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この世界がゲームだと俺だけが知っている 作者:ウスバー
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第百二十六章 それぞれの決意

 弱体化のなされていない魔王は、無敵の怪物だ。
 完全耐性と名付けられた特性により、あらゆる属性に耐性を持ち、全ての状態異常が効かず、どんな弱体化も受け付けない。

 物理属性や純粋な魔法属性に対しては軽減するだけで無効にする訳ではないので絶対に倒せないということもないのだが、それがどんなに困難なことかは同じ物理耐性を持つブッチャーを倒した俺には分かる。
 そして、状態異常や能力低下効果についてはデフォルトで完全な耐性を持っているため、こちらは100%、絶対に効果を発揮しない。
 弱体化クエストでこの完全耐性のどこを削っていくか、それが対魔王戦略の基本と言える。


 俺たちが魔王に対して施した弱体化は、能力値の面でまず三つ。
 攻撃力、魔法攻撃力、敏捷だ。
 本当は物理防御力も削りたかったのだが、それはクエスト難度の点から無理だった。

 まあ、俺の攻撃力は手数という意味でも威力という意味でもそれなりのレベルに達している。
 防御力が下がっていなくても何とかなるだろう。
 それよりも犠牲者を出さないため、攻撃面の弱体化は必須だった。
 これについては間違った選択はしていないと胸を張って言える。


 耐性面で弱体化させたのは、物理と麻痺だけ。
 初めから魔法や属性攻撃でダメージを与えようという気はない。
 この時点でサザーンが要らない子状態になるのは確定だが、あいつにはそこに辿り着くまでの段階でひたすら魔法を使わせまくる予定だから構わない。

 状態異常と能力低下の攻撃については、耐性を剥がしても『全く効かない』が『極稀に効く』に変わる程度で期待出来るような物ではない。
 一応入ると有利になりそうな麻痺の耐性だけ剥がしておいたが、それでも魔王の麻痺耐性は95%。
 通常の敵を必ず麻痺させる攻撃を仕掛けても、成功率はたったの20分の1だ。

 ついでに言っておくと、魔王はスタン耐性とノックバック耐性も持っていて、仕様なのかバグなのか、その耐性をなくすことが出来るイベントがない。
 つまり魔王は、常にのけぞりや吹き飛びがないスーパーアーマー状態で、これが思った以上に厄介だ。
 スーパーアーマーな魔王を相手にどうやって大技を当てるか、これが魔王戦の最後のポイントになってくるだろう。


 基本能力や耐性のほかにも、自己再生能力や突然の事故死を引き起こしそうなカウンター系の特性や攻撃方法を封じた。
 戦い方によっては封じない方が有利に戦える攻撃などもある。
 今回は近距離で隙の大きい大技を残し、面倒な遠・中距離攻撃を中心に封印していった形だ。

 ただ一つ懸念があるとすれば、『ホーミングフレア』という厄介な技を封じられなかったことか。
 この『ホーミングフレア』は追尾性のある火球をいくつも放つというゲームによくある技だが、この技が面倒なのはランダムホーミングと呼ばれる特別な軌道を描く点にある。
 このランダムホーミングについては機会があればもっと詳しく述べるが、このタイプの攻撃は全弾ヒットはしにくいが、いくら素早くても完全な回避が難しい。
 もちろん遠距離攻撃であるため、俺が魔王の3メートル以内に近付けば問題はないとは思うのだが、万一ということを考えると少し不安になる。

 この技が危険なのは、何も回避が難しいからだけじゃない。
 魔王の攻撃は流石魔の王と言うだけあって、闇属性が多い。
 そのため、俺は主に真希とサザーンに頼んで闇属性に耐性のある装備を集めてもらったのだが、この『ホーミングフレア』は魔王の攻撃としてはめずらしい火属性。
 しかも威力の高い攻撃のため、防御面に不安が残るサザーンなどに命中すると危険かもしれない。

 俺たちのパーティでこれを喰らっても耐えられそうなのは、四大属性に強い耐性を持つミツキくらいだろうか。
 ミツキなら完全ではないとはいえ火属性ダメージを抑えられるし、あの素早さなら全弾命中もありえない。
 しかし、それ以外の人間に当たった時のことを考えるとやっぱり……いや、いくら威力が強いと言っても魔王の魔法攻撃力は落としてあるので、心配することはないとは思うのだが。


