第8話 罠
俺の心に深い傷が刻まれた後、夕飯ができたとかがみさんから報告がきてゲームを止める。
かなり腹が減り、急いで椅子に座って料理を食べたいところだが……。
「桃原君…きつい…」
「そうだね…」
さすがに六人となればテーブルの一人一人の範囲はかなり限られてしまう。
椅子の間も全くといっていいほど存在しなかった。
「ん〜、じゃあ二階から折りたたみ式のテーブル持ってくるよ」
「じゃあ私も行く」「…私も」
かがみさんと岩崎さんが協力をよこす。
断るのも悪い気がして、俺達三人でテーブルを降ろす。
だがそのテーブルは相当軽く、俺だけが持ち岩崎さんとかがみさんは何もできずに気まずい空気を運んだ……。
「というわけでいただきます!」
「「「「「いただきます」」」」」
泉さんの号令に続く。
席はくじ引きで決まった。テーブルに泉さん、つかささん、小早川さんが座り、リビングのテーブルには俺、かがみさん、岩崎さんとさっきの気まずい空気を運んだ組が座る。
……なんでこういうのってだいたいは望まないグループに含まれるんだろ……。とりあえず目の前にある一口サイズのじゃがいもをパクリッ。
……うん、美味しい!
「つかささん、かがみさん、この肉じゃが美味しいよ」
「ありがとう〜」
「私は切っただけなんだけどね」
つかささんは相変わらずほんわり笑顔なんだが、
かがみさんは少し申し訳なさそうに目線を下に落とす。
「かがみさんが切ったこの人参も美味しいよ」
すかさずフォローを入れる。
「あ、ありがと」
僅かだが顔が柔らかい雰囲気になる。
よかった。さっきの空気とはまるで違う。
ナイス俺!
早いペースで食べ進め、あっという間に皿の上に盛られた肉じゃがは無くなった。
「じゃあ片付けは俺がしとくよ」
みんなが食べ終わった頃に食器をキッチンに持っていく。
「…私も手伝います」
なぜか岩崎も皿洗いすることに。
俺達が皿洗いをしている時、リビングから盛り上がる声が聞こえる。
たぶん夕飯前にした格ゲーだろう。
「…ごめんなさい」
急に岩崎が謝る。
「何が?」
「…あのゲーム」
岩崎さんもそれが聞こえたのか、リビングを指差す。
「…私が桃原君に勝っちゃったから」
ああ、そのことか。
なんだ…、岩崎さん俺を倒しちゃったこと気にしてたんだ。
小早川さんの言った通りいい人だなぁ…。
「いいよ別に。俺が弱かっただけだしさ」
「…でも」
「いいのいいの。泉さんがどんなアドバイスを言ったかわからないけど、俺は諦めずにまずは岩崎さんを倒すことを目指すよ」
「…泉先輩は何も言ってないですけど…」
………え゛っ?
「…ただ自分の機体の特徴を教えられて、私なりにそれを活かしただけで…」
…じゃあ俺が負けた原因は泉さんは関係なく、本当の実力で完敗した?
「………………」
「………………」
……なんか今のが人生で一番傷ついた。
夜の11時。
格ゲーが終わり、もうそろそろ寝る時間なのだが大事なことを忘れていた。
「そういえば部屋割りはどうなるの?」
泉さんの言う通り、部屋割りが悩む。
空いてる部屋は一つあるんだけど、あそこは親父の大事な部屋だから入るのすら禁止されているのを数分前に気付いた。つまり今空きがあるのはリビングとかがみさんの部屋と一応俺の部屋。
だけど女の子をリビングで寝かせるのはなんか悪い気がするし、かがみさんの部屋は三人も寝られるほどベッドにスペースはないし、俺の部屋は論外だし……。皆で悩むこと十五分。
小早川さんが笑顔で
「私はリビングのソファーで構いませんよ?」
と言い出すのだがそれは俺が許さない。
何故なら
俺は女の子に不自由な思いをさせるゴミ的存在と同じ価値になるからだ!
というわけで
俺がリビング、かがみさんは俺の部屋、小早川さんと岩崎さんはかがみさんの使っていた部屋になった。
「わ、私が桃原君の部屋!?」
動揺するかがみさん。
「別に俺がいないんだから問題はないと思うけど…」
「問題ありありよ!」
……どこに?
「じゃあお姉ちゃん、私が代わってあげるよぉ」
つかささんが嫌がるかがみさんに妹の思いやりを送信。
「つかさ、ありが……ってそっちのほうが嫌よ!こなたと一緒に寝たらいつまで起きることになるかわかんないじゃない!」
送信を拒否される。
「むー。じゃあ私が桃原君の部屋に寝るよ」
泉さんが前に出る。
「じゃあ私も〜」
つかささんが前に出る。
「私も桃原君の部屋で寝ます」
「…私も」
小早川さんと岩崎さんが前に出る。
…ん?ちょっとまて。この作戦はもしかして…。嫌な予感がして、俺は後ろからそっと見守ることにした。
「えっ?ちょっ、なによ、じ、じゃあ私も」
かがみさんが罠ヘの一歩を踏み出した。
「「「「あ、どうぞどうぞ〜」」」」
……案の定、四人が頭を下げ手をどうぞとジェスチャーする。
「へっ?」
流れで言い出したかがみさんはわけがわからないという顔でぽかんっとしていた。
「じゃあかがみが桃原君の部屋で寝ることになったからみんな寝よ寝よ〜」
泉さんが撤収の合図を出し全員が二階へ上がる。
俺と古い手に引っ掛かったかがみさんを残して……。
「なによそれ〜〜〜!!!!」……ご愁傷様。
夜の12時、かがみさんも二階に上がり、
俺もソファーで寝ようかと思い、電気を消して寝転がるとドアが開く音がした。…何だろう?
ゆっくり立ち上がって、ドアの方向に目を向けると
「……泉さん?」
間違いない。そこにいたのは青い長髪の少女だ。
「どうしたの?」
しかし返事はない。
しばらくして泉さんはとんでもないことを言い出す。
「……今、私が君のことが好きって言ったらどうする?」
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