挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
ダークマター 作者:なしか 空
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

81/250

前に続く

 新橋の総会屋へは電車で向かった。
 電車待ちの間、竜平は、携帯電話に電源を入れ、蛇覇那記者でもなければ、本庄英志でもない、三人目の人物に電話した。
 長い呼び出し音が途切れそうになる寸前に繋がった。
「はい」という返事。
「竜平です、その節は」
「珍しいのね」
 それから竜平はその人物と長々と会話した。
 このほどの五色重工の転換社債による増資に隠された、贈収賄事件の端緒を掴んだことなどを。
 小雪は電話の相手を窺うように、竜平のまわりをうろうろした。
「防衛省絡みより、こっちのほうが。蛇覇那記者もそういってますし。きっと国宗一派の尻尾を掴んで見せますよ」
「気をつけてね」
「もっかのところ地下に潜ってます。でも困ったことに、親父の一族の本庄がーーほら、ぼくのボディーガードのーー彼がもしかして敵の手に落ちたかも知れないんです。これから確かめに行くところです。彼に張り付かせていた五色重工の与党総会屋に乗り込むところです」
「……」
「大丈夫ですよ。でも、もしもの時のために、先生に今までの経緯をお話しておこうと」
「……」
「ぼくが倒れたら、光子にーー」
 電車が滑り込んで来たので「それではーー」といって携帯を閉じた。
「誰です?」
「弁護士の根岸先生。昔親父の事務所にいた」
 二人はどっと人波に呑まれた。

 新橋駅から吐き出された二人は、徒歩で三丁目の三宮ビルに向かった。
 駅前から例の三面の塔が見えていた。
 五分足らずで着いた。こっちは見上げるように高く、灰白に光り輝いていて、何階あるか数えるのを途中から止めたほどだった。
 竜平は知らないけど、それはバブルを生き残った三宮グループの復活の象徴であり、総本山でもあったのだ。
 エントランスの壁にテナント各社の名板があり、その中に、白木建設(株)・白木不動産(株)・白木産廃処理場(株)など、白木グループの会社が名を連ねていた。
 十八階に『氷室政治経済研究所』という総会屋の事務所の名前があった。
「小雪」
「はい。若さま」
「君は表で待っていてくれ」
「え、でも、いやです、小雪も一緒に連れてってください」
「ダメだ。ぼくに何かあったら、誰が伯母ちゃんに連絡するんだ」
「でもう……」
「三十分経って戻らなかったら、伯母ちゃんに連絡して、君はとりあえず山谷に。これから携帯の電源は入れたままにしておくから」
「でもう……若様のことが心配です。何かあったらなんてーー」
「だいじょうぶ。見てごらん。有名な警備会社などの企業がいっぱい入っているし」
 その警備会社などが、規制が厳しくなった総会屋への企業の利益供与の、商取引を装った隠れ蓑であり、相変わらず総会屋と企業との腐れ縁は切れていないのだ。
 そんなことを知らない二人は、あっちこっちに立っている警備員の鋭い目付きを、気にもとめないで別れた。
 竜平がエレベーターのボタンを押して待っていると、マナーモードにしてある携帯電話が懐の中で震えた。
 取り出してみると、何と本庄英志からメールが入っていた。
 だがその内容は次のようなものだった。

 --榊原竜平に告ぐ!
 本庄英志の身柄は我々が預かっている。
 取り返したくば、次に指定した場所に一人で、来い!
 今、本庄英志の左手小指の第二関節から先が溶けている。
 明日には、右足の小指の第二関節から先が溶けることになる。
 そうすると歩けなくなるぞ。
ーー場所は、愛宕神社、そこまで来たら電話しろ、それから先はまた知らせる。時間は午後九時ジャスト、一分でも遅れたら連絡しない。

 竜平は携帯を閉じると、降りて来た誰も乗っていないエレベーターに乗り込んだ。
 18のボタンを押した。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