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幻想再帰のアリュージョニスト 作者:最近

第4章 傷つけるのはハートだけ、口づけるのは頬にだけ

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幕間『不似合いな結びつき』



 (しい)する、弑逆するとは主君や父などの目上の者を殺すという意味だ。
 オルヴァ・スマダルツォンはクーデターにより王位から引きずり下ろされ、九日九晩にわたって熱した鉄の棺の中に閉じ込められるという責め苦を受けた。
 その後、断頭台の露と消えたと言われている。

 一説によれば、断頭台に至る階段の数は十三であったという。
 オルヴァは階段を上る度に鞭で打たれた。
 それを行ったのは彼のかつての臣下たちである。
 彼は独占的に任命権を行使して地位を定めた。

 大胆な人事の歴史的評価はともかく、それが貴族などの権力者たちにとって不満を抱かせるものだったことは確かである。
 政変を成功させた権力者たちはオルヴァが踏んだ階段を順番に破壊した。これによりカシュラムに存在した十二の身分が破壊され、最後にオルヴァが弑されたことによって従来の身分制は消滅したと言われている。

 が、その後の政権は貴族階級の者たちによる合議制であり、身分制は引き継がれた。結局の所、宮廷内部の権力争い程度の意味しかなかったというわけだ。
 とはいえ、オルヴァの特殊性は王であった時代にはない。
 彼には根強い『生存説』があったのだ。

 その後に現れた賢者スマダルツォンは終末の予言を告げたことで有名だが、その外見的特徴が伝説的なカシュラムの祭司にして霊媒でもあったオルヴァと酷似していた。このことから、二人を同一視するものは後を絶たなかった。

 更に、オルヴァ王が在位していた当時には王宮の庭に宮廷付きの隠者が住んでいたと言われている。
 政変の後、隠者がどうなったかということに関する記述は後の世に残っている史料には存在していない。

 そのことが人々の妄想をかきたてたのか、『隠者は影武者で処刑されたのは隠者、オルヴァは逃げ延びて賢者となったのだ』だとか『実は隠者は存在を秘されたオルヴァと瓜二つの双子で、呪術的な共振を恐れて秘密裏に育てられていたのだ』とかいったストーリーが組み上げられて巷間に流布していった。

 ――確か、コルセスカとやったゲームだと生存説を採用していて、主人公である女王の国で宮廷付きの賢者となり、恋人兼臣下として末永く女王の傍で仕えたという結末だったな。

 俺は炎上し崩壊する舞台をその下の奈落から眺めつつ、そんなことを思い出していた。オルヴァに関する細々とした知識は、コルセスカに教えて貰ったものだ。
 コルセスカ。そうだ、あれは確かにコルセスカだった。
 白骨を包み込む氷の彫像。精緻な少女の造形。見間違う筈も無い。

 だが、同時に冥道の幼姫キシャルでもあったように思う。
 彼女たち二人の境界がどこにあるのか、俺には既にわからない。
 オルヴァとして舞台に上がった俺は自分自身では違和感に気づけない糸によって操られていた。救い出してくれたのは、あの二人だ。

 今にして思えば、囚われたオルヴァが隠者ウォレスと入れ替えられたのは『生存説』を確定させる為だろう。筋も結末も破綻していたが、少なくとも滅びの直前で二人が入れ替わるという行為が存在した以上、布石は置かれたわけだ。

 これで残る二つの舞台で過去を改変し、滅びを回避すれば、後はある程度ファジーに今回の舞台が整えられるのだろう。支離滅裂な滅亡は史実通りのクーデターに置き換わり、入れ替わりが一度演じられたことで『生存説』が確定する。

 生き残ったオルヴァは隠者ウォレスの纏っていたぼろ切れで素性を隠しつつ諸国を放浪し、やがて名を変え賢者スマダルツォンとして名を馳せるようになる。
 これが適当なストーリーだろう。
 つまり、未来への道筋は作られているのだ。

 全て、冥道の幼姫の機転によって。
 やはり、キシャルを完全に敵として認識する事ができない。
 そもそも、彼女はどうして【死人の森の女王】ではなく【冥道の幼姫】として俺の前に現れているのだろう。

 この時代ではそうだから、ということはわかるのだが、彼女は彼女で未来の――つまり俺と戦った時の記憶を保持しているように思える。
 未だ為されていない罪を問う事は、正しいのか?
 過去に遡って己に害を為すであろう人物を予防的に殺害することと、遺伝子や障害といった要因に基づいて優生学的に胎児や新生児を間引くことにどれだけの違いがある? そして今の冥道の幼姫をどう捉えるべきなのだろう。

 厳密にはある行為をするかどうかと個人が持つ様々な要因は全く別の問題だ。それに対処をするのは、理念と国家の役割だろう。
 助力が必要ならば網を張り、悪意あらば法と暴力でこれを抑止する。

