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この世界がゲームだと俺だけが知っている 作者:ウスバー
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第二百二十四章 絶対神剣アルティヘイト

あ、あんまり順調に連続更新してると読む方も緊張感がなくなってつまらないかなって思ったから!
……すみませんでした!
「いやあ……神々の試練は強敵でしたね! ……あれ?」

 ねんがんの絶対神剣アルティヘイトを手に入れ、俺はホクホク顔でみんなのもとに凱旋したのだが、なぜか仲間たちの視線が冷たいことに気付いた。

 なんというか「またこいつは……」みたいな視線の圧力を感じるのだ。

「えっと、どうしてみんな、そんな険しい顔をしてるんだ?
 こ、今回は俺、すごく頑張ったよな?」

 視覚と聴覚を潰されたまま、三十二メートルの道を歩くという苦行を成し遂げたのだ。
 少しくらい労ってくれてもいいと思う。

 というか、あれだけ俺のことを気遣っていたはずのイーナも、どうしていいか、という顔をして戸惑ったようにこっちを見ている。
 いや、その、感極まって抱き着いてくるとか、そのくらいの反応を予想してたんだけど、ちょっと想定外だ。

「頑張ったも何も、私の目の錯覚でなければ、貴方は一瞬で剣の前に移動したように見えたのですが。
 とりあえず、説明をして頂けますか?」

 出発前にはあれだけいい感じのやりとりをしたミツキから、心なしか冷たいトーンで詰問をされる。
 今回は練習の通りにやっただけで、特に変わったことはしなかったと思うが、まあいいか。

「ええと、まずこの石板の効果については分かってると思うんだけど……」

 俺は何を説明すればいいかよく分からないままに、とりあえず話を始めた。



 この『邪神大戦映像記録』の石板は、使っている間の感覚としては別の世界に飛んでそこの映像を見ている、という印象があるが、システム的に言えば、この映像がフォローしているのは視覚と聴覚だけで、ゲーム世界における位置座標やステータス状態はそのまま保持されている。

 ファンタジー風に言うと、身体は現実に置いたまま、目と耳だけが過去に飛んでいる、という感じだろうか。
 要するに、目に入ってくる映像や音を無視すれば、映像を見ている間も動くことが出来るのだ。

 そして、この映像記録のもう一つの特徴がある。
 図書館でこの石板を使った真希が、「一瞬にして」うずくまっていたのを思い出せば答えは出るだろう。
 映像を見ている間は時間が進まないため、客観的には時間を止めたような効果が得られるのだ。

 そして、映像を見ている間は時間が止まっている、というのを利用したバグ技が、『瞬足万引きダッシュ』だ。
 図書館の本を外に持ち出せば本来は盗難扱いされるのだが、映像を見ている間に行うと盗難判定が発生しないため、ノーリスクで本を盗むことが出来た。

 あとはまあ、この応用だ。
 この試練ではスキルと魔法が効かない、ということを聞いて、俺は同じくスキルも魔法も使えない図書館での本を盗む『瞬足万引きダッシュ』のことをすぐに思い出した。
 この試練でも石板を使って時間を止めれば比較的簡単に試練をクリア出来るかも、と考えたのだ。

 その思いつきが確信に変わったのは、最初に俺たちが神々の試練にやってきた「予習」の時。
 事前に聞いた情報では、試練は途中でやり直しても特にリスクがないという話だったので、色々と検証してみようと思ったのだ。

 そうして、その「予習」では時間を止めた時に問題なく光の道を歩けること、時間を止めた状態では罠が発動しないことが分かった。
 そうなれば問題になるのは、俺が三十二メートルの光の道を落ちずに歩き切れるかどうかだけだ。

