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この世界がゲームだと俺だけが知っている 作者:ウスバー
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第百七十二章外伝 傾国の粛清劇

「……結局、こうなるのかよ」

 地面に倒れた魔術師ギルド長イアスキーを前に、俺はやりきれない思いを吐き出した。
 出来るだけ殺さないで済ませるつもりだったのだが、儀式を終えたイアスキーは問答無用で俺に襲いかかってきたのだ。

 転移が使えないこの塔の中で、出入り口まで封じられてしまえば応じるほかない。
 瀕死になるまで相手のHPを減らしてもイベントも起こらず、残念ながら殺すしかなかった。

「これなら、途中で下剋上イベントでも起こせばよかったな」

 魔術師ギルドに加入してから、この最終イベントに辿り着くまでにはたくさんの時間がかかった。
 その途中で何度も思ったのと同じことを、今度はまた別の理由からつぶやく。
 目をつぶれば、思い出すのは魔術師ギルドでの理不尽イベントの数々。

 まず、ギルド加入時。
 ギルド加入のためには洗礼の儀式というものを受けなければいけないのだが、洗礼の儀式で見習いのローブが強制装備される時、その時点でつけていた装備が消えるというバグがあり、泣く泣くリセットさせられた。
 今ではパッチが入り、事前に自分で装備するように変更されたようだが、どう考えても危険のなさそうなイベントにそういう罠を仕掛けちゃうのは本当にやめてほしい。

 それからも偏屈な魔術師の下について助手をやらされたり(大抵の指示がアレを持ってこい、だけなので、完全に運ゲー。失敗すると今まであげた友好度が水の泡)、理不尽なおつかいを何度も頼まれたり(時には実装されてないアイテムを要求され、クリア不可能になることもあった)、怪しげな実験に巻き込まれて能力値が永続で下がったり(しかも下がった時のアナウンスが一切ない。下がったのが通常数値が変動しないスタミナじゃなかったら、気付かずにセーブするところだった)、店売りされている魔法書を高値で売ってこいと無茶振りされたり(当然売れるはずないので、売れたと偽ってポケットマネーから金だけ出して渡した)、とんでもない苦労をさせられた。
 イアスキーから理不尽な要求をされる度、何度下剋上イベントを起こしてやろうかと思ったか知れないほどだ。
 そこまでの苦労をして、さらにレベル至上主義のイアスキーに気に入られるためにレベル150まで上げることでようやくギルド幹部になることが出来、そこでやっと最終クエストにつながるクエストが受けられる。


 魔術師ギルド最後のギルドイベント、『傾国の粛清劇』は連鎖イベントだ。
 その最終目的である禁じられた儀式を行うのに、必要な前提クエストは三つ。

 まず、イアスキーたち急進派に抵抗する、反対派と呼ばれる魔術師たちの家を壊しに行くクエスト。
 どうしてこれが儀式につながる連鎖イベントに入っているのか分からなかったが、前提クエストになっているものは仕方がない。
 基本的にゲーム内では建物は壊せないので、魔道ゴーレムといううさんくさい巨人を使うのだが、これが最悪だった。

 魔法で動いている癖に魔法防御ゼロで、相手の魔法の集中攻撃を受けるとすぐに破壊されてしまうのだ。
 しかも、一定以上ゴーレムから離れるとクエスト失敗になるので、事前に反対派の家に向かって敵を無力化してから、いそいでクエストを受けるという訳の分からない攻略をするはめになった。

 次に、儀式の補助をするのに必要な魔法書『ネクラノミコン』の確保。
 圧倒的な量の魔力を操作するので、それを制御するためのアイテムが必要で、それがそのネクラノミコンとかいう本なのだそうだ。
 これは図書館の地下に眠っているのだが、これをクリアするためには理不尽なクイズイベントをクリアせねばならず、ここでは不本意ながらwikiで攻略を見るはめになった。

 そして最後が、儀式に使う触媒となるミスリルの確保。
 街中から魔力を集めるため、制御が困難なだけでなく触媒も大量に必要で、大量のミスリルがなくてはならないらしい。