 トリシューラとガロアンディアンは、これにどのような答えを出すのだろう。訊ねるまでもない、彼女は自分に仇為す敵を赦しはしない。
 そう、結局はそこだ。俺もトリシューラも、自らの命を危険に晒してまで敵のことを考えてやる余裕など持ち得ないのだ。

 だというのに、あの死人の女主人は違うというのか。
 トリシューラを害し、コルセスカの存在を危ぶませている冥道の幼姫は敵のはずだ。しかし同時に、彼女は俺を助け、コルセスカは未だ消滅しておらず、今回に至っては俺と一緒にちびシューラまでも呪縛から解放している。

 俺は自分の手首あたりに立ちながら、掌の上で座り込んでいるちびシューラを見た。投げ出された左腕の上にいる俺たちの間に会話は無い。
 二人とも、意気消沈しているからだ。
 それというのも、全ては自分の不甲斐なさゆえ。

 デフォルメされた短い手を実物の手に叩きつける。固い感触が帰ってくるが、所詮俺は仮初めの存在。実際には存在しない。
 役を演じる者がいない俺がどうやって意識を保っているのかは不明だったのだが、よく左腕に意識を向けると内部に精密な機械が埋め込まれているようだ。

 トリシューラが改造してくれていたのだ。ちびシューラの意識を計算する呪術機械によって、俺というキャラクターが再現されているのだろう。
 俺は、同じ計算機上で再現されたキャラクターであるちびシューラに声を掛けた。そうしなければどうにもならないからだ。

(ちびシューラ。そろそろレオたちが回収に来る。何か対策を講じないとまた操られて終わりだ)

 返事が無い。
 言葉を無理矢理に繋ぐ。

(そういえば、あの時にいきなり現れた外敵――ジャッフハリムだったか。あのレストロオセと名乗っていた奴、どう見ても前に見た魔将イェレイドだったんだが、あれはどういうことだ?)

(検索すれば)

 まともな返答のように聞こえるが、この世界では本物より確からしい誤情報や偽物より嘘みたいな真実が混在し、時にそれらが入れ替わるという滅茶苦茶な世界である。現実を改変する噂の量はさながら荒れ狂う大海。その情報の海を渡って正確な目的地を見つけるには、優れた検索エンジンの助けが必要となる。

 情報的な資産が無ければまともな情報にアクセスすることも不可能なのがこの呪術世界である。俺も言語魔術師の知己を得られなければ早々に情報弱者として搾取され続けることになっていただろう。

 というわけで、今のちびシューラの反応は検索エンジンに情報を入力したら「検索しろ」と言われたに等しい。理不尽すぎる。
 ちびシューラは座り込んでうつむいたままだ。
 仕方なく、心なしかしょぼくれたようになっている狼耳を引っ張る。

(ほっといて)

 身体はびくりと震えたが、まだそっぽを向いたまま。
 なんとなく、尻尾を引っ張ってみた。ふさふさしていた。

(ふぎゃあっ! やめてよ! 脊髄と繋がってる設定なんだよ!)

(設定かよ。いや、落ち込んでる素振りとか今はいいから。行動しないと始まらないだろ)

(あのさー、アキラくんさー、こう言うときって落ち込んでるシューラを頼れる使い魔が慰めてくれる展開が妥当じゃない? それっぽくない?)

 ちびシューラが不平を述べるが、そういった要求はもっと余裕のある時にして欲しい。しかしちびシューラは俺の対応がよほど不服だったようで、頬を膨らませて俺の方を見ようとしない。こいつ、実は結構余裕あるのか?

 それとも、本当に自我にダメージを受けていて、それを必死にごまかしているのか。ちびシューラの内心はわかりやすいようでいてわかりづらい所がある。彼女は感情豊かな仮面で人らしさを偽装する。いつか、それで死にかけたことすらあったのだ。自尊心はこの少女の聖なるもの、魂そのものだ。

 敵が強大であることはわかりきっている。
 現時点で力及ばなかったというだけでは、ちびシューラの存在を揺るがすまでには至らないだろう。その上、現在の彼女は本体よりも能力が制限されたちびシューラなのだから、敗北した言い訳は立つ。

 しかし、自尊心が高すぎる生き物は得てして言い訳を好まない。
 実際に自分が万全の状態ではなく、相手が格上であっても、負ければ悔しい。
 女王に、そして女神になろうと考えている者にとってはなおさらだろう。

 そういった事情も踏まえると、キシャルに手を貸して貰うというのも一層難しくなってくる。ガロアンディアン女王としての面子というものがある以上、対等な協力関係、正当な取引が許容できるギリギリのラインだろう。その為には一方的に助けて貰うのではなく、こちらも力を示して相手を助けてやらなければならない。

