへ」
「……」

 一拍おいて話を理解したイヴは絶句した。

「な、なんですってぇーーっ!」

 海鳥が頭上で嘲笑うようにカアカア鳴いた。





 寝過ぎて阿呆になったらしいお昼寝竜によると「すっからかん」なのだそうだ。意味が分からない。とにかく、竜の姿になれないカケルは人間以下である。イヴはそう結論付けた。

「竜じゃないあんたなんて、切れないハサミと同じよ。全く役に立ちやしない」
「仰る通りです」

 ヘロヘロとカケルは力無く笑う。
 二人は島の環境把握と真水を探すために歩いていた。
 イヴの後を歩くカケルの足取りはどこか覚束ない。
 青年の顔色は悪く、エファランにいた頃よりも痩せたように見える。

「……あんた、拷問でもされてたの?」
「なんで」
「その手首」

 赤い傷痕がある手首を見ると、カケルは思わずと言った様子で手首を隠すように握る。

「いや、これはちょっと……」
「呪術書って言ってたわね。どういうこと?」
「そ、空耳じゃあないかな」

 この後に及んで惚けようとするカケルの耳をぎゅっと引っ張る。

「痛てて」
「吐きなさい、全部!」

 口の重いカケルをつついて全て話させるのは時間が掛かった。だが、今の二人には時間は無限にあるように思われた。

 カケルは身体の中に呪術書を隠し持っていたこと。
 そのために各方面から狙われる立場であること。
 呪術書はイヴを拒んでいた理由のひとつであること。
 厄介な呪術書を手放すために、七司書家に里帰りしていたこと。

 聞き終わった頃には夕暮れになっていた。
 島は小さいようで1日掛けて地理が掴めた。真水の湧く池も見つかり、二人は水源の近くで野営することにした。
 適当に魚を取って、呪術で枯れ木に火を付けて焼く。
 塩は無いが新鮮な魚はそれなりに美味しい。

「本当はイヴにあんまり情けないところを知られたくなかったんだけど……」

 しょんぼりするカケル。
 竜の力が使えない上に体力が弱っている彼は、ほとんどサバイバルの役に立たなかった。その上、イヴにみっちり事情聴取されて精神的にもダメージを受けているようだ。
 お昼寝竜なりに男のプライドがあるのだろうと、イヴも察している。
 だが生憎、彼女はカケルの指先程度のプライドを守って譲歩するような性格では無かった。

「何言ってるのよ、最初から私の貴方に対する印象は最悪よ!」
「そ、そう」
「成績は悪いは授業サボって寝るわ、訳の分からないことばっかり言うわ……本当、なんで貴方みたいな阿呆を好きになっちゃったのかしら」

 最初はお昼寝竜なんて、こっちから願い下げだと思っていたのに。

「俺も……最初は面倒くさそうな女の子だと思ってた、正直」
「お昼寝させてくれないから、でしょ」
「うん」
「まったくもう」

 どうしてだろう。
 出会った頃はお互いに興味がなくてパートナーになるなんて思ってもみなかったのに。
 どんなに振り回されたとしても、嫌いになんて、なれない。
 きっと互いにそう思っているのだ。


+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