 その結果が、ミスリル系の装備1000個という、どう考えても正気とは思えない数の納品依頼。
 しかもミスリル系装備だけ、一定数購入するとしばらく在庫切れになるという、嫌な面でだけまめな『猫耳猫』スタッフの悪意にも触れた。
 やむなく行った『ミスリルスタチュー千度参り』は今思い出しても地獄だったが、とにかく俺はミスリル装備1000個の納品を何とかやってのけた。


 そんな苦しい準備を終えて、ついに始まった儀式イベント。
 事前の話では「ギルド内の抵抗勢力、そして魔術師の価値を認めない潜在的反乱分子どもを一斉に粛清し、魔術師ギルドの威光を世界に知らしめる」ための儀式が始まるはずだった。

 しかし、全ての準備が整った時、魔術師ギルドのギルド長、ケイモナ・イアスキーが口にしたのは、次のような言葉だった。


 ――よくやった。これで儂は、人を超えられる。


 つまり、イアスキーがこの儀式を望んだのは、最初から我欲のため。
 彼にとっては魔術師の栄達などどうでもよかったのだ。
 もともとイアスキーはレベル至上主義で、力を盲信する傾向があった。
 だがそれが、こんなところにつながる伏線だったとは、流石に俺も分からなかった。

 それでも俺は、仕方なくではあるものの、イアスキーの儀式を手伝った。
 イベントを途中で止めるのならば、それこそ最初の内に下剋上イベントでも起こしておけばよかった。
 どうせもう引き返せないのだ。
 ならとことんまでやるしかない。
 これ以上、何か悪いことが起こるということもないだろう。

 そんな投げやりな気持ちで行った儀式は、一応の成功を見た。
 いや、あれを成功と呼ぶべきなのかどうか。
 「人を超える」という禁忌の儀式は、おぞましい生き物を生み出すに留まった。

 見るも無残な姿となったイアスキーは、儀式が終了した途端、力試しと称して俺に襲いかかり、あっさりと返り討ちにあった。
 たかが姿が変わったくらいで、中身まで進化するはずもなかったのだ。
 大山鳴動して、とはよく言ったもの。
 あれだけ多くの準備をして、仰々しい呪文を唱え、派手なエフェクトまで使って、その幕切れがこれではなと思う。

「……もどるか」

 この儀式場は魔道の塔の最上階にある。
 どうやら最初の洗礼の儀式にも使った魔術師ギルドの魔法陣がここの儀式場への転移門にもなっているらしく、行きはイアスキーの魔術で一瞬でここまで飛んでこれたのだが、そのイアスキーが死んだ以上、転移は使えない。

 この魔道の塔ではそれ以外の転移系の魔法やアイテムは効かず、もしかするとデータ上、マップにつながりがないのか、夢幻蜃気楼でも出入りが出来ない。
 面倒でも歩いて帰るしかないのだ。

 俺はくだらないイベントにつき合わされた脱力感を抱えながら、ゆっくりと塔を下りていった。



 一階まで下りて、魔術師ギルドへの入り口を開いた途端、予想外の歓声が俺を出迎えた。

「おお! 我らが新たな盟主、操麻様だ!」
「操麻様、万歳! 万歳!」

 魔術師ギルドのギルド員たち、それもイアスキー派だったはずの彼らが俺を見て、口々に俺を称える言葉を口にし始めたのだ。
 どういう処理がされたのかはよく分からないが、イアスキーを倒した俺は次のギルド長であり、イアスキーに代わって儀式を成功させた英雄、ということになっているらしい。

「操麻様。世界中の誰もなしえなかった崇高なる儀式を成功させたあなたは、魔術師の希望です。
 魔術師ギルドは今日よりあなたの物。これがその証となる『支配者のステッキ』でございます。
 どうか、お受け取り下さい」

