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向井の症状が気になっていた俺達は、明け方まで病院で粘った。
気になる火傷の症状も、今の医学技術なら何とかなりそうだと医者から返事を貰い、俺は初めての朝帰りを遣ってしまった。
マンションでは慣れない朝食の支度に手間取っていた恵理が、戻って来た俺を少しだけ恥ずかしそうに迎えてくてた。

その女 ☆ 危険人物!!!
作:かずたか



第66話 甘え?


「アレ? 司ってば、まるで自覚ナシ? ふ〜ん、そうなんだ」

アオイは両手を腰に当ててグッと胸を張り、俺をナナメ四十五度の角度で偉そうに見上げて来た。

アクアブルーのフィットと同じ色の瞳が、チョッピリ意地悪そうに俺を見据える。

着ている俺のシャツから二つの丸みが浮かび上がって、ピンク色の乳輪とその突起が白いシャツ越しにハッキリと見て取れた。

身体全体は未成熟を残しているのに、オッパイだけはイッチョ前かよ?

アオイの言葉とチョッとセクシーに見える肢体に、俺は別の意味で一瞬クラッと来て退いちまった。

「な、ナニが『そうなんだ』だよっつ?」

「あらら、司ってばバックレてたのじゃなかったのぉ〜?」

「う、うるせ〜なっつ!」

アオイは自分の予想を裏切ったらしい俺の反応に、シラケちまったみたいだ。

つか、そんな思わせ振りな態度で喋るなっつ!

気になって仕方ねーじゃんかよ?

だけど俺は、恥を忍んで他人である……しかも俺達とは、知り合ってたった数時間しか経ってないアオイを、拝み倒して機嫌を伺い、ワケをご指摘して貰うってゆ〜気にはなれなかった。

アオイも承知しているのか、自分から喋る素振りは皆無だし。


ならば……と俺はアオイのコトを蒸し返した。

「俺のコトはイインだよ」

俺はそう言ってビシッとアオイを指差した。

アオイは『あっそ』って、素っ気なくツブヤイタ。

調子、狂うよなぁ。


「お前の正体はバレちゃってるし、いつまでもココに居据わられても困るんだ。サッサと出て行けよ!」

「……」

取り付くシマもない俺の冷たい言葉に、さっきまで余裕をカマシていたアオイは息を呑み、キュッと口元に力を入れて押し黙ると項垂れてしまった。


暫らくの沈黙――

俺達の耳に、俺がキッチンに置く為に買った百円ショップの小型時計の秒針が、静まり返ったリビングでヤケに大きく聞えた。

「ココに居てちゃ……迷惑?」

オモムロに喋ったアオイの声が、微かに震えている。

「?」

「恵理さんは、司みたいなコト言わなかった。アオイが居たいのなら、ずっと居ても良いよって……抱っこしてくれたモン」

はぁ? 『抱っこ』……だぁ?

「って、それだけ?」

一晩で恵理と仲良くなった種明かしを聞かされて、俺は意表を突かれて気抜けした。

俺は、もっとスゴイいキッカケがあったのかと思っていたし。

「そうよ?」

俺の面喰った表情を見上げたアオイは、澄んだ瞳をウルウルさせた。

その眼が俺に『単純で悪い?』と訴え掛けて来る。

「……アオイ?」

俺はその時、アオイが母性の優しさ……つか、人の温もりみたいなモノに、もの凄く貪欲になって飢えているコトに気付かされた。

『女子高校生が『抱っこ』だなんてナニ言ってんだ? 笑わせンな! 甘ッタレてンじゃねーよ!』……って、世間的にはそう思われ勝ちだが、俺はアオイの今の気持ちに共感出来た。

未成年から成人に入る前の最期の甘え的なワガママをさせて欲しい……そんな時期を認めて貰いたかっただけなんだよな?

自分を認めてシッカリと受け止めて欲しかっただけなんだよな?

