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この世界がゲームだと俺だけが知っている 作者:ウスバー
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第百六十五章 遅すぎるヒント

乱数の説明だけで4000字とかアホなことになったので、我に返って大幅カット
不自然なところなどあれば感想欄にお願いします
 乱数について真面目に話すとほんとめっちゃくちゃ長くなるので簡単に説明するが、ゲームで言う乱数とは要するに、ゲームの判定に使うランダムな数字のことだ。

 双六や人生ゲームでサイコロやルーレットでランダムな数を出して、その数だけ駒を進めたり、3以下が出たら一回休み、みたいな判定を行ったりするが、そのコンピューター版だと思えば理解も楽だろう。
 ただ、コンピューターにはサイコロやルーレットはついていないので、大抵はランダムっぽい数字を導き出す式を使って乱数を生成するようになっている。

 ただ、サイコロやルーレットだって練習すれば狙った数を出すことは不可能ではないように、コンピューターが作った乱数もサイコロなどと同じくらい、いや、場合によってはそれ以上簡単に数字を操作出来たりする。

 本当はランダムで決定するはずの要素を、乱数を予測、操作することによって自分の思い通りの結果に変える。
 これがゲーマー禁断の秘技『乱数調整』なのだ!


 ゲームにおいて、ランダムで決定する要素は数限りない。
 だから乱数調整を極めれば、こちらの攻撃は常にクリティカル、相手の攻撃は常にミスか不発、敵を倒せば必ずレアアイテムを落とし、カジノでスロットを回せば毎回777、レアな色違いモンスターだって一発で出現、なんてスーパープレイだって出来る。
 ……あくまで、理論上は。

 残念ながら、『猫耳猫』において乱数調整の余地はほとんどない。
 『猫耳猫』の乱数はゲーム開始時に毎回生成されるタイプらしいが、それを解析するのはただのゲーム好き大学生にはちょっと荷が重い。
 仮に乱数表を把握出来たとしても、『猫耳猫』には乱数を使う要素が多すぎる上、状況によって乱数の消費ペースが全く異なり、それを計算するのはほぼ不可能だそうだ。

 ――ただ、それはリセットする度に数値が変わる、『普通の乱数』の話。

 『猫耳猫』スタッフはもう一つ、セーブやロードで値が変動しない乱数を作って、一部イベントに使用していた。
 それが『智を知るモノ』クエストにも使われている乱数、通称『おみくじ乱数』である。


 『猫耳猫』プレイヤーたちは最初、このクエストでどうしても解けない問題が出た時、セーブ&ロードで問題を変えようとした。
 だが、人を苦しめることにかけては手間を惜しまない『猫耳猫』スタッフのこと。
 奴らはそんな方法ではクリア出来ないように、きちんと手を打っていた。

 このクエストに使われているのが普通の乱数であれば、直前のセーブデータをロードをすることで、出題される問題は変わるはずだった。
 しかし、何度リセットを繰り返しても出てくるクイズは同じもの。

 それも、問題がすでに出された後のデータをロードしたのであれば納得出来るが、『智を知るモノ』クエストを開始させる前にデータを呼び出してやり直してみても、出てくる問題は憎らしいほど変化がなかった。
 もしかするとこのクエストはもう、ゲーム開始時に出題される問題が固定されているのではないか。
 一時期はそんな予測が出るほどだった。

 しかし、あるプレイヤーが偶然、ロード前と違う問題を出現させることに成功する。
 その手段は多くの者の想像よりも簡単だった。

 ――次の問題が出される前に、おみくじを引いておく。

 たったそれだけのことで、出題されるリドルがズレたのだ。


 そこまで分かれば後はいつもの流れ。
 『猫耳猫』プレイヤーたちによる検証が始まり、このリドルクエストのリドル決定の仕組みは白日の下に晒された。

 出題されるリドルが決定されるタイミングは、『智を知るモノ』クエストが開始された瞬間と、前のリドルがクリアされた瞬間。
 その瞬間におみくじの中身を決めるのと同じ乱数を参照して、次に出題されるリドルが決まると分かったのだ。

