第19話 お約束
しばらくしてようやく笑いが治まり俺たちは動く気力ほとんどを失っていた。
「ねぇ、かがみー!一緒にお風呂入ろー」
泉さんは笑わせる側なので元気が有り余っている。
「ちょ、ちょっとまって…力入んない…」
かがみさんは床に倒れこんでいた。そしてかがみさんだけではなく俺たちも…。
「へ、へんだ。柊がちびっこなんかと入るわけないだろ」
「も、もううごけねぇ…。笑いすぎた……」
「…こなちゃんのあの顔は反則だよぉ…。刑務所に入ってもあれがあればすぐ脱獄できるよね……」
「む!失礼な! 私はまだ入らないんだけど!」
まだってことはいつか入るつもりなんだ…。
「そんなことよりかがみー、早く入ろー」
泉さんが手を引っ張るがかがみさんは全く動こうとしない。その姿はまさに親と子に見える。
「だから無理だってば…。ていうかあんた一人で入りなさいよ」
「私はかがみと入りたいのにー……、じゃあもれなく桃原君も付いてくるようセッティングするからさー」なに?その付属品みたいな扱いは。
「だからさー、入ろー」
「だから言ってるでしょ。私は…」
「…………かがみさん、一緒に入ってあげたら?泉さんはかがみさんと一緒に入りたいだけなんだしさ」
断ろうとするかがみさんに一緒に入ることを薦める。
「でも…こなたと入ったらこいつ変なことする気が…」
………?
「変なことって?」
そう聞くとかがみさんは顔を俯け赤い顔になりながらも呟く。
「胸を揉んだりとか…」
「ぶっ!!!!」
む、む、胸!?
かがみさんの胸を揉む!?
いくらオタクの泉さんでもそこまでは…。
「大丈夫だよかがみー。だから早くおいで〜」
リビングのドアで手をワキワキさせながらかがみさんを待つ。
なにかする気満々って顔だけど信じるしかないか…。
「…ほら、泉さんもああ言ってるんだしさ」
「……………うん」
やっと頷くかがみさん。
一件落着かと思いきや…
「ちょっとまてよちびっこ!」
日下部さんが平和を崩す。
「柊と入るのは私だぞー!」
日下部さんの乱入でまたもやかがみさんを求める戦いが始まるかというその時!
「アップップイ!」
泉さんが例の顔をする。
「さあ柊は返してもら………ぷくく…………ウヒャヒャヒャヒャ!ウケる!マジウケる!アハハハハハハ!!」
あっという間に日下部軍が撃沈。一発の弓が大将のツボを射ち抜いた。
三十分後、全員の風呂が済んで夕食をいただいた。
担当は泉さんとつかささんがしてくれて、味は言うまでもなく美味しかった。
そのあとに部屋割りを決めるのだがここで一騒ぎ起きた。
「絶対私が柊と一緒に寝るんだってウ゛ァ!!」
「かがみはうちのだ!」
かがみさんと誰が寝るのか二人はずっと言い争っている。
「まぁまぁ、二人とも冷静に話し合わないと…」
一応落ち着かせようとするが二人は全く無視。
痺れを切らしたかがみさんはある一つの案を出す。
「まず落ち着きなさいよ。これじゃらちがあかないわ。私がいいことを思いついたからもうそれで文句は言わないってことでこの場は終了!いい!?」
「まあ柊が言うなら…」
日下部さんはしぶしぶ了承。泉さんも頷く。
「でもかがみさん、いいことってなに?」
一番気になったところをかがみさんに聞くと
「日下部とこなたは一緒に寝なさい」
「「えー!!」」
泉さんと日下部さんが反対の意思を示す。
「じゃあお姉ちゃんはどこで寝るの?」
「私はあんたの部屋で寝るわ。こなたがいなくなったからつかさ一人になってるし」
しかしこれに泉さんたちが反論する。
「そんなの納得いくかー!」
「そうだそうだー!!」
ブーイングを続ける。
でもそんなことをしても無駄のような気がする。
なぜなら…
「うるさい!!あんたたちは黙って従う!!どうせさっきの状態じゃ進展しないでしょ!!」
…かがみさんって顔は美人なのに言うこときついんだよな…。
こうして部屋割りは泉さんと日下部さんペア、かがみさんとつかささんペア、岩崎さんと小早川さんペアとなった。当然俺はベッドを懐かしく思い出しながらソファーで就寝。
「あ、そうそう。みんなに言っておきたいことがあるんだけど」
ここで泉さんがみんなにあるルールを発表する。
「これからはみんなのことを名前で呼ばない?」
「なんで?」
唐突な泉さんに聞いてみる。
「だってさー、私たちって同じ屋根の下で暮らしてるじゃん。せっかくだから名前で呼びあって生活するほうが仲良くなったみたいでいいじゃん」
うーん…、悪くはないんだけどな〜。でもそれじゃあ俺は……。
「ちびっこそれいいな!そうしようぜそうしようぜー!」
「いやでもさぁ…」
「…私は賛成です」
……なんか小早川さんまで同意されたら反論しずらい…。
「じゃあ異論はないみたいだからさっそく桃原君!みんなを名前で呼んでみて!」
「い、今!?」
「当たり前じゃん、さあ早く!言わないと全員でいじめるからね!」
泉さんたちが全員で俺を…………
――ああ!そこは!そこはやめてくれ!
