ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
第39話 〜不思議な『配役』と噂の『スーパー女子高生(仮)』〜

 時は中世ヨーロッバ(詳しい年代は不明)、ある国のある有力貴族が治める街に、貧しくも綺麗な心を持った青年と、何一つ不自由ない環境のもとで育った美しい貴族の娘というまさにテンプレートな2人の若者がおりました。
 必然か、はたまた神様の気まぐれか、その2人は運命な出会いを果たし、まるでそれが当り前であるかのように惹かれあっていきました。
 しかし彼女の両親が、日々の生活もままならないような男との関係をよしとするはずもなく、2人は満足に逢瀬を重ねることも出来ないのでした。
 それでも強く燃え上がった2人の愛の灯が簡単に消えることはなく、数日に一度、彼女の住む屋敷の人々が寝静まった頃にその青年は人目を忍んで彼女のもとを訪れ、愛を囁き、彼女もそんな彼に応え続けているのでした――。


――――――――


 以上が、3度の食事より噂好きな奥様方の間で最近しきりに語られている話である。
 だがそのような話には尾びれ、胸びれ、その他もろもろが付いて回るもの。今回も噂もそのような例に漏れず……

「あぁ愛しのキリル……。どうか私をこの屋敷から連れ出し、貴方のその腕で強く抱きしめて下さい」

 この国で1、2を争うとまでいわれている美貌を持つ女性が、自室のベランダから身を乗り出すようにして青年へと訴えかけている一方。

「ルセリナ……」

 なぜか、そうなぜかその青年は困ったような表情をしているのである。まるで女性の愛があまりに強すぎて、面倒くさく……もとい、自分では受け取れないかもしれないとでも言いたげな雰囲気で。


――――――――


『ハイ、カット!!』

 今回の劇において監督を務めている演劇部所属のクラスメートの男子が発した声によって、張りつめていた空気が幾分か和らいだ。まぁ明日が本番なんだから、空気が張り詰めているのも当たり前といえば当たり前なのかな。

 ウズヒの誕生日に彼女とした約束、それは『文化祭のクラスの出し物である演劇で、一緒に主人公とヒロインをやること』だった。誕生日の次の日、ホームルームの時間で気がついた時にはすでに出し物が演劇になっていて、配役も決まっていた。クラスの代表者が集まって行う抽選会で、1番人気の体育館を最も人が集まる時間に使えるのも、母さんの手回しによるものだろうと思われる。
 ウズヒが主役級の登場人物を演じるのに問題はないだろうけど、ボクがそんな目立つ役であれば多少なりとも反対意見も出るだろうと思っていた。だけど、行事がかなり盛大に行われる我が高校では、やる気さえあれば1つのクラスが2つ以上の出し物を行うことも可能なのである。
 という訳で、演劇のほかに出店も出すことに決まった僕たちのクラスでは何一つもめることなく、楽しく文化祭の準備をしています。もちろんボクもね。
 ただ1つ。

「綺羅君、いつ見ても綺麗だよ!」

 ボクの配役が、貴族令嬢『ルセリナ』がであることを除けばね。





 ・
  ・

 この演劇も父さんと母さんが演じた時は普通の配役だった(父さんはやたら求婚させられたらしい)と聞いたけど、今回はかなり特異だと思う。女装し、男装したウズヒにやたらと積極にアプローチし、最後の場面ではキスまで……。演技ではあるけどさ。
 そんないろいろと思うところのある演劇だけど、楽しそうに主人公を演じている彼女を見ていればそれくらいのことは何でもないと思える自分がいる。本当にウズヒと仲直りが出来て良かったよ。もし出来ていなかったらと思うと……。

「綺羅君、どうしたの?」

 椅子に腰かけて1人で考え事をしていると、ウズヒが整った顔を不思議そうな表情に変えて覗き込んできた。うん、やっぱりそんな表情でも君は美少女なんだね。

「ううん、特に何もないよ。なにかあった?」

「監督君が、『天領君があっちでボーっと椅子に座ってた』って教えてくれたの。今日はもう解散だって」

 なるほど。確かにみんなが帰り支度をしてる中で、1人だけボーっとしてたら目立つよね。
 すでに数人のクラスメート達は『やっと今日の練習も終わったぜ~』とか『明日が楽しみだね』とか『天領の女装ってやっぱり美人だよな。オレ、マジで惚れそうなんだよな』とか言ながら教室をあとにしている。
 うん、最後に出ていったクラスメート君とは一定期間、必要以上の接触を持たないようにしよう。

