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風竜の俺と竜騎士な君 作者:空色蜻蛉

Act.11 君が選んだ俺の「ほんとう」を見て欲しい

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06 正面から堂々と

 街の外に出たカケル達は人目に付かない場所で通信の呪術を使い、アロールと連絡を取った。
 カケルの予想通り、リリーナは探索の目印となる発信機を持っているらしい。
 アロールによると彼女は中央山脈寄りの国境近い森の中にいるという。
 場所は分かった。
 後はどのように行動して彼女を救い出すか、だ。

「……向こうに呪術師はいないのよね。なら、近づいても気付かれないかしら」
「いや、竜や獣人がいるなら気付かれるよ。人間相手なら夜に襲撃するのもありだけど、夜目のきく獣人相手には夜に襲撃しても意味がない」

 作戦を考えるのは、一行の中で頭脳派になるイヴとカケルの役割だ。
 オルタナは口を出さずに方針が決まるのを待っている。

「いつ攻撃しても関係ないとしたら……陽動は意味があるかしら? 可能なら敵の目を逸らしてその隙にリリーナを助け出したいわ」
「俺達3人しかいないのに、二手に分かれるのは無茶だよ。真正面から乗り込んで、俺とイヴが敵の注意をひきつけて、オルトが切り込むとか」

 問題は相手が多い割にこちらが少人数だということだ。
 フレイの国軍に協力を仰げれば良かったのだが、今回カケル達の行動は公式のものではないので、国軍と連携を取りにくい。フレイの王太子という伝手はあるものの、彼がどこまでカケル達を応援してくれるかは不透明だ。

「それでいい。とっとと行こうぜ」
「オルト。無理だと思ったら即撤退してくれ。リリーナはどの道無事に決まってるんだから、君が無茶しても意味がないんだ」
「分かってる」

 本当にわかってるのかな、とカケルが少し心配になる。
 オルタナの紅眼は険を孕んだ強い意思の光がある。親しい少女を前にした時、彼がどんな行動をとるか、分かったものじゃない。しかも今回の敵は同じ獣人や竜だ。彼等はエファランから来たカケル達を同胞だとは考えていない。ただでさえ手強いのに、手加減してくれない。逆にこちらは獣人や竜は皆同胞という文化で育ってきているため、攻撃しづらい。
 しかし、敵の本陣である屋内で大暴れする役は、接近戦に秀でた獣人のオルタナにしかできないことだ。
 カケルは彼を信じることにした。

「よーし、ちゃっちゃっと終わらせてお昼寝しよう!」
「無事に皆でエファランに帰れたらね。しばらくあんたが昼寝してても文句を言わないことにするわ」
「やったあ!」

 相変わらずのお昼寝発言にイヴは呆れた顔をしたが、ご褒美も必要かと思い直して律儀に答える。
 お墨付きをもらってカケルは嬉々と腕を振り上げた。

「じゃあお昼寝作戦開始しようか、イヴ、オルト!」
「昼寝じゃねーよ馬鹿」
「なんであんたが音頭をとるのよ」
「え……俺って一応、リーダー、だったような……?」

 小首をかしげるカケルの頭をはたいて、イヴは竜に変身するように命じる。
 かくしてリリーナ奪還作戦が始まった。






 高天原インバウンドの中央を貫く山脈は単純に中央山脈と呼ばれている。
 あるいは、神々の頂き、と。
 古い古い時代にこの山脈の峰に神々が降り立ち、人間の歴史が始まったのだ。山脈の北方の神々が降り立ったとされる地には大神殿フォールダウンと呼ばれる聖域がある。聖域への巡礼者は険しい山道を登って、高台に位置する神殿に礼拝するのだ。
 そのような神聖な場所があるからか、あるいは人が住むに適さない傾斜が続くからか、中央山脈の近くには人家が少ない。あるとすれば、貴族や神官の別荘や、何かの事情でひっそり世間を避けて住んでいる隠れ里くらいのものだ。
 リリーナを誘拐した解放運動のアジトは、今は使われていない貴族の別荘をのっとって作ったものらしい。

 真昼間から堂々とそのアジトの上空まで飛んだ蒼い竜は、眼下の洋館に向かって念話を飛ばした。

『あー、テステス……我々はエファランから来た者です。リリーナ様を返して欲しいんですが』
「ちょっ、直球すぎるわよ、カケル……」
「……」

 蒼い竜の背中でイヴは眉をしかめる。彼女の後ろでオルタナが面倒くさそうに溜息をはいた。
 チャンネルを全方向に解放しての念話なので、近くにいるすべての人間、獣人や竜に区別なく聞こえているはずだ。それにただでさえ派手な空色の鱗の竜は曇り空に大変目立っている。
 敵にはカケル達が来ていることはバレているはずだ。

 少し待つと、洋館の玄関から1人の男が扉を開けて出てくる。
 その男は目の前でターコイズブルーの鱗の竜に変身した。青緑色の翼は大きく、胴体から伸びる尾は長い。額から伸びる角は枝分かれして後方に流れている。力強さとしなやかさを併せ持つ竜体だ。
 鱗の色からすると、属性は水か、風か。
 敵の能力を分析しているイヴに、カケルから回答があった。

『あいつ、俺と同じ風竜だよ』

 イヴだけに対象を絞った念話による答え。
 蒼い竜の背でイヴは目を細めた。単純な戦力で言えば、魔力レベルAの風竜であるカケルと攻撃系の呪術師イヴの組み合わせは最強クラスだ。単純に取っ組み合えば大概の相手に勝つことはできる。しかしそれは目的を相手の撃墜に絞ったときのこと。今回の目的はリリーナの救出だ。
 首尾よくリリーナを助け出せたら、全速力で逃げるつもりなのだ。風竜はすべての属性の中でもっとも素早い竜である。カケルはその風竜の中でも特別だが、敵も風竜なら、追いつかれる可能性がある。

『エファランの者か。変身を解いて降りてこい』

 ターコイズブルーの竜が威嚇しながら言う。
 こちらは人質を取られている身だ。
 カケルは大人しく指示に従って洋館の前に降りて、変身を解く。
 見下ろしてくるターコイズブルーの竜は洋館の扉を顎で示して、短く『入れ』と言う。竜はじろじろとカケル達を観察する。その無遠慮な視線にさらされてイヴは居心地悪い気持ちを味わった。それと同時に気付く。

 解放運動の竜や獣人達は、エファランから来たというカケル達が年端もいかぬ子供であることに戸惑っているのだ。おそらく、エファランの軍人であるアロールのような軍服を着た成人男性が現れることを予想していたに違いない。

 先頭を歩くカケルは微塵も気負いを感じさせない様子で、洋館の扉を開く。
 その横顔にかすかに浮かぶ不敵な笑みを見つけて、イヴは息を呑んだ。


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