ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
第11話 遠い過去



「ほぉ…これが桃原ん家かー。なかなかいいとこに住んでるやないか」
「はぁ…ありがとうございます。しかし先生…本当に俺達の生活が気になったからという理由だけで家にきたんですか?」
リビングのソファーで寝転ぶ先生に俺はずっと心に抱いていた疑問をぶつけた。
「あー、やっぱりそこをつくか」
「そりゃそうですよ。先生がこんなところに来てるのを誰かに知られたらまたなんて言われるか…。だからちゃんとした理由を…」
「ふぅ、心配性やな桃原も。わかった、理由教えたる」
「先生…」
ようやく本音を言ってくれるみたいで他のみんなも耳を傾ける。
「実はな……思いだしたんや」
……?
「何をですか?」
かがみさんが聞くと、黒井先生は寂しそうな顔を俯けながら話す。
「うちが高校の時も……こんなふうに友達の家によう泊まりに来たもんやで……。あの時のうちはめちゃくちゃやったからなぁ………。でも…楽しかった。みんなでゲームしたり夜中に話し合ったり………。ただそれが懐かしく思えただけや」
……そうだったんだ…。
先生にもこういうことがあったんだな。
いくら関西弁で恐いイメージがあっても、家でネトゲーばっかりやってても、心が冷えることはあるんだ。なら、俺は……。
「黒井先生、今日は夕飯一緒に食べませんか?」
「桃原…」
「そうね、泊まっちゃうのはどうかと思うけどご飯くらいならね」
「柊…」
「まぁ黒井先生みたいなお母さん役も必要だしね〜☆」
「泉……。〜〜ったくお前らはなんちゅういい奴らやねんっ!よし決めた!今日は食いまくるでー!!」
黒井先生はソファーに立ち手を上に飾す。
「じゃあ料理は私が作るねー」
「あ、じゃあ私も〜」
泉さんと小早川さんが手を挙げキッチンに向かう。





「おいこらー!酒が全然たらへんぞー!全部持ってこんかーい!!」
夕食、先生は食べるとは逆に飲みまくっていた。
そのスピードは尋常ではなく、一気に家の全ての酒を空にしてしまったのだ。
「先生…そろそろ帰ったほうが…」
「ああ!?なんやてももちゃん!もう一回言ってみぃ!!」
「いや…一名様ご案内〜…」
…ううっ。心とは裏腹の言葉が…!しかもももちゃんってなんだよ…。

そしてこの酔っ払い具合にはテーブルと昨日同様の折りたたみ式テーブルでご飯を食べている一同全員が驚嘆していた。
「ちょっと桃原君!これやばくない!?」泉さんが小声で指摘。
「それはわかってるけど止めようが…」
今の黒井先生を止めたら退学になりそうな雰囲気を纏っていた。
「ともかく今は…」
「桃原ー!!自販機でビール買ってこーい!!」
「機嫌を損なわないようにビールを買ってくるよ…」
「あー、なら私も行くよ」
「いや別に泉さんは来なくても…」
「いいからいいから☆どうせ暇だしこの状況から開放されたいしね」
そう言って泉さんはついてきて一緒に外に出る。


自販機といってもすぐ近くにはない。なので多少歩く時間が長くなるのだが今はそれが嬉しかった。
早く戻っても黒井先生の教頭に対する愚痴を聞かされるだけだしな。
「黒井先生って初めて会った時はさ、もっと気が強くて過去をあまり振り返らないと思ってたけど違うんだね」
「そだねー」
「あ、初めて会ったで思ったんだけどさ、泉さんとつかささんはどうやって知り合ったの?つかささんはアニメとかあんまり興味なさそうなのに」
泉さんに唐突に聞いてみる。
「あー、それはねぇ…ある日つかさが外国人の悪い人に襲われそうになった時に、私が昔やってた格闘技をBボタン連打で倒して救ったのがきっかけ」「え、泉さん格闘技やってたの!?」
「そだよー。こんななりでも結構やり手だから桃原君も気をつけてね」
泉さんは力こぶができるところにポンッと左手をおく。
……マジかよ。
しかし意外にも意外すぎるだろ。
まさか格闘技をやっていたとは…。
ということは格闘技やってたら精神も鍛えられるらしいけど全くの嘘だな。
今の泉さん見てたら明らかにオタク道まっしぐらじゃん、というのは言わないでおくか。
「ん?……桃原君、あれ…」
「うん?」
泉さんが後ろを振り向いて近づいてくる影に指を指す。
「あのリボン…。たぶんあれは…」
「あ、いたいた。こなちゃん、桃原君〜!」
「やっぱりつかささんだ」つかささんがやんわり声を張り上げながら走ってきた。
「どしたのつかさ?」
泉さんが聞くとつかささんは息を整え落ち着く。
「あのね、こなちゃんにね、メロンソーダ買ってきてって言うのすっかり忘れてて、だから買ってこようかなって思って」
えへへと柔らかい笑顔を見せる。
「そっか、じゃあもう自販機見えてるけど一緒に行こっか」
「うんっ!」
三人で自販機まで歩きつかささんがお金を入れようとするが…
「あっ!!」
つかささんが驚いたように声をあげる。
「どうしたの?」
ひょっこり覗いてみると…
「メロンソーダ…売ってない…」


俺達は黒井先生のビールを何本か買い、メロンソーダを諦めたつかささんは代わりにレモンソーダを買って行った。
「それにしても通り慣れた道でも夜になったら怖いねぇ」
「そのうちつかさの後ろに人面犬の背後霊がついちゃったりするかもよ…」
「えー!止めてよこなちゃん〜」
「あはは…、でも大丈夫だよ。俺もいるしつかささんを外国人から格闘技で救った泉さんもいるしね」
つかささんを安心させようと泉さんが助けてくれた時のことを思い出させてあげようと思ったのだが、
「えっ?外国人を格闘技でって…なんのこと?」
「へっ?いや…だって…、つかささんと泉さんが初めて会った時、襲われそうになったのを泉さんがBボタン連打でって…」
「あれは襲われたんじゃないよ〜。外国人さんに道を聞かれた時にこなちゃんが…」
さっきの話しと全然違うじゃん!俺は慌てて泉さんを見てみると
「フフンッ」勝ち誇ったような顔をしていた。


家に戻りリビングに入ると
「ぐぉぉぉっ、んがっ…くかー…」
黒井先生はソファーで爆睡していた。
「おいおいマジかよ」
「どうする桃原君…」
このままほっといたら先生まで共犯になるんだろうな。ここは起こすのが吉だろうけど…。
「くかー…くかー…むにゃむにゃ…」
あの寝顔を潰してしまったら大変なことが起こりそうだ…。
「しょうがない…。今日はこのままにしとこう。明日先生には早く出てもらえば解決するしな」
みんなは頷き、それぞれ風呂に入りやることをしてから各部屋に入る。
俺はというとソファーを占領されているので横に布団を準備し就寝した。





「桃原、桃原、早く起きろ!」
「え〜…」
「頼むから起きてくれ!」
「ん〜…」
「はよ起きんかい!」
急に布団を引っぺがされ俺は目が覚める。
「なんですか先生…こんな夜中にぃ…」
「ちょいとな…とりあえずしゃきっとしてくれ。ほんまに」
いつもの雰囲気とは違うことを察知した俺は、黙って先生の声を聞く。

「大事な話しがあるんや。真剣に聞いてくれ……」








+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。