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この世界がゲームだと俺だけが知っている 作者:ウスバー
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第百八十九章 お手軽必勝法

「こ、ここが輝く暗黒の洞穴ですか……」

 サザーンダム決壊事件の翌日。
 俺はイーナに頼まれて彼女の修行を手伝うことになった。

 場所はレベル108のダンジョン「輝く暗黒の洞穴」。
 サザーンが名付けたみたいな名前の場所だが、レベルだけで考えると今のイーナよりも三十以上高い。
 相思相愛の指輪の効果があるので問題ないとは思うのだが、イーナは少しビクビクしているようだ。

「大丈夫だって。今回は俺がついてるし、リンゴもミツキも見守ってるから」

 今回のメンバーは俺とイーナとリンゴとミツキだ。
 レイラは家で留守番。
 真希は今朝ちょっとだけ訪ねてきたが、どうも魔術師ギルドの事件の後始末で忙しいらしい。

「まぁ、できるうちに親孝行しとかないとねー」

 なんて言っていたが、どういう風の吹き回しだろうか。

 残ったサザーンだが、いつまでも出てこないので部屋に行って声をかけたが、全く返事がなかった。
 どうやらまだ傷心中らしい。
 まあ後のことはくまに任せたから、あっちは心配無用だろう。

「で、でもわたし、ティエルさんと一緒に調べたことがあるんです。
 ここに出てくるライトルートって魔物は魔法が効かない上に、接近したら自爆するからすごく危ないって!」

 その言葉に、俺は少し感心した。
 がむしゃらに敵と戦うだけではなく、ちゃんとモンスターのことを調べたりもしていたらしい。
 イーナの行動とは思えない用心深さだが、きっとティエルの入れ知恵だろう。
 しかし、その心配は不要だ。

「なんだ。知ってるなら話が早い。今回はそのライトルートと戦ってもらおうと思ってるんだ」
「ら、ライトルートとですか!」
「ああ。でも、さっきも言ったけどそんなに心配しなくても大丈夫だぞ。
 確かに最初はビビるかもしれないが、あいつに関してはすでにお手軽な必勝法が編み出されてるしな」
「そう、なんですか?」
「むしろゲームではレベル上げ用モンスターとして有名だったくらいだぞ」

 そこまで聞かせると、イーナもようやく安心した様子でほっと息をついた。

「それにしても、俺はイーナがこんな頼みをしてきたことに驚いたよ」

 魔王を倒した直後も同じ話題になったが、お互いにパワーレベリングはよくないということで合意したのだ。
 必勝法や強い仲間の協力で簡単に敵を倒せばレベルアップは早いかもしれないが、肝心のプレイヤースキル、戦うための技術が育たないことが多いのだ。

「あ、それは……」

 俺の言葉に、イーナは少し顔をうつむかせた。 

「最初はわたしも、ゆっくりと強くなろうと思ってたんです。でも……」
「でも?」

 俺が先を促すと、イーナは手をブンブンと振った。

「い、いえ! や、やっぱり強い人って憧れちゃうなって思って!」

 何だか全然答えになっていない答えだが、イーナはそれをごまかすようにぐいぐいと迫ってきた。

「そ、それよりも、必勝法ってなんなんですか?
 もしかして、光属性の防具で固めたらダメージを受けないとか……」
「残念。ライトルートの自爆魔法『シャイニィレイン』は無属性なんだ」
「ライトルートでシャイニィレインなのに!?」
「そんなもんだよ、世の中」

 世の中というより、『猫耳猫』が、と言うべきだが、この場合は同じようなものだろう。

「だったら、ええと、実は特定の属性が弱点だから魔法で倒せる、とか」
「外れ。あいつは無属性を含めたどんな属性の魔法も1ダメージに抑える特性持ちだから、それは難しいかな」
「な、なら、気付かれる前に遠くから弓を使って倒せば……」
「実際に有効な手ではあるけど、あいつは一発でも攻撃をくらったら自爆するから、それだと一発で倒さなきゃいけないな」
「む、むぅぅ。じゃ、じゃあ、ええと……」