――うるさい!奴隷は喋らずに黙ってなさい!
――次はここを攻めるねぇ。
――うぐっ!つかささん…ちょ、やめ…!
――えい!えい!
――小早川さん……、道具の使い方間違ってる…!その太いのは殴るんじゃなくて入れる方……痛いっ!
――…もっといきます
ーー岩崎さん痛いって!
ーーまだまだ続けるかんな!
――あぅあっ!もう駄目だ……うくっ…う、うわぁぁぁーー!!
「ヘラヘラ…」
「ちょっと桃原君!大丈夫!?」
「へ?……あぁ、うん、大丈夫大丈夫…」
いかん!我としたことがなんという妄想を!
とりあえず泉さんの名前…名前…。
「じ、じゃあいくよ…」
「はいよー」
……………。
………。
「………こなた」
「うおっ!!びっくりしたぁ!」
泉さん…いや、こなたは胸を押さえてなんだかホッとしていた。
「…その……次は…私ですね」
小早川さんが顔をひきしめる。
「えと…えと………ゆ、ゆたか」
「あ…」
名前で呼んだ瞬間、ゆたかはその場で座り込む。
「だ、大丈夫?」
「す、すみません…男の子に名前で呼ばれたのは初めてで…」
顔を真っ赤にするゆたか。…ん?
初めてってことは俺しかゆたかって呼んでいないのか…。
なんかそう考えると心が嬉しくなった。
「…次は私」
…岩崎さんか。ちょっと気まずいけど頑張るしかない!
「………み、み、みなみ!」
「……(ポッ)」
ちょっと力強く言ったせいか、みなみは顔を背けて反対側を向く。
「最後は私だなー。さあ名前で呼んでみろ!」
「みさお」
「ぶはっ!」
みさおはその場で倒れる。
「ちょっとまてー!なんか私ん時だけドキドキというかときめきが足りないんじゃないか!?」
「いや、そう言われても…なんでだろ?なんかみんなと違って日下部さんはみさおって簡単に言えるんだよなー」
「そんなぁ……」
「ほらみさお、もう寝る時間よ」
かがみさんがみさおを上に連れて行こうとする。ん、まてよ…ここはやっぱり…。
「…ほら、かがみが名前で呼んでくれたんだから元気出して」
「へ?」
一時の間があく。
「……今、桃原君…私のこと…」
「や、やっぱりさ!さんはないほうがいいかなって思ってさ!」
笑いながら照れ隠しする。
「桃原君………ふふっ。………ありがとう」
かがみは笑顔でお礼を言う。
「べ、別にいいよそんなの!それに……」
俺は妹の方を向く。
「つかさも同じだったからね」
「え、わ、私も!?な、なんだか恥ずかしい………。じゃあ私も桃原君のこと……」
つかさは少し顔を赤らめ
両手を後ろに組んで
「ありがとう…椿君」
「…へ?」
「…さっきの…お返し☆」
「そういえば私たちも桃原君のことを名前で呼ばなきゃいけなかったわね」
「いや俺はべつに…」
「ダメよ桃原君!ルールなんだから!」
かがみさんが無理矢理押しきる。
「じゃあみんなでいくよ、せーの……」
「「「「「「☆椿君☆」」」」」」
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