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この世界がゲームだと俺だけが知っている 作者:ウスバー
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第二百十二章 超時空都市

お久しぶりです!
また時間があいてしまいましたが、ただサボっていた訳ではありません!
皆さんに少しでもよいものをお届けしようと考えに考え抜き、ついにこの前……ペンタブを買いました!!
……ん?
 元はカードゲームの言葉だったものの、今ではほかのゲームなどでも使われる考え方として、「フレーバーテキスト」と呼ばれるものがある。

 例えば「イーナの手作り弁当」というアイテムに「食べるとHPが50回復するが、すごくマズイ」と説明が書かれていたとする。
 このうち「HPが50回復する」という部分はゲーム的に必要な解説だが、猫耳猫のゲームには味を感じる機能は備わっていないので、「すごくマズイ」の部分はゲーム的には全く意味がない。ただし、「あー、イーナってキャラは料理下手なのかぁ」「マズイ料理だからHPが50しか回復しないんだなぁ」とゲームへの理解と没入感を高めてくれる効果はあるだろう。

 このように、ゲームをする上で実効性はないけれど、ゲームの世界観や設定という風味フレーバーを加えてくれる説明文のことを「フレーバーテキスト」と呼んだりするのだ。

 猫耳猫の世界が現実化するに当たって、ゲーム時代では実効性のなかったそんなフレーバーテキストが実際に意味を持ってくることもある。
 ゲームと違って味覚が存在するこの世界では、アイテムとして「イーナの手作り弁当」が存在していれば、フレーバーテキストとして書かれた設定に準拠して本当にマズい弁当になっている可能性が高いのだ。
 そういった設定、フレーバーテキストはゲーム時代と比べてかなり重要な要素となったと言えよう。

 そして、俺たちがやってきた天空都市は、フレーバーテキストと言うしかないような微妙な設定や裏話があふれていることで有名だ。

 天空都市の各所で見つけられる端末にアクセスすると、「実はこの天空都市は星間飛行技術を持った古代人が作った宇宙戦艦だった」とか、「長い航海で古代人は全滅してガードロボットだけが残っている」とか、「乗員の命令がないためにロボットはメンテも十分にされずに延々と都市を守り続け、天空都市自体も待機状態が解除されずずっとこの世界の上空を漂っている」、「動力炉に緊急コードを入力してシステムを再起動すれば都市の機能を掌握出来る」なんていう重要そうな情報から、「ここのボスのAIの基幹部分は生体脳で作られた」とか(その基になった五人の人物、knight,Army,Ranger,Executioner,Ninjaの頭文字を取って「K.A.R.E.N.」デバイスと呼ばれていたらしい)、「この天空都市(というか宇宙戦艦)には船長の趣味で人型に変形する機構が組み込まれそうになったが、なぜわざわざ人型にするのか意味が分からないと反対の声が激しくて泣く泣く取りやめになった」とか、「端末にアクセスした時に必ず出てくるロゴは船長のペットがモチーフ」とかいう割とどうでもいい小ネタも「ご存知、ないのですか?」とばかりにガッツリ教えてくれる。

 つまり……。

「――何が言いたいかと言うと、敵キャラとして出てくるロボットの多くが定期メンテナンスもシステムの更新を行っていないという設定上、地上に落ちたロボットが転送地点を天空都市の入口のままにしていてもおかしくない訳で、よってさっきのテレポートはあくまで仕様であってバグではないと……」
「そんな自分ルール知るかぁぁあああああ!」
「……お前が『今の瞬間移動はバグ技じゃないのか?』って聞いてきたから答えただけじゃないか」

 質問に答えただけなのに、なぜか逆ギレして騒ぎ出したサザーンの叫びに顔をしかめながら、俺は現状を振り返る。

 俺たち――俺、サザーン、リンゴの三人――は、地上から一気にこの天空都市の入口へと瞬間移動してきた。
 これは通称「裏口昇天」と呼ばれるバグわ……変わった仕様を利用したちょっとしたお得ワザで、多彩な嫌がらせをしてくる天空都市のモンスターの性質を逆に利用して、本来であれば果てしなく長い塔を登らないと辿り着けないはずの天空都市に一瞬で移動するものだ。