 そんなことができるのだろうか。この絶望的な状況で。
 俺は自らの左腕の上から、暗闇を見渡した。
 舞台下の空間に、ぽつぽつと小さな光が見える。

 ヴィヴィ=イヴロスが裏方使い魔たちにばみらせていた蓄光テープではない。
 妖しく呪術的な光を放つ、人形たちの眼球がこちらを見ているのだ。
 暗闇に目を凝らすと、至る所に裸の球体関節人形が立ったり座ったりと様々な姿勢で置いてあるのがわかる。その全ての頭部から青い長髪が伸びており、髪は頭皮に根を張って各人形を繋いでいるのだった。

 融けるような髪で接続された、球体関節人形の群。
 四方八方からそれらに囲まれた俺たちは、張り巡らされた糸の檻、呪いの網に囚われているようなものだった。

 俺以外の誰も、その奇怪な人形たちの異常さに気付いていない。
 いや、俺たちとて今の今までそのことに気づけていなかった。
 こうして現状を正しく認識できるようになったのは、あの時キシャルが文字通り身を削った成果だろう。

 糸に操られたオルヴァに襲われたキシャルは、その腹部から右腕を出現させた。
 冥界でも目にしたあの右腕は、確かに俺を呪縛していた髪の毛だけを断ち切り、それによって俺は自由意志を取り戻せたのだ。俺は、このことをどう捉えるべきだろう。

 キシャルは敵だ。
 だが、この呪わしい糸に支配された状況下で、唯一共闘できそうな相手でもある。これ以上ちびシューラが誰かの意のままに操られているような光景は見たくないし、利用されていることを自覚すらできない状況は後の彼女を苦しめる。

 今の俺は敵地に取り残され、孤立無援となっているに等しい。
 闇雲に足掻くよりも、キシャルと手を結ぶ、という確実な道を選ぶべきではないのか。だがちびシューラの誇りはどうなる。コルセスカは? 思考が整理されないまま、焦燥感だけが増していく。

 じっとこちらを見ている人形たちが、ひどく薄気味悪い。
 狙いが不明のまま、こちらに何かをさせようとしているのが一層不吉さをかき立てる。知らぬ間に破滅に続く道を歩かされているような気分がする。
 居心地の悪さを感じながら、まとまらない思考を巡らせていると、ちびシューラの方から動きがあった。彼女は下を向いたまま、力のない声でこう言った。

(ごめんねアキラくん。期待させたのにシューラ役立たずで)

 ああ、そこからやりたいのか。
 まあ呪術の儀式だと思って付き合おう。これくらいで彼女の精神が復調するのなら安いものである。

(それを言うなら、俺だって同じだ。力不足ですまない)

(アキラくんはしょうがないよ。呪術抵抗力がほぼ皆無だもの。シューラはちゃんとラクルラールお姉様の支配に対する知識があったのに。機能が制限されていない本体シューラならもっと――ううん、言い訳はみっともないね)

 だいたい予想通りの言葉。
 少し前から頭の中でまとめていた文章を読み上げるように口にしていく。
 ――というか、こいつ俺の準備が整うのを待っていたのでは。

(聞いてくれちびシューラ。勝負っていうのは一度では終わらない。負けた原因を分析して、自己改良を繰り返すんだ。試行錯誤を繰り返していけばいつかは勝ちに届く。きっと、コルセスカならそう言うはずだ。あいつにみっともない姿は見せたくないだろう? ならここで頑張って、囚われのお姫様状態のコルセスカを救い出してやろう。そうしたら、強くなった自分を思いきり自慢してやれ。きっと褒めちぎってもらえる)

(――ほめちぎり。セスカからちやほや。みんなから大絶賛?)

(そうそう。グレンデルヒに勝てば地上最強の武名が手にはいるし、ラクルラールぶっ飛ばしたら最強の人形遣い? とかの称号が手に入るぞ。今までの人形はもう古い、これからは自律型機械の時代だーって感じで)

 ちびシューラの耳がぴんと立ち、尻尾がそわそわと左右に動き始めた。
 もう一押しかな。

(アキラくんは褒めてくれる?)

(褒める褒める。ちびシューラがいなかったら今の俺はいなかったよ)

 と、俺がそこまで言うと何がまずかったのか、ちびシューラは再び暗く沈み込んでしまった。一体どうしたのだろう。

(今の状況は、シューラじゃなくて敵の情けのお陰。シューラは役立たずだった。むしろ足手まといだった。積極的にラクルラールお姉さまの手駒になって動いてた。アキラくんを束縛して自由意志を奪ってた。もうアキラくんの立派なご主人様としての資格が無い。恥ずかしい。死ぬしかない)

 陰鬱に呟くちびシューラに、思わず顔がひきつる。
 知らずに地雷を踏んでいた。
 やはり、敵であるはずの相手に結果的に救われてしまったことが彼女を傷つけていたらしい。無理もないが、しかし済んだことは仕方がない。

