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この世界がゲームだと俺だけが知っている 作者:ウスバー
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第百二章外伝 生贄の迷宮

外伝は補足的な内容なので、読み飛ばしても構わないように作るつもりです
暗めの話が苦手な方は、次の章までお待ちください
 街では極力使わないつもりでいた神速キャンセル移動を解禁、酒場へと急ぐ。
 『猫耳猫』では時間経過で消えるクエストや、プレイヤー不参加で進んでしまうクエストも無数にある。
 そんなことになってしまっては取り返しがつかない。
 二人を置いていくことになっても構わないというつもりで、全速で酒場を目指す。

 途中何度か人にぶつかりそうになりながらも、無事に酒場まで着いた。
 振り返ると、遅れ気味ながらもかろうじて女性陣二人もついてきているようだ。

 待ってやりたい気もするが、とにかく張り紙を確保するのが先決だ。
 俺はすぐに扉に手をかけ、酒場の中に飛び込んだ。

(どうだ?!)

 祈るような気持ちで壁の掲示板に視線を投げる。
 そこにまだ二つ(・・)の張り紙が残っているのを見て、俺は大きく安堵の息を吐いた。

 そこに張ってある紙は、それぞれクエストへの参加を呼びかけるものだ。
 一つはモンスター討伐クエスト、『妖魔の迷宮』。
 そしてもう一つはNPC救出クエスト、『生贄の少女』。

 俺は迷わず『生贄の少女』のクエストを手に取り、カウンターに持っていく。


 クエスト『生贄の少女』。
 クリアしたことのないイベントやクエストはネットで調べたりはしない主義だが、このクエストについては多少の知識がある。

 まだこの『New Communicate Online』が本当のオンラインゲームとして宣伝されていた時、『生贄の迷宮(仮)』というクエストが紹介されていたことがあった。
 地下迷宮に潜り、邪悪な儀式の生贄にしようとさらわれた女の子を、邪教徒の手から救い出す、みたいな内容だったと思う。
 名称こそ変わっているが、内容からしてこの『生贄の少女』の話だろう。

 遺跡とも洞窟ともつかない地下の迷宮の映像は、それを見た時のワクワクした気持ちと一緒に、まだ俺の中に残っている。
 そして、気になるのがもう一つの記憶。
 クエスト紹介の所に書かれていた、『強いだけでは生き残れない!! 条件を満たすと強制ゲームオーバーも!?』という文言も、俺は覚えている。
 言葉まで正確に記憶しているという自信はないが、このクエストに強制ゲームオーバーがあるというのはまず間違いがないだろう。

 ついでに言うと、実はもう一つ、このクエストに対する予備知識がある。
 不覚にも一度、『生贄の迷宮』に関するネットの書き込みを目にしてしまったのだ。

 確か、『これ以上救われない話を俺は見たことがない』『このクエストはゴミ以下』みたいな意見と、『話はよく出来ている。話は』『結構楽しめた』みたいな意見がぶつかりあって、最終的に『これを作ったスタッフは地獄に落ちればいい』みたいな結論に収まったと思う。
 なんか結論が斜め上だが、このゲームではよくある話だ。

 とにかく、強制ゲームオーバーがあるようなクエストを放置してはおけない。

「すみません。これを受けます」

 俺は強面のマスターに、『生贄の少女』の張り紙を見せた。

「『生贄の少女』か。こいつの定員は残り三人なんだ。
 出来れば登録は三人でやってほしいんだが……」

 渋い顔をするマスターの言葉を、さえぎって、

「大丈夫です。俺と……彼女たちで登録お願いします」

 俺は背後、遅れて酒場に辿り着いた、二人の女の子を示したのだった。


 三人の名前を書いて、クエスト参加を完了する。
 クエストの定員がどちらも残り三名だったと思い出して、わざわざ仲間を一人置いてきたのは正解だったようだ。
 マスターの口ぶりからすると、このクエストは三人でないと受領出来なかったのかもしれない。

(これで一安心だな)

 少なくとも、これでこのクエストが自動進行してしまう可能性はなくなった。
 プレイヤーの知らない所で勝手に始まって勝手に強制ゲームオーバーなんて普通はありえないとは思うが、このゲームだったらないとも言い切れない。
 危険の芽は少しでも早く潰しておくべきだ。

