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風竜の俺と竜騎士な君 作者:空色蜻蛉

Act.14 帰る場所を探して

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06 秘密だよ

 ソルダートの火竜エルセデスに負けたふりをして、模擬戦をのりきったカケル。
 地上に降りたカケルは人間の姿に戻る。
 竜の姿で被弾した傷は、人間の姿に戻れば元に戻る。風竜の姿で負った火傷も、瞬時に元通りだ。
 人間の姿に戻ったのは模擬戦の相手をしていた火竜のエルセデスも同じだった。
 模擬戦のあと、カケルは彼と一緒に竜舎にある部屋で待機するように言われた。

「お前、弱いなー!」

 エルセデスは火竜らしく陽気で単純な性格らしい。
 今は人間の姿の彼は赤毛の青年の姿をしている。無造作に肩の中ほどまで赤毛を伸ばしていて、体格が良い割に筋肉が付いていなかった。おそらく竜の姿で過ごすことが多くて、人間の姿で運動する機会が少ないのだろう。
 カケルの肩を叩いてエルセデスは笑った。

「エルセデスさんは強いですね。俺は風竜だから戦うのは苦手なんですよ」

 謙遜しつつカケルはふわふわ笑う。

「そんなんで終末騎竜隊エストラストでやっていけるのかよ。俺が色々教えてやろうか」

 カケルの低姿勢な様子に、調子に乗ったらしいエルセデスは自分から「教えてやろう」と言い出した。実は内心でこの竜からどう情報を引き出そうか思案していたカケルは、渡りに船だと喜ぶ。

「ありがとうございます!」
「そうだ新入り。終末騎竜隊エストラストでは俺がルールだと覚えておけ。俺はあの、ラグラート様の騎竜だからな」

 エルセデスはふんぞり返った。
 その後に教えられたことは、どうでも良い情報も半分以上混ざっていた。
 大人しく耳を傾けているカケルは途中でそろそろお昼寝したいなあと思う。
 人目のない場所で竜の姿になって丸くなって、陽の光を浴びてうとうと微睡む。季節的に夏が終わったから、暑くも寒くもない風が吹くだろう。気持ちいい風。ああ、お昼寝……。

「おい、聞いているのか?」
「……すいません」

 お昼寝の妄想に浸っていたカケルは、エルセデスにつつかれて我に返る。

「ったく。弱い竜を増やしても無駄だっていうのに。3Cの竜舎の連中は来週、アルダ基地に送られるらしいぜ」
「そうなんですか」

 首都ジャグラダにある竜舎3C。
 それはエファランから攫われてきた竜の数匹が属する竜舎だ。
 カケルは素知らぬ顔で頷きながら、チャンスが巡って来たと決心を固めていた。





 次の日、カケルは妹を乗せてアルダ基地の近くに来ていた。
 基地に妹を降ろすと人の姿に戻り、散歩に繰り出す。
 ソルダートの軍人には気付かれないようにして。
 風を操って周囲の状況を把握できるカケルは、その気になれば誰にも会わずに出歩くことも可能だ。
 人気の無い路地に踏み込む。
 そこは以前、潜入任務中のスルトと話した場所だった。

「……エイドさん達の様子はどう?」

 待ち構えたように現れたスルトに話しかける。
 あれから、機会を見計らいながらカケルとスルトはここで密会を重ねていた。

「傷はだいぶ良くなったぜ。もう脱出しても良い頃だ。おあつらい向きに、エファランの部隊が国境近くを通ることになっているから、その時に合わせて出ようって話になった」

 白銀の髪に湖の色をした獣人の青年は、腕組みして壁に寄りかかる。
 女性のように繊細で華奢な容貌の彼だが腕っぷしは確かだ。
 スルトはソルダート国内に潜んでいるエファランの協力者と共に、アルダ基地に囚われた獣人達を脱出させる計画を進めていた。

「それっていつ? アルダ基地に増援が派遣されるらしいんだけど」
「十一形の月の頃だな」

 この世界の月は二つある。
 月が満ちた状態を十として、二つの月、紅望月ルイーナ藍待月ルインの状態を数字で表して並べたものを、日付の代わりに使う習慣があった。
 十一形の月は五日後。
 アルダ基地に、首都ジャグラダの竜舎3Cの竜が連れてこられるのも、その頃ではなかったか。

「……脱出するときに、ついでにソルダートに捕まってる竜の女の子を連れていってほしいんだ」

 カケルは計算しながら口を開いた。

「竜? 契約紋付けられてるんじゃ、ないのかよ」

 ソルダートに誘拐された竜は、契約紋を付けられて戻ってこなくなる。
 それがエファランの共通認識だ。

「実は、ちょっと裏技があるんだよ」
「はあ?!」
「秘密だよ」

 他の者には黙っていてくれ、とカケルは唇の前で指を立てる。
 驚いて顔をしかめているスルトにふわりと笑いかけた。
 約束をしたからね。


 
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