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001 こんにちわ赤ちゃん。









―――焼け跡





《封印術・屍鬼封尽》

 その声に反応し、彼は目を覚ました。
 何が起こったのか分からず、辺りをきょろきょろ、と言っても。赤子の首は座っており、目くらいしか動かせないうえに、赤子の視野は狭く。ほぼ上しか見えなかった。つまり、寝かされているのだ。

 ただ、対象があまりにも大きく、自然と目に入ってしまう。
 それは、巨大な狐。
 禍々しい狐。
 赤子は泣きもせず、ただその狐を見つめる。
 苦しそうに身悶える狐を。

「起きたか……ナルト」

 声が降りかかる。
 それは、金髪の青年だった。
 ただ、その言葉に赤子の心は穏やかじゃなかった。

(ナルト!? 確かに産まれたばかりだから転生だけど、よりによって死亡フラグ満載+虐められるの決定なキャラに転生させやがりましたね閻魔と創造神!)

「すまない……ナルト。俺とクシナはお前に親らしいことを何もしてやれない。だが、お前は里の英雄として強く生きてほしい……後のことは、じーさんに任せてあるからな……」

(いえいえ、勘弁して下さい。あと、俺じゃなかったら絶対理解出来ませんからね? あとすみません。大切な子供に変な人間が入ってしまって)

 赤子の思考さえ無視すれば、赤子は真剣なひ表情でじっとその青年を見つめているように見える。四代目火影――火の国の長である父親を。
 身体中傷だらけで、血で顔を真っ赤に染めた親を。

「ナルト、時間があまりないが――お前は波風ミナトとうずまきクシナの愛の結晶だ。クシナもナルトも俺は愛している」

(いやいや、まじ勘弁です。てか、へその緒せめてちゃんと切ってください。見えますから。てか、ノロケいりません)

 ミナトに抱きあげられ、背後を見させられる。
 そこには、無理やり腹を切り裂かれ、赤子を取り出したであろう母親の姿。
 既に絶命しているだろうが、その顔は穏やかだった。

「うずまき――波風クシナ。お前の母親だ」

 和也――あらためナルトは前世で人死にには慣れていたが、これはきつかった。
 それでも、ただその顔を見つめ続ける。
 この世界で血がつながった親。少しの間しか一緒に入れないが、正史のナルトは覚えてもいなかったのだから、それよりはマシだろう。
 
「あうぁ」

 ナルトは短い手を必死にクシナに伸ばす。
 愛情があるわけではない。ただ、輪廻眼を持った自分なら直せるかも知れないとおもったからだ。
 ただ、その目で見ても、既に魂は存在しない。

「わかるか、ナルト……。こんな父親だが……最後にお前の笑った顔が見たいな」

 ナルトは自分に落ちる水滴を感じ、ほほ笑む。
 涙と血の混ざった水滴をミナトはこすってくれるが、腕から流れ落ちる血で、余計に汚れてしまう。

『キサマァァアア! 許さぬぞ! ワシの力を返せぇえっ! 人間の術ごとき、ワシに効くとおもおてか!』

 パキパキと、先ほどの術による拘束が外れてゆく。
 封印術・屍鬼封尽――自分の魂を贄に相手の力を消す術。だが、強大すぎる妖狐の力は消し去ることが出来ず、何れ完全に元通りになるだろう。

(いや、十分に効いてるじゃん!? すぐ外れそうだけど)

「さよなら、ナルト。波風ミナトは波風ナルトをいつまでも愛している」

 そう言ってミナトは笑い、せわしなく手を動かし、印を組む。 
 ナルトはそれをじっと見つめ、ミナトの最後の印を覚える。唯一、父親から継がれるであろう印を。

《八卦の封印式》

 ミナトの手が、ナルトのお腹に置かれ、手を回転させるようにして印が浮かび上がらせる。
 それにともない、封印術・屍鬼封尽によって、消し去れなかった力が、ナルトの中に封印されてゆく。ナルトの身体を媒体にした封印術・屍鬼封尽の改良。

(こうやって封印したのか……知らなかった。でも、キモチワルイ! 身体の中がむずがゆい!)

 親の心子知らずとはこのことである。
 必死に封印しようとしているミナトの腕の中で、ナルトはこそばゆいかゆみを感じていた。

 不意に、首に何かかけられたのを感じ、ミナトを見つめる。

「俺がお前にやれるものなんて、あまりないけど……な」

 苦笑しながら、一つのネックレスを首にかけた。そして、ナルトを自分の上着に巻き、一枚の写真を挟む。
 それは、ミナトと、お腹の大きくなったクシナが笑顔で映った写真だった。

 そして、そのままミナトは前に倒れた。
 生贄にささげたことにより、ミナトの魂は輪廻に戻ることもなく、消えてしまった。
 ナルトは、数分の親であったミナトの死を見届けた。
 涙は出ない。
 それでも、自分の親の喪失は初めての経験で、悲しかった。
 きっと、これから自分は虐待されるだろう。それでも、この親が守りたかった国ならば、守ってやろうと思えた。

(ってか、このまま此処にいたら、正史通り! その前に力着けないとダメ! 虐待で死んじゃう!)

