6年1組バスケ日記(8/8)縦書き表示RDF


本当にごめんなさい!コメディー要素をどんどん追加しているうちに前回のイミフメな状態を打破できませんでした…それでも読んで下さる方はどうぞ。
6年1組バスケ日記
作:パプリカちいたん



episode 7


 三時間目の授業が始まっても、美咲の達也への不愉快感は消せず、ずっと膨れっ面をしていた。

(無礼千万、言語道断、傍若無人)

 美咲の頭の中では達也の悪口が次々と挙げられていく。

(目の上のたんこぶってきっとこういう奴のことをいうんだ)

 時々達也に軽蔑の眼差しを向けるが、本人は依然として窓の外を眺めている。 故に、ただでさえ苛立っていた美咲が担任の田村先生が勝手に決めてしまった生活班のメンバーを聞いた時に卒倒しそうになったのも無理はない。

「生活班は席が近い者同士で適当に決めておいたからな。覚えやすいし、実用的だろ」

 そして、面倒臭そうに田村が言い渡した美咲の班のメンバーは――

「何であたしが篠崎こんなヤツなんかと同じ班にならなくちゃいけないのよおぉぉお!」
「文句を言うな、長谷川。この班を決めるのに10分は掛かったんだぞ」
「あんまり掛かってないし!」
「美咲、先生に対してその口のきき方はやめなさい」
「あんたはあたしの母親か!」

 美咲は自分を諭す怜香を思い切り睨みつけたが、

「まあ、この子はどうも最近反抗的なんですよ、思春期かしら」

 一向に手応えがない。

(のれんに腕押し、豆腐にかすがい、ぬかに釘)

 美咲の脳内はまたしても慣用句や四字熟語で埋めつくされた。
 自分の国語の成績がいいのはこういうところに由縁しているのかもしれない、とどうでもいいことを考えていると、左隣から冷ややかな声が聞こえた。

「取りあえず座ったら?」

 達也だ。

「え?あ、はい」

 初めて話し掛けられた驚きで素直に座ってしまった美咲は、憎まれ口を叩くタイミングを失ってしまった。
 それを見た怜香がクスッと笑った。

「グッジョブ、篠崎クン。キレてる美咲が素直に言うことを聞くなんて前代未聞よ、しかもほぼ初対面で」
「長谷川には案外ピシャッと言ってやった方が効くのかもしれない…」

 何やらメモをとっている田村を前に、美咲は反論する気力も失くし、代わりに大きな溜息をついた。

篠崎コイツといるとどうも調子が狂うなあ)

 また窓の外を眺め始めた達也にガンを飛ばし、生活班の役割決めに渋々参加し始めた。

「そんなに嫌な顔しないの。私が同じ班にいるだけでもラッキーでしょ?」

 怜香が美咲に微笑みかける。あぁ、今まで何人の男共がこの天使のような微笑みに騙されたことか、と嘆きながら、

「自覚してないんだったら教えてあげるけどね…」

 美咲は大きく息を吸い込む。

「さっきからあたしの怒りメーターを押し上げている要因のおよそ40パーセントは」
「あのさ」
「へ?」

 あんたのその態度なんだよ!と続けようとしたところを中断された美咲は思わず間抜けな声を出してしまった。

「お前さっきから煩いんだけど、静かにしてくれない?周りの班にも迷惑だよ」

 見なくても分かっていたが、念のために視線を右へ45度ずらしてみると。

「…。」

 達也、アゲイン。

 美咲の頭の中で何かがプチッと音を立てて切れた。

「あんたねぇ、何か勘違いしてるんじゃないの?あたしがあんたなんかの指図を受けると思ったら大間違いだからね!転校初日に何よ、エラソーに!」
「そのまくし立てることマシンガンの如し、だな」
「大体ね…って、え?」

 クラスのみんなの爆笑で美咲は我に帰った。

(今コイツ、笑いを取った!?…しかし武田信玄の陣旗、風林火山のパロディとは中々やるなあ)

 余りの意外性に一瞬爆笑ネタが自分であることを忘れていた美咲であった。

「ホント、篠崎クンには脱帽ね」

 怜香がにやり、と一瞬口の端を歪めた。

「気が合いそうね、色んな意味で」

 美咲の背中に原因不明の悪寒が走った。咄嗟に振り返って怜香を見据えたが、怜香は依然として天使のような微笑みを崩さなかった。

(何気ない言葉に強烈な悪意を感じるのは何故…)

 うなだれている美咲にとどめを刺したのは意外にも田村だった。

「あーそうそう、この席順、面倒だから1年間変えるつもりはないからなー、ちゃんと近所の奴とは仲良くしとくんだぞー」

 チャイムがなる。号令を掻き消すほどの不平が教室を飛び交ったが、田村は逃げるようにそそくさと教室を出ていった。

「みっちゃん、怜ちゃん!ヒドイよね、面倒くさいから席替えしないとか。あーあ、これで博之の隣の席になる夢が消えちゃったじゃん!」

 休み時間に突入した瞬間、佳奈が猛スピードで駆け寄ってきて、怜香に泣きついた。

「あーあ、せめて同じ班だったらな〜、席が変わらない、てことは班も変わらないんでしょ?ねえ、怜ちゃん、みっちゃん…て、みっちゃん聞いてる?」
「無駄よ、今幽体離脱準備期間中だから」
「あ、そっか、そうだよね…ってはいぃぃい!?」

(てかそこサラっというトコじゃないよね、怜香…)

 遠のく意識を必死で繋ぎとめ、心の中で全力でツッコミをいれた直後、美咲の世界は完全に闇に包まれた――はずだったのだが。

「幽体離脱の工程は全て終了したみたいね。そんなに篠崎クンと同じ班が嫌なのかしら、私もいるのに…まあ、残念ながらそれも今となっては関係ないみたいだけど」 闇に包まれた世界の深淵で美咲はまたもや原因不明の悪寒が背中を駆け抜けていくのを感じた。
 頭上の色彩溢れる懐かしい世界から親友の声が聞こえてくる。

「残念だわ、折角いじり甲斐がある子だったのに…まあ仕方ないわね。誰か、とりあえず体の方の処分をお願い」
「ハイ、ストォォォップ!!!」
「あら、まだ逝ってなかったの?」
「逝くって何ですか逝くって!それに人が高度な自動現実逃避プログラムを実行している間に体を処分しないで下さい!大変危険ですので!」
(てかこれって非常識な客に注意する店員の口調だ…)
「あ、ごめんねみんな、もう処分する必要性はなくなっちゃったみたい」
「って人の話を聞けこのドS腹黒優等生めがぁぁぁあ!!!」

 美咲の絶叫が木霊する。そんな中、教室から2つの影がそっと抜け出す様子を、憎しみを込めた眼差しで見つめている者が1人いた……


如何でしたでしょうか。今回は美咲がいじられまくりでした(笑)梓と亮平が話していた内容の解明は次回に持ち越される模様です。評価・感想など頂ければ励みになります。













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