 もう一つの『妖魔の迷宮』クエストも、受けられるなら受けたいと思ったのだが、

「マスター、このクエスト、オレたちがやってやるぜ!」

 俺の心の声を読んだようなタイミングで現れたのは、街に来たばかりの時に会ったアベル・ビート・クリフの三人組。
 そいつらがにやにやと笑いながら、マスターに『妖魔の迷宮』の張り紙を差し出していた。

(そういう仕組みか……)

 俺は心の中でひとりごちた。

 つまりこれは、二者択一の選択式クエスト。
 この『生贄の少女』と『妖魔の迷宮』は、きっとどちらかしか受けられない。
 逆に俺が『妖魔の迷宮』を手に取っていたら、こいつらが『生贄の少女』を受けるという流れになっていたのだろう。

(道理でどっちも報酬額がおいしすぎると思ったよ)

 このクエストは参加可能レベルが50以上になっているが、それにしては提示された報酬がよかった。
 どちらか片方しか受けられないボーナスクエスト的な物だと考えれば、それもある程度納得出来る。
 俺がそんな風に一人で納得していると、アベルたちがこちらに気付いて口笛を吹いた。

「おーおー、誰かと思ったら、ラムリックから出て来たばっかのひよっこ冒険者じゃねーか!」
「テメェみてぇな殻も取れてないひよっこちゃんが、クエストなんて出来るんでちゅかぁ?」
「ぎゃはははははは!!」

 なんかチンピラキャラにありがちなテンプレ煽り文句を吐いてきた。
 すごく、うっとうしい。

 正直、今の俺の強さならこいつらを蹴散らすことだって出来るはずなのだが、それでクエストが終わってしまっては元も子もない。
 俺が口をつぐんでじっと耐えていると、

「その辺にしときなよ。大の男が寄り集まってピーチクパーチク鬱陶しい」

 後ろ、酒場の中から、女の声がした。

(あの人は……)

 声の主は、茶髪で短髪の、いかにも盗賊風の女性。
 たぶん、高レベルの冒険者だろう。
 直接話したことはないが、見かけたことくらいはある気がする。

「なんだ、てめぇは!」

 彼女に向かってビートが振り返って怒鳴るが、

「あたしはポーラってんだ。知らないのかい、ぼうや?」

 その一瞬の間に、彼女は距離を詰め、ビートの喉元に爪を突きつけていた。

「な、て、てめ……」

 完全に硬直し、動けなくなったビートに代わり、

「くそ、ビート!」
「こんのクソアマ!!」

 アベルとクリフが剣に手をかけるが、

「いい加減にしないか!!」

 さらに奥から現れた巨体が一喝し、場の空気が止まった。

「ポーラ、お前こそはしゃぐのはそれで終わりにしろ。
 そして君たちも、これから一緒に村に向かう仲間ともめ事を起こすのは感心せんな」

 巨体、口ぶりからポーラの仲間とおぼしき大きな身体の冒険者の言葉に、アベルが反応した。

「一緒に、村に向かう、だと…?」

 それに対して、その冒険者はにやりと笑ってみせる。

「なんだ、知らなかったのか?
 二つのクエストの目的地は同じ、どちらも北西、サイガ村だ」



 俺たちはそれから街の北門に移動し、依頼者側が用意したという牛車に分乗してサイガ村を目指した。
 この場合の牛車というのは牛系モンスターが引く六人乗りの車で、俺たちはポーラのグループと同乗して村へ行くことになった。
 まあ、アベルたちのグループと同じにされなかったのはありがたい。

 ポーラたちも『生贄の少女』ではなく『妖魔の迷宮』のクエストを受けたらしいが、二つのクエストの目的地は共に同じサイガ村。
 途中までは同じ道のりになるのは当然だった。

 問題は、どうして同じ村で二つのクエストが同時に発生したかということだが、

「そもそも、邪教徒って奴らは、邪なる神を崇め奉り、悪魔の命令に従い、魔物を使役する連中。
 そいつらが行動を起こす時は、同時に魔物が暴れる場合が多いんだよ。
 今回の場合は、魔物を暴れさせてる隙に女の子を生贄にして悪魔を喚び出すってことじゃねーかと思う」