難しいコトみたいだが、ホントーはとっても単純なコト。だけどお互いに『恥ズイだろ?』ってなってしまうんだ。

俺にはそんな時期は認められなかったし、甘えさせて貰えなかったストレスを糧に、無免許運転でバカ遣っちゃったりしたけどよ……

……何も言わなくたって構わない。

ただ、黙って抱き締められさえすれば良いんだ。

俺だってそうしてくれていれば、今の俺よりももっと素直でマシなヤツになっていたのかも知れない。

俺の場合、親から抱き締められた……ってゆーのは無かったが、他人だったアブのオヤジにボコられまくって、気が付けば介抱されてたってゆー、ひたすらランボーな過去があるけどよ?

恵理がそのコトに気付いて遣ったかどうかは別にしても……恵理、アオイにイイコト遣ったじゃん?

俺は、自分がやったコトのように嬉しくなって独りで照れた。

「司? どしたの?」

顔を赤らめてニヤケた俺を訝り、アオイが眉を寄せて小首を傾げる。

「ああっつ? え? い、いやナンでもねーよ」

「『ナンでもねーよ』じゃ、ないよう」

アオイは話の腰を折られて少しばかり膨れた。

「あ、続きどーぞ」

俺は慌ててアオイを促す。

アオイは俺のキョドっている態度に首を傾げて『ツイテイケない』って顔をした。



「でね? 初めて……司が初めてだったの。アオイのモーションを簡単にスルーしちゃって、田川のおじちゃんのトラックからも逃げちゃって……凄いって」

「俺が?」

俺はその言葉に眉を顰めた。

アオイはこくんと大きく頷く。


やっぱりあの時のトラックもグルだったのか。待てよ? だったらアオイが仕掛けた時に俺の後ろで煽った軽もグルじゃんか。


噂じゃ、前後に挟んでってパターンがセオリーだが、俺の場合、片側車線を塞ぐように遣って来たトラックまでもがグルだったってゆーのかよ?

逃げ出していて正解だったな。

ひょっとして、俺スゴイ?

直感的に走行車線から、トラックに追い立てられるのを覚悟で逃げた自分の野性の本能に、俺は改めて感心していた。

自分に悦に入って調子コクのもナンだが……


「失敗しちゃったアオイは、あれからイッパイお仕置きされちゃった。で、スキを見て逃げ出したんだ」

言うなり、アオイは着ていたシャツのボタンを二つ外し、スルリと右腕を抜き出して、俺に白いモロ肌を見せる。

恵理よりも白くて細っこい肩から、肉厚のナイ薄い胸元が、俺の目の前に曝け出された。

肌の至る所に残っている擦り傷や痣。一部分しか見てないが、それはタブン全身に及んでいるだろうコトは容易に想像出来る。

それは昨日今日出来たモノじゃない。

SM?

緊縛プレイ?

それも結構ハードな類の。

俺だってそんなプレイがあるってコトは知っているし、相手のオンナが『遣って?』って言えば、応じたコトだってありはするさ。

だけど……

無数に奔る赤黒い傷やアザは、それがアオイにとって凄く辛い眼に遭わされていたコトを語っていた。

つか、時間が経ってもアザが残っているだなんて、一体ドコのドイツがこんなマネしやがったよ?

「アオイ……」

痛々しいアオイの姿に俺は言葉を失った。

「アオイはね? こんなのいつものコトだから別にいいの。でもね? もうお家に帰りたい。帰れないのが一番イヤなだけ……なの」

いや、両方とも良くないぞ?