 副ギルド長であるディーキルにステッキを渡され、なんとなくそれを手にする俺。
 この程度の儀式を必死に止めた反対派とはなんだったのか。
 結局、反対派の粛清と言っても、せいぜいが立てこもっていた家を壊した程度で何もしていない。
 この茶番は一体なんなのか。

 杜撰なストーリー展開に顔をしかめたそれが、エンディングテロップもスタッフロールもない、ひっそりとした魔術師ギルドイベントのフィナーレだった。




 最初は、ほとんど違和感を覚えなかった。
 不思議に思ったのは、なんだかんだで消費してしまった回復アイテムを補充しようと、アイテムショップに向かった時だ。

「あ、れ……?」

 店には、誰の姿もなかった。
 いつもは店に入った途端、無駄に元気なモブ店員さんが、無駄に明るい口調であいさつをしてくるはず。
 なのに店は閑散としていて、物音一つしない。

 しかし、それはおかしいのだ。
 万引き防止のためなのか、店が開いている時間に店に店員がいないということはない。
 唯一、例外があるとしたら……。

「……これ」

 店のカウンターの奥をのぞくと、そこには赤いリボンが落ちていた。
 最悪なことに、見覚えがある。
 あのアイテムショップの店員が、いつもつけているアイテムだ。
 その落とし物に、俺は嫌な予感が的中したという確信を得た。

 店に誰もいない唯一の可能性。
 それは、店員が何かの理由で殺された時だ。

 特に、前のパッチ以降、人が死ぬとイベントアイテムを落とすように仕様変更があった。
 このリボンが何かのイベントアイテムだったとすると、辻褄が合う。

「何が、あったのかな……」

 彼女の明るすぎるキャラ設定には閉口させられることもあったが、俺は割と気に入っていた。
 それが死んだとなると、いくらストーリー進行に影響がないとはいえ、流石に少し憂鬱な気分になる。

 普通にストーリーを進めていれば、こういうモブキャラが死ぬことは滅多にないのだが、稀にならあるのが『猫耳猫』だ。
 とはいえ、そんな突発的にNPCが死ぬようなイベントが進行していた記憶はない。
 知らぬ間に地雷を踏んでしまったのだろうか。

 俺は情報を集めなければと外に出て、

「……え?」

 そこでようやく、気付いた。
 街に、全く人影がないことに。

「おいおい、嘘だろ!」

 そこから、街中を走り回った武器屋や宿屋などの店だけでなく、普通の民家にも、貴族の屋敷にも、神社にも行ってみた。
 そして、いつも衛兵が守っているはずの城に簡単に入り込めた時、俺は事態を正しく理解した。


 ――すなわち、街中の人間が消えて、いや、死んでしまったことを。


 原因は、分かっていた。
 思い当たるものはたった一つしかない。
 イアスキーが行った、あの儀式だ。

 「ギルド内の抵抗勢力、そして魔術師の価値を認めない潜在的反乱分子どもを一斉に粛清し、魔術師ギルドの威光を世界に知らしめる」ための儀式。
 そして、街中から魔力を集めて行う儀式だと、説明はあった。

 そこだけ聞いて俺は、儀式によって引き起こされた効果によって、粛清が起こるのだと勝手に思っていた。
 だが、違ったのかもしれない。

 儀式は誰にとってもプラスにならない、醜悪な生物を生み出しただけ。
 はっきり言って、その影響はちっぽけなものだった。

 しかしむしろ、大きな影響力を持っていたのは、儀式の成果物ではなく、その過程だとしたら?
 儀式に必要な膨大な魔力を集めるという手順が、粛清の役割を担っていたと考えると、理屈に合う。
 合ってしまう。

 あの儀式で、街中の人間、いや街中の生物から魔力をかき集め、そして、強制的に魔力を奪われた生物は、全て死んでしまった、という設定なのだろう。
 無事だったのはおそらく、あの時に魔術師ギルドにいた者たちだけ。