 地上にいた時に体験談を交えつつ仲間たちに解説したが、ほかの猫耳猫のダンジョンと比べても天空都市はモンスターは個性豊かだ。

 ある敵はうさんくさいレーザー銃で、異常耐性無視の麻痺光線を撃ってくる。
 またある敵はプレイヤーではなく、あえて武器や防具目がけて謎の光線を放ってくる。
 はたまたある敵は戦いから一定時間が経ったところで発光し、気付けばスタート地点に戻される。
 さてまたある敵はダメージ量によって何度も変形し、プレイヤーに「え、こいつ何がしたいの?」と思わせ疑心暗鬼に陥らせる。
 そしてそしてある敵は戦闘モードに入った途端に黒板をひっかいた時みたいな音を出し、キャラクターではなくプレイヤーの精神をダイレクトアタックしてくる。

 とにかくなんというか、猫耳猫スタッフたちの「簡単にクリアされたら悔しいじゃないですかぁ!」という心の叫びが透けて見えるくらいにいやらしい仕掛けが多いのだ。

 だが、仕掛けがいやらしければいやらしいほど、それを逆手に取ろうと知恵を絞るのが猫耳猫プレイヤー。
 そんな彼らが着目したのは、「戦闘後、一定時間経過すると発光し、近くにいるキャラを天空都市のスタート地点に戻す」という、プレイヤーにめんどくささを味わわせることしか考えてないような特殊能力だ。

 天空都市は長い上に最後以外は碌にショートカットもないので、探索中にこれをやられるとマジで凹むのだが、探索()であれば話は別だ。
 天空都市の真下、設定上は崩落した天空都市の一部とされる遺跡には天空都市と同じ敵が出る。
 そこで「戦闘後、一定時間経過すると発光し、近くにいるキャラを天空都市のスタート地点に戻す」敵と戦ってわざと特殊能力を発動させれば、一度も天空都市に足を踏み入れてなくても一息に天空都市の入口まで戻される(・・・・)という寸法だ。

 猫耳猫の殺るか殺られるかのバランス上、敵キャラを倒さないように時間稼ぎをするのは結構な骨だったが、何とかしのいで無事に転移することが出来た。
 転移法をミツキたちに話さなかったのはまずは俺一人だけで来るつもりだったからで、リンゴたちがついてきてしまったのは計算違いなのだが、流石に俺を心配して駆け寄ってきてくれた二人を非難するのも違うだろう。

 その二人だが、俺が今の状況、さっきのモンスターを使ってショートカットしたことを話したら、サザーンは「散々使わないとか言って結局バグ技使うんじゃないか!」と言いがかりをつけ始め、リンゴの方はなぜかショックを受けたように固まってしまった。
 しばらく時間が経って、ようやくサザーンの怒りも下火になった頃、ようやくリンゴが再起動する。

「…ソーマ」

 彼女はいつもの無表情で……というにはちょっと顔色が悪い気がするが、とりあえず無表情には分類されるような顔で、しかし決然とした雰囲気をまといながら俺の前に立つと、その小さな身体を精一杯に伸ばして、


「…え、らい。え……ら、い」


 いきなり、俺の頭を撫でた。
 どこか既視感のある光景……なのだが、

「お、おい! なんかそいつ手が小刻みに震えてるし、唇なんて紫色になってるぞ!? だ、大丈夫なのか?!」
「…だ、だい、じょう、ぶ。ほ、ほめ、ほめて、そだ、そだて、そだて、る、ほうしん、だから!」

 いや、よく分からないけど壊れたロボットみたいになってるのは絶対大丈夫って言わないと思うぞ。



 とりあえず血走った目で断固として俺の頭を撫で続けようとするリンゴを何とか説得して引きはがし、少し時間を置くことでリンゴの異常は治った。
 リンゴいわく、

「…ちょっと、きょぜつはんのうがでた、だけ」

 とのこと。
 要するに俺をほめたストレスで身体に異常が発生していたらしい。

「当たり前だ! あれをほめるなんて、僕ならストレスで全身から血を噴き出して死んでるところだぞ!」

 なんて俺を指さしながらのたまうサザーンはともかくとして、普段あんまり動じないリンゴが壊れたロボットになるほどのストレスってどんだけだよ。
 俺をほめるのはそんなレベルの苦行なのか。

「えっと、よく分からないが、別に無理して俺をほめてくれなくてもいいんだぞ?」

 俺が言うと、リンゴは覚悟を決めたような目で首を横にふった。

「…わたし、は、ソーマをまにんげんにする、って、きめた、から」

 いや、内容が内容でなければかっこいい台詞っぽく聞こえなくもないんだが。
 そもそも俺、ちょっとゲーム廃人の気がある以外は能力的にはともかく、内面的には一般人だし。

