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修正しました(´・ω・`)
心理描写追加。
022 ヤヒメと任務(更なる修正)
―――水影執務室




 ナルトが13歳になったころ、突如、空狐が皆を集めた。
 仙狐と違って、空狐――しかも本体が九陽全員を集めることは滅多にないことだ。そもそも、本体が姿を現す事自体稀である。
 普段はナルトの中でのんびりしているそうな。

「お主たちはもう歳をとれぬ」

 いきなりの空狐の物言いに、全員がポカンと口を開けた。
 色々突っ込みたいところもあるが、とりあえずナルトが代表し、簡潔に問いかける。

「詳しく」
「うむ。皆体内に尾獣飼っているじゃろ? 尾獣を解放する条件を言ってみるのじゃ」

 条件。強大な力を手にする代わりに、かなり多い条件が必要だ。一つでも出来ないと、身体を乗っ取られるか、解放が出来ない。

「……妖術で封印」
「対話もだいじだねー」
「尾獣から主と認められることも」
「契約だ……」
「精神力の強化」
「尾獣に耐えられる肉体改造」
「それじゃ」

 ナルトの解答に、空狐がそれが答えだと言った。

「つまりじゃ、身体全体を器とする必要があるのじゃ。それに伴い、人間としての機能を捨て去ってきたのじゃ」

 原理はわかるが、皆は納得できずに首を傾げる。

「人間として尾獣を身体に卸すなど、許容量が足りぬ。お主たちは人間を捨て去り、人間から尾獣になりかけておる。お主たち、尾獣からチャクラを借りぬとも膨大なチャクラを持っておるじゃろ? それは存在が変わってきた証拠じゃ。歳を重ねるごとにそれは増えてゆく。尾獣を使う限り止めることは出来ぬ。このままじゃと、後6年かけて3年ほど歳をとり、そこでとまるじゃろ。ハナビの場合は遅いから9年程かけて6歳くらい進むじゃろう。じゃが、結局はそれでとまる。もし、人間として死にたいなら、今から尾獣を抜くのじゃ。今すぐ抜けば寿命は倍くらいで済むじゃろう。一年後なら三倍くらいじゃな」

 空狐は冗談を言う性格ではないと、全員が知っている。ならばこれが真実。全員が押し黙ってしまった。

「ちなみに不老じゃが、不死にはならぬぞ。尾獣と同じでな。1000年ほど生きればほぼ尾獣以外の手では死なぬような再生能力を得るが、それまでは簡単に死ぬ。尾獣の加護がなければ上忍200人程度に来られたら死ぬじゃろう。強い忍なら一人にでも殺されるかも知れぬ」

 皆が黙っていたが、珍しく一番最初に口を開いたのは、ハナビだった。
 ハナビに迷いなどないのだ。ナルトと一緒なら、寿命程度どうでもいいのだろう。

「わたしは、兄様が一緒ならそれでいいです。人間捨てようが、何しようが心は変わりません」
「……わたしもいい。皆を守る」
「守り神ですねー。それはそれでいいです」
「この里は好きだ。オレ達が居なくなった後に滅ばされるのはイヤだ……」
「そうですね。ボクもいいと思います」
「うーん。いいんだけどもう少し若い時にしてほしかった。私だけ20代だよ?」
「ウチはそれでいい。最悪死ねば終わるわけだし」
「ボクもいいですよ。命の恩人であるナルトさんの大切な里ですしね」
「オレもいいぜー! 楽しいじゃねーか!」

 全員が答え、最後にナルトに視線がいく。

「俺もいい。元々俺が作りたいと言った里だ。俺だけ抜けることなんてできない。まあ、どっちにしろ断るつもりなかったけど」

 全員が賛成の意を唱えたことに、空狐が軽く驚いた。不老ともなれば、必ず実験材料や暗殺が増えるだろう。水影や空狐も変わらず存在するわけだ。他里から怪しまれることは確実。

「ふむ。ちなみに、何度も言うが不老ではないぞ。ただ、長生きなだけじゃ。主はわらわの器ならば、50万年程生きるじゃろう。もちろん、死ぬこともあるがのう。他は5万年程じゃ。もちろん、もっと生きるかも知れぬ。年老いる程力がつき、成長が遅くなってゆくからのう」