諦めるな、アオイ。


それまでアオイを険しい眼で見ていたが……他人事とは思えなかった身につまされる話に、俺はいつの間にか表情が穏やかになっていたらしい。

アオイはそんな俺を見るなり、ニッコリと人懐っこく笑って来た。

「……聞いてくれる? あ? でも時間が……ないんだ」

「いいよ?」

アオイは壁掛け時計を見て、俺の出勤時間を気にした。

『当たり屋』であれば、もうじき獲物を狩る時間帯になる。

アオイの話を聴いてやったとしても、俺にはドウスルコトも出来ないだろう。アオイもそのコトは承知しているみたいだった。

どうにも出来なくったって、誰かに喋れば少しは気が紛れるってもんさ。

それに……


――今聴いて遣んないと次はナイかも知れない……


そんな気がした。

俺の返事にアオイは俯き、そしてもう一度俺に抱き付いた。

それから、小声で『アリガト』って囁く。

アオイが昨夜使った、恵理の愛用シャンプーの甘い香りがホノカに漂い、俺の鼻をクスグッタ。

俺は照れクサクなって、聞えないフリを装う。

「行く所なんて無かったし、それに……どんな人なんだろうって司のコトを捜してた」

「アレぐらいなら、俺のダチだって簡単にスルー出来るぞ?」

ソコまで言って、俺は自分のフィットが恵理のモノで、メチャクチャ純正標準仕様だったってコトに改めて気付かされた。

ソレなりのテクがあるヤツは、大抵はソレナリの……詰まり、一般のドライバーから注目されがちなキアイモードの仕様車両に乗っている。

事故で廃車にしてしまい、自分の車を持っていない俺だったからこそ、アオイは俺のコトを「普通タダの木村工業社員」だと狙って仕掛けて来たんだ。

だが、恵理の標準仕様車フィットにはこの俺がハンドルを握っていた。

『当たり屋』としての大きな誤算?

いや、俺をターゲットに選んだアオイが、単に運が無かっただけだ。

遅刻確実か? と思われるくらいのギリギリの時間帯で、会社のステッカーを貼った車を転がしていたのは、タブン俺ぐらいしか居なかっただろうしな?

だからだ。

アオイにとっては、午前中のタイムリミット。

『獲物を選んでる場合』じゃなかったんだ。


俺はアオイをリビングのソファに座らせ、冷蔵庫にあったポンジュースを出してやる。

カラン☆

グラスに放り込んだ氷が、涼しげな音を立てた。

「アオイさー、ひょっとしなくったって家出娘か?」

俺のイキナリな質問に、アオイはビクって眼を丸くした。

そんなアオイを横目で盗み見ながら、俺はよく冷えたミカン百パーセント果汁のボトルを持って、鮮やかなオレンジ色の液体をグラスに注ぐ。

「……」

返事がナイのは図星かよ?

つか、俺にはそれしか考えられなかったし。

「……アオイが家出なんかしたから……こんなコトになっちゃったんだよね?」

やっぱしか……

俺は熟睡をカマシタ時のアオイの寝言――『ママ』って言ってたのを聞き漏らさなかったからな。

アオイの思わぬカワイラシイ寝言に、意識が有る時と無い時ではこうも違うものなのかと退いちまったのを覚えている。

「いつ頃から?」

俺はテーブルにコースターを敷き、そこにジュースとストローを置くと、アオイの向かい側……ガラステーブルを挟んだ向かい側にある、でかいビーズクッションに身を沈める。

「去年の夏休み。もう一年以上になるよ……アッチコッチ移動させられるし、ゴハンもあんまし貰えないしさ……何日もゴハンナシって日もあった。アオイはいっつもお腹空かせてたモン。お陰で十五キロ以上も痩せちゃってたよ」

俺はメシにガッツイテいたアオイの姿を思い出す。

それで『メシ』に異様に反応してたのか?

無邪気にハシャイで。

「……」

思いっきり眼に涙を湛え、今にもソレが零れ落ちそうだったのに、アオイは俺にペロッと舌を出し、気丈にもフザケテ強がって見せた。

俺に必死に笑い掛けようとしていたアオイの瞳から、ポロッと一滴が零れ落ちる。

ココでアオイを抱き締めて遣れば良かったのかも知れないが、俺は敢えてそうしなかった。

ナゼだか自分でも判らなかった。

未だに心のドコかでアオイのコトを疑っているのかな?

だから俺は、ただ黙ってアオイの話を聴き、見詰めて遣るくらいしか出来なかった。


「……ごめん。泣くツモリ……無かったのに」

そう言って、曝け出していた傷だらけの細い肩を、アオイはそっと撫で擦った。

俺は、アオイの痛々しい細腕から、成長期の身体が他人からの制限で酷使され、成長が止まってしまったのを覚ってしまったんだ。

ヒモジイ思いの経験がある俺には、アオイの辛さが自分の身を通して判ってやれた気がした。

「車の運転は?」

「拾われてスグ」

やっぱり他人事とは思えねー。

俺と似たり寄ったりだな?

