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この世界がゲームだと俺だけが知っている 作者:ウスバー
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第二百十九章 果てなき戦い

余裕の連続更新!!
 邪神大戦の映像記録、最終話は、邪神との最終決戦の続きから始まった。
 俺たちが戦った欠片ではない、本物の邪神との戦い。

 先頭に立つのは、勇者アレクス。
 両手に二振りの剣を、猫耳猫世界においても最高のスペックを持つ武器『絶対神剣アルティヘイト』と、彼の最愛の人である光の王女シエルがその身を犠牲にして作り上げた剣『騎士剣シエル』を携え、彼は邪神に対峙する。

 十傑と呼ばれた英雄たちも、剣聖ルデン、死神フィーン、神弓師ローデンが倒れ、光の王女シエルが剣へと身を変じたことで、今や半分になってしまっている。
 しかし、それでもなお、いや、だからこそと言うべきなのか、人間側は邪神を圧倒していた。

「……潰レロ」

 ひび割れたような声と共に、おぞましい触手が轟音をあげて勇者に迫る。
 だが……。

「舐める、なぁ!!」

 アレクスが右手の騎士剣シエルを一振りするだけで、その触手はあっけなく両断された。
 だが、それも当然だ。

 彼が振るう騎士剣シエルには、魔族リヒターと王女シエル、二人の命が、ゲーム的に言えば高レベルキャラクター二人分の能力が宿っている。
 武器の攻撃力も相応に高くなっているはずだし、騎士剣シエルを手にしたアレクスの主要能力値は、武器のステータス補正によって二倍程度にはなっているだろう。

 そして……。

「『切り札』を使います! 援護を!」

 さらに、戦況は動く。
 今まで沈黙を守ってきた大魔術師ネームレスが、詠唱を始めたのだ。

 もちろん、そんなことを許す邪神ではない。
 すかさずネームレスの方を向き直り、その邪悪な瞳で彼を見据える。

虐殺の(キル)閃光ビーム

 言葉と共に撃ち出されるのは、一撃必殺の『虐殺の(キル)閃光ビーム』。
 一直線にネームレスへと向かうその死の光は、しかし彼の身体に辿り着くことはない。

「させ、るかあああああああ!!!」

 おたけびと共に間に割り込むのは、勇者アレクス。
 割って入った彼に当たった光線は、まるで最初から存在しなかったかのように、雲散霧消させられる。

 それは、右手の絶対神剣アルティヘイトの特性だ。
 持ち主に対する遠距離攻撃を全て無効化する、というチート級の能力。
 皮肉にも、仲間が倒れてかばう対象が少なくなったおかげで、アレクスの能力は最大限に生かされていた。

 息つく暇もない、目まぐるしい攻防に、俺は思わず身震いする。
 あと、サザーンの調教を受けて『キルビーム』に自然と『虐殺の閃光』とかいう脳内テロップを出してしまった自分にも震える。