 そんな風に、ポーラが解説してくれた。

 同じ村を起点としていても、『妖魔の迷宮』のクエストは村の西側。
 『生贄の少女』のクエストは村の東側から始まるらしい。
 『妖魔の迷宮』が陽動だと考えれば、それはつじつまが合う。

「ま、女の子一人だけの生贄で喚び出せる悪魔なんて、高が知れてるとは思うけどさ。
 だからって、女の子を見殺しにしていいワケないだろ?」

 そう話すポーラの意見には、全面的に賛成だ。
 ただ、ちょっと気になるのは、

「ずいぶん邪教徒とか、悪魔について詳しいんだな」

 ポーラがやけに事情通っぽい発言をしていることか。
 少しやってみれば分かると思うが、このゲームは性格の悪いクエストやイベントが多い。
 実は彼女が邪教徒のリーダー、みたいな展開も、つい想像してしまう。

「あ、はは。そうだね。
 邪教徒についてはちょっと、調べたからね。
 ……あたしの村、邪教徒に襲われたことがあるんだよ」
「えっ?」

 しかし、そのせいで特大の地雷を踏み抜いてしまったらしい。

「あたしだけじゃなくて、うちのパーティはみんなそうだよ。
 この大男のランディは邪教徒に娘を殺されたし」

 そう言って、彼女は隣の斧戦士、ランディを指差して、

「こっちのマーナは邪教徒の操る魔物に両親を殺された」

 次に逆側、魔法使いの少女、マーナを示した。
 そして、最後に自分を指で差して、言う。

「あたしは、邪教徒たちに村を襲われ、親兄弟友人知人全てを殺された。
 ……だから、このクエストを受けたってワケさ」

 ここまで言われては、俺ももう謝るしかない。

「そう、だったのか。変なことを訊いて悪かったな」
「別に、いいさ。
 邪教徒の卑劣さはあたしたちが一番よく分かってる。
 色々と疑うのは悪いことじゃないと思うしね」

 俺の言葉を軽く笑い飛ばし、それから真顔になって、ポーラは俺に頭を下げた。

「モンスターの氾濫と生贄の少女の救出。
 どっちが失敗しても、犠牲者が出る。
 モンスターの方は、あたしらが責任を持って全滅させる。
 だから、操麻。
 さらわれた女の子は、お前が絶対に助けてくれよな」



 予定通り、村に着いたところで俺たちは別れた。
 牛車で移動することもクエスト発生条件に入っているようだから、さっきの会話もまた、クエストの一部だと言える。
 つまり、ポーラたちの覚悟や境遇だって、ゲーム製作者が考えたシナリオの一部に過ぎない。

 ただ、そう分かっていても胸にこみ上げる物はある。

(このクエストは、絶対に成功させよう!)

 強制ゲームオーバーを潰すとか、そんな受け身で自分本位な動機ではない、積極的な目的意識が、いつしか俺の中に生まれていた。



 『生贄の少女』のクエストに参加したのは、全部で20人ほど。
 俺たちを含めたその全員が、まずはさらわれた少女の親代わりをしていたという、サイガ村の村長の家へと案内された。

 村長は、初老の老人だった。
 ファンタジーゲームの村人と言って万人がイメージする服装そのままに、唯一の特徴として首から赤い宝石のついた首飾りを提げている。

「あの子は、二年前の冒険者様の忘れ形見なのです」

 彼の話によると、二年前にも邪教の徒がこの村の近くで暴れ出し、それを街からやってきた冒険者たちが命を賭して倒し、村を救ってくれたらしい。

「あの子の両親は、その時になくなりました。
 それなのに、今度はあの子まで……」

 村長は悔しそうに両手を握りしめ、震え始めた。
 なんかいい人すぎて逆に怪しいと思うのは、俺がひねくれすぎているせいだろうか。

 その間にちらりと視線を巡らすと、部屋の真ん中に村長らしき人と小さな女の子が描かれている絵が飾ってあった。
 これが、村長とさらわれたという娘なのだろう。
 二人の首にはおそろいの赤い首飾りがつけられている。
 もしかすると、最初からセットで作られた物なのかもしれない。