「家の人は捜してくれなかったのか?」

「ママはアオイのコトを心配なんかしてくれないんだ。アオイなんか、いらっ、要らない子なんだもん……」

ズルッ……

アオイが大きく鼻水をススリ上げる。

俺は、アオイが母親の再婚に反発しての実力行使を断行してしまい、金も無くなって路頭に迷っていたのを今の『当たり屋』連中に殆んど人攫い状態で匿われた話を聞かされた。

家出して、悪い連中に……てぇのはよくある話だが、匿われたのが『当たり屋』の連中だったなんて……不幸過ぎるぞ?

しかも、教えて貰ったのは運転テクだけじゃなくって、アッチの床修行まで。

だから昨夜、俺が恵理とジャレテいたのを見ても、平然と出来たのかよ?

普通に学校行っていたら、女子高生だもんな?

可哀そうな身の上話だけど、それでも俺はまだドコかでアオイのコトを疑っていた。

警察の井上の受け売りじゃあないが……

幾らアオイが心を入換えたとしても、アオイが『当たり屋』だったと言う事実を消すコトは出来ねーし、アオイが『当たり屋を抜けた』と言っても、連中はそんなに簡単には抜けさせてはくれないだろう。

しかも、ヘタすると成和会の連中も居る。

目標を泳がせて様子を窺う……成和会の遣り方は、まるでドコカの諜報部員かと勘繰ってしまいそうになる手口だ。

最悪、アオイは成和会から既に勘付かれて、マークされているかもだ。

幾ら恵理や俺の頼み(俺は余計かも?)だからってアオイのコトを穏便に……ってなワケには行きそーにはねーだろうな? 

俺は、前に恵理そっくりのオンナ……※有紀に殺されそうになった。

その時に助けてくれたのが成和会幹部の水守だ。

俺を襲った二人は強制的に成和会に連行されて行ったが、アノ後有紀達がどうなったのかは知らない。

訊く必要にも迫られていないし、タブン訊いたトコロで教えてはくれないだろう。



――アオイを独りにさせるのは危険だ。


アオイの身の安全確保のタメに、必然的にそう思った。

ダレも居ないこのマンションに、アオイだけ残すワケにはいかない。

アオイが妙な気を起こして家捜しされるのも困るが、アオイの仲間であれ成和会であれ……ソレこそ踏み込まれでもしたらヤバイだろ?

「……判った。こうしよう」

俺はアオイに、ある提案を持ち掛けた。

「?」

「昼間は俺のダチの彼女ン所へ行ってくれ。夕方には俺が迎えに行く」

俺の頭に、コウの彼女である冴子の顔が浮かんでいた。

口の悪さでは恵理と張り合えそうなくらいだが、アレで案外面倒見が良かったりする姉御肌。

まあ、最初は恵理みたいに喧嘩するかも知れないが……


「なんで?」

「俺は恵理と違って、完全にお前を信用しちゃいないってコトさ」

「そんなぁ」

「あ〜? 何か困るコトでもあるのか? 言っておくが、この部屋に盗聴器とか隠しカメラを仕掛けるってのはナシだからな?」

盗聴器も隠しカメラの設置もムリなのは、そういった機器を探し出すための検出器がこの部屋にはあるからだ。

ナニか言いたげな視線を俺に遣すと……アオイはカンネンしたのか諦めたのだか判らねーフクザツな表情をして、ガッカリと肩を落とした。

「……判ったよ」

「ヨッシャ、ならその格好をナントカしないとな?」

俺は自分の服の中から、アオイが着れそうなモノを探してやろうと思って、自室の『テイレ』をしてみたんだが……年頃の女の子に似合う……

つか、サイズがゼンゼン違うだろよ?