 思っただけで、いますぐ実践はしないらしい。

「あーぶぶ! あーあ、あーぶぶ!」
(ヘールプ! くーちゃん、ヘールプ!)

 全く移動が出来ないので、頼みの綱の、未だ見ないくーちゃんを呼ぶ。

『主よ、まさか赤子とは……わらわは此処にいる』

 頭の中に声が響く。

(何処!?)

『ふむ。まだ精神世界に入るのは無理かのう。最初はわらわが連れて行くかの』

 そこで、ナルトの意識は深く落ちて行った。











―――精神世界




 ナルトは意識が戻ると、パチリと目を開いた。
 
「おお! 姿が戻っているじゃないですか!」

 バっと立ち上がり、自分の身体を確認する。その姿は、生前の姿のままだった。

「主の精神世界であるからの、魂が一番長く居た時間の姿になるのだ」

 声がした方向をナルトが向くと、小さな少女が居た。

「くーちゃん?」
「そうじゃ」
「創造神って幼女をペットにしてたのか?」
「ち、ちがうのじゃ! 空狐のくーじゃ! 長く生き、狐の姿を捨てたものが空狐じゃ。尻尾もないしの。一番近くにいた人間の姿を取ったのじゃが、いかんせんまだ若くて成長していないのじゃ。あと数千年経てば大人の姿になるのじゃが」

 1000年以上生きた狐が、神格化し天狐となる。その尻尾は四本で、狐の姿を捨てたからと言われている。強力な神通力を使え、様々なものを見通す千里眼を持つ。
 3000年以上生きると、空狐となる。神通力全てを扱え、尻尾は0本。完全に狐の姿を捨てた者だ。大神狐と呼ばれる。3000年以上生きた、善狐が成ると言われる狐である。

 よく、会話中に女狐と出るが、それは狐が美女に化けることからそう呼ばれている。
 ただ、くーちゃんは空狐の子としては若いので、姿が子供なのだ。空狐の子供は、最初から神格化した狐として生を受けるので、5000年程度ではまだまだ子供である。

「へー……で」

 ナルトは辺りを見回す。
 そこには、さまざまな狐が居た。ナルトの精神世界には本来、九尾を捕獲している檻があるはず。と思っていたが、そこは真っ白い空間だった。
 何故か、戦闘中よりもボロボロになった九尾の狐がいる。
 
「ふむ。主の精神世界で暴れていたのでな、躾をしてやったのじゃ。こやつは野狐どころか完全な悪狐だからのう。それよか主よ、ちとこれに手をつくのじゃ」

 そう言って、くーちゃんは大きな巻物を広げた。
 それは、原作のナルトが蝦蟇一族と契約した時に使った巻物だった。
 しかし、今、目の前にある巻物は誰とも前の契約した者がいない。手の跡が何処にもないのだ。蝦蟇一族のアレは、伝説の三忍自来也や、ミナトの他にも手形が在ったはずだ。

 ナルトはくーちゃんなら自分をだますことなどないと思い、その巻物に手をつく。
 自分の手形が、黒く押される。

「これはのう。妖狐一族の契約巻なのじゃ。これで口寄せで呼ぶことが出来るのじゃ。いま周りにいる、狐もこの一族での、わらわが先ほど呼んでみたのじゃ。まあ、口寄せしたからと言ってすぐに従うわけではないのじゃが……主の場合はわらわが従っておるので、特別に従うじゃろう」

 この瞬間、ナルトは正史は歩めないと確信した。
 本当なら蝦蟇と契約するはずが、なぜか妖狐と契約してしまったのだから。

「それはそれでいいが……俺の修行どうすばいい? 蝦蟇との修行も出来ないわけだけど」
「それなら心配いらぬよ。蛙に出来て狐に出来ないことなどないのでな。紹介するのじゃ」

 くーちゃんがそう言うと、狐が二匹前に出た。
 その中には、九尾の狐もいた。
 てかデカイ……。二匹とも狐の範疇超えてる。

「こんちゃー、うちは仙狐。千年以上生きた狐がなる仙狐。仙術ならまかせてくらさい。せーちゃんとでも呼んでほしい」
「はぁ……なんともフレンドリーな狐だな」
「それはそうじゃ主よ。基本善狐なのじゃから。年をとって悟りを開かず悪狐と呼ばれる狐は白面金毛九尾の狐くらいじゃ」

(いやー、でもその悪狐を椅子がわりにして、犬みたいにひれ伏せさせてるくーちゃんは極悪狐って感じだ)