 そして、遂に、

「お待たせしました! 『タイム・ストップ』!!」

 ネームレスの呪文が完成する。

 邪神を封じ込めるように三角錐のフィールド形成され、その透明な空間に閉じ込められた邪神がピタリとその動きを止めた。

「この魔法は十秒しか持ちません! その間に……」

 邪神に向かって手をかざしながら、ネームレスが叫ぶ。
 それに呼応して動いたのは、アレクス。

「十秒もあれば十分だ!」

 彼は二刀を構え直すと、仲間たちを振り向いた。

「ルーナ! とっておきの支援をくれ!
 義矢門! シズル! 魔法の解除と同時にコアに一斉攻撃をかける! 合わせろ!!」

 そして、後ろも振り返らずに、邪神に向かって駆け出していく。

「ま、任せて! オールライズ!!」

 それを追いかけるように、月光姫ルーナの支援魔法が降り注ぎ、

「あらぁん、わたし後衛なのに、人使いの荒い勇者様ねえん」
「ふっ。氷雨流剣術の真髄、今こそ見せてあげましょう」

 マッチョヒーラーの義矢門と、猫耳剣士のシズルがその背に続く。

「ぐっ! 魔法が、解けます!」

 ネームレスの言葉と同時、邪神を封じ込めていたフィールドが霧散し、そこに三つの影が飛び込む。

「一番槍は、もらうわよぉ!」

 躍り出た巨体が、わずかに反応出来た触手をちぎり飛ばし、コアへの道を作る。
 そうして生まれた間隙に、猫のように潜り込むのは、剣士シズル。

「まだ終わりませんよ。氷雨流奥義、清流!!」

 触手をかいくぐって撃ち出された剣閃は、正確に邪神のコアを抉る。

「……浅い、ですか。ですが、道筋は作りました」

 そして、シズルの影から、跳びあがるのは、もちろん、

「これで、終わりだぁ!!!」

 二振りの剣を携えた勇者、アレクス。

「これが俺たちの、人間の力だ! 天覇、無窮飛翔剣!!」

 アレクスの二刀が、邪神の中心部、真っ赤に脈動するコアを、捉える!
 刹那、真っ赤なコアとアレクスの剣は拮抗するが、それも一瞬。

「ミゴト、ダ」

 邪神のコアにヒビが入り、そして……。


「ア、リガ、ト……」


 真っ赤なコアはそのまま、粉々に砕け散った。

 あとを追うように、邪神の巨体は崩れ、光の粒子へと変わっていく。
 そして、数秒が経つ頃には、そこには砕け散った赤いコアの破片だけが残っていた。

「たお、した……のか。
 おれ、たちは、邪神を……」

 虚脱した声で、アレクスがつぶやいた。
 それも、当然だろう。

 勝利したとはいえ、アレクスたちが失ったものは大きかった。
 半数に近い仲間を殺され、街を焼かれ、最愛の人をも失った。

 だが、それでも彼らは勝った。
 あの邪神に、打ち勝ったのだ。

「……助かったよ、ネームレス。あれが、あんたが開発していた新呪文なのか?」
「はい。邪神には全ての状態異常が効きませんでしたからね。
 それならいっそ、時間を止める魔法を作ってしまえば、と思ったのです」
「はは。とんでもないな、そりゃ」

 彼らは無理にでも笑顔を浮かべ、互いの健闘を称え合う。
 それが、きっと、死者への手向けにもなると信じているんだろう。

「まあ、この魔法は個人の技量に頼る部分が大きくて、私以外が使えるようにはならないでしょう。
 あるいは、魔道具にすれば可能かもしれませんが、もう必要はなさそうですし、ね」
「だったら平和利用でもすればいいんじゃないか?
 例えば、時間を止めて食べ物を保存する『クーラーボックス』なんてのはどうだ?」
「それは……いいですね。売れそうだし、何より、誰も傷つかないところがいい」

 傷を抱えたまま、それでも笑い合う二人、その和やかな雰囲気に水を差したのは、猫耳剣士のシズルだった。

「待って下さい、二人とも。おかしくはありませんか?」
「え?」

 シズルが指さしたのは、地面に散らばった、邪神のコアの欠片だ。

「邪神の、コアの破片だろ? それがどうかしたのか?」

 真っ赤な欠片は完全に色を失っていて、何かが起こる気配はない。
 しかし、シズルは首を振る。

「邪神は、倒したはずです。なのになぜ、これは光に変わらず、その場に残ったままなんですか?」

 その言葉を聞いた瞬間、背筋をぞわっと駆け抜けるものがあった。
 それは、アレクスたちも同じだったのだろう。
 気を抜いていた彼らの目が、途端に鋭くなる。

 だが、それは遅すぎた。

「コアの、破片が……」

 地面に転がっていたコアの欠片。
 それが一ヶ所を目指して、集まっていく。

「気を付けろ、まだ、終わっていない!!」

 集まっていくコアの破片はくっつき、次第に大きな塊を形成していく。
 まるで、立体パズルの破片は結合し合い、やがて球に近い形まで復元されて……。

「呆けている暇はありません! 攻撃を!」

 ネームレスの言葉に、英雄たちはハッと我に返る。

「轟雷衝!」
「氷雨流奥義、清流!」
「クロス、ブレイク!!」

 復元の進むコアは、一斉に放たれた英雄たちの一撃に、抵抗する手段を持たなかった。
 攻撃を重ねるうち、ぴし、ぴし、という音を立ててひび割れ、そして、次の瞬間、砕け散る。

