第10話 黒色を轟かす者
「失礼しましたぁ…」
今朝、俺は生徒指導の先生に捕まり職員室に連れていかれた。
内容はもちろん泉さん達のこと。
おそらくあの不自然の会話に疑問を持ったからだろう。
それでいろいろと一時間、質問を受けていたのだがここでバレたらもちろん全員退学。街から追い出されるかもしれない。
なので機転を羽ばたかせ、彼女達のことは旅行について話しているとごまかせた。
中には納得のいかないような目で睨む先生もいたが、見てみぬふりをして張り詰めた空気から廊下の自然が奏でる風の元に帰ってきたわけだ。
「……疲れた」
さすがに頭を働かせた後はだるい。
でもこれからは注意しないとなぁ…。
そう思いながら教室に向かっていくと…、
「−−おい、あいつ今朝の…」
「−−例の女たらしだろ?」
「−−マジムカつくよな」
「−−男の敵だな」
「−−最初は泉さんだけだったらしいけど今じゃかの有名な柊姉妹、それに一年生にまで手を出しているらしいぜ」
「−−最低。いっそ奴を男子校に転校させてやろうか」
などと危ない会話が空気を汚染していく。
こりゃマジでやばいな。
バレるのも時間の問題かもしれない。
みんなもこのことについてクラスメートとかに何か言われてるかも…。
急いで教室に向かいドアを開ける。
すると
「桃原君お疲れ〜☆」
「大丈夫だった?」
俺の席で泉さんはゲーム、つかささんはそれを見ていた。
「なんとかね。そっちこそ大丈夫だった?」
「大丈夫って…何が?」
「だからなんか言われなかった?」
「あ〜、それなら大丈夫!『桃原君とはどういう関係?』って聞かれたけどちゃんと『恋人同士です!!!』って言ってあげたから!」
「えぇぇぇぇっ!?」
何言っちゃってるんだこの子は!?
「冗談だよ冗談。ホントにからかいがいがあるねぇ☆」
ニヤニヤと勝ち誇った顔になる泉さん。
マジで叱ってやりたい…。
「でもこの調子じゃかがみやゆーちゃん達にも質問攻めされてそうだね〜」
「あー、たしかにそうだよな…。泉さん、皆にメールでお昼は屋上で食べよって送っといて。状況を把握しとかないと」
「わかった」
泉さんは携帯を取り出し皆にメールを送ろうとするが
「授業やでー、みんな席に…って、こぉら泉!!!なに携帯触っとんねん!!!」
「はぅあっ!?いやこれには理由が…!」
しかし黒井先生は聞く耳を持たず
「没収!後で職員室に取りに来い………ってなんやこの内容は!?」
…内容? 別に皆でお昼を食べるってだけじゃ…。
「『お昼に桃原君を食べるから屋上に来て』って…アホか〜!!!」
「「「「「はぁぁぁぁっ!?」」」」」
ちょっ、泉さん打ち間違いしてる!
『桃原君と』じゃなくて『桃原君を』になってる!!!
これはまずい!
「桃原ぁ…ちょっと詳しいこと聞かなあかんなぁ…」これはまずい!!
「後で職員室に来い!!!」
これはまずい〜!!!
「失礼しましたぁ…」
最悪なデジャブが起きてしまった。
しかも+αにまた放課後に皆を連れて来るように言われた…。
説教は昼休みまで続き渋々屋上へと歩む。
長い階段を上りガチャリッとドアを開ける。そこに拡がるのは昔の俺が望んだものじゃない。
だけど……
「「「「お帰り〜☆」」」」
とても居心地が良かった
「しかしまずいことになったわね…」
「そだねぇ…」
皆にさっき俺が聞かれたこと、放課後来るように言われたこと全てを隠さずに話した。
さすがに脳天気にはいられないのを感じたのか、全員真剣に対策を考える。
「黒井先生が仲間になってくれたらいいんだけどなぁ」
「それは無理なんじゃない?ギャグは通じるけど仮にも教師だしね」
「………」
結局なにも案は浮かばず昼休みは終わった。
陽は動き放課後、俺達は職員室に向かうはずだったのだが…。
「あの…先生?」
「ん〜?なんや桃原?」
「…なんで俺の家に行くんですか?」
終わりのホームルームの後に、俺達は黒井先生に俺の家に住んでいる奴全員をこの教室に集合するように指示をし、みんなが集まるとなぜか職員室ではなく学校から出て俺の家に向かうと言い出したのだ。
「なぜってそらお前らの生活が気になるからや」
「いや職員室で話をするって教頭も言ってたような…」
「そない細かい事気にしたらあかん。それに教頭かて校長より位は下やから別にかまへん」
…へたすりゃ黒井先生が担任出来なくなるんじゃ……。
「それより次はどっちや?」
「あぁ、次は右に曲がって真っ直ぐ行ってください。そしたら右側に桃原って表札がありあすから」
「おっしゃー!楽しみやなー!」
ルンルン気分で先に行く黒井先生。
もしかしたらこれは…。
「ねえ桃原君」
「ん? なに、かがみさん?」
「これって大丈夫なんじゃない?」
かがみさんもやはり俺と同じで黒井先生が本気で俺達を叱る様子がないと考えていたらしい。
「本当は黒井先生、私達が楽しそうにしてたから仲間に入れて欲しかったのかもね〜」
「泉さん…」
「でもさすがに泊まりはしないと思うけどね」
…まあ生徒と先生が一つ屋根の下で過ごしたらそれこそ退学だからな。
先生もそれくらいはわかっているだろう。
「おーい、桃原〜!早く鍵を開けんかーい!」
「あ、はいっ!!」
先生が玄関で立ち往生していたので急いで向かいドアを開けた。
そこにはいつもと違う深緑が響いていた。
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