第7話 緑色を降らす者
「断る」の選択肢すら表れなかった昼休みのせいで、五時間目が終わり休み時間、俺はブルーな気持ちに突入していた。
「どうしたの?桃原君」
泉さんがニヤニヤしながら様子を見てくる。
…絶対わざと聞いてるな。それは確信に近かった。
「どうしたのじゃないよ。また悩みの種を埋めて…」
俺は疲れたように言うと、泉さんは
「いいじゃんべつに☆
キャラ不足で困ってたしねー。妹に無口キャラ、色鮮やかですな〜。桃原君が羨ましい!」
そう言って泉さんは
自分の席に撤収。
ーー見てる側は楽しいかも知れないけど、こっちは半端なくハラハラする。
なぜなら、前にも言ったように女子高生とお泊りしているのが先生達にバレたら、最悪退学になるか、街から追い出されるか…。
ホント勘弁してくれよ…。六時間目、現実を考えたくないため深い眠りについた。
「ねえ聞いた?桃原ってやつがここの学校の女子を家に連れ込んだんだって」
……えっ?
「マジー!?こりゃ退学じゃね?」
「まあしょうがないんじゃね?あいつが全部悪いんだし、自業自得だよ」
……おい、何だよこの声。
「早いとこ先生に伝えようぜー」
「そうだな。放送部にも全員に連絡するよう言っとこうぜ」
……ちょっと誰か止めろよ!
「全ては気付かなかった私の責任です」
「校長、まだ手はあります。あの者を退学にし、街から追放すれば大丈夫です」……嘘だろっ!?
「ホント私達も無駄な被害受けたねー」
「こなちゃんが一番一緒に長くいたからねぇ」
……泉さん!?つかささん!?
「あんな奴もう二度と思い出したくないわね。」
……かがみさん!?
「あの人がいたせいで気分悪くなっちゃった」
「…大丈夫?ゆたか。
…けど元凶はもういないから安心して」
……小早川さん!?岩崎さん!?
「桃原がいなくなった記念に全員で乾杯しようぜ!」
……お前誰だっけ?…確か白石だったっけ?
「ほなそうしよかー!」
「「「「「「おお〜!」」」」」」
……黒井先生、みんな…!待ってよ!ねえみんな!!
待っーー………。
ガバッ!
勢いよく顔を上げる。
そこにはさっきとは違う光景、授業中だった。
手を見るとかなり汗をかいていた。
額にも溜まり、体中熱く感じる。
…夢、か。我ながらベタな夢を見てしまった。
時間を見ると授業はもうすぐ終わりに近づいていた。あんまり寝てないのにこの汗、異常だな…。
とりあえず汗を拭きノートを開こうとすると、視界の端につかささんが映った。……よかった。いつも通りノートに可愛らしい犬を書いて黒井先生に怒られる姿。
そして仲間がやられた様を見て泉さんがゲームを隠す。
なんかホッとした。
みんなが消えていく不安の感覚が少しずつ和らいでいく……。
放課後、泉さんは荷物を取りに行く小早川さん達についていき、帰りはかがみさんとつかささんと一緒に帰った。
いろいろと話し、ゆっくり帰ったため遅めに家に着く。
「あっ、そういえば食材が六人分なかったわね」
かがみさんが晩御飯の量を思い出す。
「じゃあ私買ってくるよぉ」
つかささんが買い出しに行こうとする。
「俺も行くよ」
「え、でも……」
「いいからいいから、荷物持ちが必要だろ?」
「……うん、じゃあお願い」
「かがみさん、留守番頼むね」
「わかったわ。こなた達にも伝えておくから。
つかさ、迷惑かけないでよね」
「わかってるよぉ」
俺はかがみさんに家を任せ、つかささんと近くのスーパーに出掛けた。
「……とは言ったものの何を作るかによって材料は変わるよな…」
俺達はスーパーに並ぶ肉類の前で気付いた。
「そだね…」
二人して沈黙……。
しばらくして、つかささんは
「前はお姉ちゃんが作ったから今度は私が作るよ〜」と言い出す。
別に俺はいいんだけどなぁ…。
「つかささんって料理得意なの?」
さすがに『できるの?』とは聞けなかった。
「そんな期待するほどじゃないよぉ。だってたまにお弁当とか作るくらいだも〜ん」
ちょっと顔を赤らめながら笑みをこぼす。
まあお弁当を作れるなら安心だな。
俺達はスーパーの中を回っていく。
「肉っじゃが♪肉っじゃが〜♪」
つかささんは肉やらじゃがいもやらをかごに入れていく。
これはまさか…。
「つかささん、もしかして肉じゃが作るつもりなの?」
「正解〜!よくわかったねぇ!」
…いや、あんだけ呟いてたら誰でもわかっちゃうよ、とは言わないでおこう。
でも肉じゃがとは久しぶりだな。両親が海外に出てからずっと食べてなかったからなぁ…。
少し辺りを回ってからレジにいく。
会計を済ませるため
つかささんがかがみさんから預かったお金を出そうとする。
なんか平和だなぁ〜…と
和んでいたその時!!