 ナルトはソレを聞き、少し顔を暗くした。確かにまだまだ先のことだが、何れ一人になってしまうのだ。一人で45万を生きるなど、到底無理な話だ。

「心配するでない主。わらわはずっと主と一緒じゃ。それに、皆の子供も一緒にいれるじゃろ? 最悪尾獣化してしまえば、妖怪として生きれるしのう。なんだったら神にでもなればよかろう?」

 何万年も一緒にいたら、死んだ時どれ程悲しいか。ナルトはその時自分が耐えられるかわからない。だが、考えても仕方がないこと。ならば、今は皆を守ることを考えようとおもった。さすがに、妖怪になれとは言えないだろう。

「大丈夫だよくーちゃん。俺はそこまで弱くない」
「うむ。さて、早速だが任務を言い渡す。S任務じゃな。音の四忍衆、三人の殲滅じゃ。主が一人殺しておるので、残り三人じゃ。理由はこの里の血継限界を狙って幾度となく襲撃して来ておるのじゃ。今のところは大丈夫じゃが、怪我人が出ておるし、これ以上は攫われる人間もでてきてしまうからの。これは、気配を知っているナルトと……ヤヒメで頼むのじゃ。空気を操れるヤヒメが一番暗殺しやすじゃろ」

 そう言って、空狐は三枚の顔写真付きビンゴブック(指名手配書)をナルトに渡した。
 ハナビとフウは肩を落とし、ヤヒメはガッツポーズだ。

「他の者の修行はわらわが見ておこう」
『え゛』
「久々に元の姿に戻って鍛えるかのう」

 皆が一斉に逃げ出したが、空狐は鋼糸をぐるぐる巻きにして連れて行った。
 全員わかりやすい程、絶望に顔を彩らせていたのが印象的だ。ナルトとヤヒメもホっと胸をなでおろした。本来の姿の空狐と修業など、拷問以外の何物でもない。尾獣9匹を一瞬で屠る実力を持っているのだ。

「……にーと久々に一緒。うれしい」
「頑張ろうな、ヤヒメ」
「……うん」

 最近、ナルトはハナビと白との任務が多かった。久々の一緒の任務で、ヤヒメは甘えられることが嬉しかった。
 まだまだ子供で、ヤヒメやフウはナルトを兄のように好いている。ブラコンなのは確実だが。

 それから、ナルトとヤヒメはすぐに出発した。
 ついてこようとしたフウとハナビとリトを追い返し、やっとの思いで音の里に着き、力を押さえて潜入。追い返したと言うが、実際は空狐に見つかり、気絶させられ、連れて行かれた。
 ちなみに、服は二人とも和服である。それが一番気付かれないと思ったからだ。ちゃんと変化で姿も変えている。

「んー、にしても普通だな。大きくはないが、木の葉と大して変わらない。空気が淀んでる気がしないでもないが」
「……アレ」

 ヤヒメが指さした場所には、ラーメン屋の屋台。

「食べたいのか?」
「……ん」
「まあ、期限も決まってないし行くか?」
「……うん」

 ナルトは小さなヤヒメの手を引き、出来るだけ兄と思われるように屋台に向かう。もちろん、二人とも任務だと言う事を忘れた訳ではない。むしろ、任務だからこそ必要なのだ。
 のれんをくぐってから、一応確認する。

「おっちゃん。開店してるかい?」
「お、みねー顔だな? うちは年中無休よー」
「ああ。最近こっちにきたばかりでな。今日は妹が里を見て歩きたいって言うから連れて来たのさ」
「ほぉーソイツはいい兄ちゃんやってんな。なら、チャーシュー一枚サービスしといてやらぁ。ちなみに、うちの人気はしょうゆラーメンよ!」
「サンキューおっちゃん! じゃあ、俺はしょうゆで……ヤヒメは?」
「……同じ」
「しょうゆ二つ」
「ちょっと待ってなー、すぐ出来るからよ!」

