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第79話 狂気




みさおとあやのは二人で古時計へと足を運ぶ。
かがみはそれを見送るように後ろから黙って見ていた。
「みさちゃん、本当にいいの? 柊ちゃん一人だけ置いてきて…」
「いいんだってヴァ。それに私達だけでも大丈夫なんじゃねえの」
みさおは背後を振り向かずに話す。
「でも…」
かがみ一人を残すのに納得がいかないあやのは何度もかがみとみさおを見比べる。
「わ、私だって柊と一緒にいたいけどしょうがねえじゃん。
柊とは意見が合わねえんだから」
「………」
あやのはこれ以上は言わなかった。
そしてかがみの視界から二人は消えた。



「…ゆたか、しんどくなったらいつでも言って」
「だ、大丈夫だよ、みなみちゃん。
まだ歩けるから」
しかしゆたかの足はフラフラ状態で説得力が微塵にもなかった。
どこかゆたかが休めれる場所はないのかな…。
みなみは辺りを見回すと一本の樹に注目する。
「……じゃあ私が疲れたからあそこで少し休憩しよ」
みなみは気を遣って森林の中でも特別大きい樹の下を指差す。
「みなみちゃん……。
うん、ありがとう」
ゆたかはみなみの優しさに気づいて笑顔を見せる。
やっぱりみなみちゃんは優しいなぁ……。
「………っ!
待ってゆたか」
「ほえ?」
みなみが樹の下に何かがいることに気づいてストップをかける。
「な、なにあれ…」
ゆたかは目を凝らす。
人じゃない、でもあれは生きてる…。
じゃあアレが…。
「ゲームに出てくる普通のモンスターだ…」
みなみが冷静に言う。
怖い…。
ゆたかは単純にそう思った。
「ゆたかはここにいて、私が倒してくるから」
「わ、私も一緒に…」
「ダメだよ…、そんな震えた足じゃ」
みなみはゆたかを座らせる。
「…ここに隠れてて」
「うぅ…」
「大丈夫、ゆたかは私が守ってあげるから」
心強い眼差しにゆたかは返す言葉がなかった。
今まで数えきれないほど助けてもらってきたのに私はまた……。
ゆたかは自分の不甲斐なさに苛立ちを覚えた…。



みなみは的に見つからないように音をたてずに近づく。
みなみの職業は弓術。
本来なら遠距離からの攻撃だが確実に仕留めるためにできるだけ寄っていく。
そして完全に射程に入ったら弓を引いて狙いを定める。

…………………

……………

………

今だ…!
みなみは当たるように願い弓を放した。
それはとてつもなく早く、的は一瞬で地に伏した。
「よし…」
みなみは小さなガッツポーズを取る。
そして周囲に敵がいないかを確認したあとにゆたかの元へ帰る。
「…ゆたか、待たせてごめん」
「あ、ううん、ありがとうみなみちゃん」
ゆたかは立ち上がってお尻についた汚れをポンポンとはたく。
二人は樹の下までゆっくりと歩いていき、少しだけ休憩をする。
そういえばまだちょっとだけ水があったかな…。
みなみは道具からペットボトルを取りだして見る。
中にはあと一人分しか残っていなかった。
「はい、ゆたか」
みなみは持っていた水をゆたかに渡す。
「み、みなみちゃんが飲まなきゃダメだよ」
「私はいいから」
「わ、私喉渇いてないから大丈夫だよ」
「……じゃあこれはゆたかが必要な時までとっておくね」
みなみは自分の喉には通さずにペットボトルを戻す。みなみはあくまでゆたかのためにと優先させていた。
鳥の鳴き声が安らぎを奏でてくれる…。

ゆったりとした時間。

これがゲームの世界だなんて改めて凄い……。

ゆたかは樹にもたれて遠くを見る。

綺麗な景色……。

だがそのなかに見慣れた人の姿があった。

「ねえみなみちゃん、あれってひよりじゃない?」
「え?」
みなみは眼を細める。
確かにひよりだ。
でも何をしているんだろう…?
ひよりはうろちょろと何かを探すようにしていた。
ひょっとして眼鏡だろうか。
みなみはゆたかを連れてひよりに声をかける。
「ひより、どうかしたの?」
ひよりが振り返る。
だが、いつもの赤い瞳は青黒く変化していた。
さらにひよりはみなみとゆたかが視界に入った刹那、咄嗟にみなみに襲いかかる。
「うがぁぁぁっ!!」
「あ、危ないみなみちゃん!」
「うっ…!」
ひよりの職業武器である
鉛筆がみなみの右腕を貫通させる。
みなみはひよりの腹を蹴り飛ばし距離を一度とって弓を構える。
「な、なにするの!?」
ゆたかは必死に言葉を出すが完全に聞こえてはいなかった。
これはもう知っているひよりではなかった……。



「まだ着かないのか〜…」
こなたはスタートラインからだいぶ歩いてきたが
ゴールは果てしなく遠い…。
しかしおかしいな…、
ちゃんと西に向かってるのに全然進んでる気がしない……。
「ほんとにこっちって西なのかなー?」
でも“西からのぼったお日様が東に沈む”って歌があるから合ってるんだと思うんだけど……。
「………」
よし、そのまま行こう。
こなたは歌を信じて西に向かう。
本当は東に向かっているなんて欠片にも思っていなかった。








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