 これから挽回するしかないのだが、問題は打つ手が見つからないことだ。
 俺たちは左腕の中に存在しているようなものだ。
 誰か役者と繋がって、演じて貰わなければなにもできない。
 そして、その役者たちは皆ラクルラールの支配下に置かれているのだ。

 どうすることもできなかった。
 ちびシューラは俯いて溜息を吐き、俺は眉間に皺を寄せて唸る。
 不毛な時間がただただ過ぎていく。
 そんな時だった。

(辛気くさい連中だ。見ているこちらの気まで滅入る)

 出し抜けに響いた声に驚いて、俺たちは揃って左腕の断端のあたりを見た。
 その上には、とても小さな、切断された腕が乗っている。
 しかしそれは俺たちが足場としている左腕とは逆の腕、つまり右腕だった。更に、どこか血の気が薄く死体のように見える。

(ふん、どうした。鳩がビーンズ式詠唱術を食らったような顔をして。俺がここにいることがそんなに不思議か?)

 ぐねぐねと右腕が動いて、手首が偉そうに反ってこちらを見た、ような気がする。俺たちは呆然とその光景を見ながら、震える声でこう言った。

(う、腕が――)

(喋ってる! キモい! キモいよアキラくん! あっごめんね腕だけのアキラくんのことまでキモいって言っちゃったみたいで。アキラくんの左腕はとってもキモかわいいよ)

(貴様ら――さては割と余裕があるな?)

 俺たちは本気で震え上がった。
 何しろ相手は腕だけだというのに堂々と口を利いているのである。ちょっとした恐怖体験に、俺はちびシューラがいる掌の上に退避していた。

(たかが見た目でおたおたするな、それが我が主と渡り合おうという僭主の振る舞いか。敵ならば敵として、相応の品格を兼ね備えておくがいい。が、まあ仕方ない。ここは貴様らの流儀に合わせてやるとしよう。光栄に思うがいい)

 尊大な口調でまくし立てる、どこか聞き覚えのある鋭い声。
 不気味な右腕はびちびち、と水揚げされた魚のように跳ねたかと思うと、次の瞬間、眩い光に包まれる。
 再びその場所を見ると、腕に代わって奇妙な存在が現れていた。

 俺やちびシューラと同じような、二頭身にデフォルメされた男性だ。
 黒いコートに包まれた肉体はデフォルメされながらもシャープな印象をこちらに与えてくる。女性的と形容しても差し支えのないほど繊細に整った顔立ちに、後頭部で馬の尻尾のように揺れる一房の黒髪が特徴的だ。何より、その睨むだけで相手を斬り殺せそうな眼光は忘れもしない。

(誰だっけ?)

(クレイだっ! クレイ=スマダルツォン! 以前、地下迷宮で戦っただろうが! トーナメントにも出場していた!)

(ああ、チリアットとカーインに負けてた奴な。そんな名前だったっけか。【変異の三手】に三人いる副長とかなんとか)

 そう言うと、クレイは低くうめいて黙り込んだ。そういえばそんな奴がいたなあと思い出す。何しろここ最近、新しい顔ぶれが多くていい加減覚えるのが大変だったのだ。ちびシューラにネームタグを付けて管理してもらわないと顔と名前が一致しない。

(はい、これネームタグね。アキラくんに覚えて貰いたいなら付けておくように)

(いらんっ)

 ちびシューラが「もりぐみ くれいくん」と書かれた名札を渡したのだが、すげなく払いのけられてしまった。なんて悪い子でしょう。園長先生に相談しなきゃ。
 どうも俺の指摘が相手の自尊心を傷つけてしまったらしい。ちびシューラのご機嫌なら幾らでも取るが、こいつはただ面倒なだけだな。

(で、どうしてお前がここにいるんだ?)

(知れたこと。俺は陛下の軍勢の一部。ゆえに【召集】の呪術によって、いついかなる時であっても馳せ参じる事が可能なのだ)

 とりあえず質問してみると、相手はなぜか自慢げだった。
 しかも質問の主旨を取り違えていた。手段じゃなくて目的を答えろよ。
 得意満面で胸を張っている姿に、なにやら対抗心を刺激されたがこちらにはそんな材料は無いのだった。悔しい。

(なんだそれ、そんな便利呪術があるのか)

 と、俺は使い魔系統の呪術はずるい、とか僻んだことを言おうと思っていたのだが、意外にもクレイはこう返してきた。

(貴様も使えるはずだが)

(え、そうなのか?)