 そう言って、ラーメン屋のおじさんは奥に入って言った。屋台と言いながら、以外に大きな建物だろう。真昼間と言う時間が時間だけに、客はあまりいないみたいだ。

(ヤヒメ。気配はあるか?)
(……強いチャクラは数個あるけど……判別は無理。これ以上空気を操ると気付かれる)
(ならさりげなく聞きだすか……)

 ヤヒメは空間を操れるので、暗殺などに便利な能力を持っている。だからこそ、空狐はヤヒメを付けた。
 ナルトとヤヒメは一瞬視線を交差させ、戻って来たおっちゃんに視線を戻す。

「はいよ、しょうゆラーメン二つ」
「早いなー」
「そりゃそうよ! 速さが命だからな」
「味にしてくれよおっちゃん……」
「ハハハ! 味もおりがみ付きだ」

 ナルトは辺りに人が居ないのを確認し、おっちゃんに視線を移す。
 食べながら自然に、だ。意外においしかったので、後でハナビやフウに教えてやろうと思っていた。もちろん、二度と来ることはないだろうから、土産話だけ。
 ヤヒメはナルトの隣で、ふーふーと、ラーメンを冷ましている。傍から見ると、微笑ましくなるような可愛らしさだ。

「そういえば、父上がこの里に来たのは、大蛇丸様と強い四忍が里を守ってくれるって言うからきたんだが、なんか知らないか? 妹が四人衆に憧れててさ。そういう話し聞きたいんだとさ。あわよくばサインなんてほしいなって」
「四忍ってのは、左近様と次郎坊様と鬼童丸様だなー。前は四人いたんだが、何でも卑怯な手で殺されたらしいな。あんないい人たち殺す忍ってのもヒデーよな。たまにうちのまえを大蛇丸様と一緒に歩いてるから、サインがほしーならそんときだな。まあ、もらえるかわはわからねーけどな」

(卑怯な手……ねぇ。どっちが卑怯だか)

 おっちゃんは本当に信用しているのか、笑顔で口を開いていた。ナルトも笑顔でそれを聞く。内心は宗教みたいだと思いながら。

「ヤヒメ……無理だから今日は帰るか」
「……ヤダ。四人衆さまに会いたい……」
「我儘言うなって」
「……会いたいの」

 ヤヒメがぐずっている演技をする。もちろん、アドリブではあるが、ヤヒメがナルトの作戦を汲んだ結果だ。子供と言うのは、本当に便利な武器になる。相手の警戒を解かせるのが楽なのだ。
 そんな様子を見て、おじさんは口を開く。
 

「そんなにあいてーんだったらアカデミーに入ってみたらどうだい? 臨時教師として出てるらしい」
「アカデミーって誰でも入れるのか?」
「そうだなー、前に食べに来た生徒によると、アカデミー自体にはすぐ入れるっぽいな。ただ、下忍になれるかどうかはわからねーらしいが」
「……そうか」

 その後、ナルトとヤヒメはラーメンを食べ終え、席を後にする。
 情報収集の為だったが、此処に来たのは正解だったろう。生徒が食べに来て情報も持ってそうだし、うまかった。ただ、これ以上聞くのはまずい。確かに情報を持っているかもだが、後でおっちゃんに、ナルト達が四人衆を探していた事を漏らされると、要らぬ誤解を生む。
 誤解ではないが、面倒事は御免だ。一斉にかかって来ても殺せるが、万が一を考えると、一人ひとり暗殺するのが最適だろう。自信があるからと正面から突っ込むなど、愚の骨頂だ。そんな奴は忍ではなく、格闘家になった方がいい。

「おっちゃんあんがとよ、うまかった。これお代。おつりはもらっといてくれ。妹を失望させなくて済んだからな」
「おう! これからいつでもきな! 実は俺も四人衆様のファンでよぉ。同じファンに会えるなんて嬉しくてな。次来たらおまけしてやんよ」

 ナルトとヤヒメはお礼を言い、その場を後にした。
 それから、ナルトとヤヒメは出来るだけ自然に、人気のない方向に向かう。そのまま、前を向いたまま会話をする。ヤヒメが風を操り、声が拡散しないようにしながら。