 ただ、あるのが不安材料だけかというと、もちろんそんなことはない。
 魔王の弱体化もそうだが、こちらの強化という意味でもそれなりの備えはある。

 まず、サザーンに各町のアイテムショップを回らせて、回復アイテムは潤沢になった。
 特に入荷数が少なく、地味な貴重アイテムであるMPポーションを大量に確保出来たことは大きい。
 これのおかげで、作戦中にMPが切れるという最悪の事態は考えなくてもいいだろう。

 ほかの消費アイテムに関しても、普通のアイテムについては以前の店買占め分が残っているし、有用な掘り出し物はリストを作り、サザーンに見つけ次第買うように言って色々とそろえている。
 ついでにサザーンには血の池エリアを踏破した後、城門に乗り込むためのはしごなどの小道具も用意してもらっている。
 少なくとも、アイテム不足が今回の戦いでネックになることはなさそうだ。


 個々人の能力という意味でももちろん上がっている。
 俺とリンゴは新しい特技を身につけたし、ブッチャーのおかげでレベルも相応に上昇している。
 二人ともレベル178。
 レベル250の魔王に挑むには若干心許ない気もするが、制限がある中で上げたにしてはそこそこの成果だろう。

 ほかの仲間はと言えば、ミツキも数々のイベントをこなす中でいくつかレベルを上げたと言っていた。
 最終的なレベルはまだ聞いていないが、十日前よりは強くなっているだろう。
 サザーンとくまについては……まああれだが、真希もきちんと強くなっている。

 真希の場合、元々のレベルが高かったのでレベル上げは出来なかったが、その分装備を改造した。
 ブッチャーから大量の肉切り包丁を入手したおかげで全員の武器性能の最低基準が底上げされたのはもちろん、真希にはほかの人間にはない特徴がある。

 真希は俺と同じでアクセサリーの装備制限がないのだ。
 特に指輪を10個もつけられるというのは大きなメリットと言える。
 耐性系を中心に装備をそろえていき、鉄壁の防御力を誇るようになった。

 これは、魔王戦での真希の役目に合わせてのことだ。
 魔王戦では俺が前衛として魔王にぴったり張りついて攻撃。
 少し離れて真希と、もし戦闘参加出来そうならミツキが控え、隙を見て攻撃。
 後衛にはリンゴ、サザーン、くまを配置して、いざという時はリンゴが忍刀スキル『隠身』を使って二人を守る、という配置になっている。

 もし俺が何かの理由で魔王の傍を離れた場合、魔王の遠距離攻撃が始まってしまう。
 その穴埋めを、真希に頼むつもりだった。
 俺がノックバックなどで魔王の半径3メートル以内から離れてしまった場合、防御力と反射神経に優れた真希が代わりに魔王に接近し、俺がもどるまで魔王の注意を引きつける。
 少し不安ではあるが、接近している時にはひたすら防御に徹することにすれば、真希の能力なら何とかなるだろう。

 あとは、俺が『憤激の化身』を使うタイミングだろうか。
 『憤激の化身』は近くに仲間がいたら使えないスキルだが、その制限は実はそんなに厳しくない。
 スキルの発動時に周りに仲間がいなければいいだけであるし、その範囲もあまり広くないのだ。
 魔王が控える魔王の間はずいぶんと大きいので、お互いが離れるように移動すれば魔王との戦いの途中からでも使えないこともないだろう。

 とにかく、俺が『憤激の化身』を使う時の合図と、そのために必要な距離を詳しく説明した。
 サザーンの場合は特に不安なので、同じことを三回話した。
 なんかこれだけ説明しても、肝心な時には頭に血が昇って忘れてそうな気もするが、それについては周りのフォローを期待しよう。


 なんてことをずっと説明していたら、かなりの時間が経っていた。
 ひとしきりみんなからの質問に答え終えると、固まったままのイーナに最後の、この姿では最後のあいさつをして、俺たちも屋敷を出た。

