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風竜の俺と竜騎士な君 作者:空色蜻蛉

Act.14 帰る場所を探して

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08 因縁の邂逅

 竜舎を突き破って離陸した火竜のマリア。
 ソルダートのアルダ基地は騒然となっている。
 カケルはどさくさに紛れてフウカの元に戻った。軍の幹部が集まる基地の一角では、特別顧問のフウカやラグラート元帥が部下からの報告を受けているところだった。

「……エファランの捕虜が脱走した模様です。竜舎の竜を奪って逃走中です!」
「エファランの部隊が近づいています! 目的は捕虜にされた仲間の回収と思われます!」

 国境近くを巡回中のエファランの部隊は、スルト達の脱走について予め聞いていた。
 基地に近いソルダートの国土まで踏み入って交戦覚悟で仲間を救出するつもりなのだ。

「愚かなことを。エファランは自分から討って出ないと思っていたが……好都合だ」

 眼帯をした背の高い男、ラグラートは口角を上げて冷笑した。

「私はエルセデスで出る。他の竜騎兵にも出撃命令を。エファランの馬鹿共を叩き潰すぞ」
「ははっ」

 元帥の命令にソルダート軍の高官達が動き始める。
 脱出劇の詳細を明らかにすることは後回しにして、彼等はまず、脱走した捕虜の撃墜とエファランの部隊の迎撃を目的に竜騎兵を出撃させる。竜舎からソルダートの竜騎兵が次々と空へ舞い上がる。
 フウカと共にその様子を見上げるカケルは目を細めた。
 ソルダートの竜騎兵が今から脱走したマリア達に追いつくことは難しいだろう。

「兄様、私達も出るわよ」
「フウカ」
「風竜である兄様なら、追いつける。そうでしょう?」

 自分と同じ琥珀色の瞳を見つめ返して、カケルは苦笑した。

「君の望む通りに」

 基地の片隅でカケルも竜に姿を変える。
 蒼い竜にソルダート軍で運用される竜用の簡易の鞍が取り付けられた。姿勢を低くした蒼い竜の背にフウカがよじ登る。
 軽く羽ばたいて蒼い竜は基地の空へ上昇する。

『なんだお前も出るのかよ、弱っちい癖に!』

 ラグラートを乗せた紅蓮の竜が蒼い竜の姿を見て吠えた。
 カケルは意図的にエルセデスを無視する。下手に言葉を交わして疑われてもことだ。それに、後から緊張で話せなかったなど、いくらでも言い訳がきく。

『フウカ、しっかり掴まってて。ちょっとスピードを出すから』

 妹にだけ聞こえるように念話を飛ばすと、蒼い竜は数回翼を上下しながら風の魔力を操って速度を上げた。飛行速度が売りの風竜はあっという間に、先行する竜騎兵達に追い付き、追い越す。

「すごい……」

 フウカは兄の背で感嘆の吐息を漏らした。
 これだけ速度を出しても姿勢が揺るがないので、背に乗るフウカには負担が少ない。他の竜にも乗ったことがあるフウカだが、兄の飛行はそれと質が違うとはっきり分かった。

 やがてスルトやエイドを乗せて脱走中の火竜が見えてくる。
 彼等の向かう先に飛ぶ、エファランの飛行部隊も。





 事前の情報から国境線を外れてソルダートの領空に踏み入った、エファランの巡回部隊。その中には、黒竜ステラと組んだロンドの姿があった。
 脱走したエファランの捕虜を迎えに来たロンド達の部隊だが、追撃してきたソルダートの竜騎兵達に、これは一戦交える必要があると覚悟する。
 国の方針としてソルダートに攻撃しないよう通達されていたが、エファランの前線部隊は度重なるソルダートの侵略行為に我慢の限界に達していた。
 それゆえ、同胞を迎えるためにソルダートとの国境線を越える行為に踏みきったのだ。

「……あれは、まさかカケル?!」

 見覚えのある鮮やかなブルーの竜体に、ロンドは戦慄する。
 こんなに早く弟分の彼に追い付けると思っていなかった。空のような美しい竜体に不似合いなソルダートの鞍と国旗を見つけてロンドは歯を食い縛る。
 予想はしていたが実際に敵側に回った姿を見るとショックだった。

『ロンド……彼はもう敵よ』
「分かってる」

 自分が何のためにここに来たか。
 決意を違えるロンドではない。

「ステラ先生、あいつを……墜とします。力を貸して下さい」

 竜騎士の戦意に反応して、黒竜は速度を上げて前に出る。
 ステラは雷属性の竜。風竜には劣るが火竜より素早く、場合によっては火竜に勝る攻撃力を持つ竜だ。人間のステラは華奢な女性だが、竜体では雌雄で力の差はほとんど無い。竜同士の強さの明暗は、魔力の高さとそれを操る技量によって区別される。
 部隊から先行して前に出たロンドに、部隊長から叱責が飛んできたが、ロンドとステラは無視する。二人はただ蒼い竜目掛けて、猛禽のように飛び掛かった。





 ロンド兄……。
 自分に向かって猛烈な勢いで向かってくる竜と竜騎士の正体を悟ったカケルは、身震いした。
 この巡り合わせを天に感謝する。
 彼等相手には手加減無用。馬鹿馬鹿しい茶番を演じる必要もない。
 それに、兄と慕うロンドになら討たれても構わない。
 ただし妹だけは守りきるつもりだが。

 蒼い竜は、エファランの黒竜が放った雷撃のブレスをかわして上昇する。二体の竜は弧を描くように旋回しながら、互いの攻撃距離を測った。
 竜同士の激しい接近格闘戦ドッグファイトが始まった。



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