表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

数々の短編集

おいでやす! 名探偵の宿 なぜ行く先々で殺人事件が起きるのか?

作者: 数々

数々の短編4

 ど田舎県、ど田舎村。ここに名探偵に愛される宿があるという。

 そこは一見すると、ごく普通の宿だった。どんな秘密があるのだろう?

 私は突撃取材を試みた。



 取材ですか? もちろん大丈夫ですよ。ええ、名探偵の方々にご贔屓にして、いただいております。居眠り探偵さまに、孫探偵さま、最近では探偵の探偵のそのまた探偵さま、まで……。本当にありがたいことです。


 名探偵に愛される理由ですか? とくに変わったことはしてないんですよ。ごく普通の家庭的なところが、お好きなのかもしれませんね。

 

 そちらの壁に、写真を飾っているボードがありますよね? 是非、ご覧になってください。当館をご利用いただいた、お客さまの記念写真を飾っています。


 思い出の写真が沢山なんですよ。こちらがわらべ唄殺人、そちらは牛追い祭り殺人のときです。それは宿泊者皆殺し殺人の写真ですね。


 みなさん良い笑顔ですよね? この笑顔が見たくて、ご奉仕しているんですよ。



 当館に来られるまでが大変でしたでしょ? 交通機関がありませんので、お車でお越しになるしか方法がありません。この都会の喧騒を忘れられるのが、好まれているのかもしれませんね。


 途中で橋を渡られましたよね? あれが落ちてしまうと陸の孤島になってしまいます。


 また、その橋がよく落ちるんです……。探偵の方々には、すぐに逃げ出せないのが良いと褒めていただいてます。


 ……電話が鳴っていますので、少し失礼しますね。……失礼いたしました。


 そうそう、この電話も人気の秘密なんですよ。ここは携帯電話の電波が届かず、昔ながらの黒電話だけなんです。当然、Wifiなんてありませんから、電話線が切れると大変です。外部への連絡手段がなくなってしまいます。


 また、すぐ切れちゃいますけどね。


 そこが好評なんですよ。毒された機械文明から、離れれるのが良いんでしょうね。警察を呼べないのが素晴らしいと絶賛していただいております。



 館内をご案内しますね。こちらは離れになっております。ごらんのとおり、かなり隔離されております。


 人の喧騒から離れるので、複雑な人間社会の癒やしの場になってますね。周りの人が、誰も信用できなくなった時に、逃げ込む人が多いんですよ。


「こんな殺人犯達と一緒にいられるか!」みなさん、そうおっしゃるんですよ。

 


 温泉もありますよ。当館、自慢の露天風呂です。こちらは火サス探偵さまがご愛用なさってますね。なんでもお色気シーンを入れないと不味いんだとか……。



 こちらが大広間になっております。最後の最後に、みなさん、お集まりになって決める場所ですね。『犯人はお前だ!』……毎回楽しみにしています。


 掛け軸に書いてある謎の唄ですか? 村長の自作ですね。村おこしのために、変わった風習や唄を作っているんですよ。これがあると何かと便利ですよね。


 伝統とか嘘を言ってますけど、飽きさせないために毎年の様に変わっています。こちらは新作ですね。これから使われるかもしれませんね……。 



 先程の電話ですか? 嬉しいことに、居眠り探偵さまと孫探偵さまが、お早めにお付きになるそうです。インタビューされますか?


 おや? 顔色が悪いようですが大丈夫ですか?


 え、もうご出発ですか?


ご遠慮なさらずに、ごゆるりとなさってくださいな。そろそろ探偵さま方もお見えになりますよ。

 

 あら、いらっしゃったようですね。



 ――その後の記者の運命は誰もわからない――

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
面白かったら他の短編もどうぞ! 数々の短編
― 新着の感想 ―
[良い点] これはこれは名探偵たちが愛する宿ですよ! こんな所で事件が起きたら、名探偵の血が騒ぎますね。
2017/05/21 07:56 退会済み
管理
[一言] 推理小説になっておあつらえ向きな宿。 こんなとこ止まったら、創作欲がとまらない。 といいますか、ここに泊まれば誰もが名探偵になれるのでは? もしあったら行ってみたいです。 もちろん、名探偵と…
[良い点] 初にお邪魔いたします。 隔絶された環境とはなかなか凝っておられます。足しかに名探偵語のみの宿ですね。今では難しい舞台設定に感動を覚えます。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