 ――目的地は北。
 魔王城のそびえる、ベリオン火山だ。



 途中、モンスター相手に連携の実験をしながら進んでいく。
 最初はレベル100以下のモンスターばかりが出てきていたのだが、ベリオン火山が近付くにつれ、モンスターのレベルも上がっていった。
 その最終的な敵レベルは175にもおよんだが、

「よゆーよゆー!」
「…ん」

 強くなった俺たちの前には鎧袖一触。

 俺が戦う必要もなく、真希とリンゴが次々と平らげていく。
 最大の懸念材料だったサザーンも、俺の肩に乗ったくまが包丁(武器合成により攻撃力は肉切り包丁と同じ)をちらつかせてうまく抑えてくれているようだ。
 ……でも、肩の上で包丁振り回すのはちょっとだけやめてほしいかな、怖い。

 そうしていよいよ、ベリオン火山の麓についた。
 魔王城があるのは火山の火口の中。
 当然ここからではその姿を見ることは出来ない。

 ただ、山の奥から禍々しい気配のような物を感じる。
 あるいはそれは、火口の真上に浮かぶ晴れることのない暗黒の、闇の雷を降らす黒い雲のせいかもしれない。
 魔王の力の象徴たるその暗雲に、俺は根源的な畏怖を感じると共に、強い闘志が湧きあがるのを自覚する。

(……まだ、行けるよな?)

 ミツキは探索者の指輪を持っているから合流場所を気にする必要はないし、出来るだけ進んでいた方が効率的だろう。
 みんなに疲労の影が見えないことを確認して、先に進むことを決める。

 ベリオン火山の敵は強く、山は急峻だったが、今さらこの程度のことで音を上げるような人間は、俺の仲間には……。

「き、貴様ら、少し待っ、あぐ!」

 ……まあ、その、一人しかいない。

 装備は万全だと思っていたが、サザーンに山登りに適した格好をするように言うのを忘れていた。
 モンスターは全く問題にならなかったのだが、やたらと靴底の厚いブーツを履いているせいかサザーンが何度も転び、その度に俺たちの歩みは止まった。
 自業自得だとは思うが、流石にそう何度も転んでいると心配になってくる。

「あー、サザーン? きついんだったら、ここでちょっと休憩しても……」

 気を遣った俺がそう提案したが、サザーンは苦しげな息を吐きながらも、首を振った。

「馬鹿な、ことを、言うな。
 こんな所で、足を止める暇は、ない。
 それは、貴様が一番、よく分かっている、はずだ」

 サザーンは、息も絶え絶えになりながら、それでも不敵にそう言い放つ。
 その姿に俺は、こいつへの評価をあらためざるを得なかった。

「サザーン、お前……」

 サザーンは、その服装や言動から誤解されることも多い。
 だが、人の真価は極限状態の中でこそ浮き彫りになる。
 本当の、こいつは――


「さぁソーマ! 貴様に僕を背負う許可を与えよう!」


 ――最低のクズ野郎だなと思いました。



 ものすごく癪なことに、俺がサザーンを背負った途端に行軍スピードは段違いに速くなり、俺たちはほどなくベリオン火山の火口近くまでやってきた。
 火口にまで進んでしまうと、頭上の黒雲から雷が飛んでくる。
 幸い魔王城からモンスターが出てきている様子もないし、ここで止まってミツキを待つのが上策だろう。

 サザーンを下ろして俺が休憩を告げるとみんな思い思いに過ごし始めた。
 リンゴは早速その場でスキルキャンセルの練習を始め、サザーンはぶつぶつと文句を言いながら、汚れたマントをはたいたりしている。
 そして真希は、

「……そーま、あの、ちょっといーい?
 魔王を倒した後、のことなんだけど」

 なぜか離れた場所にいるリンゴたちを少し気にしながら、抑え気味の声で訊いてきた。
 内緒話の気配に、空気の読めるぬいぐるみであるくまが俺の肩から降りる。
 そして、俺を振り返ってサムズアップ……みたいなことをした。

 いや、お前指ないだろ、と思いながら、俺は真希に向き直ってうなずいた。
 真希もくまにはちょっとびっくりしていたようだが、キャラに合わないおずおずとした口調でしゃべりだした。

