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この世界がゲームだと俺だけが知っている 作者:ウスバー
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第百八十一章 闇魔法と紅の魔術師

き、昨日に間に合わなかったのはアクセス障害のせいです
まったく、あれがなければ余裕で零時五分くらいに投稿出来てたのに!
 一通り話が終わったところで俺たちは風呂から上がることにしたのだが、

「じゃあ僕も上が……わひゃひゃぁああ!!」

 サザーンはその場で立ち上がりかけて、すぐに湯船の中にもどってしまった。

「な、なんだよ、いきなり」

 俺が問いかけると、何やら必死な様子で俺に背を向けて、

「だ、大丈夫だ! 何でもない!!」

 これっぽっちも信用出来ない言葉を叫んだ。

「いや、何でもないってこともないだろ」
「や、やめろ! く、来るな!
 本当に何でもない! 何でもないから!」

 近付いてきた俺を拒絶するサザーンは、前屈みになって必死で股間を押さえているように見える。

 ――まさか、スノパオンの暴走?!

 俺の頭に、最悪の事態が思い浮かぶ。
 歩み寄ろうとしていた俺の足が止まる。

「……ええと、本当に、一人で大丈夫なんだな?」
「さっきからそう言ってるだろ! いいからさっさと行け!」
「わ、分かった。そうする」

 スノパオン絡みだとすると、これはデリケートな問題だ。
 ここはあまり構わない方がサザーンのためだろう。

「じゃ、じゃあ俺は上がるけど、あんまり長風呂しないようにな。
 あ、それから上がる時には……」
「いいからさっさと行けよぅ! って、こっち向くなぁ!」
「わ、分かったって!」

 サザーンに追い出されるようにして風呂を飛び出した俺は、脱衣所の入り口までもどってようやく息をついた。
 レイラに付き合うのも疲れるが、サザーンの場合は地雷がどこに埋まっているか分からないので、それとはまた別種の疲労がある。

 ため息をつきながら手早く身体を拭き、ちょちょいっと服を着直し、外していた水龍の指輪(水龍の指輪をつけていると風呂で溺れなくなるが、水の影響が無効化されるため風呂の意味もなくなる)も忘れずに付け直す。

 これでこちらの準備は整ったのだが、サザーンはまだ出てこない。
 それどころか、風呂場に声をかけると、

「こ、ここまで僕の服の入った籠を持ってきてくれ!」

 と謎の要求をされる始末。

「まったく、ほんとに手間がかかる……」

 俺はぶつくさ言いながらも、サザーンが服を入れた籠を探した。

「えーっと」

 ここの脱衣所は銭湯方式なのか、いくつか備えつけの籠がある。
 それを一つずつ覗いていって、四つ目の籠の中に黒い物がゴチャッと入れられている籠を見つけた。

「……ああ、これか」

 籠には真っ黒なマントと服、それからサザーンが風呂に来る前にずっと読んでいた本があった。
 俺たち以外に風呂に入っている奴はいないし、これで間違いないだろう。

「見つけたぞー!」
「も、持ってきてくれ! あ、服をあさったりするなよ!」
「お前は俺をなんだと思ってるんだ……」

 呆れながらも、俺の視線はついつい籠の中に移った。
 見るとはなしに見ていると、サザーンが読んでいた本の題名が偶然目についてしまった。
 そのやけに分厚い本のタイトルは、『モンスタービジュアル大図鑑』。
 ……魔法の本ですらなかった。

 じゃあ風呂に入る前、魔法がどうのとぶつぶつつぶやいていたのは一体なんだったのか。
 本当に、どうしても俺と一緒に風呂に入りたくなかったらしい。
 そんな事実に地味にへこみながらも、俺はサザーンの服の入った籠にタオルを添えて風呂場に放り込むと、肩を落として脱衣所をあとにした。



 居間にもどると、そこには仲間たちがほぼ全員そろっていて、思い思いに話をしていた。

「……戻りましたか」
「あ、ソーマ!」

 ミツキが一番に気付いて声をあげ、続いてレイラが俺に駆け寄ってくる。
 レイラがデスブリンガーを持っていないことをさりげなく確認して、こっそりと息をつく。
 風呂といいレイラといい、この家はあいかわらずデンジャラスだ。

「あれー? そーま、黒いのはー?」

 俺が冷や汗をぬぐっていると、テーブルでぐてーっとなっていた真希が不思議そうに声をかけてきた。
 こいつ、一応姫様のはずなのだが、城に帰らなくていいのだろうか。
 いや、城どころか別の世界に連れ帰ろうとしてる俺が心配するようなことでもないとは思うのだが。

「あー。サザーンだったらまだ着替えてるみたいだぞ
 まあ、すぐに来るとは思うけど」
「えっ?」

 そこで、俺の答えに過敏に反応したのは、真希ではなくなぜかレイラだった。
 「えっ? えっ?」という言葉を繰り返し、風呂のある方向と俺をしきりに見比べると、ぼそぼそとした声でしゃべりだす。

「あ、あの、着替え、って? ……もしかして、ソーマ、あの人と一緒にお風呂――」
「そ、そっちこそ、みんなで集まってどうしたんだ?」

 なんとなくレイラの口調から不穏な気配を感じた俺は、彼女の言葉を早口でさえぎった。
 レイラはまだ何か言いかけていたが、そこは心得たもの。
 場の空気を読んだミツキが、率先して口を開いてくれた。

