第62話 ファンタジックワールド
「やっと来たか」
「おはよ、椿っちー」
ただいま午前9時、昨日のメールで呼び出され俺は家に泊まっているメンバーだけでなくパティとひより、あやのさん、そして、
「どうもはじめまして。泉こなたの父のそうじろうです。今日はお誘いいただいてありがとうございます」
意味不明なことにそうじろうさんが来ていた…。
「あ、あなたがあの伝説の少女Aのお父様ですか!?
俺、いや自分はアニメ店長をやっております兄沢命斗と申します!
それにしてもあれほどすばらしい素質を持った娘なんて羨ましいかぎりだ!」
羨ましがるな!
普通に場に溶け込むな!
素質ってなんだんだ!
「ふっふっふっ、
そりゃ自分の好みの娘に育ってくれましたんで最高ですよー。
抱き心地も死んだかなたに似てきてドキドキしちゃいます♪」
ちょいまて!
なにさりげなく爆弾発言してんだよ!
いったい娘をどんな目で見ているんだ!
死んだお母さんが見たら絶対叱られるんじゃないのか!?
心の中でツッコミをいれていく時に由佳が話しかける。
「ねー椿っち、あちらにいるみんなって全員椿っちの友達?」
「……ん? ああそうだけど、そういやちゃんと紹介してなかったな」
こいつが初めてあいつらと会ったのは確かバイトの時だ。
「まあね、……けど椿っちって意外とモテてる?」
「違う、友達って言っただろ」
「ふーん、友達ね〜」
由佳は目を細める。
なんかわからんが疑われてる気分だ。
由佳は俺のとこからみんなのとこに行って自己紹介を始めた。
あいつはあいつで元気いいし仲良くやるだろ。俺はとりあえず店長にこれからなにをするのか聞くため反対側へ向かおうとする。
が、なにか違和感が俺の背中をつつく。
いや別にあいつが自己紹介がちゃんとできるかとかそんな過保護な理由じゃなくて、なんというかともかく気になる。
というわけであいつらの話をここで聞こえていないと装いつつも耳をすまして盗み聞き。
「へー、由佳ちゃんって言うんだ。私はかがみ、よろしくね。 んで、あの背が低い青髪がこなた」
「あ、青髪なんだ。
見た目に反してけっこう不良なんだねー」
体格は圧倒的に有利なので由佳は異色の髪をしているらしいこなたにはあまりビビってない様子。
「不良…」
こなたはなにやら落ち込んでいる。
不良ってのが相当痛かったらしい。
オタクと呼ばれた方が俺的に嫌と思うんだが…。
「それで大きいリボンをつけてるのが私の妹のつかさ」
「へぇ〜、じゃあつかさっちでいいかな。
あと普通にリボンをつけて風紀を無視してるその度胸は気に入ったよ♪」
「あ、あはは……」
さすがにつかさも苦笑い。
「あっちのこなたより少し小さめの背をしたのがゆたかちゃんでその隣の背が高いのがみなみちゃん」
「すごく正反対だね。小さい子は可愛らしいけどもう一人はクールな感じがする。でもなんだかとても似合ってる♪」
まったく俺と同意見だな。
俺も食堂で初めてあの二人にあったときはそう思ったし。
「それであれがみさおでこっちがあやの」
「これまた正反対な二人だね。一人は幸が薄そうですけどもう一人は彼氏がいて幸せな雰囲気を感じるよ♪」
「あ、あやのー!
由佳が柊より酷いことをー!」
「まぁまぁみさちゃん、悪気はないんだから」
真実だけどな。
「あの金髪が外国人留学生のパティ」
「が、外国人なんだ。えと、ハローワタシハ、ハギノユカデス。ヨロシクネ」
「私日本語喋れマス」
「えっ?あ、そうなんだ。間違えて英語で喋っちゃったよー」
英語でってそれは全部日本語じゃねえか。
由佳は中学の時から英語が苦手だったからな〜…。
「眼鏡をかけたのがひより」
「一般人というかなんか地味な人だね」
「地味…」
ありゃりゃ…。
こなたに続いてひよりまで落ち込んじゃったよ。
由佳はストレートに言いすぎなんだよなー。
……しかしなんだか由佳が入ったせいで一嵐くる気がするのはなんでだろ……。
「おーい、車の用意ができたから乗ってくれ」
店長が全員に声をかける。
さすがに一台に十二人は乗れないので、
店員の一人が違う車を用意していた。
俺達は六人ずつに分かれて一時間ほど車を走らせた。
「よーし、着いたぞ」
車が止まりドアを開けて次々と地面に足をつけていく。目的地、それはまだ聞いていなかったので俺は今、目の前のありさまに絶句した。
「よく来たな、桃原」
「なっ!」
なんで梨原が眼鏡してスーツ姿でそこにいるんだよっ!?
「ふっ、なんで梨原がかけもしない眼鏡を装着してスーツ姿でそこにいるんだよって思っているだろ?」
こいつ俺の心が読めるようになってやがる……。
「まあこの普段制服姿の僕がスーツを着ているのにはさすがに桃原も驚いただろうな」
すまん、前言撤回だ。
こいつ全然読めてねえよ。
俺が気になってんのはスーツじゃなくてここにいる理由だよ。
「ああ、桃原が気になってるのはここにいる理由か。それならそうと早く言え」
…もうこいつどっかの彗星にブッ飛ばしついいか?
「心が読めるのは我が社が開発したこの最新型眼鏡、“ジャスティス”のおかげさ。
ま、しょうがないからこの眼鏡は外しておこう」
ダッセー名前だな……。
しかも心を読める眼鏡ってプライバシーの侵害じゃねえか。
最低な正義の名を持った眼鏡を造ってる暇があったら地球をもう一個造ってろよ…。
「さて、今日は日本トップの我が梨原グループ最新開発された実験台になってくれるということだったな」
「実験台?なにそれ」
こなたは梨原に質問する。
「ん? もしかして聞いてなかった?」
「俺達は無理矢理連れてこられただけだからな」
俺はどういう経緯でここに来たのか梨原に説明する。
「まぁ、とにかく来てもらったからには実験台になってもらうよ。近未来リアルゲーム、“ジャスティス”をね」
「さっきの眼鏡と名前が一緒じゃねえか」
「えっ?………あ、たしかに…。
な、なら“近い未来人気が出るリアルなゲーム”って名前で」
ならってなんだよ。
しかも名前がまんまだろうが。
それに長すぎだ。
センス無さすぎだし絶対こいつ適当に言ってるだろ…。
「というわけだからついてきたまえ」
梨原はバカでかいビルの奥に案内する。
「えへへ、なんか私ドキドキしちゃってたり♪」
由佳が脳天気に心を踊らしている。
「俺は不安でしょうがねえよ……」
“実験台”
この単語が妙に気になっていた。
実験台なら俺達の他にも山程いるだろうに。それにこのビルの異様な雰囲気、多方面からの視線、それらがさらに不安を膨らました。
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