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第2話 空色を謳う者




「はあ…」
昼休み開始直後、似合わないため息を教室の端で出す。
だが気持ちは分かるはずだ。
あの小悪魔的な青髪のせいで今日ほどダルい気分になったことはない。
俺はだらんと机にもたれる。
するとそれを心配に思ったのか、さっきの泉さんとは違う優しい声が俺に向けられた。
「あ、あの、大丈夫ですか?」
「ん?」
桜色の柔らかな髪から甘い匂いが目の前にくる。
あ、この人って確かこのクラスの委員長やってる…。
「あー…」
「どうかしたんですか?」
名前忘れたなんて言うのは失礼だよな…。
なんだったけなー。
黒井先生が号令をこの人に頼むとき聞いたことあるんだけど思い出せない…。
俺は咄嗟に出てくる名前を言った。
「なんでもないよ、長野さん」
「高良です」
「………」
「………」
や、やっちまったー!
しかも惜しいなんてレベルじゃない…!
一文字も合っていなかった…!
「ごめんなさい」
とりあえず頭を下げる。
「あ、別に怒ってませんよ? まだ一ヶ月しか経ってませんし名前を忘れるくらいなら」
「そ、そっか…」
助かった…。
もし泉さんならただじゃ済まないからな…。
俺は落ち着いて椅子に座り直す。
「えーっと…、それでなんだったっけ?」
「大したことじゃないんですがなにやら大きなため息をしていらしたので悩み事でもあるのかと思いまして…」
へー…、この人よく見てるなー。
さすがは委員長といったところか。
俺は暢気に感心する。
しかしここで泉さんのことを発言するのはよろしくないな。
ちょうどこの状況にピッタリのネタもあるしそれを使うか。
「いや、悩みじゃないけど昼飯どうしようかなぁと思って」
「忘れたんですか?」
「ああ。今朝ちょっと忙しくて」
よしよし、これならなんとか誤魔化せるな。
しかしそこに泉さんが自分の席から声を出して割って入る。
「あれ、桃原君弁当忘れたならこっちくるー?(別訳:今のうちにフラグを立てて置きたいからこっちくる?)」
泉さんの誘いがこっちに届く。
泉さんの横には柊つかささんもいた。
そこで疑問が一つ。
なんで俺は柊つかささんの名前は覚えているんだろ?
まあ偶然だと思うけど…。
「いや遠慮しとく(このままあいつの近くにいたら危ないしな)」
だいたいなんであいつが俺に絡んでくるんだ。
俺は平和に過ごしたいっつうのに。
「あのねーみんなー。実は桃原君ってギャ──」
「あー!!わかったわかった!一緒に食うから!!」






「もし悩みがあるなら私に言ってください。力になれると思いますので」
そう言って長野さん…じゃなかった、高良さんは用事のために教室を出ていった。
うーん…、その力が今必要なんだけどなー。
「はい、桃原君の弁当☆」
「………」
なんで俺の分があるんだろう…。
ま、いっか。
ここまできたら食うしかないし。
俺は一口サイズの唐揚げをパクっといただく。
「…ん?」
「どうしたの?」
「いや…、意外にも美味しかったから…」
外はかりかり中はジューシー。そして文句のつけようのない味付け。
ヤ、ヤバイ…。唐揚げ一つで惚れちまう…。
「ま、私はいつも家で料理してるからこれくらいは当然だよ」
そうか、母親がいないから泉さん自分で料理作るようになったのか。
しかしなんか似合わない…。
「でも桃原君もよかったね。今日からこの唐揚げをいっぱい食べれるんだから」
「え?こなちゃんなんで?」
「それはねー、桃原君と私が──」
「ちょっ泉さん!!!!」
俺は禁句を言おうとする泉さんの口を慌てて塞ぐ。
「もががっ!」
そして誰にも聞こえないように小声で注意した。
「言っちゃダメだろうが!下手したら退学だよ!?」
「うー、でもこの溢れる気持ちを言いたい〜!」
溢れる気持ちってガキかあんたは。
「何を言いたいって?」
後ろから知らない声がした。
俺は振り返るとつり目でツインテールの女の子が近寄ってきた。
「あ、かがみじゃん」
かがみ…?
この人の名前かがみさんっていうのか。
なんかとても綺麗な人だな…。
「あれ、こなた。 こっちの人は知り合い?」
かがみさんは俺の方を見たあと泉さんに聞く。
「この人は桃原椿君。同じクラスの友達だよ」
「あ、あなたが桃原君か。私は柊かがみ。 つかさの双子で姉よ」
「あ、どうも」
なんか俺のこと知ってる風な言い方だな…。
しかしつかささんの姉ってのは納得いくところといかないところがある。
髪の色は同じだけど妹のつかささんはほんわりしてるけど姉のかがみさんはしっかりしてる印象がある。
「あ、ちなみにかがみは私のだから手は出さないでね♪」
「はっ!?」
わ、私の!?
それってどういう意味なんだ!?
「ちょっこらこなた!誤解を招くようなことをいうな!!」
「かがみさん…そんな趣味が…」
「違うわよ! あいつが勝手に言ってるだけ!」
「へ、へー…」
けど今のを見る限りだいたいかがみさんがどんな人かはわかった。
外見は綺麗だけど中身はかなり恐いってとこだな…。
「それよりこなた、あんたに話があるの。 ここじゃ言えないから屋上に来て」
「あ、うん」
「ほら桃原君も」
「えっ? 俺も?」
な、なんでだ? 初対面なのに何を言われるんだ?
ちょっ、とりあえずカフェオレも持ってかないと。
そしてなぜかつかささんも付き添うことに。






屋上は太陽の日差しを浴びて白いコンクリートが綺麗に光っていた。
風も優しくて過ごしやすい。
だがかがみさんはそれを一発の原爆でぶち壊した。
「こなた、あんた今日から桃原君の家に泊まるんでしょ」
「ぶーーっ!!」
いきなりバレたことに俺はカフェオレを誰にもいない場所で吐いてしまう。
「げほっごほっ! か、かがみさん、いったいどこでそれを…」
「こなたのお父さんよ。さっきこなたの携帯に電話したらこなたが家に置いてるせいで代わりにお父さんが出たの。
 そしたら“柊さんもこなたを止めてくれ”って言われて事情を詳しく聞かせてもらったわ」
そ、そんなとこから…。
つうか泉さんは俺に泊まることを言う前に朝にお父さんに言ったのか…。
なんてやつだ…。
「へー、こなちゃん桃原君家に泊まるんだー。 楽しそう」
つかさが俺の気持ちを知らずに笑顔になる。
「なんならつかさもくる? 私が許可出すよ☆」
「ちょっ! 家主を無視して許可出すなよ!」
泉さんが勝手に話を進めようとするのを慌てて止める。
「えっ泊まっていいの?」
「ダメだって言っ──」
俺が最後まで言いかけた時に泉さんが俺の耳元で呟く。
「ギャルゲー♪」
「……っ!!」
こ、こいつ…!
人の弱点を盾にしやがるか…!
だがここで逆らったらクールだった俺のイメージは崩れ去りムッツリオタクという最悪な噂が学校中に広まってしまう…!
「桃原君、私も泊まっていい?」
つかさが改めて聞いてくる。
「……ぁ、ぁぁ」
俺は極細の声で返事をした。
「えっ?なんて?」
泉さんがニヤニヤしながら聞き返す。
「〜〜〜っ!! もうわかったよ! 好きなだけ泊まれよ!」








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