 単純化して話すと、出題されるリドルに1~2000までの番号が振り分けられているとすると、10番のリドルをクリアした時におみくじ乱数が1なら次は11の問題が現われ、おみくじ乱数が5なら15の問題が現われる、というように考えれば分かりやすいだろう。
 ちなみに『智を知るモノ』スタート時は0番のリドルが出題された状態にされているため、おみくじ乱数が1なら1の問題が、2なら2の問題が、という風に問題が現われるようになっている。

 だとしたら話は簡単だ。
 おみくじを一回引くごとに、おみくじ乱数は変わる。
 だから、次のリドルが正解出来る物になるまで、おみくじを引き続ければいい。

 その結果を受けて、『猫耳猫』wikiには次のような攻略法が載せられた。



サザーンでも出来る『智を知るモノ』簡単攻略法1

1.正解出来るリドルを見つけたら、そのリドルに答える前(・・・・)にセーブ
2.答えの分かっているリドルに答える
3.新しいリドルが出てくるので、そのリドルを解く
4.→リドルが解けたら
  データをロードして、リドルを一問だけ解いてセーブ
  →リドルが解けなかったら
  データをロードして、おみくじを引いてセーブ
5.2に戻ってループ



 こう書くと分かりにくいかもしれないが、これはつまりは『智を知るモノ』のリドルをクリアする直前に、おみくじを引いて乱数をズラすという手法。
 そうして、この超初歩的かつ原始的な乱数調整によって、『智を知るモノ』で出てくる問題を変えることが可能になったのだ。

 ただ、この調整はセーブ&ロードを前提としたもの。
 現実化して、セーブもロードも出来なくなったこの世界では当然使用不能であり――



「――つまり、今までの無駄に長い話は本当に無駄だったという事ですか?」
「いや、無駄って言うなよ!!」

 いつになく冷ややかなミツキの台詞に傷ついた俺は、ここが図書館ということも忘れて大声をあげた。

「いえ、しかし、あれだけの話を聞かされて結局成果なしと言われては、こちらとしても呆れるより他、対処のしようがありません」
「い、今は使えないってだけで、乱数調整による『智を知るモノ』攻略は、非常に効果的なクエストクリア法であってだなぁ……」
「ですから、それが今使えないのでは意味がないではありませんか」
「う、うぐぐ……」

 ミツキの当たりはなかなかに厳しい。
 俺がさらなる反論を繰り出そうとした時、

「…ソーマ」

 今まで少しつらそうに黙り込んでいたリンゴが、突然招きスフィンクスの方向を見た。
 釣られて視線を向けると、そこからレイラたちが歩いてくるところだった。
 ただ気になるのは、セーリエさんがレイラに肩を貸してもらっていること。