「アカデミーに入るか。暗殺も楽そうだしな。実力は隠せよ?」
「……わかってる」

 二人は更に物陰に行き、8歳程の姿に変わった。
 そして、翌日二人はアカデミー生となった。忍者登録するだけなので、非常に楽であった。
 この里では、住民登録がないから楽なのだ。と言っても、木の葉も忍登録はあるが、一般市民の、ちゃんとした住民登録はない。つまり、水の国以外はないのだろう。

 アカデミーに編入してから数日。ナルト達は馴染んだつもりになっていた。実際は、うわべだけの付き合い+情報収集だ。少しくらい仲良くなったとしても、邪魔になったら簡単に殺せる程度の付き合い。

「はーい。では、今日はクナイの練習です。最後に上手く出来たか見るから、それまでは自由に練習して」
『はーい』

 まだアカデミーに入って日が浅いが、既にナルトとヤヒメは、ゲンナリしていた。
 音の里の忍のレベルが低いわけじゃないが、ナルト達の里が高すぎるのだ。
 ナルトとヤヒメは目立ちたくないので、一番端の的に移動し、練習することにした。
 水の国のアカデミーでやっている、簡単な遊びだ。
 ナルトがクナイを投げ、それをヤヒメが弾く。弾かれたクナイにクナイをぶつけ、方向修正。更にヤヒメが軌道をずらし、それを戻すと言う遊び。実際これをやると、授業が終わるまで続いたりしているらしく、アカデミーではウォーミングアップ程度にしか使われない。一応ルールがあり、音が規則的になるようにする。ただ当てるだけでは、何の練習にもならないのだ。クナイの投擲の訓練と言うより、集中力の強化の為の訓練だ。クナイなど、あたって当然なのだから。

 ちなみに、幻術をかけて他の忍にはちゃんとやっているように見せている。
 
「むずいな。目瞑ってても勝手に当たっちまう」
「……屑忍者ばっか」

 今度はナルトが上空にクナイを数本放り投げ、ヤヒメが全て的へと軌道をずらす。
 タタタンと、的確に正鵠を貫くが、当然の事なのでつまらない。
 ヤヒメは本当に暇なのか、かたわらにおまんじゅうを置いている。お茶まで用意してあり、他のアカデミー生がみたらバカにしているようにしか見えないだろう。
 もちろん、ヤヒメは空間が操れるので、見られる事はない。収納すら出来ると言う便利さだ。

「やっぱダメだ。いったいいつ来るんだ四人衆。一人でも見つければ、魂喰って情報引き出せるんだけどな……」
「……飽きた」

 すぐに飽き、ナルトは幻術を解いた。刺激が足りなすぎるのだ。空狐の修業が恋しくなる。もちろん、実際空狐の修業を受けたら、五分で後悔するのだが。

「あーめんどいッっつの!」

 ヒュンヒュンと、ナルトはクナイを的に投げる。
 それは、まったく同じ軌道で正鵠に突き刺さった。
 
「……」

 同時に、ヤヒメが投げたクナイが、ナルトが投げた真ん中のクナイにあたり、的から弾き飛ばす。
 時間差がなく、見た目的には最初から外れたように思えるだろう。ちょっとしたスリル感を味わいたくてやってみたのだ。

「おい! おめーらいつも一緒にいるけどよー。デキてるんじゃねーか?」

 そんなうんざりしている二人に、一人の太った少年が声をかけてきた。少年の後ろには、ギャハッハと笑う子分が数人ついている。
 クラスを仕切っている少年だ。
 もうナルトとヤヒメはダルくて、それを完全に無視した。いちいち気にしていたらやっていけない。そもそも、二人にとって気にする価値があるとは思えない。

「「……」」
「何黙りこんでんだぁ? 俺様にびびったのかよぉ?」
「違いないですよヤオさん! なんたってヤオさんはエリートっすからね」

 更にそのやり取りを無視し、ナルトとヤヒメは欠伸をしていた。少年はわかりやすい程額に青筋を浮かべ、怒声を上げる。

「おい! なに無視してんだよ!」

 ヤヒメは煩わしくて、鬱陶しそうに視線を向ける。
 何でこんなデブがしきっているのかわからない。ついでに、いくら手を抜いている状態だとは言っても、力量差がわからない程相手は実力が無いのだ。