「すみません、取り乱してしまいました。
 奴らは娘を誘拐すると、この近くにある地下遺跡にたてこもりました。
 どうやらそこを根城にして、夜な夜な邪悪な儀式を執り行っているそうです」

 立ち直った村長は、村の外れの方向を指さした。

「あそこに、地下の遺跡への入り口があります。
 あなた方にはそこに入って、邪教徒にさらわれた娘を救出してもらいたいのです」




「ここです」

 案内されたのは村の外れ。
 そこには確かに地下への入り口らしい扉があった。

 扉はずいぶん古い物らしく、かなり古ぼけているが、その表面の一部が光っている。
 魔法の力だろうか。
 その光は何かの模様を形作っているようにも見える。

 形に表すとしたら、こんな感じだ。


 + |L


 意味はよく分からないが、見ているだけでなんとなく不安になるような、おかしな迫力がある。
 それをじっと見つめていると、村長に声をかけられた。

「気になりますか?」
「あ、はい。これ、なんなんですか?」

 俺の言葉に、村長は少しだけ微笑み、


「――斬首された神官」


 そんな言葉を言い放った。

「は?」
「……いえ、冗談ですよ」

 呆気に取られた俺に、彼は軽く笑った。
 こいつ、娘がさらわれたくせに意外と余裕がある。

「この記号がどういう意味を持つのか、わたしたちにも分かりません。
 ただ、地下の遺跡の中にも同じような物がいくつかあるようなので、調べてみてはいかがですか?」

 そこで村長は、ただのAIには出来ないような妙に深みを持った笑みを見せた。
 なぜだろう。
 その時不意に背中の辺りに悪寒が走ったのを感じて、俺は身震いした。

 そんな俺をかえりみることなく、村長の説明は続く。

「ここが遺跡の入り口ですが、一つだけ注意して頂きたいことがあります。
 この、中には……」

 言いながら、村長が扉を開けると、

「う、わっ!」

 中から、もうもうと紫色の煙が噴き出してきた。
 とても身体によさそうには見えない。

「このように、瘴気が満ちています。
 瘴気に晒され続ければ、だんだんと体力が奪われ、やがて死に至ります。
 これが、わたしたちがずっと、村の近くにある遺跡を放置していた理由でもあります。
 ただし……」

 村長は自分の鞄から、真っ黒な草で編まれた、大きな輪っかのような物を取り出した。
 それを迷わず、自分の首にかける。

「特殊な製法で編まれた、この『破邪の草飾り』を首にかければ瘴気は防げます。
 これをちょうど人数分、20個用意しました。
 遺跡に入る前に必ず装備してください」

 村長の言葉を裏付けるように、俺たちについてきてくれた村人が、20人の参加者全員に『破邪の草飾り』を渡していく。
 当然、俺も受け取った。

(首アクセ枠を使うってことか)

 首にはこの前の冒険で見つけた、スタミナアップの首飾りをつけている。
 あまり外したくないが、継続HPダメージは怖い。
 何よりクエスト内容的に、装備しなくては先に進みそうにない。
 俺は渋々スタミナアップの首飾りを外し、代わりに『破邪の草飾り』を装備した。

「つけてもらえましたか?
 その草飾りは絶大な効果を持っていますが、草で出来ているせいで耐久力がほとんどありません。
 絶対に破損させないように注意してください」

 村長の言葉を聞いて、

(こりゃ、面倒だな)

 俺は先の苦労を思いやって小さく悪態をついた。

 例えば、迷宮の奥で首飾りを壊されたらと想像するだけで、この最悪さが分かる。
 ただでさえ複雑な迷宮だ。
 入口までもどるのは容易ではないし、さまよっている間にもHPは減少し続ける。
 邪教徒にやられなくても、瘴気のせいで死ぬ、なんてこともありえそうだ。

 あるいは集団で行動していた場合、残った首飾りを巡って、仲間同士で争いが起こるなんてこともあるかもしれない。
 命を救うはずのアイテムが原因で、結局命を落とすはめになったなんて笑えない。

 加えて、敵は邪教徒とはいえ、知能を持つ人間。
 首飾りが弱点だと知られれば、そこを狙われる可能性は充分にある。

『強いだけでは生き残れない』

 まさに、その言葉を証明する展開だと言えよう。

「遺跡の奥に一際大きな扉があり、その奥に祭壇と思われる物があったそうです。
 生贄の儀式が行われるとすれば、おそらくそこになるでしょう。
 もしかすると、娘はもう、そこに連れて行かれているかもしれません」