ここで一般のドジッ娘を超越するつかささんのドジッぷりが爆裂する。
「……あれっ?お金が………出な……い。ちょっ……何かに引っ掛かって…あっ、すいません、もうすぐでますから!……んしょ、ん……やっとお札でた。次は五十六円………あれー?五十円がないよぉ……!十円玉……は………四枚しかない〜!! 五円玉は………お姉ちゃんと全部キーホルダーにして家に置いてたんだった〜!…なら一円玉一円玉………よいしょ………あっ、落ちた〜!!も〜……あぅ!?い、痛いぃ……。頭打ったぁ…。あれ?さっきまであった十円玉がないよぉ〜!こうなったらもう一枚千円札を………はいっ。……あっ、お釣りどうも……おっとっと……あっすみませんすみません!靴を踏んじゃってすみません!
……ふぅ、さっさと袋にっと………よいしょって……あーーーーーっ!袋に穴がぁ………」
……並じゃ真似出来ないイベントだな…。
俺は華麗なダンスについつい見とれて何もできなかった。
騒ぎが過ぎ去り荷物を持ち、二人で家まで帰る。だが入る前に平生とは違うなにかを感じた。
ゆっくりドアを開きそこに待っていたのは……。
「お帰りなさ〜い」
「……どうも」
小早川さんと岩崎さん。
もう来ていたのか。
俺はさっきの違和感に気がついた。
桜色と緑色が家に塗られていたことに……………
つかささんとアシスタントをするかがみさんが料理を始める頃、俺はリビングで泉さんと格ゲーをすることに。
ソフトは結構前に買ったPS2のロボットアクション。
「へー、岩崎さんって高良さんの家の近くなんだ……くのっ!」
「…はい」
泉さんの横で見ている岩崎さんにゲームをしながら、ちょくちょく質問をした。
「そんなことより桃原君弱いね〜♪ホレホレ、かかってきなさい」
…いわれなくてもっ!
勢いよく突撃しブンッとサーベルを振り下ろす。だがその一閃は空を斬り、敵機は回り込みこっちがズタズタにされる。
「あーっ!!」
こっちの機体がやられ、爆発する。
……おのれ。だがまだだ!
このゲームは機体がやられたら負けでなく、
千ポイントチームにあり、機体が壊れたらポイントが減るだけでまた復活する。
空から舞い降りた機体を駆り、
再度あの八つの翼を優雅に広げる機体に向かっていく。
『それでも、守りたい世界があるんだー!!』
……ま、まさか!
泉さんの使うキャラクターが台詞を言った後、自由の名を持つ機体が蒼く輝く。
……SEEDファクター解除しやがった!!
ただでさえ勝てないのに、さらにパワーアップをされたら勝てる確率は零に等しい。
ここは俺の仲間に!
『うわぁぁぁぁっ!』
仲間瞬殺…。
蒼白い機体がこっちに来る!
「くそ〜っ!こうなりゃヤケクソだー!!」
意を決して迎え撃つその時!!
ピカーーーンッ!
〜〜〜〜っ!きたーーっ!!
「なぬっ!?」
こっちもSEEDファクターを解除し、泉さんが僅かに怯む。
『あんたなんかにー!!』
俺が使うキャラが台詞を決め、運命の名を持つ機体で一気に攻め掛かる!
勝った!
そう思った瞬間!
『止めるんだ、シン!!』
横から正義の名を持つ機体が俺を切り刻む。
「しまった!」
急いで泉さんを討とうとしたが手遅れ。
攻撃は回避されビームでドカーンッ……。
結果、完敗だった。
泉さんを倒すどころか一発しかダメージを与えられなかった。
「まだまだだね〜♪」
見下す泉さん。
……むかつく!
「もう一回!最後の勝負だ!」
「いいよ。あっ、みなみちゃんやってみない?」
代行として岩崎さんを繰り出そうとする。
「わ、私は……」
引き下がる岩崎さんに泉さんはいいからいいからと、コントローラーを渡す。
「桃原君もみなみちゃんでいいよね?」
「俺としては大歓迎だよ」だが、この台詞が大きな傷に繋がる……。
岩崎さんにやり方を教えた後、泉さんが岩崎さんの耳元でなにかをアドバイスをする。
そして二分後………
「初心者に完敗……?」
何故だ……。
目の前の現実に平伏す俺。
すると泉さんが
こっちを見ながらニヤリと微笑む。
一瞬寒気立ち、やはりゲームの神には勝てないと悟った……。
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