「……失礼。バッタと間違えました」
「テメェー!」

 ヤヒメはみるみる顔が真っ赤になってゆくヤオを見、ああ、と訂正した。
 フウが創り出すキチキチうるさいバッタではない、と。

「……勘違い。豚でした」
「殺すっ!」

 ヤオが持っていたクナイを、ヤヒメに投擲したのを見、ナルトはそちらを見ずにクナイを投げる。
 それは相手のクナイを弾き、ヤオの服を地面に縫い付けた。
 ナルトはヤヒメの発言に歎息したが、ヤヒメだからなぁと、よくわからない納得の仕方をしていた。ヤヒメは精神的には子供と変わらない。ヤヒメだけではなく、九陽達はほぼ子供と変わらないだろう。それは、他の忍の様に心理戦などなく、圧倒的力によって相手を叩き潰してしまうからだ。精神面で成長する機会などない。ナルト以外は指揮することすらできないだろう。
 一人で軍隊の働きをしてしまうのだから、自分さえ御せればいいのだ。一人軍隊とはよく言った物だ。

「全く力が入ってない。ついでに、里の仲間にクナイを投げるとは……人間として終わってるな」
「お前! よくもヤオさんを!」

 周りの人間が吠え、クナイを構えたのを見て、ナルトは眉をひそめた。完全に蔑んだ冷視を向けながら。
 もし自分の里の忍ならどう指導するか……と思い。

「……お前ら忍者目指すのヤメロ。これは授業だ。これが任務だとしたら、仲間に武器を向けたお前らは任務違反で終わってる。嫌いな奴と任務することになったらどうすんだよ」

 その言葉に堪忍袋の尾が切れたのか、全員がナルトにクナイを投擲する。だが、それは誰かに止められた。少年達は止められた事に、キっと止めた相手を睨みつけるが、相手が誰か認識した瞬間、顔を青ざめさせた。
 止めたのは、肌が浅黒く、腕が六本もある、怪物の様な男だった。

『ッ!』
「彼の言うとおりぜよ。皆大蛇丸様の下で働く忍じゃねーか。仲良くしとけ」
「き、鬼童丸様!」

 一人の叫びに、場が騒然となる。四人衆は皆のあこがれなのだ。だが、ナルトとヤヒメは内心ほくそ笑む。
 同時に、見た目キモチワル! と言うのが、二人の見解だ。
 鬼童丸と呼ばれた忍は、ナルトとヤヒメの方に視線向けた。

「それにしても、その歳でその実力はスゲーぜよ」
「き、鬼童丸様。いらっしゃるならおっしゃって頂ければ……」
「気にするなってのォ。たまに優秀な忍が居ないか見に来るだけぜよ。あの二人。前見に来た時居なかったけど?」
「あ、あの二人はつい先日、他里を追われてきた両親の子供らしくて……」
「ふーん……」

 鬼童丸はしげしげと二人を観察する。
 変化かどうかみているのかもしれないが、ナルトとヤヒメは、チャクラの流れすらも子供となっている。チャクラ量も子供より少し多いくらいだろう。偽造は完ぺきだ。
 ヤヒメはじっと見られ、怖気が奔る程気持悪がった。もし任務でなければ、殺していたかもしれない。ただ、此処で殺すと暗殺ではなく、里自体を落とす事になってしまうので、表には感情を出さない。
 これがフウなら、すぐに表に感情を出してしまうだろう。表情を一切変えることのないヤヒメは、暗殺に向いている。

「お前ら二人。大蛇丸様のもとで強くならねーか? 此処に居たら宝の持ち腐れぜよ」

 その言葉に、場が騒然とした。鬼童丸からのスカウトは、有能な忍を見つけて、大蛇丸の配下にするものだ。呪印の実験台ともいえる。だが、それは子供達の目標。
 ナルトは無邪気な笑みを浮かべ、嬉しそうに口を開く。