「なんだよ、それ」

 目の前が、真っ暗になった気がした。
 ゲーム内のこととはいえ、ほんの数時間の内に、八百屋のおばちゃんも、宿屋のおやじさんも、王様も王女様も、あのうっとうしいアホ魔術師も、全て死んでしまったのだ。

 そして、そんな儀式に俺は、加担すらしていた。
 深い理由なんてなかった。
 ただ、乗りかかった船だというだけの理由で、これだけ大勢の人の命を理不尽に奪ったのだ。

 そう考えると、吐き気すらした。
 しかし、しかしである。

「……この程度、『猫耳猫』なら予測の範囲内だ」

 俺だって伊達にこのゲームを、『猫耳猫』をプレイしてはいない。
 これが、一周目の自分、あの『魔王の祝福』イベントを体験する前の俺なら取り乱していたかもしれない。

 だが、この事態はいわば二回目。
 すでに耐性は出来ている。

 少なくとも街一個の住人全てがいなくなった訳で、ある意味前よりも被害は大きいが、別に強制セーブをされた訳じゃない。
 ただロードをして儀式前のデータにもどるだけで、この事態からは脱出出来るのだ。
 俺はメニュー画面を操作して、ロードをしようとして……。

「最新、パッチ……?」

 そこに、見慣れないお知らせを見つけた。
 それは『猫耳猫』の公式アナウンス。
 新しいパッチが完成したというお知らせだった。

 俺は好奇心に負け、そのページを開いた。
 羅列されているのは無数のバグ修正と仕様変更、そして、その最後には、

「戦士ギルド、魔術師ギルドイベントの影響リセット!?」

 もはやタイムリーとしか言えない項目が並んでいたのだ。

「ギルドイベントを終了させた後、通常のゲームプレイの継続が困難になるというご指摘を頂いたため、キャラクターの状態を最終イベント直前に戻す救済措置を導入……」

 お知らせの欄に書かれた情報は少ない。
 しかし、そこにある文面を読む限り、その『影響リセット』を行うと、イベント進行度と同時に、プレイヤー以外のキャラクターや建築物の状態が最終イベント直前まで巻きもどせるらしい。

 おいおい、と口の中でつぶやく。
 こんなに都合がよくていいのか、とは思った。
 だがこれこそが運命、天の助けという奴かもしれない。

 俺は震える手でパッチ適用の操作をしようとして……。

「しまった……!」

 すぐに呻いた。
 パッチを当てるには、一度ゲームを終了する必要がある。
 最新のVRゲームといえど、パッチの適用とゲームプレイを同時にすることは出来ないのだ。

「どうする、かな」

 問題は、この状況をセーブするかどうか。
 最後にセーブしたのがいつかと思い起こす。
 ……ここ数時間、セーブした記憶がない。

 ここでセーブせずにゲームをやめ、精神的にもきついこのイベントをもう一度やるというのは出来れば避けたい。
 かといって、この状態を保存するのは不安ではあるのだが……。

「まあ、大丈夫だよな」

 パッチさえ適用すれば、どうにかなるだろう。
 俺はわざと楽観的に考えて、そのままモノリスに走ってデータをセーブ。
 続いて、迷わずゲーム終了の項目を選択した。



 当然だが、ゲーム終了がそのままVRマシンの停止を意味する訳ではない。
 このVRマシンには、専用ブラウザを起動してネットを巡回する機能も当然のようについている。

「パッチ! パッチ!」

 興奮のあまり、変な独り言を口にしながら、俺は猛然と操作を開始する。
 俺のオーダーによって、瞬間的に複数展開される3Dウィンドウ。

 同時に、真希が悪戯で入れたVRアプリによって、デフォルメされた「パッチ! パッチ!」という文字が電脳空間に具現化され、ウィンドウにぶつかって泡のように消える。
 文字通り電脳空間に独り言を撒き散らしながら、俺はネットサーフィン用のアバターを操作して、光の速さで『猫耳猫』の公式ページを呼び出し、パッチの適用を開始する。

