第5話 オーバー
「桃原君、できたわよー」
お笑いテレビを見ているとかがみさんは夕食ができたことを伝えにくる。
テーブルには四人分のカレーが置いてあった。
「今日はカレーか」
「うん、お姉ちゃんが作ったんだけど桃原君カレー大丈夫?」
「ああ、カレーは好きだよ」
「よかったぁ。 お姉ちゃん張り切ってたもんねー」
「ちょっつかさ! 余計なこと言わない!」
「素直じゃないかがみ萌え〜♪」
「う、うるさい! い、いいから早く食べるわよ!」
かがみさんはさっと席に着く。
俺たちも笑いながらそれぞれの場所に座った。
「それじゃいただきまーす♪」
みんなで手を合わせて号令をかける。
まずは一口サイズのジャガイモからパクッといった。
「ど、どう?」
「うん、美味いよ。 さすがかがみさんだね」
「べ、別に私一人で作ったわけじゃないわよ。 つかさやこなたがいろいろアドバイスくれたから…」
「………」
かがみさんってツンデレの鏡だな…。
でもそれを言ったら怒られそうだからあえて黙っておこう。
それからパクパクと食べ進めてあっという間にみんな完食した。
お腹いっぱいになってちょっと休憩しているとこなたが、
「お風呂入ろ〜」
と、誰に言ってるか分からないことを言い出す。
ま、俺じゃないことはたしかだが。
「あ、桃原君、先入る?」
「いや、俺は後でいいや。 だから先に入っちゃっていいよ」
するとかがみさんは反論するかのように別の提案を出す。
「桃原君はできれば最初に入ってほしいな」
「え? なんで?」
俺は疑問をかがみさんに聞く。
「だ、だって私たちが入ったお風呂に桃原君が入るのって恥ずかしいんだもん…」
「………」
そ、そんな顔を赤くされるとこっちまで赤くなっちまうよ…。
「じ、じゃあそういうことならお言葉に甘えて」
俺は着替えを持って風呂場に向かう。
しかし後ろから忠告が。
「桃原君、風呂からあがるとき絶対汚れはとってよね」
「ハイハイ…」
なんか女の子ってよく分かんないな…。
午後十一時、風呂を終えた俺たちは俺の部屋で大人気のモンスターを狩るPSPゲームをしていた。
どこから持ってきたのか、泉さんは三つ持っていて、俺のを合わせて四つ、数はちょうどよかった。
かがみさんとつかささんは初心者のため、まずは火竜と雌火竜を狩りに行った──。
「ぐはっ! この火竜バカでかいからやりづらい! 泉さんシビレ罠を!」
「いやー、実はここまで苦戦するとは思わなくて持ってきてないんだよね」
「ギャオオオオッ!」
「うわぁぁぁぁんっ!」
「ああっ! いつの間にかつかさが雌火竜に追われてる!」
「かがみさん閃光玉を使って!」
「わかったわ! くらいなさい! ………って間違えて捕獲玉投げちゃったΣ」
「うおっ! こっちは突撃まともにくらっちまって死んじしまった!」
「かがみ! つかさを助けてて! 桃原君が復活するまで私は火竜を相手にしてるから!」
「つかさ! こっちに逃げて!」
「お姉ちゃーんっ!」
「あ、二人ともそっちはダメ!」
「ギャオオッ!!」
「あ、危ない!! 二人とも囲まれた!!」
「「きゃああああっ!!」」
「あー、負けちゃったねー」
画面にはクエスト失敗と表示されていた。
だがこなたはあまり悔しくなさそうだった。
まあ俺も楽しめたから悔しくはなかった。
「こなちゃん、ごめん…。私やられちゃった」
「別にいいよー。 けっこう面白かったしね」
「しかし泉さん強いな。 装備見てビックリしたよ」
普通じゃ手に入りにくい武器や防具が万全に揃っており金やクエストにいった数も異常だった。
それは壊れているんじゃないかと思うくらいだ。
まぁゲーム好きらしいから本人はそれが普通だと思ってるらしいが…。
「ふあぁ…私そろそろ眠くなってきた…」
つかさが細い目をこする。
「そうね、もう遅いから寝ましょ」
………ふむ。 こういうのを見るとみんながどんな生活をしてるかわかりやすいな。
泉さんはやっぱり深夜に慣れてるみたいだから平気でいるけど、かがみさんやつかささんは少し目が重そうだ。
いつも規則正しくしてるってことだ。
俺はというと眠いはずがない。
深夜アニメは生で見てるからな。
「それじゃ部屋に行こっかな」
泉さんはスクッと立ち上がる。
「じゃあおやすみ桃原君ー♪」
「おやすみなさぁい…」
「おやすみ」
「三人ともおやすみー」
三人は遅い足取りで部屋から退出する。
今日はなんか疲れたなぁ…。
早速深夜アニメ鑑賞のために一階へ行くか。
俺の部屋にもテレビはあるけど、やっぱり見るなら大画面の方がいい。
「………あ」
俺は静まりかえった部屋でふと思った。
「かがみさんたちがいたら堂々と深夜アニメ見れないじゃん…」
「起床ー、朝だぞー」
かがみさんの声が家中に散乱する。
だがそれには応じず俺は布団の中で幸せの一時を味わう。
「桃原君もおきろー」
「…う……ん……、あと五分だけぇ…」
「つかさみたいなこと言わない。 ほらこなたが作った朝食が冷めちゃうじゃない」
かがみさんはゆさゆさと俺の体を動かす。
それを起きる気分をなくしていることに気づいてくれない…。
「わかった…起きるからそれは止めてくれ…」
布団から離れてパジャマから制服に着替える。
かがみさんは先に下に行ったようだ。
待たせるのも悪いので早めに事を終わらせて部屋のドアを開ける。
すると階段にはなぜかつかさが眠っていた。
「すー…すー…」
小さな寝息が僅かだが聞こえてくる。
いったいどうやったらこんなとこで寝れんだよ…。
「つかささん、起きろ」
「…あと五分だけー…、ホントにー…」
「………」
ダメだ、完全に寝ぼけてる。
これはなんとかしないとな…。
「つかささん、こんなとこで寝たら危な──」
ガシッ。
「温かーい…」
がっしりと俺から離れないように抱きついてきた。
「なっ!?」
じたばたと抵抗するが更につかさの力が強くなる。
「むにゃむにゃ……、お日様逃げないで……」
どんな物体と間違えてんだよ!
つかこんな状況誰かに見られたら命が危ない!
「桃原君、早くし──」
かがみさんが階段を覗いて俺たちを凝視した。
「……あ、あの…かがみさん…? こ、これは違っ──」
ビタンビターンッ!!
問答無用に二発。
腫れた顔は一生トラウマになりそうなくらい痛かった……。
「ご、ごめんね桃原君、私てっきり桃原君が変態になったかと…」
へ、変態っ!?
「桃原君も災難だったねー。ぷぷっ♪」
「私は寝てたからよく分かんなかったよ〜」
「あとでじっくり教えてあげてね桃原君♪」
「とりあえずこの話題止めようよ…」
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。