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この世界がゲームだと俺だけが知っている 作者:ウスバー
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第二百二十二章 隠しダンジョン

慌てててあとがき書き忘れてた
 ――初めて神々の試練に挑んでから、三日が過ぎた。

 所詮凡人に過ぎない俺が、あの試練を確実に突破するには、十分な練習が不可欠だ。
 ただ、その訓練については適切な環境を整えるのが難しいかと思っていたのだが、ここでもミツキがチート級の技能を発揮した。

「あの空の道ですか? 横幅はおよそ一メートルと九十二センチ。
 剣までの長さは三十二メートルと少し、という所でしょうかね」

 そうしれっと答えたミツキの言葉が、今でも忘れられない。
 空間把握能力がすごいというのか、間合いを測る能力を磨くうち、百メートル以内であれば誤差数センチで長さを測ることが出来るようになったという。

 どんな超人だよ、と言いたいところではあるが、実際ありがたい。
 ミツキの監督の下、神々の試練を再現した訓練施設を作り、俺はそこで試練に向けた練習を繰り返した。

 とはいえ、練習の精度を上げるには石板の映像記録が不可欠。
 あれは一日に一回しか使えないため、一気に成果が出る、という訳にはいかない。

「それで、れんしゅーの進み具合はどーなの?」

 だから夕食時、猫耳屋敷で真希にそう尋ねられた時は、思わずビクッとしてしまった。

「い、いや、最初よりはだいぶよくなったし、頑張ってるよ。
 というかお前には立派な家……というか城があるんだから夕食の時くらいはちゃんと帰れよ」
「ざーんねんでしたー! お父さんにも許可もらってるもんねー」

 追い出されてたまるか、という態度で憎まれ口を叩く真希。
 実際憎たらしいが、これで話は逸らせた。
 そう思って俺がホッとしていると、

「…それ、で。れんしゅう、は?」

 リンゴがすかさず口をはさんできて話を戻してくる。

 ぼーっとしているようで聡いリンゴのことだ。
 俺の自信のない様子を見抜いたのかもしれない。

「そ、その……だから、頑張ってるぞ?
 さ、さっきも本番を想定した練習とかしてさ」
「…して?」

 追及に容赦がないリンゴ。
 俺は観念して、遂に口を割った。

「その…………落ちた」
「えっ!?」

 俺の告白に、今まで特に反応していなかったイーナまで、身を乗り出してくる。

「お、落ちたって、どういうことですか?」
「だ、だから、その、訓練場で道の外に落ちたんだよ」

 真希から言わんこっちゃない、と言わんばかりの視線が刺さる。

「い、いや、だってしょうがないだろ!
 俺だって、実際にやってみるまであんなに難しいとは……」

 俺は自分でも見苦しい言い訳を試みたが、

「あ、あの、ほんとに大丈夫なんですか?
 あの試練では、レベルとかは全部意味がなくなっちゃうんですよね。
 もし失敗したら、いくらソーマさんでも……」
「う、うぐ……」

 心の底から心配をしていそうなイーナの言葉に、黙らされてしまう。
 からかってくるのならまだ答えようもあるが、こうも真剣に気遣われると強がりも口に出来ない。

 その居心地の悪い空気から逃れるように、俺は声を張り上げた。

「そ、それはともかく、だ。みんなに朗報がある!」

 まるで話を逸らしたかのようなタイミングだが、他意はそんなにない。

 石板の問題がある以上、あまり根を詰めて試練の練習をしても意味がない。
 何より、俺以外の人間の手が空いているのに何もしないのは時間がもったいない、ということで、訓練と並行してみんなで『あるアイテム』を集めていたのだが、それが遂に今日、全て集まったのだ。

