きみのまちのいちにち
2013年1月執筆
ある日、テレビのなかで、おおきなじけんがありました。
きみのすぐちかくの家で、カインがアベルをつきおとしたのです。
きみは、それを見て、今日のあさごはんはおいしいなぁ、と思いました。
「昨日、きみのまちで、しょうがいじけんがありました。
兄が弟を、死にいたらしめたのです。」
テレビのなかに、家のすがたがうつされました。
その家を、きみはじかに見たことがあります。
パパが、
「おい。あそびに行くぞ。」
といいました。
きみはあそびたい気分ではありませんでしたが、
パパのいうことは正しいことなので、
行くことにしました。
パパが向かったのは、さきほどテレビのなかにあったあの家でした。
そこにはすでに、ひとがたくさんいます。
〈ちゅうしょうビラ いちまいごじゅうえん〉
おじさんが家のまえでしょうばいをしていました。
「これを買ってやろう。」
パパが、ちゅうしょうビラを、買ってくれました。
たくさんのひとといっしょに、
ビラをぺたり、
ビラをぺたり。
家のかべやまどに、みんなといっしょにはりつけてゆきます。
わあ、たのしい!
わあ、たのしい!
ビラをうっていたおじさんのそばに、おかねをいれる箱がありました。
箱はもういっぱいです。おじさんは顔をほころばせました。
たのしいおうちのもようがえ。
ぺたぺたぺたぺた、
きみはあさごはんの味もわすれて、
今日もたのしくわらいます。
今日も、たのしく、わらいます。
初出:小説家になろう
〈冬の童話祭2013〉参加作品である童話集、「みとめるということ」に掲載。
タイトルは掌編集収録にあたり新しく付けたもの。