罪と咎(つみととが)(12/12)PDFで表示縦書き表示RDF


罪と咎(つみととが)
作:マオ



エピローグ


 彼女が深々と息をつき、話は終わった。半日ほどを費やした、長い話だった。
 それでもまだ、訊きたいことはたくさんあった。
『それからの姉弟』の話を知りたかった。
 どうしたのだろう、それから。
 今でも生きているのか?
 竜巻に閉ざされた都の中で?
 魔神の力をその身に宿して……ずっと?
 私の疑問に、彼女はとても嬉しそうに笑った。
「それからお二人はどうなったかって? ……ふふ」
 幸せそうだった。
「もう少ししたら、あたしを迎えに来てくださるんだよ。サリュに乗って・・・・・・・ね」
 ほんとうに……至福だというように、笑っていた。
「あたしは天に召されるのではなく、永遠にお二人にお仕えするのさ」
 そういう彼女の手には、鮮やかな白い花がある。話の間もずっと、彼女はその花を片時も離さなかった。
 長くいろんなところを旅した私にも見たこともない品種だ。これがさっき話に出てきた『約束の証』の花なのだろうか。百年以上も枯れない花など存在するのか。確かめる術などないのだが、何故だろう?
 私はその時、うらやましいと思ったのだ。ほんとうかどうかも分からない、彼女の幸せそうな言葉を。
 ――彼女は私を見て、今度は楽しそうに笑って言った。
「サンディーノの腐った過去を伝え続ける役目はあんたに譲るよ、学者さん。あんたなら、ごまかさずに必ずやりとげてくれるだろうから」
 そうしたら、逢えますか。私は真剣に尋ねた。
 あなたの後を継いだら、その姉弟にあえますか、と。
「……さあね。あたしにゃなんとも言えないよ。けれどあんたが――伝え続けてくれたなら……」

 いつかお会いしてくれるかもしれない。

 彼女はそう言ってから、疲れたよ、と呟いた。
 私は丁寧に礼を述べて、その日は退出した。


              ***

 ――数日が過ぎて、私は手記を書いている。
 伝え続けるために。今や私が最後の語り部なのだから。
 ……老女シェリは、私が話を聞いた翌日の夜、息を引き取った。
 死因は老衰。当然だ、彼女は百歳を越えていた。
 いや、気にするべきことはそこではない。
 彼女が亡くなった夜、砂竜が町の上を飛んでいたという。
 絶滅したはずの砂竜……もしかしたらその上には人影がふたつあったのではないだろうか?
 もしかしたら、それは。
 ……いや、きっと思い過ごしだろう。確かめる(すべ)などどこにもない。
 だが――いつか。
 私は思う。
 いつか行ってみたいものだ、と。
 失われた都、サンディーノへ。
 魔神の力を得た、美しい姉弟に逢えるのならば。


これにて「罪と咎」は終了です。砂の都の彼女と彼は、永遠にそこにあり続けます。それを望んだ二人ですから。






ネット小説ランキング>恋愛シリアス(PG12)部門>「罪と咎(つみととが)」に投票 ネット小説の人気投票です。投票していただけると励みになります。(月1回)







ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP


小説家になろう