「次はワシだ。アヤツの息子……いっそ殺して――ぐっ」
「黙るのじゃ九尾。主に失礼であろう!」

 くーちゃんがバンバンと九尾を叩くが、ペチペチって感じなのが、音がゴンゴンって感じである。
 ナルトの精神世界にクレーターが広がってゆく。

(にしても、九尾の暴れた理由ってなんなのだろうか。あとで聞いてみよう)

「す、すまぬ。ワシは九尾じゃ。妖術なら全て使うことが出来る。チャクラも自然から無限に作りだせる」
「きゅーちゃんと呼ぶとよかろう主。これは玉藻前に化けた九尾じゃなかろうて、玉藻って呼ぶのも変じゃからの。そもそも、玉藻前は地球だしの」

 まるで九尾が子供のような扱いを受けている。
 それもわかる。この九尾は善狐ならば天狐だ。くーちゃんは、善狐の空狐。しかも、空狐になって2000年は立っている狐である。九尾の5倍は生きている、この世界では神に最も近い狐だろう。

「最後にわらわじゃが、空狐。神術なら全て母上から学んでおる。体術も忍具も扱える。まぁ、神術と言っても、本当の創造神に比べたら赤子以下で全然ダメじゃが、人間には大きな力じゃろ。どうじゃ? この三匹ならば師としては申し分ないじゃろ?」

 小さな胸を張るくーちゃんを見つめ、ナルトは口を開く。

「あのさ……忍術は誰が教えるの?」
「「「……」」」

 その反応でナルトは理解した。
 忍術を誰も使えない。妖術、仙術、神術。普通人間が使えない術は教えられるが、人間が使える忍術が教えられない。

「き、気にするでない主! わらわには千里眼があるのでな! これで、人間の術を覚えて教えればいいのじゃ……多分」

(幸先不安すぎる……って! 本題忘れてた!)

「あのさ、此処にきた目的! ちょっと俺の本体移動してほしいんだけど」
「ふむ、なら一度戻るかの」

 くーちゃんがそう言うと、意識が急速に薄れてゆく。









―――焼け跡




 ナルトに意識が戻ると、傍にはニメートル程の大きな狐が居た。
 くーちゃんではないと思う、感じる力が全然弱い。
 その狐は、赤子をミナトの上着にくるみ、器用に咥えて走り出す。
 赤子の腹にあった八卦封印の痣は既に消え去っていた。

 精神世界での出来事は、外の時間にすると、ほんの刹那だったようだ。



 
 しばらくすると、火の国の人間が大勢走ってきた。
 その人々は、九尾を封印し、命を落とした四代目火影、波風ミナトと、うずまきクシナを見つけ、涙を流しながら黙とうをささげた。

「ミナトよ……ワシのちからが足りないばかりにすまなかった……。お前の残したナルトはワシが育てよう。必ず幸せにしてみせる」

 膝をついて黙とうをささげていた老人――三代目火影は、立ち上がり、ナルトを探す。
 あたりを探しまわるが見つからない。
 しばらく探すが――いない。

「火影様! まだ危険ですので……」
「離すのじゃ! ナルトが……ナルトが!」

 他の忍びが止めるが、それでも探し続ける。
 そして、辺り一面を探し終える。

「どこじゃナルト!? ナルトーー」

 早くミナトとクシナを里に連れ戻らないといけないが、ナルトは託された子供。それを置いて里に戻ることなど三代目火影には出来なかった。

「ナルトーーーー! ナルトーーーー!」

 まだ、火がパチパチと弾けている焼け野原を声が潰れるまで叫び続けた。
 だが、それでもナルトを見つけることは出来なかった。
 
 やがて、数週間探し続けた三代目火影は、過労で倒れた。
 
 
 



 しばらく後、里にはある噂が流れることになる。
 
“里を襲った化け狐はある子供の腹に隠れ、力を取り戻そうとしていると。その子供の名を――ナルトと言うらしいと。子供の髪は、里では見ることのない金髪”

 三代目火影が探すよう命令した内容。それは、狐を囲っている子供を殺さないといけないと内容が変わっていた。
 四代目火影の息子であるという“真実”は誰にも伝わらず、狐の子として認知されてしまった。

 三代目火影がそれに気付いた時には、既に遅く。噂は里全体に広がり、そのことを子供に教えることを禁ずるという対処しか出来なかった。

 その噂を知った三代目火影は泣き崩れた。

 じーちゃんにあずければ安心だと言い、里の為に命をかけたミナトを。幸せにすると約束したナルトを不幸に導いてしまった自分のふがいなさに。
 


















―――その頃のナルト




「あぶぁ~」
(お腹すいた~)

「待っておるのじゃ主。いまそこらにいる動物を狩ってくるのでの」

「あうああぶーうぁー」
(赤子に肉は無理~)

 平和そのものであった。
最初から空狐出せばいいんじゃね? とか思うかもだけど、空狐はナルト以外どうでもよかったので、出てこなかった。
ナルトは出し方しらかったわけだし。


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