「えっとね。魔王を倒したら、ゲームはクリアってことになるよね?
 だったらわたしたち、それで元の世界にもどちゃったりってこと、ないかな?」

 真希は不安8割、期待2割くらいの目でそう尋ねてきた。

「あー。そういえば、それも説明してなかったか。
 残念だけど、たぶんそれはないな」

 ゲームをクリアして現実にもどれる保証があるなら最初からそう動いている。
 『猫耳猫』はやり込み系ゲームで、言ってみれば終わりはない。
 魔王を倒すと一応ゲームクリアではあるものの、その演出はしょぼいの一言だった。

 血のにじむような苦労の末、ようやく魔王を倒した時、まず光量が多すぎて直視出来ないほどの超ド派手な死亡エフェクトが発生。
 その間に魔王の捨て台詞が聞こえ、ようやく光が収まったと思ったら、今度はいきなり視界いっぱいにスタッフロール。

 やけに壮大な音楽と共に流れるその五分超のスタッフロールはスキップも早送りも出来ず、唯一汎用メニューからログアウトすることは出来るものの、そうなるとデータは魔王を倒す前の状態にもどってしまう。
 その拷問のような五分間を終え、スタッフロールの最後の一文、「THANK YOU FOR YOUR PRAYING(訳:あなたの祈りに感謝を)」というメッセージが流れた後、特に何のイベントもはさまれず、一度タイトル画面にもどることすらなく、魔王のいなくなった魔王の間に普通に視点がもどる。

 そこからプレイヤーはモンスターだらけの魔王城を街までもどっていかなくてはいけない訳で、ゲームクリアの余韻もへったくれもなかった。
 というかゲームクリア時にセーブすらされないので、魔王城からの帰り道で死んでしまうとまた魔王を倒さなくてはならなくなるという最低仕様だった。

 ここまでログアウト要素は一切ないし、俺たちがこの世界に飛んできた原因も特にゲームのクリアと関連はない。
 魔王を倒したことで、俺たちが元の世界に帰れる可能性は限りなく低いとみていいだろう。

「……そっかぁ」

 俺がそれを説明すると、真希は少し残念そうな、でもそれ以上に吹っ切れたような顔をしてうなずいた。
 その表情を見て、俺は真希を騙してしまっていたんじゃないかと不安になった。

「悪かったな。その、ちゃんと話しておかなくて」

 もし真希が元の世界にもどるために協力していたとしたら悪いことをした。
 俺は素直に頭を下げた。

「あ、めずらしいね。そーまがわたしに謝るなんて」

 だが、真希はからからと笑うだけ。
 真面目に取り合おうともしない。

「いや、お前な。これってすごく大事なことだろ。
 だって、その……もしかすると、死ぬ、かもしれないんだぞ?」

 死ぬ、と口に出してしまって、不吉な予感と不安が押し寄せるのを感じた。

 ……本当に、そうだ。
 今度の戦いは、今までの戦いとは訳が違う。

 今度ばかりは、俺が一人で全部やる訳にはいかない。
 少なくとも魔王との戦いは全員で挑まなければ勝てないだろうし、最初から最後まで、全てこちらの思惑通りに進むとは限らない。
 そして、何か計算違いが起こったら……。


 ――この中の誰かと、もう二度と会えなくなるかもしれない。


 その考えに、身体の芯がスッと冷える。
 今までは良くも悪くも夢中すぎて、その事実と真剣に向き合ってこなかった。

 イーナのために、絶対に魔王を倒さなくては、と思う。
 町の人からも、仲間からも犠牲者を出さないつもりで、計画も立てた。
 だけど、それでも、魔王を倒すために、仲間の誰かが死ぬようなことがあったら……。

 しかしそんな俺を見て、真希はやっぱり笑う。

「まったく、そんなの今さらだよ。
 わたしだって騎士団の人たちを助けたいし、そーまの助けにもなりたいし、そのための危険ならしょうがないなって思ってるよ。
 ……というかね。
 少なくともここにいる人たちはみんな、それを覚悟して来てるんだよ」

 言われて、気付いた。
 いつのまにか、俺の周りには仲間たちが集まっていた。
 その中から、まず仮面の魔術師が一歩前に出た。

「僕には、僕の目的がある。
 貴様のために集まったなんて、そんな自惚れた考えはよしてもらいたいな」
「サザーン……」

 さっきまでの情けない姿が嘘のように、覚悟の決まった声でサザーンは告げる。

「不死身の僕が死ぬなんて、ありえないことだが……。
 万が一、いや、億が一、そんなことが起こったとしたら、それは人の身では止められぬ、運命の悲劇だ。
 その、だから、つまり……お、お前を恨むことだけは絶対にない。
 そ、それだけだ!」

 あわただしく後ろに下がったサザーンの横には、指のない手に器用に包丁をはさんだくまがいる。
 くまは包丁を持っていない方の手を持ち上げると、

 ――ぐっ!