「だ、だが、さっきのこいつの行動に真人間要素あったか?
 むしろ普段通り真逆を行ってた気がするんだが」

 心底不思議そうに尋ねるサザーン。
 色んな意味でリアル中二病な奴に真人間じゃないとか言われたくないんだが。

「…バグわざをつかわないといった、こころいきが、だいじ」

 一方、リンゴは流石だった。
 やっぱりリンゴだけは俺のことをしっかりと見てくれているようだ。

 俺の熱のこもった視線を浴びながら、リンゴも俺に勝るとも劣らない強い意志をのぞかせながら、力を込めて言い切った。


「…たとえ、けつろんが、どれだけあたまおかしくても!」


 うん、その……本当にほめられてるんだよな、俺。
 サザーンも何だか呆れたような、あきらめたような顔でため息をついた。

「……そんなことで、こいつを真人間に出来るのか? どれだけ時間がかかるんだよ」
「…ん。『ソーマまにんげんかけいかく』、は、じゅうねんスパンでけいかくをたてている」

 十年スパンって……。
 えらく気の長い話だ、と俺は思ったのだが、

「いや、こいつの性格が十年くらいで改善するのか? なんというか、筋金入りだぞ?」

 サザーンは別の意見を持っていたようだ。
 というか、何度も言うようだがリンゴとかサザーンほど俺の性格はぶっ飛んでないからな?

「…なおらなかったら、なおるまでいっしょうがんばるだけ」
「お、おう。ち、ちなみに、もし直ったら?」
「…ん。ヘンタイにもどらないように、いっしょうそばにいる」

 ためらいなく答えたリンゴに、サザーンはわずかに気圧されたように後ずさった。
 あとさりげなく俺、今リンゴに変態扱いされてなかったか?

 しきりに首をひねる俺に、サザーンが少し身を寄せてくると、めずらしく同情したような口調でささやいてくる。

「……なんというか。お前も案外、とんでもない奴に目をつけられたのかもしれないな」

 うん、言いたいことは分からなくもないんだが……。

 ――それ、お前にだけは言われたくないからな!



 予想外の事態に時間を取られてしまったが、流れとして変更はない。
 一番の目的である天馬の靴を回収しながら都市の奥に進んでいき、最終的には最深部の動力炉を目指す。
 うまいこと最深部に到達して動力炉を動かせば雑魚モンスターも消え、地上へのショートカットが開通する。
 さっさと最深部まで行ってから下の仲間たちを迎えに行けば問題ないだろう。

 留守番組のことが心配と言えば心配だが、下にはミツキが残っているので危険がおよぶことはないはずだ。
 ただ、長い時間俺が戻らないと何か行動を起こしてしまうかもしれないので、早々に天空都市を攻略してショートカットを開通させる必要がある。

 こちらのメンツを考えると、物理防御力に難があり、チームワークにも難がありまくるサザーンが懸念材料ではあるが、バランスよく高い基礎能力と雷撃というチート級の遠距離攻撃、一部とはいえスキルキャンセルも使いこなすリンゴがいれば守り切ることは出来るだろう。

 加えて、マップ全部とは行かないが、天空都市の順路は大体覚えているのもプラスの材料だ。
 敵が出てきた時の行動だけを軽く確認、特にサザーンには範囲魔法は絶対に使わないように、出来れば単発の魔法もどうせ誤射するから使わないように、と念入りに釘を刺してから俺たちは最深部を目指して出発することにした。

「まあ、なんだ。三人ってことで久しぶりに少人数での探索になるが、戦力的には問題が……」

 と、言いかけた時だった。
 突然、俺の腰のあたりでもぞもぞと動く何かが見えて……。

「……四人、だったみたいだな」

 俺が視線を落とすと、冒険者鞄から上半身だけを出しながら、俺を脅すみたいに裁縫針を突きつけてニタァと笑う、くまがいたのだった。


 予想外にメンバーが一人(?)増えたこともあり、探索は非常に順調に進んだ。

 もともと魔王対策で鍛えた時、キングブッチャーを数秒で葬れるレベルまで俺の攻撃力は上がっているのだ。
 いくら天空都市とはいえ、雑魚モンスターであれば瞬殺するのも難しいことじゃない。

 後ろから来た敵もリンゴの雷撃が足止めしてくれるし、リンゴに抱かれたくまもあれで意外な索敵能力の高さでパーティに貢献してくれた。
 サザーンは……うん、まあ、パーティの人数の増加に貢献してくれているし。

