ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
第4話 策士




ピーンポーン。
家のインターホンがなって俺は玄関を開ける。
「桃原くーん☆」
「きちまったか…」
着替えなどを取りに一度家に帰っていった泉さんたちが俺の家の前に集まっていた。
「おっす」
「こんにちはー」
かがみさんとつかさは大きい荷物を持って挨拶をする。
「みんな制服のままで来たんだな」
「まあ着替えるのしんどいからねー。 とりあえず中に入りたいな」
泉さんは急かすように言う。
「ああそうだな」
ドアを開けっ放しの状態にして三人を一先ずリビングへ案内する。
「へー、やっぱ広いわねー」
かがみさんはリビングを見渡して確認する。
「ねえねえ、桃原君! 君の部屋ってどこ!」
泉さんは荷物を置いたらすぐに俺の部屋の入室許可をもらおうとする。
「教えない」
「「えーっ!?」」
泉さんとつかさの声が綺麗にハモった。
「言ったら漁るだろ。だから──」
「あのねー、実は桃原君ってかなりマニアックなオタ──」
「二階上がって右に行ったら俺の部屋です!!」
俺は即答で答える

それは泉さんの声を打ち消すために出されたものだった。
「よーし、じゃあつかさ一緒に行こー」
「あ、うん」
泉さんとつかさははしゃいで階段を上がっていく。
俺の部屋のドアが開くと同時になぜか二人の歓喜の声がした。
そして足音は小さくなっていく。
「はぁ…」
「どうかした?」
落胆した俺を覗いたかがみさんは心配の意思を示した。
「いや、べつに何も…」
「ふーん、そうなんだ。 でも私から見たらなんか弱みでも握られてるように見えるんだけど」
「う゛っ…」
す、鋭い…。
さすがかがみさんだ…。
「ま、私には関係ないことだから聞かないであげる」
かがみさんは話を止めてリビングの全体を見回っていく。
けっこう気が利く人なんだな…。
けどどうしよ…。
泉さんのせいで俺の生活リズムが…。
「……あれ?」
ってか何でこんな小さい奴にビクビクしてんだ俺は…?
よく考えたら別に知られても問題ないじゃないか。
かがみさんやつかさだっていい人だからきっとわかってくれるにちがいないかも。
「このテレビ大きくていいなー」
かがみさんはプラズマテレビをうらやましいそうに見ている
邪魔な泉さんは上にいるし、今しかチャンスはない。 思いきって言ってみよう。
「あの、かがみさ──」
「そういえばさ」
かがみさんは俺の言葉に重ねて言う。
俺はとりあえずレディーファーストってことでかがみさんの話を優先させる。
「なに?」
「つかさはないとしてこなたなんだけど、桃原君の部屋いろいろ漁りまくってんじゃない?」
「あー…まぁいいや」
泉さんに今さらなに見られてもしょうがないしな…。
でもできれば引き出しが二重板になってるのには気付いてほしくない…。
「もしかして見られて困るような物ないの? 男の子なのに?」
「いや、一応あるにはあるけど泉さんに発掘されてもいいかなーなんて…」
俺は適当に諦めながら言う。
「まぁ恥ずかしいことじゃないしね。 男子は殆んど持ってるらしいし、あいつも変なゲームとか持ってるしね」
お、なんかいい感じに話が進んでないかっ!?
今ならオタク系とか萌え系にもかなり手を出してるとか言っても大丈夫だよなっ!?
「でもこなたみたいなオタク系は私ちょっとイタイわよねー」
ぐふうっ!!
なにか強烈なパンチが腹にきたような感覚が突然くる。
だ、だめだ…。
かがみさんが知ったら確実に引かれる…。
時期がくるまでかがみさんには知らせるわけにはいかない……。






「しかし……、ずいぶん長いこと俺の部屋にいるな…」
かれこれ一時間…。
二階からの物音は全くなく、不自然なくらいに静まり返っていた。
「それもそうね」
「ちょっと様子見てくるよ」
かがみさんを残して俺はリビングを出た。
ひんやりした廊下を歩いていき階段をゆっくり上がる。
ドアの前まで辿り着いたがいまだに無音だった。
「……?」