「大蛇丸様のもとで働けるのですかっ!?」
「……行きたい」
「おいおい、さっきと随分性格が違うぜよ?」
「そりゃそうですよ! 鬼童丸様や大蛇丸様と、先ほどの忍の何たるかを分かっていない人間を一緒にするなど!」
「……同意」
「フハハッハ! そりゃそうぜよ! 気に入った! オレが直々に鍛えてやるよ!」

 機嫌のいい鬼童丸についてこいと言われ、二人は素直に付いて行った。
 周りは驚いていたが、ナルトとヤヒメは完全無視である。どうせもう来る事もない学校だ。どうでもいいのだ。
 ついでに、四人衆とは、なんとも未熟な忍だとも思っていた。絶対的な自信があるのかもしれないが、もう少し暗殺を危惧したほうがいいと。でないと、自分達のような存在が紛れ込んだ場合、内部から瓦解してしまう。

 それからしばらく木の上を移動し、鬼童丸の後ろを二人は付いていく。鬼童丸は、まるで蜘蛛の様な奴だった。主に移動方法が蜘蛛のようで、ヤヒメは気持ち悪いと内心思っていた。
 しかも、油断しているのか、簡単に背後から殺せそうだった。魂を喰う為、それをすぐに実行出来ないのがもどかしい。
 殺しては意味が無い。間接的に触れ、輪廻眼で魂を喰らう。
 ナルトはヤヒメに目で合図を送り、ヤヒメは一度頷く。

「……あの」
「何ぜよ?」

 途中でヤヒメが口を開く。

「……ファンです。サインください」
 
 真っ赤になったヤヒメに、鬼童丸は最初キョトンとしたが、すぐにハハハと笑い、了承する。
 やはり、頼みごとをするのは幼い少女が一番だ。いい具合に警戒心が薄れる。

「その前に、きまりがあるからスマンぜよ」
「「!」」

 ヤヒメから色紙を受け取り、鬼童丸は、口から蜘蛛の糸を飛ばした。
 その糸の速さと硬度に、二人は抵抗も出来なく、背後の木に縫い付けられてしまった。術が使えぬよう、手も拘束される。
 だが、この状態は二人にとって好都合。絶対的な自信がある術で拘束しているわけだから、相手は警戒がおのずと緩む。破られるなど思っても居ないだろう。

 こんな細い糸の、一体何処に自信があるのか二人にとっては甚だ疑問だったが。

「それは象二頭で引っ張ってもちぎれない糸ぜよ。無防備になるようなことをしちゃいけないって言われてっからな。終わったら解放するぜよ。印が組めないように両手も拘束させてもらったぜよ」
「さすが四人衆様。感服いたしました!」
「……素敵」
「ハハハ! そんなに褒めるなぜよ!」

 そして、サラサラと鬼童丸がサインを描きこんでゆく中、ナルトとヤヒメは視線を交差させる。そして、今までと違う種類の笑みを浮かべた。嘲笑すら含ませる笑みを。
 もう遠慮はいらないとばかりに。
 
「!?」

 突然、鬼童丸は身体が動かなくなり、驚愕に声を上げようとしたが、鬼童丸は声すら出せなかった。
 ヤヒメが鬼童丸の身体を空間に固定し、蜘蛛の糸対策で口も開けないようにしたのだ。
 鬼童丸は二人に視線を移すが、二人は蜘蛛の糸に拘束されたままで動いていなかった。印も組めないだろう。ならば、と。周囲の気配を探るが、誰も居ない。

「んごっ!?」
「甘いよ鬼童丸。この程度の拘束。ヤヒメに比べればホントに蜘蛛の糸レベルだ」

 ボワッっと二人の身体が蒼い炎に包まれ、蜘蛛の糸が燃え尽きる。
 表情も口調も変わったナルトに、鬼童丸は目を見開く。

「冥土の土産に聞いておけ。印を組まなくても、忍術っぽいのを使える奴は人間以外なら珍しくない。人間以外なら、な」
「……屑のサインなんて誰もいらない」

 トンと、ナルトが鬼童丸の額に指を置くと、口から魂が飛び出してきた。それを、ナルトは喰らう。バキバキと、まるで身体を喰っているような壮絶な音を立てながら、咀嚼する。この状況を第三者が見れば、怖気が走るような光景だろう。生憎、ヤヒメが空間に結界を張っているので、入って来れない上に、死人も出来ない。
 ナルトは魂を喰いつくし、ペっと唾を吐きだした。
 