「じゃあ帰ろうか?」

「うん! 今日は買い出しの日だから、スーパーでデートだね」

 買い出しはデートになるのかどうかという疑問はわいてきたけれど、腕を絡ませながらニッコリ笑う彼女にボクがそんなことを言えるはずもなく……。
 半年前には(ボクの)血の雨が降る一歩手前になっていたはずの会話だったのに、見慣れた光景になったからなのか、『またやってるよ』『仲の良いことで』みたいな視線が飛んでくる。
 人が物事に慣れる早さに感心しつつ、生温かい視線を甘んじて受けながら手早く着替える。早くスーパーに向かわなきゃいけないからね。例の時間が迫っているもん。





 ・
  ・

 なぜか今日は学校を出るとき、腕を絡ませるのではなく、いわゆる〈恋人つなぎ〉だった。理由を聞いてみると、『今日は〈恋人つなぎ〉をした方が、綺羅君が喜んでくれる気がしたから』らしい。
 いやはや、やっぱり彼女はエスパーなんじゃないかと疑ってしまうよね。今日限定だとは限らないけれど、ボクがドキッとした事には変わりがないんだから。

 そして手を繋いだままたどり着いた先は、仲直りしてから毎日のように訪れているスーパー。魚も野菜も新鮮でお値段もお手頃。例の時間であるタイムサービスが始まる夕方頃には近所のおばさん方が大挙して押し寄せるのがいつもの光景。でも最近では大勢のおばさん方に混じって、1人の女子高生がお買い得品の取り合いをしているという噂が流れているそうな……。

「綺羅君、お待たせ。今日も戦利品をゲットだよ!」

 そう今ボクの目の前で、特売の卵を抱えてVサインを作っているスーパー女子高生(仮)がその噂の彼女なんですよ。晩御飯の獲物おかずを求めて集団の中で戦う様は、まさに主婦の鑑であると言えるだろう。

「お疲れ様、ウズヒ。いつも君ばっかりに任せちゃってごめんね」

 本当ならボクが行くべきだとは思うんだけど。ここへ来た初日に弾き出されちゃったんだよ……。そのまま2日経っても3日経っても、お買い得品を手に入れる事は出来なくて。
 結局その次の日にボクの代わりで入って行ったウズヒが、あっという間に特売の秋刀魚さんまを手に入れてきて、そしてその構図のまま今日に至ると。
 
「綺羅君のためなら、このくらい朝飯前だよ! さ、手早く他の食材も買っちゃって早く帰ろっ」

「うん、そうだね。あと必要な食材は……」

 ウズヒの提案に応じて残りの食材を2人で探し始める。普段より買わなきゃいけない量が多いのは、明日は文化祭の打ち上げがあるだろうし、明後日も片付けなどで買い出しには来られないだろうから。
 








 いつもより少しだけ長い『買い出しデート』を楽しんだあと、まだかすかに夏の熱気を含む風を受けながら、すっかり歩きなれた道を2人で辿っていく。
 どちらともなく、離していた手を握りなおして、ね。
 まずは更新が1年以上も遅れてしまった事を謝らせて頂きたいと思います。申し訳ありませんでした。
 更新が遅れた言い訳等の方は活動報告というものが出来たそうなので、そちらでさせて頂きます、よろしくお願い致します。

 あとこちらで報告させていただく事は、タイトルを変更しようと考えているという事です。
 投稿を始めた当初、今のタイトルは仮のもののつもりだったのですが、他のタイトル名が思いつかず、今までそのままになってしまっていました。
 もし、「今までのタイトルの方がいい!」というお声を頂ければそのままにしたいと思いますが、それでなければ急な話ですが今週中には変更をしたいと思います。新しいタイトルは『彼女は僕の……!?』です。

 いろいろと申し訳ありません。では、また次回もよろしくお願いします。
評価
ポイントを選んで「評価する」ボタンを押してください。

▼この作品の書き方はどうでしたか?(文法・文章評価)
1pt 2pt 3pt 4pt 5pt
▼物語(ストーリー)はどうでしたか?満足しましたか?(ストーリー評価)
1pt 2pt 3pt 4pt 5pt
  ※評価するにはログインしてください。
ついったーで読了宣言!
ついったー
― 感想を書く ―
⇒感想一覧を見る
名前:
▼良い点
▼悪い点
▼一言

1項目の入力から送信できます。
感想を書く場合の注意事項を必ずお読みください。


+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。