俺は不思議に感じながらもドアを開いた。
すると二人はすやすやと幸せそうな顔で寝ていた。
「はぁ…。 何で人ん家来て寝れるんだよ……。 しかも俺のベッドで…」
図太い神経に驚かされた俺は呆れながらも泉さんとつかささんの体を揺する。
「おい二人とも、なにやっ──」
言葉を失った。
なぜなら泉さんが俺の揺すりに反応して寝返りをしたら、履いてるスカートがヒラリとなって少しだけ泉さんの……ってこれ以上言えないよ!
心が興奮して熱くなる。
ヤ、ヤバイ…、鼻血出るかも…。
いや落ち着け自分。
落ち着けば大丈夫だ……。
あ、そういや泉さんって白か………じゃなくて!
「ふぅー…」
大きな深呼吸を天井に向けて平常心を取り戻す。
そして俺はまたぐっすり寝ている二人を睨む。
「よし、いざ勝負」
何と勝負かは謎めいてるが、ぬっと手を伸ばして再び肩に触れようとする。
だが今度はつかさが動いた。
「う……んん…」

──プニュッ──

「〜〜〜〜っ!?」
バッと手を離す。
その反動で俺はドタドタと大きな音を立てながら後ろに下がった。
む、胸だよな…!?
今の胸だよな!?
小さかったけど完全に胸だよな!?
騒音に気づいた泉さんとつかささんがようやく目を覚ます。
「ふぁ〜…、ありゃ…私ら眠ってたんだね…」
「ホントだ〜……ってあれ? 桃原君いたんだ」
つかさはやはり知らないみたいだ。
「あ、ああ…、ついさっきな」
「なんか慌ててる?」
「い、いや、そそそれより部屋割りとか決めたいから下に来てくれ」
「動揺バレバレ。 まぁいいや」
俺の後に続いて泉さんとつかささんが短い廊下を歩く。その時泉さんが小声で話しかけてきた。
「見事だったよ、二重板♪」
こ、こいつ探し当ててたのか…!
「そしてつかさの胸〜♪」
「ぶーっ!?」
そ、そんなとこまで見てたのか!?
じゃあこいつスカートもわざと…!
「まだまだ青いね♪」
「………」
今、実感した。
一番恐ろしいのはこいつだと。








一騒ぎ終えたとこで俺たちは部屋割りを決める。
「じゃあつかささんと泉さんは俺の部屋の隣でいい?」
「私はいいよー」
「それじゃあお姉ちゃんは?」
つかさは一人残っているかがみさんの行方を聞く。
「はっ! まさか桃原君、かがみんと二人で…!」
「そんなわけないじゃない!」
「なんだ、違うのか」
俺は面白半分で言ってみる。
「桃原君、冗談は過ぎないようにね」
かがみさんが凄い形相でこっちを見る。
な、なんか軽い発言は殺人事件をおこしそうだな…。
たぶん俺が被害者となるだろう…。
「じ、冗談はさておきかがみさんは二階のもうひとつの部屋にしてもらうよ。
さすがに三人はキツいと思うし」
「よし、それじゃまず自分達の部屋に荷物置いてきましょ。 それに制服のままじゃアレだし着替えもしないと」
「じゃあ俺はお茶でも淹れとくよ」
かがみさん達は楽しそうに二階に上がる。
そしてリビングで一人になったのを利用してため息を出す。
いろいろと苦労する分、今のうちにため息しとかないとな…。
しかし、かがみさんと泉さんってどっかで会ったような気が……。
思い過ごしか…?






「お待たせー」
三人が一斉に着替えを終える。
かがみさんもつかささんも一般的な動きやすい服だ。
だが一人だけなんか違うのが気になる…。
「なぜ泉さんだけ体操服なんだ…?」
「えっ?だって桃原君、体操服姿に萌えでしょ?」
「何を根拠にそんな…」
「ゲーム貸した時に体操服の女の子選んだじゃん♪」
「………」
しししまった…!
あのときスイッチいれたまま渡したんだった…!
泉さんはからかうようにニヤニヤしながら顔を覗いてくる。
「ねえねえ、今の私萌える〜?」
キュンッ……。
いやいやキュンッてなんだよ! 何であんなちびっこにときめいてんだ俺は!
「と、とにかくまともな服に着替えろ!」
俺は赤くなった頬を隠すために怒鳴る。
「もーしょうがないな〜♪」
泉さんは勝ったような気分でまた二階に上がった。
あいつといるとほんと疲れる…。
一瞬あんな姿にときめいてしまった俺も情けないな…。
それに無色だったこの家がいつの間にか蒼、空、紫の色が鮮やかに彩られた気がする………。








+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。