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いつもとは違う大胆な恵理の反応に、俺は必要以上に警戒してしまった。
そして、今まで俺自身が気付いていなかったコト……
俺が恵理を『いつの間にか一人のオンナとして好きになってしまっていた』ってコトに気付かされてしまったんだ。
オンナなんて、ヤルタメの……くらいにしか思っていなかった。
サンザ言い寄って来ておいて、自分の立場が悪くなりそーだったらサッサと消えてしまう、俺よりもズルくてタチが悪い身勝手な生き物……そう思っていた。
恵理を除いては……

その女 ☆ 危険人物!!!
作:かずたか



第61話 許してっつ?


すぅう――――はぁあ――――

恵理に覆い被さったまま、俺は自分を落着かせようとして何度も深呼吸を繰り返し、乱れた息を整えた。

ココまで来ておいて、どうして落着くコトが必要かって?

ン、なコト決まってンじゃんよ?

今の俺は、『決断』という岐路に立たされてンだ。

……ナンだかシリアスな映画のタイトルみたいだが……

相棒には返事聞かなくったって、ビンビンに元気一杯だけどよ。


……このまま恵理にダイブして、恵理の婚約者殿の逆鱗に触れ、父親である社長の顔に泥を塗ってしまうのか。

それとも、恵理を怒らせてでもこの状況から回避を選んで、卑怯に徹して逃げ出すか……


恵理の念願……処女喪失を手伝えば……あれだけこだわっていた開通式だ。恵理は喜んでくれるかも知れない。

※−1)前にココロにもナイ啖呵たんかを切っちまって恵理を怒らせ、泣かせちまったからな。

だけど、ああ言うより他に俺には逃げる方法が見付けられ無かったからだ。


『処女は要らない』……


自分を正当化しての上から目線でしか言えなかった……

地位も名誉も金さえも全くナイこの俺が、唯一残されていたオトコとしての……ナケナシのプライドが、俺にそのコトバを吐かせ、恵理を深く傷付けてしまってたんだ。

居た堪れずにマンションを飛び出し、あの後俺は恵理に対して何度後悔したか判らねー。


だけど、飢えて死に掛けていた俺の目の前に、ナンの苦も無く据え膳状態で、イキナリ豪華な『恵理』ってゆーディナーが差し出されてたんだぜ?

喩え『安心して』とか、『信じて』とかって言われたって、普通警戒するだろよ?

俺がナニも考えられねー鬼畜野郎だったら、ソレもアリだとゴチになってるだろうが。

結局……

恵理からすれば、卑怯なズルイヤツ……なんだよ。俺は。



恵理の婚約者殿は……未だ恵理自身の口から直接は聞いていないが、間違いなく総務部の伊達部長。

近い将来、この業界トップシェアを誇る木村工業株式会社をになう次世代のいしずえになるだろうと噂されている切れ者部長だ。

俺みたいな貧乏人社員とでは、そもそも比べようとするコト自体、次元が違うし、どうかしてるんだよ。

つか、貧乏人のヒガミだと取られても仕方ないが、俺はあんな人とは張り合うドコロか……正直、関わりさえ持ちたかねーんだよ。



※−2)社内での諮問会に引き出されて以来、俺は伊達部長に……良い言い方だったら好意的。悪い意味でならストーカーされているみたいな気分になっていた。

その元凶は、諮問会後のおそい昼食。

タブン、恵理とツーショットで食堂に居たあの時点で、俺が恵理の『悪いムシ』だと部長は勘付いていたハズだと思う。


事故で新入社員の歓迎会をポシャった俺のタメにと、部長がワザワザ飲み会の場を企画してくれた。

市内の有名ホテルを貸し切ってのビアガーデンはそれなりに楽しめたが、思えばアレは一種の罠だったのかも知れない。

俺の席は部長の隣に設けて貰っていた。

で、その部長の周囲の取り巻き連中から、終始どんだけ凄えぇ人物かってコトを、聞きたくも無かったのにサンザン聞かされてしまったんだ。


どれだけスゴイ人物なのかを俺に吹き込み、まるで、恵理に付きまとっている俺には身分相応じゃないのだと……しまいには、念入りにデッカイ鉛の釘を打ち込まれたみたいな気分になっていた。