(――高位の使い魔は主の資質に応じた召集形態を有する。杖ならば使い魔の肉体を作り起動させる、邪視ならばその姿を幻視する、というようにな。貴様は二君に仕えるという恥知らずな真似をしているから、その両方ができるはずだ)

 ぴんとくるものがあった。
 俺はトリシューラの鮮血呪によって『転生』することができる。
 事前に用意した俺に似た肉体の価値と、本物の俺という存在の価値を逆転させることによって『新しい俺』を新生させる呪術。

 キロンとの戦いで形勢を逆転してみせた反則級の『再現性の不死』、あれこそが使い魔側の言葉で言うところの【召集】なのかもしれない。
 とすると、コルセスカも似たようなことができるのだろうか。
 そんな経験は無いが――いや、本当にそうか?

(もしかして、今まさに俺はコルセスカに【召集】されているのか)

(そうだよ。(キャラクター)として、架空の存在として。セスカは神話の魔女だから、その使い魔も神話上の存在であるのは自然な事だもの)

 今は役者の代わりにシューラがアキラくんを表現してるけど、とちびシューラが補足してくれる。つまり、今の俺は半ばキャラクターを参照して存在しているコルセスカと似たような存在になっているらしい。考えてもみれば、俺はサイボーグゆえにアンドロイドの魔女の使い魔としての資格を有する。ならば神話の魔女の使い魔として、神話的存在となることはさほど不自然でもない。

 ということは、クレイはキシャルの使い魔であるゆえに再生者なのだろう。
 グレンデルヒの配下として現れたのはキシャルと同じだが、要するに二人は同じ勢力に属しており、揃って奴に負けて軍門に下っていたということのようだ。

 キシャルが反逆をしている今、クレイも同じように動いているわけだ。つまり今のクレイは、グレンデルヒではなくキシャルの配下として俺たちの目の前にいる。
 クレイは表情を固くする俺たちには構わず、得意げに言葉を重ねた。

(我ら【死人の森の軍勢】は生と死を行き来する無敵の兵。生殖を司る我らが母の胎内から現れることができるのは勿論、死した者たちが埋められる地の底からも這い出すことができる。その気になれば、火の中や樹木の根、鳥どもの嘴から現れることもやってみせよう)

 というかただの自慢だった。
 色々と得心がいく説明だったが、俺は感心を表に出さずにこう返した。

(へえ。じゃあお前、ママの腹の中から出てきたばっかりの赤ん坊ってわけだ)

(斬り殺すぞ貴様っ)

 簡単に挑発に乗るのはわかりやすくていいなあこいつ。
 考えの読めないキシャル本人と直接に言葉を交わすよりもよほどやりやすい。
 あるいは、そういったこちらの心理まで見越してクレイを使者として寄越したのだろうか。流石に考えすぎだと思いたいが。

(ふん、まあいい。不本意だが役目を果たさねばならん。貴様ら、我らの軍門に下ることを許してやってもいいぞ。そら頭を垂れろ。額を地面に擦り付けるがいい)

 高圧的な物言いに、俺とちびシューラは思わず顔を見合わせた。
 いつか、トリシューラにやりこめられた時の意趣返しのつもりなのだろうか。
 だとしたら、考えが甘いと言わざるを得ない。
 俺たちは以心伝心で頷きあって、じりじりとクレイに近づいていく。

(な、なんだ貴様ら。何のつもりだ)

(何ってお前、ここが敵地のど真ん中ってことに気づいていないのか)

(捕虜にしようか。それとも首だけにして送り返す?)

 物騒な事を言いながらさっと左右に分かれてクレイを取り囲む俺たち。
 クレイは焦りを覚えたのか、慌てたように言った。

(おい、ふざけるのも大概にしろ! 国際法を知らんのかっ)

(不勉強で申し訳無いが、寡聞にして知らないな)

(勉強しろっ、知らなかったでは済まないこともあるんだぞっ)

 もっともなお叱りを受けてしまった。
 まだこっちに生まれて八ヶ月なので勘弁して欲しい。ダメか。
 とはいえ、ちびシューラは構わずその拳を振ってクレイの頭を叩いている。
 結構いい音がした。

(おい、やめろ、やめろと言うのがわからんのかっ)

 激昂したクレイは飛び退り、腰を低く落として腕を後方に引いた。
 鋭い眼光でこちらを睨み据えて告げる。

(それ以上近付けば、斬る)

(えい)

 クレイの言葉を無視したちびシューラが、ぽかりと額を叩いた。
 俺もなんとなく便乗して足を蹴っ飛ばす。
 声にならない叫びと共に、クレイが怒りの手刀を放った。
 しかし。

 ぺちり、という音がして、俺の肩にクレイの手刀が命中。
 多少の衝撃はあるが、それだけだった。
 クレイは愕然と自分の腕を見る。
 そこには、指すらデフォルメされて鋭さの欠片も無い棒があるだけだった。

(な、ならば我が剣詩舞による斬撃の嵐で沈むがいい!)

