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ヤンデレ阻止

ヤンデレ阻止しようとしたら義弟が特殊な性癖に目覚めたかもしれない件。

作者: sin_crow

その瞬間、私は全てを思い出した。






病弱な私はベッドに寝そべって、お父様が連れてきた子供を見た。


どこか不安げな様子だ。その目は濃い緑で、髪はきらめく金。体は細くて病的でさえあるが、顔はとても綺麗で——。

とそこまで思った時、なんだか見たことがあるような気がした。

あれ、どこで見たんだっけと首を傾げていると、お父様が言う。


「メリアーゼ。ほら、彼が話していた子だ。孤児だが、高い魔力を持っていてね。この度、我が家で養子として迎え入れることになった。ジョシュアという」


ぺこり、と少年は頭を下げた。

ジョシュア。その名前で私の頭の中でパチリと音がした。様々な情報が一気に湧き上がる。


そうだ、ジョシュア・レオンハイド。彼は、乙女ゲームの攻略キャラ——監禁系ヤンデレ、だ。


私は記憶の洪水に飲まれて、気を失った。





前世の私は乙女ゲームが好きだった。というかイケメンが好きだった。

そんな私が手を出した最初で最後のヤンデレゲーム、それが「キミの全てはボクのもの」

、略して「キミボク」である。

攻略キャラは五人。全員ヤンデレ。

ヤンデレをよく知らなかった私は、ネットで評判が良かったのでやってみたのだが……。


あれはひどい。普通のだと思って攻略していったら、ある日突然殺された。何故だ。

なんか他の男と話したからだとか。知るか。

ハーレムルート狙ってたんだからそら他のキャラとも喋るだろうが。


まあ、ともかく。その中の一人がジョシュアだった。見た目も一番好みで割とどストライク。もちろん、あんなヤンデレさんじゃなかったらだけど。


そしてここからが大事な話。

彼がヤンデレになるきっかけなんだけれど、それが——大好きだった義姉の死だった。


えっ、死ぬの? 誰が? 私が! である。


確かに病弱だし、二十歳まで生きられないだろうとは言われたけど、ああ、私死ぬのかぁ……。

一度死んだ身だし、怖くないかと言われれば怖いけど、今の私にはそれより気がかりだったのだ。


ジョシュアは私のせいでヤンデレになるってことが。

死んだあとまで人様に迷惑かけるって最低の死に方だと思う。本当に。


じゃあ、私はどうすればいいのだろう。

私は、一つのことを思いついた。






「ねぇ、ジョシュア。雪が触ってみたいわ。とってきてちょうだい」


私はベッドの上から出来るだけ我儘なお嬢様っぽく言った。

もちろん雪が降ってるのだから外はとても寒いし、雪だって冷たい。

ごめん、ジョシュア。心の中では謝罪の嵐だ。

ジョシュアが顔をしかめたが、黙って外へ出て行った。


この家にジョシュアが来てから二年。けれど彼は結構大変な境遇にある。

私の亡くなってしまっているお母様の姉、つまり私の叔母さまが私の母代わりということでこの屋敷には住んでいる。

貴族であるということにプライドのある叔母さまは、孤児のくせにとジョシュアを嫌っているのだ。


だが、あまり手を出してきたりしないのは、義姉であるメリアーゼ——私のことだ——が彼にはワガママばかりいうからだ。

私が召使のようなことをさせているから、ある程度満足しているとのことだった。

使用人たちは彼に同情して優しいらしい。


ああ、計画通り。

私が思いついた計画はこうだ。


まず、私が我儘ばかり言ってジョシュアに好かれないようにする。

私的に一番ひどかった我儘は、「お菓子を作って」とジョシュア一人に作らせておいて、「美味しくない」と突き返したやつだ。

本当はすごく美味しかった。その晩は布団を被って土下座した。


まあともかく、そんな感じで私がジョシュアを独占することで、他の人に手を出されないようにする。

さらには信頼できる幾人かの使用人に計画を明かして、同僚の同情を誘って欲しいと頼んだりした。


完璧な計画!

と、したり顔をしていると、ジョシュアが手にいっぱいの雪を抱えて戻ってきた。

顔は真っ赤で、手が痛いのか表情が固い。体も少し震えていた。

しかし溶けないように氷結魔法がかけているあたり、本当にいい子だ。

高位の氷結魔法を使えるというのも、さすが魔力を見込まれただけはある。

そんなことを思いながら、あえて不機嫌な顔を作った。


「全く、遅いわよ」


途端にジョシュアの顔がさらに曇る。

ごめんんんん!

内心叫びながら、スライディング土下座。本当にやろうにも、今の私はできないけどさ。


そっと雪に触れる。

うわぁ、冷たい!

こんなの持ってきたのか、すごいとまた感心した。


ジョシュアに気づかれないように風邪と霜焼け防止の魔法をかけた。

この世界の魔法言語は日本語なので、私はかなりの魔法が使えるのだ。

なかなかのチートだなぁと思いながら、ついでに体を温める魔法も小声でかけておく。




何かもが順調である。

その夜、私はベッドの中でニヤリと笑った。










——しかし、そのまま終わりはしなかった。


「姉様、見て! 綺麗な花が咲いてたから、持ってきたんだ」

「確かに綺麗ね……でも、花なんてすぐ枯れるわ。いらない。戻してきて」


ジョシュア、ごめん! 本意じゃないんだよ!

心の中では全力土下座中だけど、眉をしかめてフンと顔をそらす。

なんかこういう表情とかが上手くなってきた気がする。……嫌だなぁ。


ちらり、と目線を向ける。

見た目が好みだけに、落ち込んだ顔はなかなか心に痛いものが……ってあれ?


「そっか。ごめんよ姉様。戻してくるね」

「え、ええ」


そのままパッとジョシュアは部屋を出て行った。


ちょっと待て。ちょっと待て!

なんで、なんでジョシュア、笑ってたんだ(﹅﹅﹅﹅﹅﹅)


まさか、と私の中に恐ろしい想像が浮かぶ。


まさかジョシュア……私が我儘を言い過ぎたせいで、Mに目覚めたっ⁉︎


感想、お待ちしています。

機会があれば、ジョシュア視点の話も書いてみたいです。

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― 新着の感想 ―
[一言] 雪【が】触ってみたい ○雪【に】触ってみたい 文法的に、???となったので一応。話し言葉では違和感ないんですけどね、小説として読むならこっちの方がありがたいです。細かいことで申し訳ないです…
[一言] どうも国語+4の人ですw もしかして……と思ったら…… とても楽しく読ませていただきました! 続きが気になる内容で、連載版のほうも読みたいと思います。 連日更新がんばってください!
[一言] 面白くて続きを読みたくなりました。 是非、書いてみてください。
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