明かされた真実 1
何事もなく一週間過ぎたのだが、ウィルには最近少し気になることがいくつかあった。一つは、ローレイとトムがあの最初の日のお風呂から上がった時のように、真剣に何かをよく話し合ってるということだ。しかもひそひそ話で。二人はウィルに聞かせまいとしているらしくウィルの前では決してそんな感じで話をしなかった。だが、自分の部屋からそっと覗いたりすると、声はかなり小さめで話しているので全く聞き取れないのだが、トムはいつになく怖い顔をして話していたりする。ウィルはこのことに関して随分深く考えた。それで達した結論は、士族の村に移り住むことを話し合っているのだろうということだった。ウィルは士族の村へ移り住むことへの期待のあまりローレイもそれほど鼻につかなくなっていた。士族の村にいったらたくさん友達を作り、剣術を極め、アイツを見返してやろう。今にして思えば、極めて楽観的だった。
そのアイツに関してあともう一つ気になることがあった。ローレイは何かとウィルを顔を合わせたときはあの意地汚い薄笑いを顔に浮かべているのだが、たまに気がつくとウィルのこと鋭い目で何かをを観察するかのように、見つめていることがあった。だが、ウィルと目が合うとすぐににやりとした表情をした。
「ウィル様!しっかり聞きなさるのだ。せめて風邪薬の分野だけでもマスターしないと。もう時間がないのですぞ!」フランクじいが珍しく大きな声を出して言った。
ウィルの回していたペンがポトリと落ちた。
「どうして時間がないの?」ウィルは驚いて聞き返した。
その時フランクじいに、はっとしたような表情が一瞬浮かんだ。だが、すぐにフランクじいは取り繕い、厳しい顔をした。
「医族では十五歳くらいまでには薬学の基本的な知識は――もちろん風邪薬もその一つですが――たいていマスターするのです。それなのにウィル様は十五歳になって一ヶ月たちなさっている」
「フランクじい」ウィルの声にはイライラがにじみでていた。
「僕は、医族、じゃなくて、士族、だよ」
ウィルは、一個一個単語を区切ってはっきりと言った。
「フン」フランクじいは鼻をならした。
「しっかりと教養がある人は、自分の族以外のことも何かと勉強するものですぞ。そしてトム様はあなたが教養がある人になることを望んでいらっしゃいます」
「今日はこれで終わり」
ウィルが反論を言いかけるのさえぎってフランクじいはきっぱりと言った。それから、自分の前に広げてある本、『基本薬学』をパタンと閉じ、ウィルに差し出した。
「この本をあげるから、よく家で復習しておくのですぞ」
「フランクじいはもうこの本いらないの?」ウィルは受け取りながら聞いた。
「私が基本薬学を覚えてないとでも思ってなさるのですか?」
フランクじいが憤然としていった。
「違うよ」ウィルは慌てて言った。「ただ、それならどうして今までくれなかったのかなって……」
「もちろんノートに書かせて頭に叩き込ませるためです。ウィル様にはお出来にならなかったようですがの」
フランクじいの表情がどんどん変化していくのを見てウィルは、お礼をぼそぼそと言い、そのままフランクじいの家を飛び出した。
「いよいよですな――ラゼル様……」
元気よくかけていくウィルを窓越しに見ながら、フランクじいはつぶやいた。何も知らなウィルは駆けていく。これから全てが変わってしまうことも知らないで……。
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