 クレイは華麗なステップを踏み、舞という儀式によって大魔将すら切り刻む必殺の大呪術を発動させようとして、重心を崩して見事に転んだ。
 それはもう、受け身もとれずに後頭部から倒れた。
 ちびシューラが呆れたように、

(あーあ。慣れない手足で踊ったりするからー)

 と言えば、俺はうんうんと頷いて、

(この二頭身、本当に動きづらいんだよな。踏ん張りもきかないからサイバーカラテの型も上手くなぞれる自信が無い)

 と続けた。
 クレイは屈辱に震えながらこちらを睨み付けているが、無力な相手を怖がる理由は全く無い。俺とちびシューラは不穏な表情を作ってじりじりと包囲の輪を狭めていく。相手に対して圧倒的優位に立っている状況というのは気分が良い。

(ほーらほら。こういう時は相応の態度があるんじゃないのー?)

(とりあえずお前、キシャルについて知ってることを吐け。反抗的な態度を見せたら――わかるよな?)

 倒れた相手を二人して小突いたり蹴飛ばしたり踏みつけたり威圧的に周囲をぐるぐると回ったりしていると、次第に相手の震えが収まっていった。怒りを通り越して絶望、そして服従へと気持ちが切り替わったのだろうか。

(このクズ主従が――)

 ぎろり、と睨み付けられる。
 灰色の瞳は誰かを思い起こさせるように美しく、長い睫毛は繊細な面立ちに良く似合っていた。肌も白く、化粧でもすれば良く映えることだろう。正直、心の中で疼くものがあった。レオの美しさや可愛らしさとは別系統の良さがある。

 ちびシューラの言う通り、こういう相手の心を痛めつけるのって癖になるな。相手の意思が強そうなのがなお良い。俺の中の嗜虐的な心がざわついているのがわかる。ちびシューラの影響だろうか。今の俺が彼女によって計算され表現される存在だというのなら、それも当然と言えば当然か。

(はー、気の強いコをいじめるのって楽しいなー。まだ反抗的なあたりが躾け甲斐あっていいよねー)

(おい、駄犬。お前の事だよ、自分の立場をわきまえろよ? お前はこれからガロアンディアンの女王に屈伏するんだ。ということは犬としては俺の下に位置付けられることになる。群では序列が絶対だ。わかったなら返事をしろ。どんな鳴き声で返事をすればいいのかはわかるよな?)

 ぶち、と血管が切れるような幻聴がした。
 クレイの頭が思い切り振るわれて、後頭部の髪房が勢い良くしなる。
 と、艶やかな漆黒の髪は刃の様に頭部から切り離されて、なんとこちらに飛来してきた。弧を描いて回転していく髪の束が、俺とちびシューラの頭上すれすれを通過していく。髪はそのままクレイの後頭部に戻っていき、元の馬の尻尾に戻った。

(ちびシューラ、頭の上、耳がっ!)

(あわわ、アキラくん、頭髪が大変な事に! でも大丈夫、シューラはアキラくんが禿げても植毛してあげるからねっ!)

 思わぬ逆襲により、ちびシューラは狼耳を、俺は頭髪を切断されてしまう。
 俺たちは二人、身を寄せ合って怯えた。

(いきなり暴力を振るうとか、チンピラみたいな奴だな)

(本当だよ! 相手が抵抗できないのをいいことに、暴力で言う事を聞かせようとするなんて、最低なんだからね!)

 そんなことをのたまう俺たちに対してクレイはこう返した。

(貴様ら、陛下の命が無ければ本当に殺している所だぞ――いいからふざけてないで真面目にやれ。こちら相手に優位に立とうなどと考えるな。必要最小限の協力だけしてこの状況を切り抜けたら、後はまた敵に戻るだけだ)

 どうやら調子に乗りすぎたらしい。ちょっと反省した。
 ただ、重苦しい空気を払拭する役には立った。
 ちびシューラと二人、お互いの頭を大雑把に直しながら相手に向き直る。

(気を取り直して訊くけど、そっちはシューラたちと一時協力するっていうことでいいのかな?)

(ああ。陛下はまず第一にグレンデルヒの打倒を目指しておられる。故に貴様らと手を結ぶことを決意された。加えて、ラクルラールとやらが貴様らに伸ばしている呪縛の糸を、俺に断ち切るように申しつけられた)

 理屈は不明だが、クレイにはラクルラールの支配を断ち切る力があるらしい。
 先程は不発だったが、今では慣れたのか腕を素早く振って足下にある左腕の皮膚を浅く切断することができるようになっていた。
 ――っていうかおいやめろそれ俺の腕だぞ。

 嘲るようにこちらを見て嗤ったので、恐らく故意だった。
 くそ、こいつ、いつかまた敵になったら思い切りぶん殴ってやる。
 なんというか、相手も似たような事を考えていそうだが。

(ラクルラールの目的、グレンデルヒとの関係はこちらも知らん。自分たちで考えるんだな。俺の役目は貴様らが支配されないようにすることだけだ)

