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ダークマター 作者:なしか 空
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前に続く

 洋子は、昼食をご馳走になって、都合三時間ばかりいて、榊原家を後にした。
 その際、母親からいわれて、ついでに大分・別府観光をして帰ることになった。始めからそのつもりで、飛行機の予約は、十八時十五分のANAにしてあったのだ。
「光子、せっかくだから、洋子ちゃんに高崎山やマリンパレス、別府の地獄巡りもいいんじゃない? 案内してあげてから、空港まで送ってさしあげて」
「でも、悪いです、せっかくのお休みをーー」
「いいんですよう、彼氏もいないし、ほかにやることなんか何もないんだから」
 ということになったのだ。
 光子ちゃんは、お友達と待ち合わせていてカラオケに行くはずだったのを、急遽変更して、そのお友達とで案内してくれることになった。
 車は母親のだという赤いアルト。彼女が運転するには随分窮屈そうな車だ。
 竜平が通ったというすぐ近くの高校の前に、『メルシー』という小さな喫茶店があって、お友達とはそこで待ち合わせていた。
 そこでコーヒーを飲んでからーーさっちゃんというお友達が人見知りしない賑やかな子で、話しが弾み、光子ちゃんともようやく打ち解けた。
 大分市街を抜けると右手に明るい色の別府湾の海が開けた。こっち側にはコンビナートの工場が見え、海の中に張り出した海上バースに、お馬さんの恰好をしたクレーンが並んで見える。
 向こう側は国東半島か、空港は見えなかった。
「こっちがうみたまごで、向こうが高崎山」と、小柄なさっちゃんがいう。
 光子ちゃんはマリンパレスの駐車場に車を乗り入れた。
 車から出ると、海風が心地よい。すっくと立った光子ちゃんというのは、何かカッコイイ! ゲームの中の少女戦士のようだ。竜平と同じように、独特の雰囲気を持っている。
 ーーこの雰囲気は何だろう?
 ーー憂愁?
 うみたまごとかいう水族館は家族連れの観光客で賑わっていた。水族館なんて見る歳でもないし、気持ち的にもそんな気分でもなかったけど、中に入ると海の底にいるような雰囲気に癒された。残念ながら名物という小魚の芸は見られなかったけど、充分楽しめた。
 国道を跨いだ歩道橋を渡って高崎山のサルを見に行く。
 ここも家族連れで賑わっていた。ここでも子ザルや赤ちゃんザルの可愛さに癒された。
 いわれた通り地獄巡りもして、十七時三十分に大分空港へ、そこでまた、カフェで軽くスウィーツを食べてから別れた。
 ついに妹の口から兄のことを心配する言葉を一言も聞かなかった。
 なんて兄弟だろうかと思う。
 一人っ子の洋子は、年上や年下の兄弟に憧れた。この子が自分の妹なら、どんなに可愛がるか知れない。
 そして妹は一度も芯から笑わなかった。笑えばきっとチャーミングだろうに。
「じゃあね」といって手を振った時、(――おやっ?)と思った。
 彼女らの背後に、色白短髪のウサギ目の若い男がいたからである。
 その男は何度か視界の隅にいたような気がする。
 ーー?

 十九時四十五分に羽田に着いた。
 東池袋の学生会館に帰り着いたのは二十一時過ぎ、途中コンビ二で買った弁当を食べて、シャワーを浴びてからベットに倒れ込み、爆睡した。
 朝目覚めたのは十時前、テレビをつけてから、昨夜日本橋の路上で発砲事件があったのを知る。

 ーー重軽傷者二人ーーそのうちのジョウジマコユキさんは重症、ホンジョウエイジさんは軽症でした。

 ーージョウジマ? 
 ――ホンジョウ?
 寝とぼけて音声だけ聴いていた洋子は飛び起きた。
 そこへーー。

 ーーなお、一緒に居合わせた榊原竜平さんは軽い打撲だけですみ、警察の聴き取り聴取には、相手に心当たりはないといっております。

 とお馴染みの女性アナウンサーはいった。

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