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「香西さん、道覚えた?」

少しカチンと来る。三國大周辺は飲み会とかでよく来るからさすがにわかる。

「っ!私そこまで馬鹿じゃないですよ!」

「あ、さすがに?」

彼がいたずらっぽく笑う。




「それにしてもさ、今お姉ちゃんと二人暮しって言ったっけ?
それ親助かるよねー」

「まぁ家にはお金ないですからね」


前に何度か家の事を話したことがある。
家にお金がないこと、だから東京の有名私大に通えなかったこと、国立に落ちたこと、大反対されてた私大に頼み込んで通わせてもらってること。

だから文句は言えない。
むしろ「ない」と言われている割には良い生活をさせて貰ってるから文句なんてない。

ただ…

「共同生活どう?」

「どうもこうも…」


こればかりは文句がある。
お姉ちゃんは確かに料理は上手い。けど片付けは後回しで結局しないし、掃除洗濯は毎回私がやってる(気まぐれで半年に一回することもある)。

しかも厄介なのが私がいない時に帰って来て着替え、服は洗濯機に放置して彼氏の家に行くのだ。

「二人とも彼氏出来たら大変なんじゃないの?」

そう、これだ。これなんだよ…。

「この前お姉ちゃんに彼氏さんが来るから帰ってこないでって言われて」

「え!?香西さんどうしたの!?」

「行く宛てもなくさまよって…結局学科の子に頼み込んで泊まらせてもらえることになったから良かったものの」

あの時はホントに切実な悩みだった。
あの子には今でも申し訳なく思う…ごめんね…。

「他の家に泊まらなくても良かったのに。
俺だったら平気で帰るよ。『おー、ここは俺の生活場でもあるんだよ!』ってね」

「…お姉ちゃんには言ったんですけどね、宛てないんだから、って。
そしたら『あんた友達いないの?』とか言われちゃって…」

彼が笑っている。
あの時は笑い事じゃなかったけど、今思い返してみたら何ともおかしな話だ。

「そうじゃねーよ、ってやつだね。
俺も姉貴いるけどさ、またこれが俺を振り回すんだ。良いように使われてるっていうか」

前に聞いたことのある、お姉さんの話。
年子で、二人とも別だけど私大に通って親に迷惑かけてしまったって言ってた。


…それにしてもお姉ちゃんってみんなこうなの…?




「…二人暮しって事はさ、自炊とかしてんの?」

彼が急に話を振って来た。

「そりゃあもちろん。生きていけないですから」

「すげー!俺大学の時自炊とかあんまりしてなかったよ…今もだけど」


『今も』?それはどういう事を意図して言ったの?

運転が疎かになりそうだったから、考えるのをやめた。

「でもちょっと前…こっちに来る前は何も出来なかったんですよ」

「そりゃ実家生は普通やらないよね。
じゃあ掃除とか洗濯とかは?」

「専ら私が。お姉ちゃんしてくれないんですもん。」

ため息が出て来そうだ…。


「良いように使われてない…?
それ多分香西さんの性格なんだろうね。放っておけないんだろ?」

「よくそう言われます。あんまり自覚はないですけど…」

世話焼きなんだろうか?いっつも言われる。

だからかな…

「おばあちゃん達には『良いお嫁さんになるよ』って言われます」


アピールしてしまうんだ。私ちゃんと家事こなせるんだよ、って。


「それわかる。だって香西さんだったら何でも安心して任せられるもん」



その一言がなんだか嬉しかった。

私おかしくなって来てるかもしれない…。




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