  *  *


「見て々これぇ〜」

「えっ?」

自分の着換えを貰えるとでも思ったのか、アオイはさっきまでの暗かった表情とはまるっきり変わっていた。

活き々してるぞ? その表情。

嬉しそうなアオイの声に振り返った俺は、思わず吹いた。

アオイは『司のぉ〜♪』なんて言って、勝手に俺のボクサータイプのパンツをヘーキで穿いちゃってるし。


そのパンツは俺がネットで購入した『お買い得スペシャル』とかって項目カテゴリで纏め買いしてたモノ。

赤地に、八ミリ程度の白いハートが飛び交っている柄で、所々にアタマに輪っかがあるポップな天使がこれまた小さく描かれて飛び交っていた。

俺としては『コンナの穿けるかよっ!』状態。

そのシリーズの中でも、気に入らねーモノの一つだった。

だが、恵理はこのパンツがお気に入りで、コトある毎にコイツを着用しろと迫っては俺を困らせてくれる。

詰まりは、俺としては断固拒否っつ!!! 

なのに、同時にソレは恵理のお気に入りの一品だったりするんだ。

つか、こんな恥ズイの穿けるかよっつ!!!

「こっつ、コラ! パンツは自分のが(洗濯して)出来ているだろうがっ! 自分のを穿けよ。自分のをよ!」

「良いじゃん、ケチ!」

「また言う〜」

「コレって司のお気に入りなのぉ〜?」

「ち、違うっつ! 断じて違うぞっつ!!!」

ムキになる俺。

「だったら頂〜戴」

「ダメ!」

俺としては使用したくナイんだが、恵理が気に入ってるってだけで、棄てるに棄てらんなくなっちゃったパンツなんだよっつ。

アオイは嬉しそうに穿いてはいるが、サイズがデカイから、ウエストのゴムの部分を両手でずっと引っ張っていないと、今にもズリ落ちそうだ。

「かっつ、返せよ! ホラッツ!」

「きゃーっつ!」

  ☆

奪い返そうとして利き手を伸ばした俺は、アオイの黄色い悲鳴に慌てて手を引っ込めた。

んなっつ、ナンテぇ声を出すんだよっつ!!!

……あれ???

俺はソコであるコトにハタと気が付いた。

アオイってば、着替えなんて持って無かったから……その、あの……ひょっとしなくっても……ノーパンにノーブラ???

それはソレで若干ソソラレルが、恵理ホド俺は欲情しねーし、今日は相棒も睡眠不足のせいだか(?)反応すらしやしねーがな。

俺は急に眼のヤリ場に困った。

つか、気付けよ俺! 

今更だっつーの!!!


「仕方ねーな……」

俺は所在無く利き手でアタマを掻いた。

こういう時は、やっぱ同性にご協力を願おう。

俺は恵理の部屋に連れて行こうとアオイに声を掛けたが、アオイはハート柄のパンツが気になって未練タラシク動こうとしない。

困ったなと思ったが……俺はアオイが気に入りそうな未使用パンツがあったコトを思い出した。

「アオイ、パンツが欲しいならコッチのを遣るよ」

俺はもう一種類の違う柄パンを差し出した。

それは濃い紺色の生地に、水色の水紋と紅白の金魚を真上から描いたような柄だった。コッチの柄も十ミリ程度の小さい金魚の絵だ。

「あん、コレもかわいい〜」

アオイは切なそうな声で、パンツに頬ズリした。

……ソレ、未使用とは言えパンツだぞ?

黙って退く俺。

俺はこのパンツも気に入らなくって、クローゼットの引き出し奥に眠らせていたものだった。

ま、喜んで貰えたんだ。パンツも本望(?)ってトコかな?

「コレでカンベンして?」

俺の情けない声に、アオイは『イイよぉ〜』って上機嫌になった。


じゃ、恵理。不法侵入&コソドロを許せ。

……なんて勝手に思ったが、後で下着ドロしたってコトがバレテ半殺しの目に遭うのも願い下げだし。

俺は早速恵理の携帯に、不法侵入ドロの許可メールを送った。


※ 第35話 訪問者? 〜 第36話 刺客? をご参照下さい。







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