「特に何か、という事もありませんが。
 ただ、屋敷にいた人達は、今回の事件の顛末を知りたがっていましたので」
「ああ。なるほど」

 どうやら留守番組に、魔術師ギルドで何が起こったのか、ミツキたちが説明していたらしい。
 というかまあ、リンゴがあまり積極的にそういう話をするとも思えないので、実質ミツキ一人がしゃべっていたんだろうが。

「しかし、ちょうどよかった。その話も一通り終わりましたし、これからの予定を貴方から聞かせて頂きたいと思っていた所です」

 そういえば、今まではなんだかんだで目先に解決しなくてはならない事件があることが多かった。
 しかし、魔術師ギルドを潰したことで当面の危機はなくなったと言っていい。
 俺たちは、ようやく本当に自由に使える時間を手に入れたということか。

 そう考えると、このタイミングでこの場所に全員が集まっているというのは、俺にとっても好都合だ。

「だったら、こっちもちょうどよかったよ。
 実はさっき風呂場でサザーンと、明日からとある魔法を手に入れるために、一緒に動こうって話をしてたんだ」

 それを聞いたみんなの顔に、訝しげな色が浮かぶ。

「魔法、ですか? しかし、何のために?」
「それは――」

 代表して質問をしてきたミツキに、「元の世界に帰るために」と答えようとしたところで、


「――僕が、最強の魔法使いになるためだ!」


 いつの間にか後ろにやってきたサザーンが、そんな風に答えた。
 呆気に取られる俺を置き去りに、湯上りほかほかな感じのサザーンが、饒舌にあとを続ける。

「聞けば、マーリガン・スプライトという大魔術師が遺したその魔法、『スターダストフレア』は最強の闇魔法だと言うじゃないか。
 だとしたら、それは世界一の魔術師である僕にこそふさわしい!
 どうせならマーリガンという輩の肩書ごと、その最強魔法を頂いてしまおうと思って、そいつに協力を約束させたのだ!」

 俺を指さし、ふははははは、と哄笑しかねない勢いで暴走するサザーン。
 いきなり何を言い出しているのか。

「お、おい、サザーン? 一体何を言って……」

 あわてた俺がサザーンに小声で尋ねると、サザーンは表情を変えずにささっと俺に近寄って、耳打ちを返してきた。

「貴様はバカか。素直に話したら、そこの女に刺されかねないぞ。
 こういう話は、もっと場や状況を整えてからするものだ」
「いや、それは、そうかもしれないが……」

 一時的に俺がいなくなっただけで不安定になったレイラ。
 そこで俺が故郷にもどるなんて話をしたら、確かにどんな反応をするかは分からない。
 ただ、これは問題の先延ばし、というものなのではないだろうか。

「そ、ソーマ?」

 俺たちがぼそぼそと話していると、自分の陰口を言われていると分かったのか、レイラの眉の角度が上がった。

「ね、ねぇ。二人でくっついて、楽しそうに何を話してるの?
 私も、そのお話聞きたいなぁ、なんて」

 えへへ、と笑いで取り繕っているが、妙に笑みが暗いというか、目が虚ろだ。

 ……うん。
 流石に殺されるとかはないと信じているが、確かにちょっと怖い気はする。
 やっぱり、レイラたちに対する説明は、もう少しちゃんとこちらの準備が整ってからでもいいかもしれない。

 俺が逃げの姿勢に入ったのを感じ取ったのか、サザーンは視線を前にもどし、高らかに演説を続ける。

「とにかく! 僕とこいつは明日から、スターダストフレアを手に入れるための試練を受ける。
 あの高名な『黄金の魔術師』、マーリガン・スプライトの作った試練だ。
 さぞや厳しいだろうが、心配は要らない。
 王国史上最高の錬金術師だろうが、魔術師としての実力なら僕も決して引けは……」

 ごまかすために話し始めていたと思うのだが、話を続けるうちに気分がノッてきたらしい。
 ノリノリで話を続けるサザーンだったが、そこに水を差すように、


「――あの」


 小さく手をあげながら、ミツキが口をはさんだ。
 む、と口をへの字にするサザーンを気にした様子もなく、ミツキは口を開く。

「一つだけ、よいでしょうか?」
「何だ?」

 誰に対しても横柄な態度を崩さないサザーンが、手をあげたミツキを偉そうに指名した。
 しかしミツキはやはり無表情のまま、淡々と告げる。

「マーリガン・スプライトは、魔術師ではなく、カジノの経営者の名前だったと思うのですが」
「……え? え、でも」

 ぽかんと口を開けたサザーンが、助けを求めるようにこっちを見た。
 俺はさっと目を逸らす。

「吝嗇で同業者以外とあまり交流がなく、当時多くの資産を貯め込んでいた魔術師達を賭博にのめり込ませて大成功を収めた人だった記憶が……。
 確か、魔術師を博打に引き込んだ手段が『有名な魔法を賭博の景品にする』事で、それでついた二つ名が『黄金の魔術師』と『リヒト王国史上最大の錬金術師』と……」

 ミツキの容赦のない解説に、事情を察したサザーンの顔が羞恥と怒りで紅に染まっていく。
 そして、


「き、きっさまぁああ! 騙したなぁああああ!!」


 とうとう首まで真っ赤になったサザーンは、俺につかみかかった。
 怒り狂ったサザーンによって、話し合いは一時中断、俺はポカポカパンチ百回の刑に処されたのだった。
まさかの分割二回目!

なので、次回更新はたぶん明日
……たぶん!
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