第23話
「……はぁ……はぁ」
オレは走って、走って、走った。蘭を待たせるのはもう嫌だから。
いつもならすぐの探偵事務所までの道程が、とてつもなく長く感じる。
実は、さっき別れた時、一瞬蘭が不安そうな表情をしたのは気付いていた。そう簡単に蘭の心から不安を取り除くことが出来ないのは分かっていた……つもりだった。
でも、『つもり』じゃダメなんだ。
アイツがオレには必要だから……これからアイツを守っていくには『つもり』なんて半端な気持ちでいる訳にはいかない。
いつでもアイツのことは全力で守ってきた。でも……心の均衡だけは『江戸川コナン』じゃ守ってやれなかったから、『工藤新一』に戻ることができた今だからこそ、アイツを本当の意味で守ってやらなきゃならない。
アイツの心を傷つけた代償は……オレが払う。
だから蘭、側に居てくれ。
★
新一……今日起こったこと、私は未だに信じていいのか分からない。
たくさんのことが一度に起こりすぎて……まだ心臓がドキドキしてる。
これが夢で、目覚めたら新一がまた居なくなってるんじゃないかって……すごく不安。
新一がコナン君だって構わない。
でも、もう独りにしないで。
新一……信じていいんだよね……?
迎えに来てくれるよね……?
いつまでも待ってる。
だから……もう独りにしないで。
★
走り始めて何分経ったことだろう。ようやく探偵事務所の前に着いた。
未だ切れている息を整えポアロにちらりと目をやり階段を上る。ここは半年『江戸川コナン』が確かに存在していた場所だ。
コナンになって、どうしてあの時ウォッカを追ったのか……と後悔したのは数えきれない。けれど、『江戸川コナン』として過ごした日々はオレに『工藤新一』では得られないものを沢山くれた。
組織と戦うまでは『コナン』で得たことを考える余裕はなかった。
でも少年探偵団として活動した半年……もちろん、おっちゃんに付いていって解決した事件もオレにとってはプラスになったと思う。でも少年探偵団で解決した事件はいつも独りで解決していた事件をまた別の方向からいい意味でみることができた。
オレにとって『江戸川コナン』は無駄ではなかった。
だが、蘭にとってはどうだろう?
確かにコナンは蘭を守ろうとした。でも結局は工藤新一の代わりでしかないし、蘭の心に開けてしまった穴はコナンには埋めることは出来なかった。
蘭を安心させるには時間がかかるかもしれない、いや、もしかしたら一生かかっても安心させられないかもしれない。
でも……オレには蘭が必要だから。
オレが勝手に思ってることだから、蘭には迷惑かもしれない。でも……今のオレは蘭がいなかったら絶対いないから。
もう、独りには絶対させない。だから、蘭。
オレの側にいてくれ。
はやる気持ちを押さえながらゆっくり一歩ずつオレは階段を上った。
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