 俺は、集まったアイテムを、ゴロン、とテーブルに並べた。
 そこに並べられたのは、『陽光の輝石』をはじめとする、隠しダンジョンの入り口を開くためのアイテム。

 ゲームではこのアイテムを正しい組み合わせで扉にはめ込むのがまた大変だったのだが、不幸中の幸いというか、不幸ゆえの幸いというか、ゲームで組み合わせ探しに苦労した分、どこにどのアイテムを入れるのが正解かは、今でもはっきりと覚えている。
 つまり、これが揃っていれば……。

「遂に、『封魔の迷宮』に辿り着ける、という訳ですね」
「ああ。あのダンジョンの『ソウルイーター』は、戦闘力強化のためには不可欠だ。
 準備を整えて、明日早速挑戦しようと思う」

 俺が宣言すると、仲間たちの雰囲気がグッと引き締まる。

「では、明日は皆でそこに?」
「いや、封魔の迷宮は高難度ダンジョンだ。大勢で行けば、それだけ死亡のリスクも増える。
 俺ともう一人、つまり二人だけで、ダンジョンを攻略しようと考えてる」

 その言葉に、部屋の緊張がさらに高まるのが分かる。
 やはり、今回一番の大仕事に誰が選ばれるのか、というのは気になるらしい。

 その視線を痛いほどに感じながら、俺はとある人物を示した。


「――サザーン。一緒に来てほしい」


 俺の言葉に、仮面の魔術師はいつも通り偉そうにうなずいて、

「ふっ、僕か。やはりこういう重要な場面では……えっ、ぼ、僕!?」

 それから仮面が半分ずり下がるほどの勢いで驚いた。

「ああ。サザーンには、俺と一緒に封魔の迷宮に来てほしい」
「え、あ、だ、だって、こういうのは、ミツキとかリンゴとか……」

 柄にもなく狼狽するサザーン。
 その様子は見ていて面白いが、封魔の迷宮は最高難度ダンジョン。
 当然、俺についてくれば命の危険だってある。

 ここは、茶化すべきじゃないだろう。
 俺は出来るだけ誠意を込めて、サザーンに誘いの言葉をかけた。

「お前の力が、必要なんだ。……一緒に、来てくれないか?」

 俺が真剣に言葉をかけてくるなんて思わなかったのか、サザーンは焦った様子で無駄に手を振り、意味もなく左右を見渡してから、

「あ、え、えっと……わ、わた……僕でよければ。
 ……よ、よろしくお願いします」

 なぜか、手を差し出してきた。
 意味はよく分からなかったが、とりあえず握手しておく。

「……では、残った私達は館で待機、という事ですか?」

 なんとなく止め時が分からず、随分と長い間サザーンと握手をしたままだったが、どことなく冷たいミツキの声に我に返る。
 別に悪いことをしていた訳ではないのだが、なんとなく責められている気分になって、俺は焦って口を開いた。

「あ、いや、もちろん、ほかのみんなにもやってもらいたいことはある。
 武器以外にも揃えておきたいアイテムはたくさんあるから、それを手分けして集めてもらいたいんだ」

 俺は最初に、ミツキに向き直った。

「まず、ミツキにはデウス平原でブッチャー狩りを頼みたい」
「ブッチャー……成程、パワーシード集めですね」

 流石にミツキは察しがよくて助かる。

「ミツキなら、特に危険もなくキングブッチャーを一人で倒せると思う。
 ブッチャーは倒しさえすれば必ずパワーシードを落とすから、ミツキにはそれを集めてほしい」
「了解です」

 ミツキはなんだかんだで万能なので少し迷ったのだが、やはり危険なくブッチャーを倒せる者、と言えば彼女をおいてほかにいないだろう。
 そして、次に重要な役目は……。

「それから、真希とリンゴ。少し危険ではあるけど、二人には魔王城に行ってほしい」
「魔王城? でもあそこって……」

 真希の言いたいことは分かる。

 あそこはもう水没していて、魔王もそれで死んでしまった。
 当然、城の中の雑魚モンスターも無事であるはずもなく……。

「ミツキに魔王の持っていた『陽光の輝石』を取りに行ってもらったんだが、その時見た限りでは、やっぱりモンスターもほとんど水没ダメージで死んでるか、瀕死状態だったそうだ」
「ですが、モンスターは死んでもドロップアイテムはしばらく残ります。
 私が行った時も、城のあちこちにアイテムが放置されていました」