(待て、すると他の皆は――)

(そこまでは手が回らん。貴様の左腕と繋がった相手ならばある程度干渉できる可能性はあるが、これだけ複雑に絡み合った糸を全て断ち切るのは不可能だ)

 これは、クレイの問題ではなくラクルラールがそれだけ厄介ということなのだろう。俺たちの安全が確保されるだけでもかなり助かるのは事実だ。
 そんなわけで、即席の同盟が結成されることになった。
 仮想のちびシューラと、その使い魔である架空の俺。
 更には何かよくわからん手刀の人。

(クレイ=スマダルツォンだ。今は――そうだな、亡霊としてここにいるということにでもしておこうか)

 曖昧な説明だったが、全員かなり曖昧な存在なので違和感は無い。
 それよりも、俺は彼の姓名に引っかかっていた。

(さっきも言っていたな。スマダルツォン? ライニンサルじゃなくて?)

(――それが、この呪術儀式の結果ということだ。次はさしずめクレイ・ガレニス・クロウサーにでもなるのだろうさ)

 問いに対して明確な答えは返さぬまま、クレイは少しだけ俯いてそう言った。
 陰鬱な瞳。俺はそんな彼の表情に、あるかなきかの自嘲と、哀感が漂うさまを見た。どうしてか、気を引かれるものがあった。

 状況の変化は幾つもの足音によってもたらされた。
 振動が床を伝わってくる。無数の人形に囲まれた俺たちの傍に、見慣れた姿が並ぶ。奇怪な人形を正気のまま当然のものとして受け入れた、糸に繋がった仲間たち。レオ、チリアット、グラッフィアカーネ、そしてもう一人。

「無事――ではないようだが、ただでは倒れない所は相変わらずだな。シナモリ・アキラ。私以外の相手にあっさり殺されては困るのでね。少し安心した」

(カーイン?)

 俺の左腕を拾って、断端に軽く触れて意思を伝えてくるのはロウ・カーインだった。まさかこの男までやってくるとは。
 レオが柔らかく笑って言葉を繋いだ。

「【召集】のやり方をセージに教えて貰っていたので、呪文を唱えて来てもらいました――けどねカーイン? ちょっと遅いよ?」

 表情は微笑みのまま、全く笑っていない空気を発するレオ。
 笑顔が笑顔ではないあたりが、ますますトリシューラだった。怖い。

「申し訳ありません。グレンデルヒの群を突破するのに手間取りました」

「だから? 呼んだらすぐ来て。できないならできるようになって」

「承知。精進致します」

「うん。ちゃんとしてね?」

 このやり取り、この関係、正直よくわからない。
 この二人、なんでこんな事になっているのだろう?
 レオにはレオの、カーインにはカーインの人間関係があり、俺が普段生活しているサイバーカラテ道場周辺とは微妙に重なっているようで離れている。

 ここ数ヶ月間に二人が積み上げた時間は、俺には共有できないものだ。
 なんだろうこの疎外感。
 特にレオは、こう、俺の方が先に縁を持っていたはずなのに――というか何だこの感情。独占欲か。全てレオの可愛さが魔性なのがいけない。

(ばかじゃないの)

 ちびシューラの冷ややかな視線で我に返る。
 そして、冷静になると状況がより一層悪化したことがはっきりとわかった。
 助勢に駆けつけたカーインにも、例外なくラクルラールの糸が絡みついていた。それはカーインを伝って俺の左腕に絡みつき、俺たちを支配下に置こうとしていた。周囲に見つからないよう、存在を希薄にしていたクレイが手刀を振るう。

 触手のように伸びてきていた糸が断ち切られ、同時にちびシューラが呪文を構築して切断された糸に接続する。
 敵の糸をクラッキングすることで、『俺たちが糸によって支配されている』と相手に思い込ませるための措置だ。

 成功するかどうかはちびシューラによると五分五分だったが、どうやら賭けには勝ったらしい。糸が再び伸びてくることは無く、ちびシューラが作り出したダミーの俺たちが糸に絡め取られて敵の意のままにされていた。

(あとは、ばれないように劇に干渉できるかどうかだね。冥道の幼姫と上手く連携がとれればいいんだけど)

(どうせ貴様らに大したことはできまい。陛下の動きを邪魔せぬよう、支援に徹することだな)

 悔しいが、クレイの言う通りだった。
 現状ではそれが最善手だ。
 兎にも角にも、状況が整った所で劇が再開される運びとなった。
 先程の破綻した一幕に対する言及は一切無く、崩壊した舞台は不気味な人形たちによって急速に修復されていく。

 キシャルとグレンデルヒの行方はわからないままだが、恐らく二人とも無事だろう。キシャルは今のところ協力するしかないとして、グレンデルヒの動きが読めないのが気になる所だ。