「セーリエさんに、何かあったのか?」

 近くまでやってきたところで俺が尋ねると、

「いえ、何でもありませ――」
「セーリエさん、がんばりすぎでまた倒れちゃったんだよー」

 セーリエさんが何かをごまかそうと首を振り、その後ろにいた真希があっさりとセーリエさんが倒れたことをばらした。

 無言で真希をにらみつけるセーリエさんに、真希は笑顔を返す。
 しばしの見つめ合いの後、目を逸らしてうなだれるセーリエさん。
 あ、案外弱い……。

「だからね。問題もなっかなか解けないし、ちょっと休憩しようかなー、って思って」
「わたしのせいで、すみません……」

 真希の言葉に、ますますうなだれるセーリエさん。
 さすがにかわいそうになってくる。

「まあ、まだ寝不足が効いているみたいですし、あんまり無理をしないで下さい」
「ありがとう、ございます……」

 フォローの言葉をかけたところで、眼鏡の奥の心持ち潤んだ瞳と目が合う。
 その目からは初対面のきつい雰囲気は鳴りを潜め、どことなくやわらかい色が浮かんでいて――

「そ、ソーマ! お弁当、食べない?!」

 と、『うわきものに死を!!』を発動させたかのような高速で、俺とセーリエさんの間にレイラが飛び込んできた。

「お弁当、なんて作ったのか?」
「う、うん。ひ、暇だった時に、ちょっと……。そ、ソーマのことを思って作ったんだよ?」

 登場の仕方にはちょっとびっくりしたものの、そんな風に言われたら断れない。

「ええと、人多いけど、人数分あるのか? さすがにこの状況で俺だけっていうのは……」
「た、たぶん、大丈夫だと思う」

 ということで、突然のお弁当タイムになった。
 まだ夕食には早い時間だが、小腹が空いたような気はしていたのでちょうどいいと言えばちょうどいいだろう。
 一応館内は飲食禁止だそうなので、俺たちはセーリエさんの後について休憩室のような場所に連れていってもらって、そこで弁当をいただくことにした。

「あ、あの、たくさん作ったから、たくさん食べてね」

 照れたように言いながら、レイラが肩から提げていたクーラーボックスから料理を出し始める。

「おおー!」

 さすがはクーラーボックス。
 普通であれば持ち運びの手間や冷めた時のことを考えた物にしなければいけないところだが、クーラーボックスに入れてしまえばそんな気遣いも必要ない。
 お弁当と言いつつも、普通の料理のような立派な料理の数々がテーブルに置かれていく。
 満漢全席もかくや、というほどの料理が並んで、並んで、並んで……。

「え、ちょっと……ま、まだあるのか?」

 テーブルの上がいっぱいになってもまだ料理が途切れない。
 俺はあわてて止めた。

「う、うん。ちょっと前から作り始めてたから……」
「いや、ちょっと前って……」

 レイラが俺の屋敷に来てからずっと一緒にいるが、それからレイラがこんな料理を作っているところなんて見たことがない。
 俺が不審の視線を送ると、レイラはうるっとした目でこっちを見た。

「う、嘘じゃないよ。三日前から、コツコツと作ってただけで、そんな……」
「三日前!?」

 それってもしかして、俺と初めて会った直後くらいからじゃないか?

「って、待った待った! その時はまだ、俺のこと好きでもなんでもなかっただろ?」
「そ、そう、思ってたんだけど、なんだか気になって、気づいたら色々作り始めちゃってて……」

 色々という単語に嫌な予感を覚えなくもなかったが、身の安全のためにスルーした。
 というか、一目会っただけの男のために、食べてもらえるかもわからない料理を、ひたすら作り続けるとか。
 久しぶりに俺の背中を冷たいものが走り抜けた。

「…ん。おい、しい」
「やはり、レイラさんには料理の才能がありますね」
「わ、わたしだって、あと一年、いや、二年、う、ううん、十年くらいあれば、このくらいの料理、簡単に……!」
「うん、おいしい! ダストダスのプリンの次くらいに好きかなー」
「ふっ。僕の舌を満足させるとは、あいかわらずよい腕をしているな」

 しかし、その辺りは鍛え抜かれた俺の仲間たち。
 レイラの発言にも特に動揺することなく、並べられた料理をぱくついていた。
 ……一人、匂いに釣られて余計な物までもどってきていた気がするが、気にしたら負けだ。

 セーリエさんも食事の回復効果のおかげか、ずいぶんと元気になったようだった。
 ただ、二度も倒れたということを考えると、俺はどうしても口をはさまずにはいられなかった。

「……なぁ。もう、やめにしないか?」

 その言葉に、みんなの視線が俺に集まる。
 全員の不審と非難の眼差しが突き刺さる中、それでも俺は言った。

「ここまで来たら、って気持ちは分かるよ。でも、最初に言ったろ?
 俺たちの目的は、魔術師ギルドにネクラノミコンを渡さないことで、『智を知るモノ』の攻略は必須条件じゃない。
 意味がないなんて言わないが、誰かに無理をさせてまでやる価値があるとは俺には思えない」
「それ、は……」

 一番やる気があったレイラが言いよどむ。
 それを見て、俺は場違いにも嬉しくなった。
 危険な言動の多いレイラだが、セーリエなんてどうでもいいからクエストを進めたい、なんて言い出さない奴で、本当によかったと思う。