 可愛らしく悩み始めたイーナだったが、残念ながら時間切れだ。

「ま、それについては後のお楽しみにしとこう。
 最初から楽してたら修行にならないし、とりあえずは場を整えることから始めないとな」
「場を整える……?」

 疑問符を浮かべるイーナの肩越しに、俺はミツキを見た。

「いつでも構いません」

 心得たもので、ミツキは何も言わずとも俺の近くに寄ってきてくれた。
 それを心強く思いながら、俺は洞窟の中を見回す。
 おあつらえ向きに、今はライトルートはポップしていない。

「よし、まずは洞窟の掃除だ! ライトルート以外のモンスターをあっちに放り込むぞ!」

 そう言って、俺は洞窟の隅にあるくぼみを指さした。

 こうしてその日最初の作業。
 洞窟の大掃除が始まったのだった。



「ほ、ほんとに何もいなくなっちゃいましたね……」

 数分後、俺とミツキはライトルート以外のモンスターを全てその場から排除することに成功していた。
 ここのモンスターは一定以上の段差を登れないため、決まった場所に放り込むことで隔離することが出来るのだ。
 もちろん、これには殺さずに相手を捕らえて運ぶことが出来るだけの実力が必要なので、攻略においては役に立たない知識だ。

 しかし、『猫耳猫』の仕様上、一つのポップポイントからは同時に一グループのモンスターしか出ない。
 つまり殺さずに敵を隔離出来れば、対応するポップポイントを無力化出来るということだ。
 これで生きているポップポイントはダンジョンに二ヶ所だけある「ライトルートしか出ないポップポイント」だけ。
 これで延々とライトルートだけを倒し続けることが出来る環境が整った。

「気合を入れろよ、イーナ。ここからが本番だぞ」
「は、はいっ!」
「なら、まずは……」

 タイミングよく現れたライトルートを見つけ、俺はわざと音を立てて近づいた。
 すると、俺を見つけたライトルートはくるっと回転。
 俺に植物の顔を向けると、白く輝き出し……。

「きゃぁ!」

 その全身から、放射状に光のシャワーを吐き出した。
 全方位へと吹き出される光の線はある意味では壮観だったが、前情報なしでこれをやられた方はたまったものじゃない。

 隙間なく放たれる光のシャワーを目視で回避することは不可能。
 それはプレイヤーだけでなく、神がかった動体視力と身体能力を持つミツキにだって不可能だろう。
 当然、光が臨界に達する前に俺は範囲外に逃れていたが、初見であれば何も分からずに光の洗礼を浴びる可能性が高い。

「……あ」

 そしてライトルートは十秒ほどの時間、周りに光のシャワーをふりまき続け、魔法が終わると同時に今度は自分の身体を光と変えて消滅していった。

 ちなみにだが、ライトルートが自爆で死んだ場合、経験値もエレメントも入らないようになっている。
 ついでに言うと、このダンジョンに出るライトルート以外のモンスターは経験値が非常に少ないため、自爆の巻き込みで倒してもうまみはほとんどない。
 プレイヤーに決して良い思いはさせまいという、いかにも猫耳猫らしい嫌な面で行き届いた設計だと言える。

 まあ、それはいい。
 俺は自爆魔法に呑まれてすっかり棒立ちになっているイーナに、今日の趣旨を説明した。

「今回イーナに覚えてもらいたいのは、あの自爆魔法、シャイニィレインを避けて相手を攻撃するテクニックだ」
「あ、あんなの、避けられるんですか?!」
「ああ。ちょっと見てろ」

 そう言って、もう一つのポップポイントから出現したライトルートに俺は無造作に近づく。
 やはり俺に向き直り、白く輝き出すライトルート。
 さっきはここで下がってしまったが、今回は違う。

 ライトルートが方向を固定したのを確認して、足を踏み出す。
 目安はシャイニィレインの効果範囲ギリギリから、前に三歩、右に二歩の位置。

「そ、ソーマさん!?」

 直後、ライトルートが強く発光。
 そこから光のシャワーが全方位に向かって放たれる。
 それは当然、俺の身体にも降り注いで、

「危ないっ!」

 イーナが叫ぶが、俺は大丈夫だ、と手を振り返した。
 実際、それくらいの余裕はあった。

「え、ええぇぇ……」

 そんな俺を見て何を思ったのか、イーナの声が微妙な色合いを帯びる。

 一見、このシャイニィレインに死角はないが、それは見た目だけの話。
 当然ながらあのめんどくさがりの猫耳猫スタッフが大量に出た光の線の一本一本に当たり判定などつけるはずがない。
 実際にはグラフィックと当たり判定はほとんど関連がなく、特にこの技は当たり判定がある場所がまばらなので、それさえ把握していればノーダメージでいけるのだ。