「……だから、ミツキに頼んで光の道を再現した訓練施設を作ってもらって、今日まで頑張ってきた、んだけど」
「で、では、貴方が練習していたというのは、最初から……」

 言わずもがなな質問に戸惑いながらも、俺は素直に答える。

「え? ああ、光の道をまっすぐ歩く練習に決まってるだろ。
 だってほら、目隠しの状態で三十メートルもまっすぐ歩くのって、難しいし」

 道を逸れたら死んじゃう訳だから、本当に緊張したし、大変だったんだよなぁ。
 俺はそんな思いを込めて口にしたのだが、ミツキは、

「あ、あぁぁぁああ……」

 と何とも形容し難い気の抜けた息を吐くと、「もう何も聞きたくない」とばかりに猫耳をペタンと閉じてしまった。

 ……う、うーん?
 石板を使うってことはちゃんと最初に話してたと思うんだが、どこに驚きポイントがあったのだろうか。

 首を傾げていると、同じく疲れた顔をしたサザーンが、俺のことを変な生き物を見るような目で見ていた。

「ソーマのことは、今さらとして……。その石板もとんでもないな。
 時間を止める、なんて……」
「いや、どうだろ。確かに便利ではあるけど」

 どんな状況でも役に立つという訳ではないし、使い方はかなり限定される。
 そもそも映像を見ている状況は時間停止、というよりは、システム的に色々なものへのアクセスが無効にされているというような状態のため、この時に出来ることは実はあまりない。

 例えば敵に向かって近づくことは出来るが、スキルは撃てない。
 剣を振って攻撃をすることは出来なくはないが、当たっても命中判定は発生せず、当然ダメージも入らない。
 基本的に、自分が移動するか、もしくは何かを移動させるくらいにしか使えないと見ていいだろう。

 ずっと前が見えないので、一度自分の位置を見失ったらもうどうしようもないし、それ以外の制約として、一日に一回しか使えない、しかも使う度に主観時間では一時間に及ぶような鬱映像を見なくてはならない、となると、あまり積極的に使いたいようなものではない。

 それでも、例えば王都で欠片が復活した際の、塔の最上階を目指していた時などは役に立ちそうではあったのだが、あの時は真希がすでに使用していたため、使うことが出来なかったのだ。

 説明を終えても拭い切れない、どこか微妙な空気に俺が戸惑っていると、

「と、とにかく! 目的のものは手に入ったんですね!
 おめでとうございます!」

 その雰囲気を吹き飛ばすように、イーナがとびきり明るい声で、俺を祝福してくれた。

「あ、ああ、ありがとう!
 これで邪神との対決に一歩近づいたよ」

 言いながら、今回の収穫、ソウルイーターとアルティヘイトを取り出し、両手に持つと、試しにブンブンと振り回してみる。

 うん、猫耳猫のトップツーの武器がそろい踏みしているというのは、考えてみればかなりすごいことだろう。
 出来れば、ゲーム時代に達成したかったところでもあるが、それは高望みが過ぎるというものか。

「あ、それがソウルイーターなんですね!
 わたし、鎌って初めて見ました!
 なんというか、見た目からして凶悪というか、すごく強そうですね。
 これを使ったら、邪神だって簡単に倒せそうです!」

 やはり冒険者、武器のことになるとテンションが上がるのか、さっきよりも自然な態度でイーナが賞賛の声を送ってくれる。
 だが、それはちょっと誤解がある。

「あ、ああ……。でも当たり前だけどこれ、そのままは使わないぞ?」

 俺が驚いてそう返すと、なぜかイーナの方までその驚きが伝染したように、目を見開く。
 混乱した様子で、問いを重ねてきた。

「で、でも、最強の武器を手に入れるって言って、この二つの武器を取ってきたんじゃ」

 見当外れなイーナの言葉に、俺は苦笑した。

「違う違う。最強の矛と盾を手に入れるために、ソウルイーターとアルティヘイトが必要だ、って言ったんだよ。
 取ってきたものイコール最強の武器、とは言ってないだろ」
「じゃ、じゃあ、その、ソウルイーターは……」