 そして、レイラが説得出来れば、あとはもう時間の問題だ。

「幸い、ネクラノミコンは無事だったんだ。だからもうこれで……」
「――やらせて、下さい」

 だが、そこで俺の意見に異を唱えたのは、思いがけない人間だった。

「セーリエ、さん?」

 眼鏡の図書館司書は、そこで俺に向かって大きく頭を下げた。

「ソーマさん。わたしの不摂生のせいで、迷惑をかけてしまいました。
 心からお詫びします」
「え? あ、ああ、いや、それは……」

 そうして、俺が状況の変化に追いつけていない内に、セーリエさんはたたみかけるように言葉を繋ぐ。

「ですが、だからこそ、わたしがこのリドルを解きたいのです。
 わたしを気遣ってくれる気持ちには感謝しています。
 ただ、自らの失態の責任を取りたいという、これはわたしの我儘で、わたしの意思なんです」
「セーリエさん……」

 すると、今までうつむいていたレイラも、その言葉に勇気を得たように顔をあげ、口を開いた。

「ソーマは、このスフィンクスの試練をクリアしたくない訳じゃ、ないよね。
 クリア出来た方が、嬉しい、よね?」
「それは、まあ……」
「だ、だったら私、やりたいな。それで、ソーマを喜ばせたい」
「レイラ……」

 控えめな、だが反面力強くもあるその視線に、俺は言葉を失う。

「え、なにそれずるいよ! わ、わたしもやるよ!
 だ、だってほら、なぞなぞとか好きだし!」

 乗り遅れたらたまらないとばかりに、真希も声をあげた。
 一人だけ理由がやったらかっるいが、だからこそそれは真希の素直な気持ちなんだろう。

(しかし、そうか……)

 俺は、複雑な気持ちでレイラ、セーリエさん、真希の三人を見る。
 動機はそれぞれ微妙に違っていても、『智を知るモノ』クエストクリアへの情熱は、全員強く持っているらしい。

 ……こうなれば、俺が一人で反対する理由なんてない。
 俺は無言で両手をあげ、降参の意を示した。
 三人の顔がパッと明るくなる。

 それに水を差す、つもりではないが、やはり聞いておかなくてはと思い、質問をする。

「それで、クリアは出来そうなのか?」

 その問いの反応は非常に分かりやすく、俺が口にしたと同時に、三人が三人とも顔を伏せた。
 どうやら状況は思わしくないらしい。

「あれからちょっと進んで、なんとか、26問目までは行ったんだよ。
 だけど、そこで出てきた問題が、どうしても……」
「気のせいかもしれませんが、問題文に違和感がある気がするのです。
 ただ、それが何を意味するのかまでは……」

 真希とセーリエさんが口々に説明する。
 大体想像通りになっている、と見るべきだろう。
 これなら、俺が日記からヒントを探したかいもある。

 俺はもったいつけるように間を取ってから、助言役に進み出ようとして、

「だったら、俺がアドバイス……いや」

 ちらりとミツキを見た。
 ミツキの猫耳がぴくっ、ぴくっと何か言いたげに動いているのを見て、俺は言い直した。

「ちょっとずるいかもしれないが、あのリドルクエストを解くための手がかりになる、あの謎を設定した人の日記があるって言ったら、読みたいか?」

 俺が言うと、レイラとセーリエは顔を見合わせ、二人ともゆっくりとうなずいた。
 どうやら二人とも同じ意見のようだ。
 真希も読ませて読ませてーと騒いでいる。

「そうか。だったら、これを貸しておく」

 俺は代表してレイラに日記を渡そうとして、最後の瞬間、少しためらった。

 考えようによってはこれは、この世界の創造主の日記とも言える。
 これを読めば、この世界がゲームの世界であることが分かってしまうかもしれない。
 そうでなくても、何かしらの違和感を抱くことは考えられるだろう。

(いや、それでも……)

 俺は小さくかぶりを振って、あらためてレイラの手に本を押しつけた。

「『智を知るモノ』クエストについては、このページから大体5ページくらいに渡って書いてある。
 その、もしかするとこれを読んで不思議に思うことがあるかもしれない。
 それについては、後で必ず話す。だから今は、その疑問は飲み込んでクエストの攻略に集中してほしい」
「ソーマ……。うん。分かった、よ」

