連日の徹夜で、さすがに疲れは最高潮だった。
FBIの指令本部に設置された装置で回線をジャックし、変声期を使って組織を攪乱すること幾夜。時折、入ってくる情報に応じて捜査官たち(特にジェイムズ、ジョディ)に助言をしつつの仕事だから、ほとんど気が抜けなかった。
そして、今回の相手は組織の上層部。話しているのが本人ではないとわかれば、こっちが会話を誘導されて情報を流すことになる。そればかりか、即座に逆探知されてここも突き止められる。
そんな危惧と隣り合わせの仕事。捜査官たちも疲労の色が見えていたが、コナンもそれに負けず劣らず疲れていた。
しかし実際、子供の身で体力もなく、下手をすれば簡単に捕まり、銃など撃とうものなら反動もすごい。歯がゆいながら最前線に出ることもできず、こうして後方支援にまわるしかなかった。
その上、「疲れてるでしょ?それに、あんまり家に帰らないとあの子が心配するわよ」と、嘘偽りのない気遣いをジョディにされては、不本意ながらも1度事務所に帰るしかなかった。もちろん、「一晩だけ」という条件つきで。プチ家出の理由は、『ゲームするのに、博士の家に泊まりこんだ』。
ただ、あんまり疲れを素直に出すと蘭が余計な勘ぐりをするので、早々に部屋に引っ込んで寝たほうがよさそうだと思ってはいた。
「コナン君、やっと帰ってきた!お帰り。ご飯はもう食べたの?」
「……」
「コナン君?」
「あ、うん。ごめん、ちょっと疲れちゃったから、もう寝るよ」
何か引っかかったらしい蘭を、必殺(?)お子様笑顔で黙らせ、布団に入り込んだ。
体はやたら疲れているから、寝ようと思えばすぐ寝られる。──ただ、止まらない思考回路が、就寝を妨げていた。
このままいけば、あと数日で、大仕事はすべて終わる。
ICPOに協力を要請したらしいから、それにCIAの情報をプラスすれば、組織の全貌が相当見えてくるはずだ。
その時、ふとさっきの蘭の言葉が頭をよぎった。
『お帰り』
あの一言で、疲れが幾分か消えていくような気がした。
──オレがちゃんと薬のデータを掴み、新一に戻って会いにいったら。あの同じ言葉を、ちゃんと言ってくれるだろうか。何ヶ月も何も言わず姿を消し、彼女を蚊帳の外にしていた、『幼馴染み』に。
…言ってほしいから、こうして全力で前に進んでいるんだ。必ず、残りの役目を終わらせ、彼女の元に『新一』として帰る。
愛しい、彼女の元へ。
コナンは一つ笑みをこぼすと、目を閉じ、襲ってくる睡魔に身を任せた。
たった数時間の、夢の世界へ。今ひと時の休息を。 |