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風竜の俺と竜騎士な君 作者:空色蜻蛉

Act.01 君に出会った時から俺の(昼寝)人生設計が崩れ始めた

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09 もう1人の仲間

 はあっ、はあっ……

 敵の呪術師ソーサラーは、カケル達の襲撃から逃げて、一目散にキャンプ地を目指していた。

 煌々と明かりがついたキャンプ地が、すぐそこにある。
 ソルダートの仲間の軍人に連絡を取りたかったが、自身のかけた通信妨害の術式が妨げとなっていた。

 息を切らせて走りながら、彼は疑問に思っていた。
 襲撃してきたのは、まだ成人していなさそうな、あどけなさを残した青年だった。状況からして、青年はエファランの学校の生徒だろう。偶然、キャンプ地の外に出ていたのだろうか。

 なぜ、自分達が少人数で、あそこに潜んでいることに気付いたのだろう。

 確かに設置型の術式に関する知識があれば、推測は可能だ。
 だが、ジャミングや結界を敷くときは、必ず後方支援部隊が配置されることは、ソルダートの軍事に精通していなければ、分からない事だ。なぜなら、通常は設置型の術式を敷くにしても、その場で敷く事の方が多いのだから。
 教師の中にはエファラン国軍の軍人がいるから、知っている者もいるだろうが、教師達は結界の中だ。絶対の勝算がなければ、護衛一人だけの状態で待機はしない。

「くそっ、餓鬼ども……」

 こんな所で捕まってたまるか。無事作戦を終了して本土に帰れば、報奨金が配分される予定なのだ。
 報奨金を受け取るためにも必ず無事に帰るんだ。

 しかし、彼の希望は叶わずに終わる。

火粉クラック

 足元で爆発が起き、彼は訳も分からないまま、爆風に吹き飛ばされて、気を失った。









「予定通り、だな」

 眼鏡を人差し指で持ち上げて、ロンドが言った。
 隣でリリーナは心配そうな顔をする。

「イヴ達は大丈夫でしょうか」
「大丈夫だ。そう、信じよう」

 自分に言い聞かせるように呟くロンドに、リリーナも頷く。通信の呪術で連絡が取れない以上、仲間の安否を確認しようがない。

 カケル達は、3つのグループに分かれて行動を開始していた。

 まず、カケルとイヴが設置型の術式を敷いている術者を強襲する。合流しようと走ってきた敵を、キャンプ地に走ってきた敵をロンドが火粉クラックで撃破。
 次にロンドとリリーナで合図を出して、先にキャンプ地に潜入しているオルタナに術者を倒して結界が無くなったことを伝える。
 説明するだけなら簡単だが、実際に実行するとなると大変だ。
 しかもカケル達は5名(プラスでラウン青年)という少人数であり、人質になっている教師達を解放出来たとしても、どこまで戦えるか未知数である。
 戦力の差はいかんともしがたい。

 圧倒的な戦力差を埋めるため、ロンドとリリーナは、ある賭けに出ようとしていた。

「リリーナ君、始めようか」
「はい」

 頷いたリリーナは、深く息を吸って、高らかに歌い出した。
 この歌は、邪魔な結界が無くなったことを知らせる合図でもある。







 キャンプ地の中では、ソルダートの兵士達が意識のある生徒に手錠をかけ、どの生徒を誘拐するか品定めをしていた。
 意識のある生徒を一列に並べ、順繰りに見ていく。
 兵士は白銀の髪をした生徒の前で、足を止めた。

「顔を上げろ」

 命じられて白銀の髪の生徒が兵士を見上げる。
 短い白銀の髪に縁取られた、端正な顔立ちがあらわになった。眉は細く、大きな瞳は澄んだ湖の色だ。
 華奢な体格と相まって、か弱そうな美少女に見える。

「へえ、中々可愛い娘じゃないか」
「……僕は、男です」

 小さな声で弱々しく告げられた言葉に、兵士はニヤニヤと笑って、白銀の髪の生徒の顎を掴む。

「男でもこんだけ可愛ければ、ありだな。そういうのが好きそうな金持ちに、高く売れそうだ」

 覗き込まれて、白銀の髪の生徒は細い眉をしかめた。
 ちょうどその時だった。
 キャンプ地の入り口の方から歌が聞こえてきたのは。

「なんだあ?」

 何の余興だろうと、兵士は歌の方向に目を向ける。
 顎を捕まれた生徒は小さな声で言った。

「離して下さい……」
「ん?」

 囁きのような訴えに、兵士は余裕の態度を崩さずに生徒に視線を戻す。
 白銀の髪の生徒、スルトは俯きながら徐々に声を大きくして言った。

「離せ……って言ってんだ、この糞野郎!」

 同時に手錠をかけられた格好のまま、器用に膝を使って、兵士の股間を蹴り上げる。

「ぐぉっ」

 思いもよらない攻撃に兵士は呆気なく地に沈んだ。
 スルトは立ち上がって後輩の名前を呼ぶ。

「ソレル、遅いぞ!」
「へいへい、遅れてすいませんね」

 陰から表れたオルタナが、素早く銃を撃って、スルトの手首を戒めていた手錠の留め具を吹き飛ばした。
 自由になった両手を伸ばしながら、スルトは凶悪な笑みを浮かべる。

「さあて、たっぷり世話になった礼をしてやるか」

 視線の先には、同僚を倒されて一瞬呆けていたソルダートの兵士達がいた。彼等は我に返ると、携帯している銃を撃って牽制しながら、攻撃の術式を展開しようとする。

「はっ! 当たるかよ!」

 スルトは銃弾を軽やかに避けて見せる。
 周囲の生徒たちは突然始まった銃撃戦にぎょっとして、姿勢を低くして壁際に退避した。幸いにも、その場の生徒たちは獣人や竜なので身体能力が高く、巻き添えで負傷する者は少ない。

 スルトは簡単に兵士の背後に回り込むと、頸動脈に手刀を落とす。同時にオルタナが、もう一人の兵士にナイフの柄を叩き込んで気を失わせた。
 その場の敵を倒すと、オルタナは持ってきたナイフの一本をスルトに返す。

「銃は借りるぞ。これで先生達を解放するから、先輩は敵を倒してくれ」
「暴れればいいんだな? 腕が鳴るぜ」

 スルトは笑みを深めて承諾する。
 銃に込められた弾には限りがあるので、教師達から先に解放した方がいいだろう。オルタナとスルトは物陰を伝いながら、人質を解放するために行動を開始した。


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