「最初の数秒はこの位置が安地だからここに立っとけば攻撃は当たらない。
 目印は最初の光で、それが落ちた場所から左奥に一歩くらいだと覚えておけばいいかな」
「いや、いやいやいや! 当たってます! 当たってますってソーマさん!」
「あ、いや、だからな……」

 身体を突き抜ける光の束を見下ろしながら、俺は頭をかいた。
 イーナにはまだ、攻撃エフェクトと当たり判定の違いがよく分かっていないようだ。
 仕方ないなぁと思いつつ、足を進める。

「とにかくだな。ここからSの字を描くみたいに近付いて……」

 この技は時間が経つごとに当たり判定が存在する場所が変化する。
 それに合わせ、俺は最初の二歩を駆け足で、コンマ五秒ほどの間を空けて、今度は中腰になって五歩ほど歩みを刻み、その場でしゃがんで二秒待ってから追い立てられるようにダッシュ!
 あえてライトルートから遠ざかるように三歩だけ進んで素早く反転、細い隙間を通るように身体を横にして移動して、最後の足元に来る攻撃判定をジャンプで避けながら魔物の前へ飛び込む。

 そうして、ライトルートの愛嬌のあるような憎たらしいような顔を至近距離から拝むと、弱点であるその頭にひょいっと不知火を振り下ろした。

「……こうやって弱点を攻撃すれば、イーナでもたぶん一発で仕留められる」

 一撃で全てのHPを奪われ、ゆっくりと光の粒子に変わっていくライトルート。

「ふわぁあ……」

 なぜかとんでもないものを見た、と言いたげにイーナが感嘆の吐息を漏らしたが、まだ終わっていない。
 俺は光になって消え始めているライトルートをていっと蹴り押し、今までライトルートが立っていた場所に移動した。

「あと、倒したからって油断しちゃ駄目だぞ。
 魔物が死んでもそいつの撃った魔法は継続するから、こうやって完全な安全地帯、つまりライトルートがいた場所まで素早く移動する。
 これが出来て初めて成功だからな」

 魔法が収まって、俺がゆっくりとイーナのところにもどりながらそう説明すると、イーナは尊敬と怯えの混ざった複雑な視線を向けてきた。

「ソーマさん、やっぱり凄いです!
 で、でも、なんというかこれ、ちょっとわたしには上級者向けすぎる気がするんですけど。
 もっと倒しやすいモンスターから始めた方が……」
「覚えるのは大変かもしれないが、これと同じ効果範囲の技をダンジョンのボスが使ったりもするんだ。
 その時、これの避け方を覚えているのと覚えていないのでは大きく違うんだよ。
 経験値だけ稼ぐにしても、自爆前にこいつを倒すのがここらで一番効率がいいしな」
「そう、なんですか……」

 俺の言葉を脳内で反芻しているのか、考え込むイーナ。
 いまだ迷う彼女の後ろに、人影が立った。

「…わたし、も、やる」
「……え?」

 リンゴだった。
 まるでイーナは一人ではないのだと言うように、優しく肩に手を置いて、語りかける。

「…わたしも、あのダンスはきもちわるいと思う。
 でも、やる。
 むずかしくても、できるまで」
「リンゴ、さん……」

 思わぬ仲間の登場に、感極まった声を出すイーナ。
 でもダンスって何の話だよ。

「確かに、あの奇矯な動きを真似するのは苦労しそうです。
 ただ、どんなに変態的に見えても、あれでいて彼の戦闘における技術は頼りになります。
 今更他人から戦い方を学ぶなど考えていませんでしたが、今日は有意義な鍛錬が出来そうです」

 そう言って反対側に現れたのはミツキだ。
 すでに月影を抜いて、戦闘態勢に入っている。

「…まだ、わたしたちは、よわい。
 でもきっと、つよくなれるから」
「みな、さん……。わ、わたし、やりま――」

 二人の言葉がイーナの心を動かし、イーナが決意の言葉を口にしようとした時、

「同時ポップ?!」

 無粋な乱入者が、それを遮った。
 両面、残していたポップポイントの両方から、ほぼ同時にライトルートが出現したのだ。
 せっかくやる気になりかけてくれているようで悪いが、まだ動きの説明もしていない。
 今出て来られても練習にならないだろう。