 それを見て、アレクスたちはようやく息をついた。

「なんだったんだ、今のは。気持ち、わりぃ……」

 表情を緩めたアレクスとは対照的に、ネームレスだけがその警戒を解かない。

「気を、緩めないでください。私の推測が正しければ……」

 そして、その言葉を裏付けるように、地面に散らばったコアの破片は、またひとところに集まっていく。

「なんだってんだよ!」

 アレクスは毒づき、それでも手を抜くことなく、再びコアの破片に攻撃を加えていく。
 だが……。

「か、たい?」
「おかしい。これ、おかしいわよ、アレクス!」

 暴力的なまでの圧力を持った義矢門の一撃が、とてつもない切れ味を誇ったシズルの一閃も、圧倒的な威力を誇っていたはずの騎士剣シエルの攻撃すらも、ふたたび復元されていくコアに十分なダメージを与えられない。

「さっきよりも、大きく、なっている?」

 呆然と、呟かれたシズルの言葉。
 それは恐らく、正鵠を射ていた。

 傍観者である俺の目から見れば、はっきり分かる。
 今、形を整えつつある邪神のコアは、先程のものとは、ひとまわりは優に大きくなり、そしておそらく、硬くなっていた。

 ――第二、形態?

 俺の脳裏を、そんな言葉がよぎる。
 次回作のためなのか、実装こそされなかったが、邪神だって元を返せば猫耳猫スタッフが考えていたボスのはずだ。
 だとしたら、ラスボスによくある、途中で第二形態に変わる、という特性を備えていたとしてもおかしくはない。

 ――いや。

 それは何か違うと、俺の中のゲーマーとしての経験がささやいていた。
 そうだ、それよりは、むしろ……。

「嫌な予感がします! 全力で! あれをもう一度、叩き壊すんです!」

 ネームレスの言葉に、我に返る。
 見ると、アレクスたちはもうなりふり構わず、全力を振り絞って再生するコアを破壊しようと試みていた。

 しかし、それは思わしくない。
 反撃すらない相手なのに、単純に硬い。
 今まで簡単に通っていたはずの攻撃が弾かれ、さっき戦っていた時なら決められたはずの一撃が弾かれる。

 そして、決定打の出せないまま時が過ぎ、数秒。
 赤いコアがひときわ不気味に脈動した、直後、だった。

 ――『それ』が響いたのは。




「――絶対無敵アブソリュート災厄神ディズ・アスター



 それは確かに『声』だった。
 もはや口など影も形もなく、ボロボロのオーブしか残っていないはずの、邪神の『声』だと、なぜかはっきりと分かった。

「あ、あぁぁ……」
「そん、な……」

 立ち尽くす英雄たちの口から、絶望のうめきが漏れる。
 だが、それも当然だろう。

 真っ赤なコアだった部分から、メキメキと、変化が起こる。

 真っ赤なオーブの一部は盛り上がり、変形し、頭を形作る。
 卵の殻を破るようにオーブから突起が生まれ、それが腕に、触手に次々と変化していく。

 そうして、ほんの十数秒のうちに、『それ』は終わっていた。

 アレクスたちの眼前に浮かぶのは、もはや、邪神の『コア』ではない。

 ――彼らの目の前には、頭を、腕を備え、傷一つない万全の姿で世界を睥睨する、完全なる邪神の姿があったのだった。
ここまででピンと来る人はいると思うのですが、邪神はRPGの隠しボスで稀によくいるアレです
詳細は明日更新!!の次章「エンドコンテンツ」で



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