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1章 初速
9th 熊退治
 森を翔る。
 転がる小石さえも足裏で踏破し、全てを後ろへと蹴って加速アクセラレイトする。
 周りを取り囲む魔物さえも、身体強化の魔術、魔力の循環による強化、更には足裏での魔力の爆発で連続する跳躍。
 何処までも速く、早く、疾く――――!!



 さて、何でのっけからこんな激しい展開になっているのかと言うと。
 現在の時刻は正午過ぎ。
 まあ、時間は朝十時頃に戻るわけですが。



「――……じゃあ、これ」

「へ?」

 ギルドカウンター。
 何処でも野卑な笑い声が在るこの場所では、ソレに応じたように様々な活気が在る。

 まあ、そんな中央。でっかい掲示板のような、依頼紙がたくさん張ってあった。
 隅々まで張られきったその紙は、ランク毎に格付けされ、現在ランクCである俺には、それなりの数の依頼紙が張ってあった。

 そんな中。

 相方のレイシアが唐突に一つの依頼紙を指差した。
 え、いきなりなんだ?

「……これ。……今の貴方にピッタリ」

「ほうほう?」

 成る程成る程。さてはてどんなものだっけ……てぅおおぉいっ!!!?
 ちょ、ちょっと待て! 何だこれ!?

「ちょ、待て!? 何だよこれ!? 人食い熊三体討伐って!?」

「……いい感じ?」

 何処がですかいお嬢さ―――ん!!!!

「てかこれは流石に死ぬだろう!? 人食い熊て!?」

「……でも、これはランクBへの昇進試験にもなってる。……だから、いい感じ」

「ああ、そういうこと」

 うんうん、レイシアも俺のこと考えてくれてるのか。在り難い在り難い……。
 ってぇ!? それでも死んだら元も子もないじゃんか!?

「いや、流石に……っ」

「……大丈夫、いける。……貴方の剣と、魔力総量や、魔術だったら、余裕」

「……大丈夫なのか、それ?」

「…………多分」

 今何時もより遅れた上に小さい声で多分って言わなかった?



 で、現在。
 思いっきし人食い熊に追っかけられてます。
 しかも十匹以上に。

 俺に死ねと?

「ってかこれはマジで死にますけどね!!?」

 
 この世界で魔物を倒すとレンドと言う宝石みたいなのが出るわけですが、それを空間をポケットへと繋いで集めつつ、大地を蹴りつけるたびに熊をこかしていき、剣を振るうと同時に衝撃波叩き切っていき、左手で熊を焼いて。

「これは本当にきついんですが――――!!? レイシアさ――んっ!? これどうなってんだー!!?」

「……多分、魔王の影響だと思う」

 それで子供いっぱいってか!?
 くっそう魔王め!! 俺を殺す気か!?
 いつか張り倒してやる!!


 とは言ったものの。

「ルウウウウアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!」

「グ……ゥゥォォォオオオアアアアアアッッ!!!!!」

「ああもううざったい!!」

 どうやってこいつら全滅させるんだよ!?
 魔術練ってる暇ないし、速すぎて一箇所に纏めてスパンっていけないし、ああもうメンドイ。

 てか、レイシアも守らなきゃいけないから、そこら辺も視野に入れていくと結構、いや、かなり厳しい。ああ糞、ギルドのヤツ、五匹どころじゃなくなっちまった。

「一掃出来ないかこいつら!?」

「……今構築中。……出来たら、上へ飛んで」

「了解!」

 レイシアの前に立ち、足を止める。
 足裏から爆発させていた魔力を身体強化に叩き込み、切断の概念を強化した剣を右手で構え、左手を引いて突風の式を構築する。

「さあ、準備完了だ。……来やがれッ!!」

 俺の一言で、熊どもが襲いかかってくる。

 前から飛び掛ってきたヤツを切り捨て、横からのヤツに顔面へけりを入れて顔の骨を叩き折る。
 後ろからのヤツに突風を当て、上からのヤツは一歩後退して落ちたところを蹴り飛ばして燃やす。左からのヤツを手で受け止め、治癒魔術を多重に使用しつつ前へとふっとばし、道をあける。

 一太刀振るい、風を吹き荒らし、火を操り、大地を歪ませ、雷を落とし、水を放つ。
 絶え間無く飛び掛ってくる人食い熊を打ち倒し、切り捨てる。

 が、流石に数が多すぎる。

 まだかよッ!!

 連続で式を構築し、剣へと魔力を注ぎつつけ、振るう、振るう、振るう――――――!!

「っりゃああああああああッッ!!!」

 剣を突き出し何体も貫通させ、土を固めて守り、地電流を流して感電させ一気に燃やす。

「――ッ、出来たッ!!」

「了解だッ!!」

 道が焼ききれそうなほどに魔力を流し、突風を形成。
 一瞬熊が動きを止める。

 その隙にレイシアを抱きとめ、重力を軽減。一気に――跳ぶ!!

「破砕によりて力を渡せ!! ――万衛の拠り手!!」

 直後、破砕が響いた。



「うわ……無茶したな……」

「……そこまででも、ない」

 魔術が起動した直後、半径数十メートルにおける大地から土の槍が飛び出し、爆砕していた。
 うわ、グロ。

「後始末はどうするんだろーなーこれ……」

 深く考えないことにしよう、うん。
 にしてもなあ。

「疲れた」

「……そうね」

 珍しく意見が一致した瞬間だった。


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