「まずっ……。よし、住んでいる場所が分かった。アカデミーなんて糞な場所通ってたストレスを発散しにいくぞ」
「……行く」

 魂が抜かれて死んだ鬼童丸を燃やし、ナルトとヤヒメは消え去った。






―――森



 鬼童丸を殺した場から、十キロ程離れた森の中、結界を張って二人は居た。
 夜になるまで、しばしの休憩だ。
 
「……何か、わかった?」
「居場所以外は大蛇丸の目的とかやってることくらいか。あと、敵の能力とか」
「……目的?」
「現在大蛇丸は二人いる。二人ってか、魂が二つに分かれてるんだけどな。片方の魂をうちはサスケに入れて、身体を乗っ取ろうとしてるな。もう片方は既に乗っ取っている。暁のベインって奴をな。あと重大な事がわかった……」
「……重大」
「ああ……。大蛇丸は四人衆全員の後ろの穴を掘っていた……」
「「……」」

 重い沈黙が押しかかる。ナルトはヤヒメに言ったことを後悔した。自分的には一番知りたく、知ったときの驚愕が大きかった情報なのだが、人に言うのはやめておいた方がよかったと。

「……にーも掘ってある?」 
「いいか……ヤヒメ。後ろを掘られた男は男じゃなくなるんだ。それはホモって言う新しい性別――種族になる。そして、人柱力の一万倍くらい怖い存在なんだ」
「……ヤヒメも?」
「待て。お前誰かに襲われた?」
「……にー」
「虚言はダメだ。ハナビとフウに聞かれたらやっかいなことになる上に俺が最低な人間になる」
「……前、尾獣が暴走して殺されかけた。痛かった」
「襲われるってそっちか」

 かなり昔だが、対話を成功させたと思った瞬間。ヤヒメは尾獣に騙されて、全ての封印を解いてしまった。その時、尾獣が暴走してナルトが無理やり押さえつけたのだ。
 ヤヒメは眠そうな目でナルトに首を傾げているが、ナルト的には、九陽にヤヒメがそんなことを言ったら、戦争が起きると冷や汗ものだった。

「だから、みだりに人前で裸になるなよ? 女同士でも同じだからな。種族が変わるから。ヤヒメは風呂好きだから何処でも入っちゃいそうだが」
「……にー以外に見せたことない」
「それも問題っちゃ問題だが……」

 ナルトは頭を抱えてしまう。最近はナルトが風呂に入っていると、毎日乱入してくるのだ。それは、兄をハナビに取られないための対策だったり、ブラコン魂だったりするのだが。

「さて、標的の住処もわかったことだし、決行は深夜だ。それまで寝るか」
「……うん」

 ヤヒメはナルトに抱きつき、目を閉じる。
 小さいヤヒメを、ナルトは妹の様に思っている。孤児出身のヤヒメ、リト。赤子で連れてきたフウはナルトが育ててきたのだ。リトは7歳程で男故か『一緒に寝るの恥ずかしいぜ』と言って個室で寝てるが、ヤヒメとフウは未だに一緒に寝ている。リトが一緒に寝なくなって、結構ナルトは寂しく思っていたりする。お風呂もリトだけは同年代の少女と入るのは恥ずかしいらしく、一緒に入らない。現在の年齢は、ナルト13、ヤヒメ・リト12、フウ10だ。
 ハナビだけは、ナルトと寝たり風呂に入ると貧血を起こすので、個室だ。最初一緒に風呂に入って鼻血を出した時など、本気でナルトは貞操の危機を感じた。入って来た瞬間に鼻血を出すなど、ギャグかと思ったくらいだ。

 しばらくし、ナルトの胸の上のヤヒメから、すーすーと規則的な寝息が聞こえてきたところで、炎で出来た毛布をかけてあげた。

「おやすみ……ヤヒメ」

 そう言い、ナルトも目を閉じる。
 帰ったら久しぶりにリトでも風呂に入ろうかな、と思いながら。

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