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風竜の俺と竜騎士な君 作者:空色蜻蛉

Act.11 君が選んだ俺の「ほんとう」を見て欲しい

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02 油断大敵

 会談が終わり寺院の観光も済んだカケル達は、送迎の車に乗って駅に戻ろうとしていた。
 送迎の車は小型のバスのようで、10人近く乗れる広さがある。
 一旦別行動していたアロールやエイド、レディーネとも合流し、バスの中に全員が集合していた。座席に座った彼等は無駄口を叩かずに沈黙している。オルタナとカケルは眠そうだ。
 隣でイヴが何度も膝を組みなおしながら、カケルを見ている。
 おそらく先ほどの王太子とのやり取りについて聞きたいのだろう。

「……気になる? カケルのこと」
「リリーナ」

 リリーナは落ち着かない様子のイヴに声を掛けた。
 小声で会話を始めた女子二人に、アロールはちょっと眉を上げたが何も言わない。
 話題のカケルはうたた寝を始めていて、こちらの様子に気付いていなかった。

「なんでフレイの王子と知り合いなのかしら。ユエルって言われてたけど……」
「カケルはああ見えて、七司書家の次期当主って言われてたのよ。七司書家の本家は、高天原インバウンドの王族の血も入っていて、各国の王族と仲が良いの。ユエルというのは第二の名前ね。高天原インバウンドの王家や古い名家では、家族や親しい人に呼ばせる別の名前を持つ風習があるの」

 そう説明すると、イヴは「お昼寝竜の癖に生意気な」と眉間に皺を寄せた。

「カケルは自分のことを話さないものね」
「……」

 リリーナは立場上、カケルの事情や背景についてある程度知っていたが、他の友人達は知らないはずだ。
 パートナーを組んでいるイヴにさえ、カケルはそう多くを語ってはいないのだろう。
 彼の事情は特殊すぎて説明するのも難しい。
 イヴは軽く溜息をついて、背もたれにもたれて寝ているカケルを見ている。
 その横顔は少し切なそうだ。

 会話が途切れた後、少し間を置いて車が止まった。
 耳を澄ませると遠くざわめきが聞こえる。
 どうやら前方で騒ぎが起きているようだ。

「……リリーナ様、君達はここで待機を。アロール、頼んだぞ」
「ああ」

 エイドが険しい顔で1人下車する。
 オルタナの兄である彼も鋭い感覚を持つ獣人だ。素早い身のこなしで、街の雑踏の中へ踏み込んでいく。騒ぎの偵察へ向かったらしい。

「何が起きているの?」
「……どうやら、この国の労働階級の獣人や竜が、国に待遇を改善するよう解放運動を起こしているようだ。タイミング悪く彼等が騒ぎを起こしているらしい」
「なんですって」

 アロールが窓の外を眺めながら低い声でつぶやく。
 その視線は宙をさまよっていて、彼が情報収集のために呪術を使っていることがうかがえた。
 社内に緊張が走る。
 いつの間にか起きたらしいカケルが口を開いた。

「……前から、解放運動は各国であったけど、他の国よりも異種族に寛容なフレイで起きるとは思わなかった。ここ最近のソルダートの動きと関係あるんでしょうか」
「無いとは言い切れないだろうね」

 険しい表情で会話をかわすカケルとアロール。
 カケルは会話の途中でふっと上を見上げる。
 彼は上を向いたまま言った。

「上に竜がいる……」

 その言葉を聞いて火竜のレディーネが立ち上がる。
 今までずっと黙っていた彼女は緊張した面持ちでバスの天井を見上げた。

「君の言う通りだわ……近づいてる?」

 突然、地面が揺れた。
 どしん、と何か重いものが近くの地面に着陸した音がする。
 窓の外に赤茶けた色の鱗が見える。

「いかん、皆、外に出るんだ!」

 危険の気配を察したアロールが叫ぶ。近くのドアを開けてカケル達は車外に飛び出した。
 脱出した途端に送迎の小型バスの屋根が大きく凹む。
 近くに着陸した竜が、あろうことか車を踏みつぶそうとしたのだ。
 車から脱出したカケル達は無法者の竜と向き合った。
 剣呑な雰囲気の竜は、通りの屋台を踏みつぶし、近くの家の屋根を壊して平然としている。

「おいてめえ、何やってんだ。こんなことをしてタダで済むと思うなよ!」

 攻撃的な態度で吠える竜に、オルタナが殴り掛かる。
 空を飛んでいる訳ではなく地面の上に立っているのであれば、獣人の跳躍力なら容易く距離を詰められるだろう。ハラハラしてその様子を見守るリリーナ。その彼女の元に黒い影が走る。

「くっ、戻れオルタナ君!」

 アロールが影を遮ろうとして弾かれる。
 一瞬で素早く突撃してきた猫科の獣は、リリーナの直前で人の姿を取り手荒に彼女の肩を掴む。それは列車で会った獣人の青年だった。リリーナを強引に引き寄せて、跳躍する。

「リリーナ!」

 身体が宙に浮く。
 抵抗する隙もなく抱えられて連れ去られようとしている。
 リリーナは遠ざかる地上を見た。
 唖然として振り返るオルタナと目が合う。

 視線を交わしたのは一瞬のこと。
 どうやら近くの空中に待機していたらしい、ターコイズブルーの鱗の竜に、獣人の青年は着地した。

「撤収する」

 その一言を聞いたターコイズブルーの竜は吠えて上昇を始める。
 眼下にいた赤茶色の竜も飛び上がって逃走を始めた。

 やられた。

 竜の背に降ろされてどうすることもできずにリリーナは臍を噛む。
 見事な連携作戦に嵌められてしまった。
 まさか、高天原インバウンドに来て、同胞である獣人や竜と戦うことになろうとは。


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