 恐る恐る、という様子で尋ねたイーナに、俺は笑顔で答えた。

「――もちろん! 武器を作る、材料にするんだよ!!」




 強い武器というのは、当然そのまま使っても強いが、武器合成機に入れてほかの武器と合わせることでもっと強くなる。

 武器を作る三要素、『形状』『性能』『特殊』のうち、好きな部分を抜き出し、ほかと合わせることで、理想の、さらに強くて便利な武器を作ることが出来るのだ。

 この世界では関係ないが、ゲームではユニーク武器や専用装備などの特殊な武器は合成不可能なことが多かったが、ソウルイーターは一品物で性能も特殊なくせに合成不可フラグは持っていなかった。
 これはもう、合成してくれと言っているようなものだろう。

 俺はためらいなく、ソウルイーターの巨大な刃を武器合成機の中に放り込んだ。

 武器合成はもうお手の物だ。
 鼻歌交じりに作業を済ませ、ささっと終えて戻ってくると、玄関にはまだみんなが残って待ってくれていた。

「折角手に入れた最強クラスの装備を溶かす、とは。
 相変わらずですね、貴方は」

 ようやく復活した様子のミツキがそんな風に苦言とも愚痴ともつかない言葉を返してくる。
 ちょっと胸に刺さる言葉だったが、今は新しい武器を手に入れた喜びが勝った。

「まあそう言うなよ。それより、見てくれ。
 これが俺の、新しい武器だ!」

 その言葉と同時に、鞘から合成を終えたばかりの武器を抜き放つと、びゅん、びゅんと振り回す。

 すごい風切り音がして、なんとなく気持ちいい。
 ……ちなみに武器の形状は不知火のままなので、見た目的には全く変化がないのだが、なんとなく強くなったような気がする。

「よし、これを『真・不知火』と名付けよう!」

 テンション高く宣言してから、鞄に入れてあったシショーじゃない松明を放り投げ、斬る。

「おおー!」

 真・不知火はまるで豆腐のように松明を切り捨て、仲間たちから喝采を浴びる。
 ……うん、まあ、普通の松明だったら斬れて当然なんだけど、そこはまあ、ね。

「よし、次は……!」

 言いながら、さらに左手で脇差も抜いて二刀流を試していると、不思議そうな顔で、イーナが尋ねてくる。

「あのー? アルティヘイトの方は、試さないんですか?」

 突然飛び出してきたおかしな言葉に、俺はしばらく、返事をすることが出来なかった。

 イーナはもしかして疲れているのではないだろうか。
 そんなことを思いながらも、俺は苦笑いをしながら答える。

「何を言ってるんだよ。アルティヘイトなら、ほら……目の前にある(・・・・・・)だろ?」

 俺としては、当たり前のことを答えたはずなのだが、

「えっ?」
「んっ?」

 どうにも噛み合わず、イーナと二人、顔を合わせて首を傾げ合う。
 だが、やがて……。

「ま、まさっ……まさか、とは、思うん、です、けど……」
「うん?」

 何かに思い当たったのか、突然に顔を青くしたイーナが、震える唇を開く。

「もし、かして……。アルティヘイトまで合成しちゃった、なんて、ことは……」

 怯えたような声音で訊いてくるイーナに、俺はやっと、彼女たちが何を心配しているのか、分かった。
 だが、それはとんだ杞憂と言うものだ。

「あぁ、そういうことか。大丈夫大丈夫、心配するなよ」
「で、ですよね。まさか……」

 俺はイーナを安心させるように穏やかな笑みを作ると、優しく誤解を解いた。


「ちゃんと、性能は残してあるからさ!」
「…………えっ?」



 それから……。


「ああ、ごめんなさいごめんなさい! 神様許してください!
 ソーマさんに悪気はないんです! ただちょっと、頭がおかしいだけなんです!
 ごめんなさい! ごめんなさいぃ!!」

「神からの贈り物だろうと問答無用で溶かしちゃうなんて、流石ソーマだね!」

「家宝……武器合成……金剛徹し……うっ、あたまが……」

「ミツキ! しっかりしろ! ミツキィイイイ!!」


 玄関には突然錯乱した仲間たちの叫びが響き渡り、せっかく完成した武器のお披露目は、延期を余儀なくされたのだった。
今回のサブタイトルは『さらば! 絶対神剣アルティヘイト』にしようかと思いましたが、流石にやめました

次回更新はあし……また今日!
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