 サムズアップ的な何かをした。
 だからお前、指ないだろ、と心の中でツッコみながら、しかしその心意気は俺の胸に届いた。

「…ソーマ」

 最後は、リンゴだ。
 リンゴの顔にはこんな時でも表情はなく、その澄んだ瞳で俺を見つめる。

「…わたしは、ソーマをたすける。そのために、ここにいる」

 そうだ。
 リンゴはこの中の誰と比べても、魔王を倒す理由がない。
 そのリンゴを、巻き込んでしまっているのは……。

「…ちがう」

 だが、リンゴは俺の顔を見て、彼女にしては強く、大きく首を横に振った。

「…わたしが、そうしたいから。ソーマがいやだっていっても、ついていく」

 そう言ったリンゴの声は、それでもあまり大きくはない。
 しかし、そこにはやはり強い意志が宿っていて、梃子でも動きそうになかった。

「みんな……」

 こんなことを言われても、どう返したらいいのか分からない。
 周りを顧みていなかった自分が、恥ずかしくなってくる。

「大丈夫だよ、そーま」

 しかしそんな俺に、真希が笑顔を見せる。

「結局最後は、愛と勇気がある方が勝つんだから」

 全く理屈に合わないし、意味が分からない。

「お前は、ほんと訳が分からないことばっかり言うよな」
「ええっ! そーまほどじゃないのに!」

 だけどそれで、心が落ち着いてしまうのが不思議だった。
 そして、


「――それには全く同意ですね。貴方は訳の分からない言動が多過ぎる」


 立ち尽くす俺の背中に、そんな声がかけられた。

「ミツキ!」

 その名を呼ぶ俺に、役目は果たしてきました、とさらっと目的の達成を告げると、

「途中から、少しだけ聞いていました。
 詰まる所、皆、貴方を信じているという事です。
 ……さぁ、胸を張って下さい。
 世界の命運を左右する大一番に、そんなしょぼくれた顔で挑む気ですか?」

 俺の背中をこつん、と叩き、そのまま山頂へ登っていこうとする。

「ミツキ! いいのか? その、こんなに魔王城に近付いて……」

 ――そんなの答えるまでもない。
 そう言わんばかりに、振り向いたミツキの猫耳がちょいちょいと俺たちを招くように動く。
 それに釣られるように、俺たちは最後の道を登り、やがて火口の縁に立った。

「あれが、魔王城……」

 眼下には、螺旋に続く下り道。
 そしてその遥か奥、地の底にそびえる魔王城の威容が見えた。

(とうとう、ここまで来た……)

 それを目にした瞬間、今までの記憶が、凍りついたイーナや、これまでの特訓の日々、ついてきてくれた仲間の姿が一気に頭に押し寄せてきた。

 ほんの、数秒。
 それをじっくりと噛み締めて、

「行こう。魔王を、倒そう。そして……」

 俺は仲間たちの振り返り、宣言する。


「――絶対に、全員でここに帰ってこよう!」


 リンゴの、ミツキの、真希の、くまの、サザーンの、仲間たちの顔を見ながら、俺は決意する。

 最善の、いや、それ以上の力を尽くそう。
 そしてもし、仲間の誰かに危険が迫った時は、絶対に、俺の身を賭してでもそいつを守る!
 この中の誰も、死なせはしない!

 イーナのためではなく、ただ、これからも仲間と一緒にいたいという、俺自身の気持ちのために。
 俺はそう、固く誓ったのだった。


ここから魔王編クライマックスまで、フルスロットルで突き進む予定。
息切れしないように頑張りますので、どうかついてきて下さい。
+注意+
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