「よし、成功!」

 パッチ公開から多少間が空いていたためか、一発でアクセス出来た。
 大したデータ量でもないはずなのに、全然減っていかないゲージにじりじりする。

 だがそんなのはいつものこと。
 むしろ、この時間を利用してパッチの詳細を確かめるのが、最近の俺の楽しみであり、控えめに言って至福の時間だ。

 焦燥と期待の入り交じった沸き立つような気分で、別窓で開いておいた公式からのお知らせページをスクロールして、パッチの詳細を確認する。
 いつもならじっくりと読み込む数多のバグ修正の説明をそぞろに読み飛ばし、俺は早々に一番下、「ギルドイベントの影響リセットについて」という項目に到達する。

 この影響リセット、手法としては単純。
 取り返しのつかない影響の出る、最終ギルドイベントの直前――例えば、魔術師ギルドのイベントで言うと、儀式のために儀式場に転移する瞬間――に内部で仮セーブのような処理が行われ、ギルドイベントクリア後に特定の手順で行動すると、そのデータがロードされ、プレイヤーの能力値と所持品を除いた全ての状態が仮セーブ時点にもどされるらしい。

 そして、特定の手順というのが……。

「ベッドで寝ること? それって、つまり――」


 ――要するに、夢オチである。


 俺はあいかわらずの『猫耳猫』スタッフのセンスに苦笑しながら、読み進める。

 魔術師ギルドの影響リセットについては、儀式成功の後、儀式場の上に追加された最上階にあるベッドで睡眠状態になると、自動的に影響リセットが発動。
 戦士ギルドについては簡単で、ギルドイベント後にどこでもいいので宿屋で寝ると、影響リセットが発動するらしい。

 ちなみに睡眠状態とは、ゲームメニューから「眠る」を選択する、ベッドなどの特定の場所で一定時間横になる、睡眠の状態異常にかかる、のいずれかによって移行する。

 また、それに付随する変更として、魔術師ギルドイベントで儀式が成功した後、ギルドの外に出ることが出来ず、結局は影響リセットをするしかない、ということだが、これは考えれば納得だ。
 死んだNPCはクエストアイテムを落とす。
 それを目当てに魔術師ギルドから出て、儀式の影響で死んだ人間からクエストアイテムを回収してから影響リセット、とやれば、本来入手出来ないはずのクエストアイテムを簡単に手に入れられてしまう。
 その対策だろう。

 夢オチはどうかと思うが、あいかわらず細かいところはよく考えてるんだなー、と思いながら読み進め、とうとう最後の一行、※印が書かれた一文に俺は目を通して……。

「ん……?」

 何だか急に目にゴミが入って変な文章が見えた気がして、俺は目をこすった。
 ……が、考えてみればVRで目にゴミが入るも何もない。
 そんな誰得なプログラムはこのアバターには組み込まれていない。

 なるほど、ゴミじゃなくて、局地的な視覚障害バグか、と思いながら、もう一度最後の一文に目を向ける。

※なお、データ管理上、パッチ導入前にギルドイベントを終えた方にはこの救済措置はご利用出来ませんので、あらかじめご了承ください。


「う、うぁ……」

 口から、変な音が漏れた。
 「う、うぁ」という文字がウェブページに流れていくが、気にしている暇はなかった。

 もう一度、もう一度だけと思って、目をつぶって、ゆっくりと開いて……。


※なお、データ管理上、パッチ導入前にギルドイベントを終えた方にはこの救済措置はご利用出来ませんので、あらかじめご了承ください。


「うわぁあああああああああああああああああああああ!!!」


 無慈悲な文言に、俺はVR空間に巨大な文字列を吐き出し続けたのだった。




 そしてその、一時間後。

「こんちきしょぉおおおおおおお!!」

 はじまりの森近くの道には、錆びた剣を振り回し、馬車を襲った女盗賊を八つ当たり気味に滅多打ちにする俺の姿があった。


 ――これが、俺の体験した魔術師ギルドのギルドイベント。
 ――そしてゲーム時代、俺が三周目のプレイを始めるに至った経緯である。
+注意+
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