 俺の言葉を継いで、ミツキが口を開く。
 真希はその言葉に首を傾げた。

「え? アイテムが落ちてたのに、拾ってこなかったの?」
「いえ、それが……」

 問われて、ミツキは申し訳なさそうに耳をぱたぱたとさせた。
 かわいい……ではなくて。

「あー、その、ミツキは魔王城アレルギーでな」
「へ?」

 突拍子もない病名に、真希が目をまん丸にする。

「魔王が倒れた事で克服出来たと思ったのですが、今でも魔王城に行くと、激しい動悸、息切れ、めまい、のどの渇き、強敵と戦いたい衝動、といった症状に襲われてしまって、長くいられなくて。
 とりあえず目的の陽光の輝石だけを確保して、戻ってきたのです」

 何だか風邪の諸症状みたいだが、これはミツキが同行すると魔王戦が簡単になってしまうことを恐れた猫耳猫スタッフの設定のせいだ。
 うん、何だか最後のだけ少し違う気もするが、きっと猫耳猫スタッフのせいだ。
 きっとそう。

「と、とにかく、魔王城にはまだ敵が落としたアイテムが残ってる。
 だから二人には、それを集めに行ってほしいんだ」

 そこまで言うと、リンゴが頭の上に電球が点いたような仕種で、ポンと手を打った。

「…ん、わかった! したいあさり!」
「ま、間違ってはないけど言い方は考えような!」

 何しろ、あそこは曲がりなりにもラストダンジョン。
 出てくる敵が強い分、アイテムの質も確かなものだ。

「ただ、魔王城の敵は強いから、くれぐれも気をつけるようにな。
 無理せず、少しでも厳しいと思ったら転移石で帰るように」

 今のリンゴと真希の強さなら何とかなるとは思うが、こんなことで死なれでもしたら浮かばれない。
 俺が釘を刺すと、二人ともしっかりうなずいてくれた。

「特に集めてほしいのは、装備品より消費アイテムだ。
 あそこの敵は貴重なポーション系の回復アイテムをぽこじゃか落とすし、それに、レアドロップ枠には最上級ポーションとか、あの記録映像に出てきた『竜の秘宝』まで……」
「えっ!!」

 その俺の言葉に強い反応を示したのは、話をしていた二人ではなく、イーナだった。
 イーナは大声を出したかと思うと、一転、真面目な表情で黙り込んで俺を見つめていた。

「ど、どうしたんだ、急に大声を出して」
「あ、いえ、その……ソーマさんたちって、ほんとに魔王城を攻略したんだなって」
「え? あ、ああ。そういや、イーナはその時いなかったもんな」

 あれを攻略したと言えるのかは微妙だが、そういうことなら分からなくもない……か?

「あ、あの、魔王城、わたしもついていっちゃ、ダメですか?」
「え?」

 俺が戸惑っていると、イーナがおずおずとそんな話を切り出してきた。

「い、一度くらい魔王城を見てみたいですし、わたしもソーマさんの役に立ちたいんです!」
「やる気は嬉しいけど、イーナは水龍の指輪を持ってないからな」
「う、それは……」

 水没した場所で戦うには、水中行動が可能になる水龍の指輪が不可欠だ。
 ただ、あれはバグ装備だから、持っていない人に渡すという訳にもいかない。

「ほ、ほかにも頼みたいことはあるんだ。
 ほら、邪神が封じられてる場所って沼だろ?
 水の上に立てるようになるフロートリングってアイテムを手に入れてほしいんだ」
「で、でも……」