 レイラは神妙な顔で『猫耳猫』の制作日記を受け取り、早速俺の示したページを読み始めた。
 すぐにそこに、セーリエさん、真希も顔を寄せていく。
 ちなみに全く関係ないイーナも読みたそうにしていたが、三人があんまり真剣な様子なのであきらめていてすごすごと後ろに下がっていった。

 これでいいんだろ、とミツキに視線を送ると、ミツキは誰とも目を合わせないようにしながら、耳までぺたんと折り曲げて何も聞いていないフリをしていた。
 まったく、照れ屋な奴である。

「まさか、こんな本が……」

 俺が貸した日記は、彼女にとっても驚きの内容だったようだ。
 セーリエさんはそんな言葉を漏らしながら、食い入るように文字を追っている。

「あ、このオーダーっていうのは、ギューン、って文字を書くことで……」

 一方、この三人の中で唯一現代のコンピューターについての知識がある真希は、二人の解説役として機能しているようだ。
 そして、

「あぁ! タヌキ!!」
「う、うん。そういえば、あの問題、なんだか不自然なくらい、『た』が多かったよ!」

 ある部分に差しかかったところで、レイラと真希が大声で叫び合った。
 どうやらヒントを見つけたらしい。

「な、なるほど。つまり、この文章がヒントになるという可能性は否定出来ないところですね。
 『た』が多いのですから、それはつまり、アレだということですからね」

 そうして二人は一人だけ理解出来ていないけれども必死で知ったかぶりをしているセーリエさんを生温かい目で見ると、すぐに立ち上がって招きスフィンクスに向かって駆け出した。



「――ええと、『た』を抜くってことは、本当の質問は……分かった! 答えは、きつつき!」

 真希が答えを入力した瞬間、ピンポーンという電子音が正解を告げる。

「やった! 26問目、突破!」

 真希とレイラが嬉しそうにハイタッチを交わす。
 それを見ながら、

「ええ。このような場合では答えがキツツキである可能性が99パーセント以上存在していますね」

 いまだになんで答えがキツツキになったのか理解出来ていないセーリエさんも、眼鏡をぐいっと押し上げて偉そうに講釈を垂れた。

「この調子でどんどん行くよー!」

 言いながら、真希は難問を超えた勢いを借りるように次の27問目に挑戦して、即座に正解。
 続く28、29と連続でクリアして、記念すべき30問目。

「……また、かぁ」
「そ、そうみたい、だね」

 ふたたび出てきた、誤答問題。
 本来なら正解と思われる答えを弾かれ、苦戦の予感に肩を落とす二人だったが、それは俺にとってむしろ好都合だった。
 無言のまま悔しげに眼鏡を直すセーリエさんを押しのけるように、前に出る。

「いや、よくやってくれたよ。これで、ようやく俺が動ける」
「ソー、マ?」

 そうやって声をかけながら、俺はレイラの肩をぽんと叩いた。
 目を丸くするレイラに、俺は言う。

「それの答えは俺がもう知ってる(・・・・・・・・)
 だけど、絶対に正解させないで(・・・・・・・)、そのままの状態にしておいてくれ」

 そして俺はスフィンクスをもう一度眺めると、身をひるがえし、図書館の出口に向かって歩き出した。

「そ、ソーマ、どこに行くの? もしかして、もう、あきらめちゃうの?」

 外に向かって歩く俺の背中に、レイラの声がかけられる。
 その声に、俺は立ち止まって首を振る。

「まさか。こんな絶好の機会、逃すはずないだろ」
「え? だ、だったら、何をしに外に?」

 続くレイラの疑問に、俺は不敵に笑って、こう答えた。


「――おみくじを、引きに行くのさ」


 乱数調整をするゲーム、『猫耳猫』。
 その全貌が今、明かされようとしていた……。



『この世界がゲームだと知っている』書籍版一巻、無事に発売されました
実際見ると禍々しさすら感じる厚さですが、どうぞよろしくお願いします
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