 俺たちを見回して、村長は言った。

「わたしの娘を、どうかよろしくお願いします」



 俺たちは、連れだって遺跡の中に入っていった。
 扉の奥、地下へと続く階段を下っていく。

 中には紫色の薄い煙が立ち込めていたが、草飾りのおかげでダメージはないし、量も視界を遮るほどではない。
 最初はおっかなびっくり進んでいたが、慣れれば普通に歩けるようになった。

「おっと……」

 降りた所で、壁にさっきと同じ文様が光っているのが見えた。

 + |L

 見れば見るほど意味が分からない。

(斬首された神官、ねぇ……)

 そう思って見れば、確かにひざまずいて首を落とされた人間に見えなくもない。
 そのほかにも片目を瞑った男の顔とか、何かの紋章だとか、解釈しようと思えばいくらでもその余地がありそうだ。
 これだけでは判断がつかない。

(まあ、奥に行けば何かヒントか、別の模様も見つかるだろ)

 そんなことを考えながら、俺たちはとりあえず奥に進むことにした。


 しかしそんな俺の予想に反し、俺たちはしばらく、何も発見出来なかった。
 さらわれた女の子や祭壇はおろか、邪教徒や新しい模様すら見つけられない。
 ただ、時折、

「また、これか……」

 扉にあったのと同じ、意味の分からない模様が壁で光っているだけ。

(いっそ、手分けして手がかりを探すか?
 だけど、固まっていない時に邪教徒が襲ってきたら……)

 足を止めて考え込む俺の耳に、

「ルーカス!!」

 切迫した叫びが飛び込んできた。
 声のした方を見ると、おそらくルーカスと呼ばれた男、集団の端にいたその男に、黒い影が忍び寄っていた。
 その男も声に釣られ、暢気な声を上げながら振り向こうとして、

「ん、一体どうし――」

 それが、彼の最後の言葉になった。
 一瞬で彼に近付いた黒い影から銀光が閃き、ルーカスの喉を斬り裂いたのだ。

「なっ…!?」

 急所を一撃され、ゆっくりと倒れていくルーカス。
 そして、その背後の黒い何かが、

「キイェガッ!」

 人語として意味をなしていない、耳障りな叫びをあげた。

(これが、こいつが……)

 俺はまだ、ゲームで一度も邪教徒と呼ばれる人間に遭遇したことはなかった。
 だから漠然と、黒尽くめの服でとんがった覆面をかぶった、コメディに出て来るような人間を想像していた。

 だが、戦慄と共に、俺は知る。

 汚れているとか、汚らしいとか、そんな物を軽く越えた、穢れているとしかいいようのない布きれを全身に巻きつけた、異様な姿。
 赤茶けた布の間から漏れる、狂気をはらんだ鋭い眼光。
 常に耳障りな音を発する、黄色く汚れた乱杭歯。
 くすんだ色合いの中で、唯一鋭い光を放つ、両手の凶刃。

(こいつが、邪教徒……)

 人に生理的な嫌悪感しか抱かせないような存在が、そこにはいた。





おまけ(ゲームブック風味)


あなたは『第百二章外伝 生贄の迷宮』を読み終えた。
しかし、最後の一行を終えても物語はまだ完結していない。
どうやらこの外伝には続きがあるようだ。
それを知って、あなたは・・・

1「やべぇ! 何が起こるか全然分からねえ! 続きが読みたい!」
 と思ったなら、近日公開予定の『第百二章外伝二 妖魔の迷宮』へ進む。

2「やべぇ! 何が起こるか分かっちまったぜ! これはひどい!」
 と思ったなら、感想欄でネタバレしないよう注意しつつ、『第百二章外伝二 妖魔の迷宮』へ進む。

3「やべぇ! こっから先嫌な予感しかしねえ! 暗い話は勘弁だぜ!」
 と思ったなら、しばらく待ってから『第百三章 奴の名は』へ進む。

4「やべぇ! 全てが分かった! 展開予想をネットに書き込みまくるぜ!」
 と思ったなら、14へ進む。
+注意+
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