(シューラとしては、グレンデルヒが操られてたのが意外。いくらラクルラールお姉様でも、上級言語魔術師を支配するのは簡単じゃないはずなのに)

 ちびシューラが小首を傾げると、クレイが答えた。

(恐らく役者の方を狙われたのだろう。今まさにこちらが同じ手で追い詰められているようにな。奴のことだ、既に支配権を取り戻すべく動いているだろうが、現在の主導権がどちらにあるのかは不明だ。グレンデルヒとラクルラール、どちらと戦ってもいいように心構えをしておけ)

 状況は三つ巴どころか更にラクルラールという三勢力全てにとっての敵が現れた事で混迷を極めている。俺たちと死人の森が協力関係になったことである程度わかりやすくはなったものの、残り二つの舞台でどう状況が変化してもおかしくはない。油断は一切できなかった。

 気を引き締めた俺たちだったが、その後のレオたちのやりとりで再び空気が弛緩していく。朗らかなレオの主導で、配役が決められたのだが、その内容が問題だったのである。

「私が――この役を、ですか」

 カーインの表情が引きつっていた。
 俺は意味が分からずに首を傾げる。
 レオは俺の左腕をグラッフィアカーネことグラに渡して、にこりと笑って台本を広げた。役名の一覧には、『カーイン』という名が記されている。

 偶然の一致、だろうか。
 カーインというのは、この世界の名前では良くある音なのかもしれない。
 現に、かつて俺が共に戦いその手にかけた修道騎士カインとカーインは非常に良く似た音の響きを持っている。

 俺の前世にだって似たような名前はあっただろう。
 だが、カーインの顔が強張っている所を見るとそうではないらしい。
 ちびシューラが横から口を挟む。

(あれ、説明してなかったっけ? カーインとかカインって、元は古い時代の勇士の伝説に出てくるんだよ。地獄ではジャッフハリム四十四士、地上ではクロウサー家の守護者として広まっているんだ。高名な人物にあやかって名付けると、その呪力の一部を参照できるから人気なんだよ)

 なるほど。同じ人物の伝承が上下の大地で別々に伝わっているってのは中々興味深いな。カーインもカインも、同じ伝承から名前を取ってきていたわけだ。
 とすると、今回はクロウサー家に関係した話だから、地上に伝わっている『カイン』が登場するのだろうか?

「今回登場するのは後にジャッフハリム四十四士となるカーインですよ。邪悪なレストロオセが統べるジャッフハリムと戦い、四方の王が一人、北方のベフォニスを倒したというエピソードを演じます」

 レオがそう言うと、グラが首を傾げて言った。

「あの、その話は俺も知ってますけど、それってクロウサー家とかいうのと関係あるんですか?」

 するとレオは、よくぞ訊いてくれたとばかりに虚空に文字列を展開した。
 二つの文字群が重なり合い、高度な呪文が物語を編纂していく。

「『実は関係があった』のです! 『上』に伝わる物語と『下』に伝わる物語、二つの起源が一つなら、それはよく再解釈して語り直せば一つに繋ぐことができるはず――というわけで、クロウサー家の物語とベフォニス退治の物語をくっつけた、新しい解釈のストーリーを上演します。簡単な筋なので、みんなぱぱっと台詞を覚えちゃいましょう!」

 レオの言葉に、チリアットとグラが凄まじい剣幕で異議を唱えた。あのカーインまでもが不服を申し立てている。絡みつく糸がざわざわとうねっているのが見えた。しかし、レオは相変わらずの柔らかな微笑みを浮かべたまま、

「でも、こっちの方が楽しそうじゃありません?」

 と言って、何気なく細い指先で青い三角耳に触れた。
 猫の耳に繋がっている青い糸が、一瞬だけ震えて、そのまま動きを止める。
 するとカーインたちの反論が途絶えた。
 レオの不思議な言外の威圧感に、返す言葉を失ったのだった。

(奇妙な――少年だな。あれは何だ?)

 クレイが訝しげに呟くが、正直俺にもよくわからない。
 髪の毛が繋がっている所を見るに、ラクルラールの支配下にあるのは間違い無いように思えるのだが。

「というわけで、カーイン? 当然できるよね?」

「それは――ですが、これは余りにも」

「嫌なの?」

 問いに、カーインは何かを堪えるようにぐっと言葉を飲み込んだ。
 そして、震える手で台本を手に取って、

「――承知」

 観念したかのように、小さく言葉を発した。
 その様子を見るレオの瞳の色に既視感を覚えたのは、果たして気のせいだったのだろうか。それは、先程クレイをよってたかって虐めていた俺やちびシューラが抱いていた感情――すなわち嗜虐心と同質のものに見えた。

「僕、カーインには期待してるから。頑張ってね」

 レオは、相変わらずの可愛らしい笑顔を浮かべてそう言った。






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