 ちょっと危ないなと思ったのは、ポップポイントを見誤って敵ロボットに「黒板をひっかいたような音」を出された時(サザーンは「耳が、耳がぁああ!」と地面を転がりまわっていたが、リンゴは「…これ、わりと、すき」と平然としていた)と、サザーンが後ろから敵ロボット……と俺めがけて大魔法をぶっ放そうとした時くらいだ。

 ちなみにその時はサザーンの耳元で金属製の壁を爪でひっかいて「黒板をひっかいたような音」を自前で出して食らわせてやった。
 ……やった俺自身にもでっかいダメージが来たのは内緒だ。

 そんな風に割と余裕のある感じで探索を続け、無事に天馬の靴もゲットして、早速装備した。
 これで一部のスキルが空中でも使えるようになるため、戦術の幅が広がる。

 空中に浮かぶのが簡単になるだけでなく、地面に足がついていないと使えないスキルが着地前に使えるため、靴なしだとつながらないスキルがつながるようになったり、空中でスキルコンボをつなげて着地をキャンセルに使うことで魔法を使わずにKB(ノックバック)キャンセルと同等の効果を得られたりするのだ。

「そろそろ、か」

 天空都市を大きな船と捉えると、入口やブリッジなどがある船首部分から動力炉や地上への脱出装置があるのが船尾部分になる。
 シャボン玉移動によってぐねぐねと蛇行しながら進んではいるものの、確実に船尾の方に近づいている。

 ここまでは危機感を覚えるほどの状況もなく、和やかと言ってもいいほどの雰囲気で進んでいたのだが、ゴールが近づいてくるにつれ、俺の身体にも自然と力が入る。
 その緊張を察したのか、リンゴもサザーンも心持ち表情をひきしめた。

「……ここだな」

 見つけたのは、天空都市の地上部分、すなわち甲板に当たる部分に出るハッチだ。
 天空都市、とは言っても実際には宇宙船だ。
 地上部分は平坦な場所は少なく、おまけにほとんどが曲面なため、とても歩けるような場所ではない。

 ただ、船首と船尾の突端だけは人が歩けるようになっている。
 つまり、このハッチがあるということは、もうゴールが、最深部が近いということだ。
 俺は外に出る前に二人プラスくまを振り返った。

「もうすぐ最深部に着く。でもその前、このハッチを開けた少し先には天空都市のボスがいる」
「……強い、んだよな」

 サザーンの緊張を含んだ言葉に、俺も神妙に答える。

「ああ。単純な能力値だけなら終盤のボスとしてはそれほどじゃない。
 だが、狭い船内でも自由に移動するチートじみたすり抜け移動、回避困難な鳥形態での突進攻撃、そして何より究極のカウンタースキルを持つこいつを正面から破るのは簡単なことじゃない」

 奴のスキルの特性を理解するまで、何回、いや、何十回殺されたか分からない。
 しかし、奴が徘徊する甲板の奥にある扉が最深部へと続く唯一の道だ。
 その扉を通らなければ、絶対に最深部まで辿り着くことは出来ない。

「結局、俺はゲームでも、接近戦で奴に勝つことは出来なかった。
 一度だけ勝てたのは、あいつが苦手とする遠距離戦。
 しかも、そのための装備を吟味して、それでも勝つまでに一時間もかかった」

 今は遠距離攻撃手段の確保もしていない。
 俺が遠距離戦を挑んでも倒せるとは言いがたい。
 だから……。

「なるほど、話は読めたぞ。接近戦では勝ち目がない。かといって貴様には遠距離攻撃の手段がない。
 だからお前は……」

 俺の言いたいことを察したらしいサザーンと、手をぐっ、ぐっと閉じたり開いたりして、なぜかやる気に満ち溢れている様子のリンゴに向かって、俺は力強くうなずいてみせた。


「――ああ! この靴を使ってボスに見つからないように空中を移動して扉に行ってくる!」


 俺の気合の入った宣言に、なぜか落ちる沈黙の帳。
 数秒後、サザーンがぽつりと「あ、これ絶対一生コースだ」とつぶやいたのが妙に耳に残ったのだった。
次回更新は明日!

あ、あと宣伝もするはずだったんですが活動報告間に合わなかったからそれも明日!
最新話を工事中にしてたせいで予約投稿出来ないとかもうね!
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