第119話 犠牲者追加
猫を追っていたはずだが、かがみさんとこなたが俺の前に現れた。
しかもストライクの体操服…。
「な、なんでここに!?」
猫だけかと思っていたため焦りが出る。
「次の体育の授業が合同だから二人でグラウンドに行こうと思ったんだけど、こなたが猫を見つけたから見に来ただけよ。 そっちはなにしてんの? 体操服にも着替えなくて」
…そうか、次は体育だっけ。 一大事が起こっているので授業のことなんか全く頭に入ってなかった。
「あー…、次の体育は休もうと思って」
「え? なんで?」
やはりかがみさんは理由を聞いてくる。
「い、いやまあちょっと気分がね。 そ、それより早く行かないと二人とも授業遅れるよ」
俺は不自然気味にも猫から二人を放そうとする。
早くこいつに永森さんを戻してもらわないと…。
「それもそうね。 こなた、行くわよ」
「あ、うん」
こなたが猫を地面に降ろそうかと思い、ゆっくり手を下げる。
その時だった。
“にゃーにゃー”
「なっ!?」
い、今鳴いた!?
ずっと静かにしていた猫はこの時を狙っていたかのように二回鳴いた。
その鳴き声はどこか普通とは違う魔法みたいなものが含まれているような感じがする。
それは俺が以前永森さんを猫にしてしまった時に聞いた鳴き声と全く同じであったからだ。
「に、にゃー…?(つ、椿君…?)」
「っ!?」
ビクッと体が反射する。
今の鳴き声はどこから来た…?
こいつは何も言っていない…。
ということは…。
俺は顔を上げて二人を凝視した。
──ピコピコ──
人間にはないものが動いている。
あれはなんだろう。
そう聞かれれば迷わずに答えれると思う。
“猫耳だ”と……。
「にゃーにゃー!?(どうなってるのこれ!?)」
「にゃにゃーにゃーにゃー(私達のしゃべり方が猫になってる!?)」
一度現実逃避するため目を閉じる。
これは夢なんだ…!
夢だったらバルサミコ酢を一気飲みしてもかまわない…!
だから夢にしといてくれ!
必死に誰かに願いながらもう一度目を開いて世界を見る。
「にゃーにゃー(椿君どうなってるの!?)」
「………」
こなたが助けを求めるように見つめる。
チラッと頭を盗み見するとやはり猫耳…。
願いは脆くも崩れて灰になった……。
“さて、面白いものも見れたし帰るか”
猫が背中を向けてどこかに消えていこうとする。
俺はそれを逃さずにガシッと捕まえた。
「お前…! なんのつもりだ!」
“なんのことだ?”
俺達は二人に聞かれないように小声で会話する。
「さっきから関係ない奴等ばっか猫にしやがって…! 俺達の困ってる顔がそんなに楽しいのかよ!?」
“楽しいよ”
「…っ!?」
即答だった。
なんの迷いもない普通に放たれた言葉が怒りの感情を上げていく。
……本当は俺はこの猫になんと答えてほしかったのだろう。
仕方なくやっている、
そうしろと命令させられたから、
そんな第三者が関わるような答えでも言ってほしかったのだろうか。
けど何を言われてもたぶん怒りは収まらない。
こいつはこなた達まで巻き込んだのだから。
「お前ふざけんなよ!」
俺は猫を片手に持って右手に拳をつくる。
風を切りながら力いっぱい振り絞った右手が猫に当たろうとしたその時だった。
“にゃー”
「うおっ!?」
一鳴きしたら俺の体が微光する。
な、何が起きてんだ!?
「おい猫……ってあいつどこに行った!?」
いつの間にか手からすり抜けて猫の影はどこにもなかった。
「くそっ、逃げやがったか…!」
あいつホントに何がしたいんだよ…。
全然わかんねえ…。
それにまた悩みが増えてしまったし…。
「に、にゃーにゃー?(つ、椿君、何がどうなってるの?)」
「……俺にもわかんない…。 あの猫が何をしたいのか………ってあれ? 俺、今猫の言葉を理解できた?」
気づけばこなたの問いに反応していた。
「にゃーにゃー?(ホントに?)」
「ああ、こなたの言葉がわかる」
なぜこうなったのか、考えられる原因はただ一つ。
あいつの最後の鳴き声だ。あれはこういう効果だったのか。
「とりあえず二人とも体育は休んでこっちにきて」
「に、にゃー!?(え、ちょっと!?)」
「にゃーにゃー!?(どういうことよ椿君!?)」
「訳はあとから話すからとにかく今は一緒に来て」
二人の手を強引に引っ張って俺は永森さんのもとに戻る。
「あ、あれ?椿っちどこに行っちゃったんだろ…」
由佳は猫の鳴き声を頼りにしようと思ったが鳴き声は一つもしなかった。
適当に探すにしても広すぎてわからないし、なにより私はここの生徒ではない。
黒井先生は誤魔化せたとしてもむやみに動くのは危険だ。
なにか手掛かりになるものを見つけるため由佳は陰に隠れながら猫のいそうな場所へと赴く。
「ん?」
半ばで由佳は木々の裏で猫らしき尻尾を見つける。
「あれかな…?」
由佳はそーっと近づいてその姿を捕まえる。
しかし、それは猫ではなく………。
「にゃ?(ふぇ?)」
人だった。
しかも見たことのある女の子…。
「き、君ってたしか椿っちの近くにいた……」
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