「くそっ! とりあえず俺が……」

 舌打ちしながら処理しようとする俺だったが、それよりも先に動いた者がいた。
 ミツキとリンゴだ。

「間の悪い。出直してきて下さい」

 片方のライトルートは一足跳びに距離を詰めたミツキに両断され、

「…じゃま」

 残ったライトルートも、リンゴの雷撃をまともにくらって即座に消し炭と化していた。
 シャイニィレインを使う間も与えない、まさに秒殺劇。

「…………ぇ?」

 もどってきた二人は、間抜け面を晒すイーナに手を差し伸べる。

「さぁ、共に励みましょう」
「…いっしょに、がんば、ろ?」

 それを見たイーナは、

「……はい。いっしょにがんばりましょーね」

 やけにすすけた顔で、その手を取ったのだった。



「きゃ、ぁあああ!!」
「イーナ!」

 今日何度目かも分からないイーナの悲鳴が、洞窟内に響き渡る。
 イーナが動きを失敗して、ライトルートの自爆に巻き込まれたのだ。

「大丈夫か!?」

 吹き飛ばされ、倒れてしまったイーナに急いで駆け寄ると、彼女はすでに起き上がり、自分にポーションを使っているところだった。

「あ、あはは。また失敗しちゃいました」

 無理矢理な笑顔を作ってそんなことを言うが、その顔は痛々しい。

 あの後、抜群の戦闘センスを持つミツキは一回でライトルートの前に行くことに成功。
 リンゴはそれよりも苦戦はしたものの、意外な呑み込みの速さを発揮して四回目で無事に成功させた。

 しかし、イーナだけは十回、二十回とやっても成功させることが出来ず、ライトルートの自爆魔法に何度も何度も打ちのめされ、数えきれないくらいの回数、地面に転がった。
 ゲーム時代、自爆魔法シャイニィレイン(物理)と揶揄されることもあったこの技は、無属性の物理攻撃であるがゆえに、ヒットさせられた場合の有効な軽減策はない。

 いくら指輪で防御力が強化され、シャイニィレインでは死ぬことはないとはいえ、その時の痛みは相当なもののはずだ。
 俺がシャイニィレインの回避法を覚えられたのは、ゲームの中で痛みを感じなかったからで、俺がイーナだったらもう、とっくに心が折れているだろう。

「な、なぁ、イーナ。別に、これは絶対にやらなきゃいけないって訳じゃないんだし、相性が悪いなら、あきらめて……」

 痛々しいイーナの姿に、俺は訓練の中止を呼びかけようとするが、イーナは首を振った。

「だ、大丈夫です! 次、次こそは、ちゃんとやりますから!」
「い、いや、だけど……」

 どうしてそこまでして頑張ろうとするのか。
 だが俺が言葉を続ける前に、治療を終えたイーナは短剣を握りしめてふたたび立ち上がった。

「え、えへへ。見ててくださいね、ソーマさん。
 わたし、あの光の避け方をマスターして、あのモンスターをバッタバッタと倒して、ガンガンレベル上げちゃいますから。
 それで、そうやってわたしが強くなったら、そしたら、そうしたらソーマさんだって、安心して元の……」
「イーナ?」

 確かにその時、イーナは何か、大切なことを言おうとしたんだと思う。
 だがその前に、新しいライトルートがポップした。

「今度、こそっ!」

 それを見た瞬間、顔つきを変えたイーナが、何十回、いや、下手をすれば何百回目かになる挑戦を始める。

「イーナ!」

 その背中に、俺は思わず声をかけていた。
 シャイニィレインの効果範囲に飛び込む寸前、一瞬だけ振り向いたイーナに、俺は叫んだ。


「――やってやれ!!」


 シンプルで、何のひねりもない言葉。
 だがその言葉を聞いた瞬間、イーナは確かに笑顔を、心の底からの笑顔を浮かべたように見えた。

「…きた」

 リンゴの声。
 シャイニィレインが始まる。

 最初の位置取りは問題なし。
 ちゃんと安地の真ん中に陣取っている。

 そして、少しの間を置いてイーナが動き出す。
 まず最初の移動を駆け足、三歩で進む。

「よし!」

 本来は二歩で行くところを、一歩増やしているのが功を奏している。
 初めは歩幅の違いが微妙な距離の違いを生んでいたが、それはイーナが自分に合わせたアレンジをすることで、少しずつ修正されているのだ。