直接部長が遣ったコトじゃ無いハズだろうに、俺は部長のサシガネかと暗に勘繰ってしまうホド、その『釘』は深々と俺に刺さってしまったんだ。


伊達総務部長。

伊達だて隆章たかあき、二十九歳独身。

ナノマシンと呼ばれる医療用マイクロマシンを取り扱う、木村工業の子会社『DATEケミカル株式会社』の御曹司。

今は木村工業の総務部長をしているが、それは企業ノウハウを学ぶ為であり、本人が何もしなくったって将来は身内の会社に戻って木村工業の子会社代表取締役としての輝かしいレールが用意されている。

しかも、恵理と一緒になれば……今度は木村工業株式会社総取締役社長の席も夢じゃなく、一層現実味を帯びて来ることになると囁かれていた。

今は恵理の姉である長女の沙耶さやさんの旦那である城嶋きじま副社長と、次女の香奈かなさんの旦那、持田もちだ専務の何れかが次期社長なのだと噂されてはいるが、二人共、上層部の間では伊達部長ホドの才覚を持った人物ではないと見なされている。

詰まり、恵理と所帯を持ったと仮定した場合、立場上、三女の不利があったとしても、伊達部長がこの三人の中で一番『社長の椅子』に近い人物になるらしいんだ。

世の中、不公平が多過ぎるぞっつ。


しかも、あの温和な性格に、外見はガッチリとした逞しい身体つきのイケメンだ。

オンナが放っておくハズがナイ。

なのに部長の浮いたハナシは全くナイ。

ひょっとして、アブナイ系か? とも疑われそうなモンだが、そういった類のハナシさえも一切出て来ない。

唯一、彼には婚約者が居る――ってコトだけ。

この事は、数年前に木村工業が契約していたCMタレントの嶋田ひなが明らかにさせてくれたらしい。

ひなが伊達部長に積極的にアタックして来た時、困った部長は彼女に恥を掻かさないように本当のコトを告げて断ったのだそうだ。

部長自らが白状してしまった本当のコト……『婚約者』の存在。


嶋田ひなって言えば、楚々としたお嬢様キャラで業界ベストファイブに入る美少女だ。しかも部長の卒業した大学の後輩にあたるってぇ才女。

俺が土下座してお願いしたって、その服のスソさえ触れることが許されない大物タレント。

その嶋田ひなをアッサリと断るって……どんだけだよ? 

つか、何様???


某有名私立大学を主席で入学してそのまま卒業。

木村工業に新卒採用されて一年と経たないうちに、難関だと言われていた六段階に分かれて審査される管理職試験を、総て一発でパス。

木村工業始まって以来の秀才だと噂されている。

案外、このアタマの良さでオンナの噂を封じているのかも……とさえ囁かれているくらいだ。


一方、この俺は平凡な地元の大学にギリスで入学。

通常の単位を幾つも落っことし、高校の時に無免許で車を覚えて以来、度々警察の厄介になり、危うく留年させられそうだったのを教授の取り計らいで卒業させて貰っていた……

つか、本当は前科モノが構内に居座られると困るってンで、ノシ付けて追い出されたようなもんなんだ。

外見は……部長や水守達から比べれば見劣りしてしまうが、一応タッパは百八十あるし、周囲からはオンナ受けする童顔タイプだと言われている。

『童顔』ってぇトコロが俺的には引っ掛って、ちとフクザツ……なんだけどよ?

自分的にも目付きは余り良くナイが、チッタァ整った……マシな顔だとは思ってる。

頼まなくったって『付き合って』と言い寄って来る……アタマとケツの軽い見た目美人は結構来るもんな。

だけど、それだけ。

俺は部長のアシモトにも及ばねー、下衆な一般凡人だっつーの。



俺は俺なりにこのコトを、ず〜〜〜っと足りねーアタマで考えていたんだ。

……

……

「どうしたの?」

ペッティングの余韻が薄れてしまった恵理が、動かない俺に気付いて薄っすらと物憂げに俺を見上げた。

どきっつ!

恵理の視線に俺の思考回路が次々に絡め取られて、電源が遮断されていくみたいだった。

このまま俺に野獣になれって言うのかよ?

……ごくっ

俺のナマツバを飲下す音が、静かな恵理の部屋でことさら大きく聞えた。

俺の緊張した表情を見てなのか、それとも大きく動いた喉仏を見てなのだかは判らなかったが、組み敷かれている恵理が一瞬フワリと微笑んだ。

「か……」

『課長』って言いそうになって、俺はアワテテその言葉を飲み込んだ。

「か?」

恵理が俺の言い方を真似して、意地悪そうに見上げて来る。

たゆたうように恵理の白い腕が上がり、俺の目の前に人差し指を立ててそっと唇に押し付けて来た。

う……ぁ?