 なおも渋っている様子のイーナだったが、

「あれはラムリックのダンジョンにあるんだ。
 ラムリックだったらイーナの方が詳しいだろ?」
「それは……はい、頑張ります」

 俺が念押しすると折れてくれた。
 気が変わらないうちに、と俺は矢継ぎ早に指示を出す。

「じゃあ、レイラ。イーナと一緒にフロートリングを探してほしい」
「うん! 命に代えてもやり遂げてみせるね!」
「い、いや、命には代えなくていいから」

 そもそもフロートリングがあるダンジョンに命の危険とかないし。
 いまだにどこか納得していない様子のイーナは気にかかったが、とりあえずこれで全ての方針は決まった。
 最後に、明日一緒に探索をするサザーンに声をかける。

「じゃあ、サザーン。明日はよろしくな」
「ふっ! 案ずるな。僕が同行すれば、どんな困難な試練だろうともはや解決したも同然だ。
 だから、その……ぼ、僕を選んだこと、ぜったい、後悔させないから」

 後半は小声になったものの、サザーンも何だか気合が入っているようだ。
 これなら明日は期待出来るな、と思いながら、その日は解散となった。



 そして、翌日。

「じゃ、サザーン。ガンガン頼むぞー」
「ど、どうせ! どうせこんなことだと思ってたよ、タイダルウェイブ!」

 封魔の迷宮には、元気にダンジョンを水で埋め立てる俺とサザーンの姿があった。

「く、ううう! 僕はこんなことのために魔法を覚えたワケじゃないのにぃ!!」

 閉鎖型のダンジョンに対しては、水没させるというのは非常に有効な手だと、魔王城の一件で分かった。
 塔だの天空都市だの謎空間だので活躍させる機会はなかったが、封魔の迷宮ならこのやり方で水没させられるだろう。

 水没した場所なら水ダメージで何もせずに敵を倒せるし、そうでなくても水の中ということで動きを制限出来る。
 まさに一石二鳥という訳だ。

「だ、大体、タイダルウェイブならお前だって使えるだろ!
 一人でくればよかったじゃないか!」
「俺は戦士系だからMPがあんまり高くないんだよ。
 それに、一人が魔法を使ってる間、もう一人が警戒してる方が安全だろ」

 その点、サザーンは魔力お化けで、水龍の指輪も持っているため、水中行動も問題ない。
 まさにうってつけの人材と言える。

「くそぉ! くそぉぉ! き、昨日は緊張で眠れなかったのに、う、うううう!」

 何もそこまで気負わなくても、と思うが、豪快なようでいて案外小心者なのがサザーンのいいところ、かもしれない。

 ただ、サザーンのそんな不満とは裏腹に、探索は非常に順調に進んだ。

 何度も来たことのあるダンジョンだし、ソウルイーターがある宝箱の場所は、俺が把握している。
 道中の敵も全員がほぼ戦闘不能になっていて、拍子抜けするほどあっさりと入手出来てしまった。

「こ、これで終わり、か?」

 サザーンもそう思ったようで、どこか気が抜けたような声でそう言った。
 ただ……。

「……実は、みんなには言わなかったんだけどさ。
 ここに来たのは、もう一つ目的があるんだよ」

 俺が切り出すと、サザーンはきょとんとして、ついで懐疑的な目になった。

「い、いやだ! このタイミングでお前が何か言うのは、絶対聞いちゃダメな奴だ!」
「お、おいおい……」

 むしろサザーンにとっては嬉しい知らせだと思うんだが、失礼な奴だ。
 まあいいや。

「いや、だって、せっかくここまで来たんだからさ」

 言葉を続けながら、いやいやと耳を押さえるサザーンの手を、無理矢理引きはがして、


「――ついでにちょっと奥に行って、邪神の欠片を溺死させてこようぜっ!」


 俺は笑顔で、そう提案をしたのだった。
合掌!!

次回更新は明日!
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