 そして一瞬の停止の後、今度は腰をかがめて前へ。
 ここで焦ってはいけない。

「いいぞ、いいぞ」

 俺たちの期待の視線を背負って、イーナは進む。
 二度目の移動を終えて、かがんだ状態での待機。
 緊張した顔に浮かんだ汗をぬぐって、跳躍!

「危ない!」

 思わず叫ぶ。
 動き出しの角度が甘かった。
 だが、それを本能的に察したイーナは移動の途中で修正。
 うまく方向を変えながら走り、一瞬の溜めの後、反転!

「っ! やれた!?」

 何度も失敗したタイミング。
 だが、今回ばかりは完璧だ。

 いつもはここで身体にぶつかってくるはずの攻撃がないことに驚いたような顔をしながらも、イーナは止まらない。
 今まで近くて遠かった魔物まで、もう一直線。
 最後の障害を、何度も、ポップがされていない間に何度も何度も確認して、練習した跳躍でかわして、

「行けぇぇ!!」

 とうとう、ライトルートの正面に飛び込んだ。
 時間に猶予はない。
 間髪入れずにライトルートの顔にナイフを突き入れ、体当たりをするようにして、ライトルートのいる空間に身体を押し込んで……。

「……あ」

 光のシャワーが収まった時、そこには無傷のイーナがいた。
 呆然と、自分で何をやったのか分からない様子のイーナに近づいて、真っ先に声をかける。


「――おめでとう、イーナ」


 口にした、瞬間だった。
 イーナの顔が、ぐしゃっと崩れ、

「お、おわっ!」

 さっきまでの勢いそのままに、イーナが俺の胸に飛び込んできた。

「やった! やりました! わたし、とうとうやりましたよ!」
「ああ。イーナはよくやった。凄く、頑張ったよ」
「これで、これさえ覚えれば、こいつらを倒してレベル……」

 イーナも何かを言いかけていたが、喉が詰まって言葉が続かない。
 そんなイーナを優しく労わりながら、俺はずっと考えていた言葉を告げる。

「じゃあ、頑張ったイーナに、ご褒美をあげようか」
「ご、ほうび……?」

 涙ににじんだ瞳を恥ずかしそうに伏せながらも、イーナが期待のこもった声で訊く。
 それをほほえましく思いながら、俺は言葉を続けた。

「まあ、ご褒美、っていうと大げさだけどな。
 今日、イーナがずっと知りたがってたことを、教えてあげようと思ってさ」
「わたしが? ええと、なんでしたっけ?」

 色々あって、もう忘れてしまっていたらしい。
 俺は苦笑しながらその答えを口にした。


「もちろん、ライトルートの簡単な倒し方に決まってるだろ」
「………………ふぇ?」




 その、すぐ後。

「シャイニィレイン避けるのは役に立つけど、効率狩りするならやっぱこれだよなぁ……って、イーナ?」

 ゲーム時代からのお手軽必勝法(自爆魔法発動中のライトルートに遠くからノックバック効果のある魔法を当てるとライトルートが自分の自爆魔法に巻き込まれて死ぬ上にダメージ1与えてるから経験値も入る)をプチプロ―ジョンを使って実演してみせると、そこで張りつめていた緊張の糸が切れたのか、イーナはその場に崩れ落ちて泣き始めてしまった。
 予想外のリアクションに何か声をかけようかと思ったが、その前にリンゴとミツキがイーナの傍に近寄っていった。

「…げんき、だして。まけたら、だめ」
「諦めましょう。あれはああいうあれなのです」

 まるで十年来の親友ででもあるように、優しくイーナを励ます二人。
 そこに深まった絆を感じて、俺はうんうんと何度もうなずいた。

 ――こうして、その日の修行は大成功のうちに幕を閉じたのだった。
プロットにはなかったイーナテコ入れ回
これがイーナ最後のかつや……いえ、今年も猫耳猫をよろしくお願いします
+注意+
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