一体、ドコで覚えて来ンだよ?

背筋がゾクゾクして気持ちイイ……

堪らねーよその仕草。

コレって『黙ってて』……の意思表示?

俺、もしかして完全に恵理に呑まれちゃって……る?

ぱく☆

俺は恵理の人差し指を、付け根まで咥え込み、舌先でもてあそんだ。

同時に利き手の指先が、そっと恵理のクリトリスを剥いて、焦らせて転がすように円を描く。

「はぅンっ……」

ダイレクトに快感ゾーンを刺激され、恵理の顎が仰け反り、身体がビクンと震えた。

俺の治まりかけていた心臓が、再び大きく鼓動する。

今まではそんなに思ったコトは無かったが、意識し始めると身体ってーのは余計に言う事を聞いてくれないモンなんだな。


俺だって恵理が……


どきどきどき……

うっ、うわっつ……身体が火照って……しっ、鎮まれ俺の心臓っつ!!!

「え……恵理……」

「……?」

耳元でソッと囁いた俺の声に、恵理が僅かに反応した。

「恵理……いいの?」

「……」

恵理は黙ったまま俺の首に両手を絡ませ、カルク自分の方へと引く動作をする。

ソレって『GO』のサインなのか?

俺の身体も熱いが、恵理の身体も熱いぞ?

両手で恵理の腰を掴み、俺の腰までグッと引き寄せる。

「あ……」

俺の相棒が恵理を確かめるように秘裂に沿って、何度もゆっくりと撫で上げた。

適度な力加減で擦る度に、恵理の解けた唇から甘い声が漏れ、肉壷からは愛液が毀れて俺を受け容れてくれる準備が整っている。

俺は腰を更に落として、下から優しく突き上げるようにして恵理の中に分け入った。

「……」

モノスゴイ圧迫感と抵抗。

「はあぁ……あう……」

処女を貰う度に、何度も覚えて来たこの圧迫と締め付け。

なのに恵理の中に入って行った俺の相棒は、途中でピタリと動きを停めてしまった。

……カンジル。

ココが恵理の防壁。

(……遣れ! 遣ってしまえ……)

頭の中で、俺の声が聞こえた気がした。

あと一息。グッと腰を落として、この浮いている俺の片膝が床に着けば……

妄想でもナンでもない。

今この瞬間に、俺は恵理を手に入れ……


その時だった。

「ん……っ……」

くぐもった恵理の声に、ハッとして俺は眼を開けた。

苦しそうに顔を顰め、唇をグッと噛締めている恵理の表情が、俺の視界に飛び込んで来てしまったんだ。

「……」

あ? あれ? ……動けない……???

俺の脳裏に社長や部長。それに(オマケの)水守の顔が過る。

「……」

トタンに俺は猛烈な劣等感と羞恥心に、ガンジガラメに取り憑かれてしまった。

「はあぁ……ううっ……かさ? ど……?」

俺の異変を察した恵理が、俺の腕に指を這わせて来た。

「……」

だ……

……だ……

……駄目だぁあああ……

……で、出来ないっつ!!!

これ以上は……お、俺は……俺には無理っつ!

「恵理、ゴメン!」

「ああっ?」

言うなり俺は恵理から身体を離すと、一目散に部屋から逃げ出そうとした。

逃げ出そうと……と???

「あぁ? うっ、うわあああ???」

ドタッツ☆

恵理から中途半端にズリ下ろされていたジーンズのスソを、俺は見事に踏ん付けて足をもつらせてしまった。

俺は、豪快に床に滑りコケてしまう。

「いっつてえええ〜〜〜」

これじゃあ下半身ムキダシのヘンタイじゃん!

「〜〜〜」

「はいぃ?」

転倒してハイツクバった俺の右足首を、恵理が『がしっつ☆』って凄い力で掴んで来たし。

「あひっつ?」

ひいいぃ〜〜〜

恵理は黙って俯いたまま、俺を仰向けにさせておいて圧し掛かって来た。

えっつ、えええ恵理ぃいい……お、お許しをおおお〜〜〜

こっつ……コレって『敵前逃亡』か?

『敵前逃亡』になるのかっつ???

『敵前逃亡』は昔っから銃殺刑だって言われてるぞ?

俺にゆっくりと圧し掛かって来る様子は、さながらホラー映画のワンシーンそのものだった。

俺は背筋に冷たいモノをカンジてドン退きした。


※−1)第26話 上積み?
※−2)第43話 木村工業・・・3 をご参照ください。







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